清見オレンジは、日本の果樹研究の成果を象徴する柑橘類です。1979年に品種登録されたこの果実は、日本で初めて開発されたタンゴールとして知られています。タンゴールとは、ミカン類とオレンジ類の交配種の総称です。

清見オレンジは、日本の伝統的な柑橘である温州みかんの一種「宮川早生」と、アメリカ原産の「トロビタオレンジ」を掛け合わせて誕生しました。この品種は、両親の特徴を巧みに融合させ、日本の気候に適応した新たな味わいを生み出すことに成功しています。

清見オレンジの誕生地は、静岡県静岡市清水区興津中町にある農林水産省の研究施設です。現在は農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点として知られるこの場所で、長年の研究の末に清見オレンジが開発されました。

その名称の由来は、研究所周辺の地理と深く結びついています。近隣にある清見寺（せいけんじ）と、その寺の前に広がる清見潟（きよみがた）という海岸から着想を得て、「清見」と命名されました。この名前は、果実の清々しい外観と味わいを見事に表現しています。

清見オレンジは、外観と味わいの両面で特徴的な柑橘です。果皮は3～4cm程度の厚さがあり、爽やかなオレンジの香りを放ちます。皮をむく際は、温州みかんほど簡単ではないため、ナイフの使用が推奨されます。

果肉は鮮やかなオレンジ色で、豊富な果汁を含んでいます。その味わいは非常にジューシーで、糖度は11～12％程度と高く、甘味と酸味のバランスが絶妙です。さらに、種がほとんどないことも、この果実の魅力の一つです。

清見オレンジの旬は、産地によって多少の違いがありますが、一般的に2月から4月にかけてです。この時期に最も味わい深い状態で市場に出回ります。

清見オレンジの栽培は、日本の温暖な地域に集中しています。特に愛媛県と和歌山県が主要な産地として知られ、この2県だけで全国生産量の84％を占めています。

この果実の栽培には、特定の気候条件が必要です。清見オレンジは成熟が遅く、通常2月以降に収穫されます。寒さに弱いため、冬季の気温が比較的穏やかな地域が栽培に適しています。これが、生産地が限定される主な理由となっています。

「清見タンゴール」という呼称は、この果実の遺伝的背景を反映しています。「タンゴール」（tangor）は、みかん類を意味する「タンジェリン」（tangerine）とオレンジ（orange）を組み合わせた造語です。

清見オレンジは、温州みかんとトロビタオレンジの交配種であるため、タンゴールの一種として分類されます。そのため、「清見タンゴール」と呼ばれることがあります。この名称は、その独特の遺伝的構成を科学的に表現しています。

清見オレンジを最も美味しく楽しむには、その特徴を考慮した食べ方が推奨されます。果皮が比較的厚いため、手でむくよりもナイフを使用するのが一般的です。

最も一般的な食べ方は、果実を八つ切りにカットすることです。この方法により、果肉の美しい断面が現れ、果汁が逃げにくくなります。また、適度な大きさに切ることで、果肉と果皮の味わいのバランスを楽しむことができます。

清見オレンジの収穫は、通常2月以降に始まります。この時期は、果実が十分に成熟し、最も豊かな風味と甘みを持つ段階です。

収穫時期が遅いのは、この果実の特性によるものです。十分な甘みと風味を発達させるには、樹上で長期間熟成させる必要があります。ただし、地域の気候条件によっては、収穫時期が多少前後することがあります。一般的に、2月から4月にかけてが最も美味しく楽しめる時期とされています。

清見オレンジは、その独特の甘さと程よい酸味、さらには爽やかな香りから多くの人々に愛されています。この記事を通じて清見オレンジの魅力について深掘りし、その美味しさを最大限に引き出す食べ方まで紹介しました。これを読んで、清見オレンジへの理解と愛着が一層深まることでしょう。美味しくて栄養満点の清見オレンジを、これからも存分に楽しんでください。