「青汁の原料」「苦い」といったイメージを持たれがちなケールですが、実は栄養価が高く、様々な魅力を持つ野菜です。その歴史は古く、原産地の地中海沿岸では紀元前200年にはすでに食用や薬用として栽培されていました。日本へは江戸時代に伝来しましたが、近年、その栄養価が改めて注目され、青汁の原料としてだけでなく、サラダや炒め物など、様々な料理に利用されるようになりました。この記事では、ケールの名前の由来や歴史、多様な品種とその特徴、家庭菜園での育て方、豊富な栄養価、そして美味しく食べるための調理方法、安全に摂取するための注意点など、ケールのあらゆる側面を詳しく解説します。この記事を通して、ケールの奥深さを知り、日々の食生活に新たな発見と健康を取り入れていただければ幸いです。
ケールとは?その多面性と歴史的背景
ケール(学名:Brassica oleracea var. acephala)は、アブラナ科アブラナ属に分類される一年生または二年生の植物で、キャベツの原種に近い品種です。日本では、緑葉甘藍(リョクヨウカンラン)や羽衣甘藍(ハゴロモカンラン)とも呼ばれます。葉の形は様々で、縮れたもの、平滑なコラード系、細長いものなどがあります。日本では、特に縮れた葉を持つものが一般的にケールとして認識されています。独特の苦味があるため、日本では青汁やジュースの材料としてのイメージが強いですが、欧米では一般的な食材として広く利用されています。近年では、生食に適した苦味が少ない品種も開発され、健康志向の高まりとともにサラダやスムージーの材料として世界中で人気を集めています。また、食用としてだけでなく、葉の色が紫紅色や黄色、斑入りなど、観賞用としても栽培されており、日本の葉牡丹もケールを品種改良したものです。
ケールの語源と名称の由来
ケール(Kale)という名前は、様々なキャベツを指す北ドイツ語の「cale」に由来し、さらに遡るとラテン語の「caulis」が語源です。コールワート(Colewort)という名称は、結球しないキャベツの仲間を意味する言葉から来ています。日本語では、結球しないキャベツの仲間であることから「緑葉甘藍(リョクヨウカンラン)」と呼ばれ、特に葉が縮れているものは「羽衣甘藍(ハゴロモカンラン)」、茎が赤いものは「掻葉甘藍」と呼ばれます。中国語では、縮れた葉を持つケールは「羽衣甘藍」、幅広の葉を持つものは「宽叶羽衣甘藍」と表記されます。学名“Brassica oleracea variety acephala”において、属名の“Brassica”はキャベツの古いラテン名、種小名の“oleracea”は「畑で栽培される」という意味、変種名の“acephala”は「頭がない」という意味で、結球しないことを示しています。つまり、直訳すると「頭のない畑のキャベツ」となります。キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、コールラビなども同じ“Brassica oleracea”に属し、これらはすべて野生のキャベツから派生しており、ケールはその中でも最も原種に近いと考えられています。
ケールの起源と世界への広がり
ケールの原産地は地中海沿岸で、野生のキャベツが起源とされています。紀元前200年には、古代ギリシャで薬用や食用として栽培されていました。ヨーロッパへは6世紀頃に、航海中に必要なビタミンCを補給するためにローマ人が船に積んで運んだことがきっかけで広まったと言われています。中世ヨーロッパでは、ドイツ、イギリス、オランダなどで食用として栽培され、様々な品種が生み出されました。特に、耐暑性と耐寒性に優れたケールは、中世の食糧難の時代にヨーロッパの人々を飢餓から救う、重要な緑黄色野菜としての役割を果たしました。
