[清美みかん] 甘さと香りの絶妙なハーモニー:国産タンゴールの魅力に迫る
太陽をたっぷり浴びて育った[清美みかん]。その一口で広がる甘さと、鼻をくすぐる芳醇な香りは、まさに自然が生み出した芸術品です。国産タンゴール第一号として、温州みかんとオレンジの良いところを凝縮した清美みかんは、他にはない特別な味わいを持っています。この記事では、清美みかんの魅力に迫り、その美味しさの秘密を紐解きます。

清見みかんとは?日本生まれのタンゴール品種の魅力

清見みかんは、みかんとオレンジを交配した「タンゴール」という柑橘類で、日本で初めて生まれた品種です。名前の由来は、みかんの英語名であるタンジェリン(tangerine)とオレンジ(orange)を組み合わせて作られた「タンゴール(tangor)」から来ています。具体的には、温州みかんの代表的な品種「宮川早生」と、アメリカ・カリフォルニア原産のオレンジ「トロビタオレンジ」を掛け合わせて誕生しました。この交配は、昭和12年(1937年)に当時の園芸試験場(現在の国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 カンキツ研究興津拠点)で始まりました。農産種苗法(1947年)が1978年に種苗法への改名がされるなど、数次の改正を経て現行の種苗法となる。農産種苗法(昭和22年法律第115号) - 食料事情が戦後に逼迫したことを背景として、農業生産の安定化及び生産性向上を図るために、優良苗種の品種改良を奨励する制度が設けられた。この農産種苗法は育苗者の利益を擁護し、農林大臣による優良苗種の奨励を目的とした苗種名称登録とその違反者への罰則が規定されている。(出典: 種苗法 - Wikipedia(出典は農産種苗法および種苗法の法令原文), URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%AE%E8%8B%97%E6%B3%95, 2023-12-01)
目的は、栽培しやすく高品質な新品種を育成すること。清見みかんは、温州みかんの甘味と食べやすさに加え、オレンジの香りと上質な果肉を併せ持つ、全く新しい品種として開発されました。

とろけるような果肉と、あふれる果汁

清見みかんの最大の魅力は、その独特な風味と食感です。温州みかん由来のまろやかな甘さと、トロビタオレンジ由来のさわやかな香りととろけるような果肉が特徴です。全体としてバランスが良く、風味豊かで食べやすい品種となっています。果肉はプルプルと柔らかく、ナイフを入れると果汁がたっぷりあふれ出します。酸味が少ないため、子供から年配の方まで、幅広い世代に好まれるでしょう。この豊かな果汁ととろけるような食感が、清見みかんを忘れられない味にしています。

清見みかんの誕生秘話と命名

清見みかんは、昭和12年(1937年)に、園芸試験場(現在の国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 カンキツ研究興津拠点)で育成が始まりました。そして、1949年に品種として確立されました。育成地の静岡県興津の試験場の近くには、「清見潟」という美しい景勝地が広がっています。この風光明媚な場所から名前を取り、新しい品種は「清見」と名付けられました。「清美」と書かれることもありますが、品種名としては「清見」が正しい表記です。「清美」は「清らかで美しいこと」を意味しますが、柑橘の品種名としては使われません。栽培においては、一つ一つの果実に袋をかけ、丁寧に育てられます。3月まで樹上で越冬させることで、風味と甘さを最大限に引き出します。適切な温度管理を行うことで、収穫後も品質を維持し、6月頃まで出荷が可能です。

清見みかん育種の革新性:単胚性という性質

清見みかんの育成は、日本の柑橘産業にとって、非常に重要な出来事でした。その理由の一つが「単胚性」という性質です。植物の種子の中にある「胚」は、新しい植物になるための組織です。一つの種から一つの個体が育つものを「単胚性種子」と呼びます。一方で、一つの種から複数の個体が育つものを「多胚性種子」と呼びます。単胚性の種子を使うと、異なる品種を掛け合わせた際に、両方の親の性質を受け継いだ新しい品種が生まれやすくなります。多胚性の種子の場合、交雑種ができるのは一つだけで、ほとんどが母親のクローンになってしまいます。日本の代表的な柑橘である温州みかんは、多胚性であるため、新品種の育成が難しいとされていました。しかし、単胚性を持つ清見みかんが登場したことで、交雑育種による品種改良が大きく進みました。清見みかんは、温州みかんとオレンジの優れた点を持ち合わせているだけでなく、その遺伝的な特性によって、日本の柑橘の品種改良に大きく貢献したのです。

多くの新品種の祖となる優秀な親品種

清見みかん(清見タンゴール)は、その優れた特性と育種における単胚性という特徴から、現代の多くの人気柑橘品種の親、または祖先となっています。その影響力は非常に大きく、日本の柑橘産業に革新をもたらしました。日本の柑橘品種の家系図をたどると、多くの品種が清見みかんの血統を受け継いでいることがわかります。清見みかんは、和歌山のパンダ、永明のように、カンキツ界に多大な影響を与えた存在と言えるでしょう。
具体的に、清見みかんを親として誕生した「第一世代」の品種には、以下のようなものがあります。
  • 不知火(しらぬい): 「デコポン」ブランドで知られる品種で、清見みかんにポンカン(中野3号)をかけ合わせて生まれました。
  • はるみ: 不知火と同様に清見みかんとポンカンの交配種ですが、ポンカン(F-2432)という別の品種を交雑して育成されました。
  • 津之香(つのかおり): 清見みかんと温州みかんをかけ合わせて生まれた品種で、両者の中間的な特徴を持っています。
  • その他にも、せとみ、陽香、はるき、津之輝、たまみ、津之望、あまか、南風、春峰、果のしずく、せとか、麗紅など、多数存在します。
さらに、これらの品種が交配されて生まれた「第二世代」には、あすみ、あすき、津之輝などが存在し、さらに「第三世代」として、みはやのような品種も誕生しています。このように、清見みかんは多様な新品種を生み出す基盤となり、日本の柑橘フルーツの多様性と品質向上に大きく貢献しています。