ケールは、寒い地域では葉を大きく広げ、温暖な地域では背が高くなるなど、その土地の気候や風土に合わせて姿を変えてきました。栽培しやすく栄養価も高いため、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、アジアなど、世界各地で栽培される重要な野菜となっています。ただし、冷涼な気候を好むため、熱帯地域での栽培は主に高地に限られています。東アフリカや南部アフリカでは、「カリーヤ」や「ブッシュケール」などの名前で呼ばれ、主要な葉物野菜の一つとして親しまれています。これらの地域では、葉を繰り返し収穫できる背の高い品種が人気ですが、西アフリカではあまり見られず、中央アフリカでは稀です。熱帯アフリカでは、広く分布しているコラードやマローステムケールを除き、カーリーケールのような西洋系の品種はほとんど見られません。輸入品種は収量や品質の均一性に優れているものの、現地の品種に比べて病害虫への抵抗力が弱く、消費者の好みに合わない、低地での栽培に適さないなどの課題も抱えています。
スコットランドでは、スコッチケールが伝統的な食生活において重要な位置を占めており、一部の方言ではケールが「食べ物」そのものを意味することもあります。「off one's kale」という表現は、「体調が悪くて食欲がない」という意味で使われます。イギリスでは、第二次世界大戦中に「Dig for Victory(勝利のための栽培)」キャンペーンが展開され、ケールなどの野菜栽培が奨励され、国民の栄養不足を補う上で大きく貢献しました。ポルトガルでは、コウヴェ系(コラード系)が多く栽培されており、ポルトガル人によってブラジルに伝わりました。イタリアでは、カーボロネロ(トスカーナケール)がよく食べられています。中国では、8世紀頃から羽衣甘藍(コラード、カーリーケール)の茎、葉、花のつぼみが食用として利用されています。
アメリカには17世紀に伝わりましたが、当初はサラダの飾りや花束などの装飾用として使われることが主でした。しかし、1990年代初頭から栄養価の高さが注目され始め、2010年頃にはセレブリティの間で「スーパーフード」として人気を集めました。それ以降、スムージーやサラダ、ケールチップスなどの食材として広く利用されています。コラード系のケールは、アフリカから奴隷とともにアメリカに渡り、アメリカ南部の家庭菜園では冬の定番野菜として、貧しい農民にとって貴重なミネラルとビタミンの供給源となりました。現在でも南部では重要な野菜の一つであり、ソウルフードの中心的な存在となっています。
日本におけるケールの歴史と広がり
ケールが日本に渡来したのは江戸時代と言われ、貝原益軒が著した『大和本草』(1709年)には、オランダナやサンネンナという名でその記述が見られます。さらに時代が進み、明治時代に編纂された『改訂増補舶来穀菜要覧』(1887年)には、開拓使がアメリカから3種類のケールを導入した記録が残されています。しかし、当時の日本人の嗜好には合わず、食用としての普及は進みませんでした。その代わりに、葉が紫紅色や黄色、または斑入りのものが観賞用として栽培され、品種改良の結果、葉牡丹が生まれたとされています。日本でケールが食用として広く認知されるようになったのは、1990年代の青汁ブームがきっかけです。現在でも主に青汁の原料として栽培されていますが、近年、アメリカでケール人気が高まったことを受け、日本でも苦味が少なく食べやすい調理用ケールが開発され、食卓に登場する機会が増加しています。
ケールの栽培方法と成功の秘訣
ケールは一年生または多年生の植物で、種子、または茎を挿し木して増やします。収穫は、株ごと刈り取るか、生長した外側の葉から順に摘み取って、継続的に行います。耐寒性が非常に強く、温暖な気候であれば一年を通して栽培できるのが大きなメリットです。特に、晩冬から早春にかけて収穫されるケールは、糖分を多く含み、甘みが増す傾向にあります。
最適な栽培環境と土壌
ケールは様々な土壌に適応できますが、特に水はけが良く、有機物を豊富に含んだ砂壌土が栽培に最適です。肥料を多く必要とするため、種まきや定植を行う前に、堆肥などの有機質肥料と化成肥料を十分に施しておくことが大切です。気温20度程度の冷涼な気候を好みますが、多湿には弱い性質を持ちます。一方で、耐暑性・耐寒性にも優れており、高冷地では夏場の栽培も可能です。生育が旺盛なため、栽培の難易度はキャベツよりも低いと言われています。ただし、他のアブラナ科の植物と同様に、同じ場所での連作は、病害虫の発生や生育不良を引き起こす原因となるため、避けるようにしましょう。
種まき、育苗、定植の計画
種まきは春から秋にかけていつでも可能ですが、一般的に縮葉ケールは6月から7月に行い、10月下旬から2月にかけて収穫を行います。コラード系ケールの場合は、3月に種をまき、6月下旬から8月に収穫する春まき栽培と、7月から8月に種をまき、10月から1月に収穫する夏まき栽培の方法があります。畑の畝に30〜40cm間隔で点まきし、発芽後、何度か間引きを行いながら育てます。平坦な地域では夏に種をまき、秋から冬にかけて収穫するのが一般的です。寒冷地では春に種をまき、ハウスで苗を育てた後、5月から6月に定植し、秋から初冬にかけて収穫します。種をまいてから収穫するまでには、通常3〜4ヶ月の期間が必要です。
日々の手入れと収穫のポイント
苗を育てる場合は、育苗ポットに種を数粒ずつ蒔くか、苗床に線を引くようにして種を蒔きます。双葉が開いた後、最初の間引きを行い、本葉が2枚程度になったら、苗を1本に間引きます。種まきからおよそ1ヶ月から1ヶ月半後、本葉が5~6枚になったら、株間を40cmほど空けて植え付けます。植え付け後、寒くなる前の12月までは、ケールが最も成長する時期であり、この期間の肥料管理が非常に重要です。本葉が10枚程度になったら、株元に肥料を与え、株が倒れないように土寄せも行います。その後は、生育状況を見ながら2週間ごとに肥料を追加することで、より丈夫に大きく育ちます。収穫は、若い葉の長さが30~40cmになり、緑色が濃くなったら、外側の葉から必要な分だけ摘み取って収穫します。こうすることで、株は長い期間にわたって新しい葉を出し続け、収穫期間は約2~3ヶ月と長く楽しむことができます。
ケールの栽培における病害虫とその対策
ケールは、キャベツやブロッコリーと同じアブラナ科の野菜であるため、アオムシ、コナガ、ヨトウムシ、アブラムシ、ハダニなどの害虫による食害や、根こぶ病、軟腐病、黒腐病、べと病、モザイク病などの病気に感染する可能性があります。これらの対策として、防虫ネットの使用や適切な農薬の散布、病気に強い品種の選択が大切です。また、ナメクジや鳥による食害が発生することもあります。ケールを栽培する際には、土壌がカドミウムなどの重金属で汚染されていないことが不可欠です。重金属が蓄積された土壌で栽培されたケールは、植物の中に重金属を取り込んでしまう可能性があるため、土壌選びと管理には細心の注意が必要です。
ケールの様々な種類と特性
アブラナ科の植物の多くは、自分の花粉では受粉せず、他の株の花粉で受粉するため、異なる特徴を持つものが生まれやすく、品種改良が比較的簡単です。そのため、ケールにはさまざまな色、形、大きさの種類が存在します。品種は主に茎の長さや葉の形で区別されることが多く、茎の高さが4cmほどの低いものから、30cmを超える高いものまであります。葉のタイプも、日本でよく見られる葉に縮れのないコラード系ケール、葉が縮れているカーリーケール、縮れが少ないシベリアンケール、細長くて表面に凹凸があるトスカーナケールなど、多岐にわたります。食用以外にも、家畜の飼料や観賞用として特別な品種が栽培されています。
コラード系ケール:肉厚な葉としっかりした食感が魅力