とろける食感を引き出すカット方法

清見みかんは、とろけるような食感と豊富な果汁を最大限に楽しむために、いくつかの食べ方が推奨されます。外皮は温州みかんに比べて少し硬いため、手で剥くのが難しい場合があります。そのため、オレンジのようにナイフを使って「くし形」にカットするのが一般的で、手軽な方法です。さらに、果肉のプルプルとした食感を味わいたい場合は、横方向ではなく「縦方向」にカットすることをおすすめします。これにより、繊維が短く切断され、口に入れた時の柔らかさが際立ちます。また、清見みかんは内皮が薄いため、ほとんど気にならず、そのまま食べても美味しくいただけます。果汁が豊富なので、半分にカットしてスプーンですくって食べるのもおすすめです。

100gあたりの主要栄養素

清見みかん100gあたりの主要な栄養素は以下の通りです(出典:のま果樹園/株式会社環境研究センターにて計量)。
※詳細な栄養成分表は、今後の記事で追記予定です。一般的に、柑橘類はビタミンCを豊富に含み、健康維持に役立つとされています。
    • エネルギー:45kcal
    • 水分:87.6g
    • ビタミンC:35mg
    詳細な栄養成分表は、今後の記事で追記予定です。一般的に、柑橘類はビタミンCを豊富に含み、健康維持に役立つとされています。

    まとめ

    清見みかんは、宮川早生とトロビタオレンジの交配によって生まれた、日本初のタンゴール品種です。1949年に品種として確立され、育成地の地名「清見潟」にちなんで命名されました。温州みかんの甘さとオレンジの爽やかな香りを持ち、とろけるような果肉と豊富な果汁が特徴です。外皮はやや硬めですが、オレンジのようにカットしたり、縦にカットしたり、スプーンで食べるなど、様々な方法で楽しめます。内皮が薄いため、そのまま食べられるのも魅力です。清見みかんは、その「単胚性」という特性から、その後の日本の柑橘品種改良に大きな影響を与えました。「不知火」「はるみ」「津之香」をはじめ、「せとみ」「津之輝」「みはや」など、多くの人気品種の親となり、日本の柑橘品種改良において重要な役割を果たしています。その優れた品質と多様な子孫品種の存在は、清見みかんが「柑橘の王道」とも言える品種であることを証明しています。

    清見タンゴール、温州みかん、オレンジの違いとは?

    清見タンゴールは、温州みかんとオレンジを掛け合わせて生まれた柑橘です。温州みかんの甘みや手軽さと、オレンジの爽やかな香りとジューシーさを兼ね備えています。温州みかんよりは皮がしっかりしており、オレンジほど酸味が強くなく、独特の食感が魅力です。タンゴールとは、みかんとオレンジを交配した品種全体のことを指します。

    清見タンゴールはいつが一番美味しい時期ですか?

    清見タンゴールは、3月頃まで木の上でゆっくりと時間をかけて熟成させてから収穫されます。そのため、通常は3月から5月頃が旬とされ、保存技術の進歩により6月頃まで店頭に並ぶこともあります。最も美味しく味わえるのは、春から初夏にかけての時期と言えるでしょう。販売のピークは3月、4月頃です。

    清見タンゴールの名前の由来は?

    清見タンゴールの名前は、生まれた場所である静岡県の興津試験場の近くにある「清見潟」という美しい場所に由来します。日本の豊かな自然から名付けられた、趣のある名前を持つ品種です。清見潟は、文学作品にも登場する名勝地として知られています。

    「清美」という柑橘の品種はありますか?

    いいえ、「清美(きよみ)」という柑橘の品種は存在しません。正しい品種名は「清見(きよみ)」です。「清美(せいび)」という言葉は「清らかで美しい」という意味を持ちますが、柑橘の品種名としては「清見」が正しい名称です。

    清美みかんを美味しく保つ保存方法とは?

    清美みかんは、温度変化が少なく、風通しの良い場所で保管するのが理想的です。乾燥を防ぐために、一つずつ丁寧に新聞紙などで包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れると、より鮮度を維持できます。適切な環境下で保存すれば、収穫後、初夏まで美味しく味わうことができます。

    清美みかんが日本の柑橘類の品種改良に果たした役割とは?

    清美みかんは、「単胚性」という遺伝的な特徴を持っていたため、他の品種と掛け合わせることによって、新しい品種を効率的に開発することができました。従来の温州みかんなど多胚性の品種では困難だった新品種の開発を容易にし、「不知火(デコポン)」や「せとか」といった、多くの人気品種を生み出す基盤となり、日本の柑橘類の品種改良に大きく貢献しました。

    清美 みかん