コラード系ケールは、葉が幅広の楕円形や円形で、ほとんど縮れていません。キャベツの外側の葉やブロッコリーの葉に似ており、肉厚で歯ごたえがあります。色は灰緑色から濃い緑色で、はっきりとした葉脈が特徴的で、アブラナ科特有の風味が強く感じられます。まっすぐに伸びる茎は、1本で成長すると1メートルの高さに達することもあり、葉を収穫して食用にできます。暑さや寒さに強く、ポルトガル、ブラジル、スペイン、アメリカ南部、アフリカ諸国、インドなどで一般的な野菜として栽培されてきました。ブラジルでは「Couve」、ポルトガルでは「Couve Galega」、東アフリカでは「Sukuma Wiki」という名前で親しまれています。アメリカ南部では、コラードケールの煮込み料理は「ソウルフード」として愛されています。
人気のある品種には、Georgia Southern、Vates、Morris Heading、Blue Max、Top Bunchなどがあります。「Couve Galega」や「Couve Tronchuda」は、コウヴェ・マンティガ(Couve Manteiga、Butter Collard)や、ポルトガルキャベツ(Tronchuda cabbage、Portugese Cabagge)としても知られています。また、コラード系ケールを基にした交配品種も開発されています。
コラード系ケールとの交配種
ジューシーグリーンは、コラードケールとツリーケールを掛け合わせた品種で、豊富な水分量からスムージーに最適です。スウィートグリーンは、ジューシーグリーンよりも丈は低いものの、葉の収穫量が多く、こちらもスムージーに適しています。ハイクロップはカゴメが開発した品種で、スムージー用として知られています。サンバカーニバルは、トキタ種苗が開発した品種で、その柔らかさと苦味の少なさから「ソフトケール」として販売され、調理用ケールとして注目されています。
カーリーケール:サラダにも最適な縮れた葉
カーリーケールは、葉が縮れた濃い緑色のケールの総称です。比較的苦味が少なく、サラダなど生食に適しているのが特徴です。デンマークやスウェーデンなどヨーロッパで伝統的に食されてきました。日本では「ちりめんケール」とも呼ばれ、一般的にケールと言う場合、このタイプを指すことが多いです。一般的なカーリーケールはサラダに最適です。
カーリーケールの代表的な品種
スコッチケールは、灰緑色の葉が特徴で、非常に細かい縮れがあります。背丈の高いものと低いものがあり、一般的には低い矮性のものがよく栽培されます。エキストラ・カールド・スコッチ、トール・スコッチ、ノーフォーク、ドワーフ・カールド・スコッチなどの種類があります。カリーノケールはトキタ種苗が開発した品種で、しっかりとした食感が特徴で、料理用として人気があります。葉の縁のフリルのような形状から、イタリア語で「愛らしい」を意味する「カリーノ」と名付けられました。苦味や青臭さが少なく、サラダの他、チップス、スムージーなどにも利用でき、発色の良さからスムージーにも適しています。過去には、星野リゾートやイートアンドのメニューにも採用された実績があります。キッチンケールは、葉がパセリのように縮れ、茎の先端にバラの花のような形状で葉がつくタイプで、草丈は1m以下です。
シベリアンケール:高い耐寒性と独特の形状
シベリアンケールは、葉が青々としており、縮れが少ないのが特徴です。名前の通り、ケールの中でも特に耐寒性が高く、厳しい冬の寒さにも耐えられます。伝統的な品種として知られていますが、一般的に苦味が強い傾向があります。背丈が高いものと低いものがあり、通常は低い矮性のものが栽培されます。スコッチケールよりもやや生育が遅いという特徴もあります。葉の形状は個性的で、観賞用としても楽しまれることがありますが、苦味が強いため、生食にはあまり向きません。アーリー・カールド・シベリアン、ドワーフ・ブルー・カールド、トール・グリーン・カールド、レッド・ロシアンケールなどの品種が存在します。
トスカーナケール(カーボロネロ):煮込み料理に最適なイタリア伝統野菜
トスカーナケールは、その細長い葉と、黒みを帯びた濃い緑色が目を引きます。葉の表面には、まるで亀の甲羅のような独特の凹凸があるため、「ダイナソーケール」という愛称でも親しまれています。イタリアのトスカーナ地方で昔から栽培されてきた由緒ある品種で、冬の寒さに強く、冬の間を通して収穫を楽しめます。葉は繊維質でやや硬めなので、じっくりと煮込む料理に最適です。最も一般的な呼び名はカーボロネロ(cavolo nero)ですが、他にもラシネートケール(lacinato kale)、イタリアンケール(Italian kale)、ダイナソーケール(dinosaur kale)、カーボロトスカーノ(cavolo toscano)、パームツリーケール(Palmtree Kale)、ブラックリーフケール(black leaf kale)、黒キャベツ(black cabbage)など、様々な名前で呼ばれています。
ツリーケール:巨大な姿は飼料にも
ツリーケール(Tree Kale)は、その名の通り、高く直立した姿が特徴で、2〜4メートルにも成長します。葉も大きく、厚みがあり、表面には蝋のような光沢があります。葉の縁には切れ込みがあるものとないものがあります。主に家畜の飼料として、何度も葉を収穫して利用されます。食用としても利用でき、特に春に葉の付け根から出てくる新芽は美味しくいただけます。ジャージーケール(Jersey Kale)、Jersey cabbage、Cow cabbage、Tree cabbage、Walking Stick Kaleは、ジャージー島で栽培され、長い茎は杖の材料として、葉は家畜の飼料として輸出されていました。高さは通常1.8〜3mですが、20年以上経つと6mに達することもあります。下から葉を摘み取っていくと、ヤシの木のようなユニークな外観になります。
マローステムケール:茎の中まで食べられる肥大茎ケール
マローステムケール(Marrow Stem Kale)は、茎が太く、まるで背骨のように大きく肥大するのが特徴です。若葉や茎の中にある髄(marrow)を食用としますが、一般的には家畜の飼料として栽培されることが多いです。ヨーロッパ各地で広く栽培されており、イタリア、ギリシャ、トルコなどでは食用としても栽培されてきました。品種としては、コンドル(Condor)、エンノーブルド・グリーン・マロー・ステム・ケール(Ennobled Green Marrow Stem Kale)、エンノーブルド・パープル・マロー・ステム・ケール(Ennobled Purple Marrow Stem Kale)などがあります。
サウザンドヘッドケール:枝分かれが多く収穫期間も長い
サウザンドヘッドケール (Thousand Head Kale)は、直立した姿で旺盛に枝分かれし、高さ1〜2メートル、横幅も高さと同じくらいに広がります。枝分かれは、地上から20〜50センチメートルの高さから始まり、それぞれの枝の先はやや太くなり、ロゼット状の葉をたくさん茂らせて、まるで茂みのような外観になります。サウザンドヘッド(千の頭)という名前は、枝分かれした多数の茎や枝の先端にロゼット状の葉がついていることに由来します。主に家畜の飼料として栽培されています。痩せた土地でもたくましく育ち、冬に他の野菜がほとんど収穫できない時期に重宝されることから、「寒ケール」とも呼ばれています。ブッシュケール (Bush Kale)、ブランチング (Blanching)、ドーレコール (Dorecole) などとも呼ばれます。
ケールと多様な野菜との交配:新たな食感と風味の創造
ケールは、アブラナ科の様々な野菜と交配させることで、これまでになかった新しい品種が生み出されています。例えば、ゴズィラーナ(カーボロリーフグリーン)は、コラードケールとチンゲンサイを掛け合わせたもので、カーボロネロよりも葉幅が広いのが特徴です。また、プチヴェールは芽キャベツとケールを交配させた品種で、結球しないユニークな形状をしています。アレッタはブロッコリーとケールを掛け合わせて生まれた野菜で、苦味が少なく、茎の甘みが特徴です。葉、茎、花蕾の全てを美味しく食べられます。ケロッコもアレッタと同様に、ブロッコリーとケールを掛け合わせた品種で、スティック状の花蕾とケールの葉が特徴です。ケーリッシュはダイコンとケールを交配させたもので、サラダや加熱調理に適しており、生で食べるとダイコンのようなピリッとした辛味が楽しめます。
ケールの魅力を引き出す調理法とアイデアレシピ
独特の風味とほのかな苦味を持つケールは、日本では青汁やジュースとして利用されることが多いですが、ヨーロッパ、アフリカ、ブラジル、アメリカ、韓国など世界各地では、様々な料理の食材として親しまれています。
世界に広がるケール料理:食文化を豊かに彩る
ケールはキャベツのように、煮込み料理、炒め物、スープ、グラタン、シチュー、ロールキャベツなど、様々な料理に使われます。一般的に硬い茎は取り除かれますが、細かく刻んでスープの具材として活用することもできます。若い葉は柔らかく、サラダとして生で食べるのがおすすめです。アフリカでは、ケールの葉を細かく刻んで煮込んだ伝統料理があります。韓国では、ケールの葉をごま油で炒めた「ケールナムル」が食卓に並びます。ギリシャでは、生のケールの葉を天日干しにして保存食として利用しています。ロシアでは、栄養が凝縮されたケールのピクルスをパンに添えて食べる習慣があります。
ブラジルでは、国民的な肉料理「フェジョアーダ」に、ソテーしたコラードグリーンが添えられます。イタリアのトスカーナ地方では、カーボロネロ(トスカーナケール)が豆のスープ「リボリータ」や、黒キャベツを使ったパスタ「パッパ・アル・ポモドーロ」などの伝統料理に欠かせない食材です。オランダの伝統的な冬の料理「ボーレンクールスタンプポット」は、カーリーケールとマッシュポテトを混ぜ合わせたもので、揚げたベーコンやソーセージと一緒に食べます。北ドイツには「Grünkohlfahrt」(ケールの旅)と呼ばれる冬のイベントがあり、ハイキングの後、ベーコンやソーセージと共にケール料理を楽しみます。ポルトガルの伝統的なスープ「カルド・ヴェルデ」は、ジャガイモのピューレ、細かく刻んだケール、オリーブオイル、塩で作られ、ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、カーボベルデなどでも親しまれています。アイルランドでは、ケールをマッシュポテトと混ぜて、ハロウィンの伝統料理「コルキャノン」を作ります。トルコでは、ピラフをケールで巻いた「カラハナ・サルマス」が定番メニューです。中国の「タオツァイ」(包菜)は、ケールなどの葉野菜でご飯や肉を包んで食べる料理です。
欧米では、ケールやコラードグリーンは缶詰や冷凍食品としても販売されています。また、ポテトチップスの代替品として、ケールチップスも人気があります。ケールの若芽や花芽も料理に使われ、彩り豊かなケールは、料理の飾りとしても活用されています。
ケールサラダを美味しく食べるコツ:苦味を抑えて楽しむレシピ
「ケールは苦くて美味しくない」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、健康志向の高いアメリカでは非常に人気のある食材です。サラダにしたり、スムージーに入れたりして、日常的に食べられています。最近では、苦味が少なくサラダに適した品種も多く出回っています。もし苦味が気になる場合は、さっと茹でることで苦味を抑えることができます。ただし、栄養素の損失を防ぐため、茹ですぎには注意が必要です。熱湯に軽く通し、色が変わる程度で十分です。
さっと茹でケールのサラダレシピ
ケール特有の苦みを和らげ、その美味しさを最大限に引き出す「さっと茹でケールのサラダ」のレシピをご紹介します。この手軽なレシピで、ケールの新たな一面を発見してみませんか?
材料(2~3人分):
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ケール:180g(約6~8枚)
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きゅうり:60g(1/2本程度)
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ミニトマト:10個
ドレッシング:
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アンチョビペースト:5g
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マヨネーズ:大さじ1
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粒マスタード:小さじ1
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酢:小さじ1
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にんにく:1/2かけ(すりおろし)
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塩、こしょう:適量
作り方:
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ケールの葉を茎から取り外し、食べやすい大きさに手でちぎります。鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、ケールを入れます。鮮やかな緑色になったら(約10~20秒)、素早く冷水に取り、水気を軽く絞ります。
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ボウルにドレッシングの材料を全て入れ、均一になるまで混ぜ合わせます。アンチョビフィレを使う場合は、細かく刻んでから加えてください。
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水気を切ったケール、乱切りにしたきゅうり、半分にカットしたミニトマトをボウルに入れ、2のドレッシングで優しく和えれば完成です。
ポイント:
今回のレシピではケールの茎は使いませんが、細かく刻んで冷凍保存しておくと、後日スープの具材などとして活用できます。また、このアンチョビとニンニクの風味が食欲をそそるドレッシングは、様々な野菜と相性が良く、茹で野菜のディップとしてもおすすめです。ぜひ色々な料理でお試しください。
ケールの驚くべき栄養価と健康機能
ケールは、その圧倒的な栄養価から「緑黄色野菜の王様」と呼ばれることもあります。含有される栄養成分は、品種や産地によってばらつきがあるため、ここで示される数値はあくまで参考としてください。生のケール100gあたり、水分が約90%、炭水化物が約4%、たんぱく質が約3%、脂質が約1.5%を占め、エネルギーは約43kcalです。特に注目すべきは、1日に推奨される摂取量の3倍以上ものビタミンKが含まれている点です。
豊富なビタミンとミネラル
ケールには、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB6、葉酸が豊富に含まれています。また、マンガン、鉄、カルシウム、マグネシウム、カリウム、リンなど、多様なミネラルの供給源としても優れています。特に、他の葉物野菜と比較して、β-カロテン、ビタミンC、ルテインの含有量が多いのが特徴です。例えば、同量のキャベツと比較すると、β-カロテンは約60倍以上(小松菜と同程度)、ビタミンCは約2倍、ビタミンEは約24倍も含まれています。カルシウムはキャベツの約5倍も含まれており、骨の健康をサポートします。
生のケールを茹でると、これらの栄養素の多くが減少する傾向がありますが、ビタミンA、K、マンガンは比較的多く残るとされています。蒸し調理や電子レンジでの加熱、炒め調理の場合、栄養価の損失は少ないと考えられています。
ケール特有の機能性成分と健康への期待
ケールには、抗酸化作用で知られるルテインが豊富に含まれています。また、良質な睡眠を促すホルモンの一種であるメラトニンも含まれていることがわかっています。骨粗鬆症の予防に役立つカルシウム、貧血予防に効果的な葉酸、高血圧予防に効果のあるカリウムなどのミネラルに加え、食物繊維も豊富に含んでいることから、「食べないと損」と言われるほどの栄養価を誇ります。これらの栄養素に加えて、様々な機能性成分が含まれていることが、ケールへの健康効果への期待を高める一方で、独特の風味につながっている場合もあります。
ケールは、グルコシノレートやクロロフィルを豊富に含んでいます。また、イソチオシアネートも含まれていますが、加熱調理によって減少させることが可能です。スルフォラファンなどのフィトケミカルも豊富で、ブロッコリーをはじめとするアブラナ科の野菜と同様に、イソチオシアネートの生成を促す化合物を含んでいます。これらの化合物は、抗がん作用や解毒作用など、人間の健康に有益な影響を与える可能性について研究が進められています。
ケールの苦みや青臭さの主な原因は、イソチオシアネートの生成に関与するグルコシノレートをはじめとする、様々な構造を持つグルコシノレートとその分解物です。植物中では、グルコシノレートは配糖体の形で存在していますが、咀嚼などによって細胞が破壊され、分解反応が進むと、ミロシナーゼという酵素の働きによってイソチオシアネートが生成されます。人が苦みやえぐみとして感じるのは、主にこれらのイソチオシアネートやその分解物です。また、グルコシノレートの分解時に硫黄を含む揮発性物質も生成されるため、ケール特有の青臭さの原因となります。なお、グルコシノレートの含有量は、品種や栽培地によって大きく異なり、含有量が非常に少ないものも存在します。
ケール摂取における注意点と安全性
ケールは、便秘の改善やコレステロール値の低下など、健康に良い影響を与えることが期待され、注目されています。しかし、これらの効果について、人に対する十分な科学的根拠があるとは言えません。健康的な食生活の一環として取り入れることが大切です。
医薬品との相互作用と摂取上の注意
ケールはビタミンKを豊富に含んでいるため、抗凝固薬のワルファリンを服用している方は注意が必要です。ワルファリンはビタミンKの働きを抑えて血液を固まりにくくする薬ですが、ケールや納豆、クロレラなどビタミンKを多く含む食品を大量に摂取すると、ワルファリンの効果が弱まり、血栓ができやすくなる可能性があります。医師や薬剤師に相談し、摂取量を調整するようにしましょう。
また、ケールにはシュウ酸も含まれています。大量に摂取すると、シュウ酸カルシウム結石による尿路結石のリスクが高まることがあります。特に、尿路結石の経験がある方は注意が必要です。
ケールなどのアブラナ科植物には、S-メチルシステインスルフォキシドという成分が含まれています。これが動物の腸内で化学反応を起こし、ジメチルジスルフィドに変化することがあります。反芻動物(牛や羊など)では、これが溶血を引き起こすことが知られています。しかし、人間が適切な量を摂取する限り、安全性に問題はないと考えられています。
食薬区分と機能性表示食品
日本の法律では、ケールは「医薬品的な効果を謳わない限り、食品として扱われるもの」とされています。医薬品のような効果を表示することはできません。ただし、「明らか食品」として認識されるケールの葉などであれば、薬機法に違反せずに効果を表示できる場合があります。しかし、「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液がきれいになる」といった、医薬品と誤解されるような誇大な表現(店頭や説明会での口頭説明を含む)は、健康増進法や景品表示法で規制されるため、注意が必要です。
近年、ケールにルテインを加えた加工食品や、ケールに含まれるGABA、スルフォラファングルコシノレートを機能性関与成分とした加工品が、機能性表示食品として消費者庁に届け出られています。また、ケールに含まれるルテインやGABAを機能性関与成分とした生鮮野菜も、機能性表示食品として届け出が行われています。機能性表示食品は、国が個別の商品の審査を行うのではなく、事業者が自らの責任において、科学的根拠に基づいて機能性を表示する制度です。多くの場合、機能性の根拠となるデータは、実際の商品を用いた臨床試験ではなく、機能性関与成分に関する臨床試験データが用いられています。
通常の食品として摂取する場合は安全と考えられますが、妊娠中や授乳中の方は、十分な情報がないため、念のため摂取量を控えめにすることが推奨されます。
まとめ
ケールは、地中海沿岸を原産とする、多岐にわたる魅力を持つアブラナ科の野菜です。古くから世界中で栽培され、中世ヨーロッパでは食糧難を救い、アメリカ南部ではソウルフードとして親しまれてきました。葉の形や茎の高さによって、コラード、カーリーケール、トスカーナケールなど、さまざまな品種があり、それぞれ異なる食感や風味を持っています。料理の用途も幅広く、栽培も比較的容易なため、家庭菜園でも楽しむことができます。栄養価が非常に高く、β-カロテン、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、ルテイン、食物繊維などを豊富に含み、「緑黄色野菜の王様」とも呼ばれるスーパーフードです。青汁としてだけでなく、サラダ、煮込み料理、炒め物、スープなど、世界のさまざまな食文化に取り入れられ、美味しく健康的な食生活を豊かにしてくれます。ただし、ビタミンKの含有量やシュウ酸、機能性表示食品の特性など、摂取する上での注意点も理解しておくことが大切です。この記事を通して、ケールの奥深い世界と可能性を知り、ぜひ日々の健康維持に役立ててみてください。
ケールを生で食べることは可能ですか?苦味を和らげるコツはありますか?
はい、ケールは生食できます。特に葉がやわらかい種類のケールは、サラダに最適です。もし苦味が気になるようでしたら、軽く熱湯に通すことで苦味を抑えられます。ただし、茹ですぎると栄養が失われるため、短時間で済ませましょう。ドレッシングを工夫したり、スムージーに混ぜたりするのもおすすめです。
ケールは青汁以外に、どのような料理に活用できますか?
ケールは青汁以外にも、様々な料理で活躍します。世界中で、煮込み料理、炒め物、スープ、サラダなど、様々なレシピに使われています。例えば、イタリアのカーボロネロは煮込み料理によく使われ、ポルトガルではケールを使った伝統的なスープ、カルド・ヴェルデが親しまれています。若い葉はサラダに、またチップスとして楽しむこともできます。
ケールの栄養価は、具体的にどれほど高いのでしょうか?
ケールは「緑黄色野菜の王様」と称されるほど、栄養満点です。生のケール100gあたりに含まれるビタミンKは、1日に必要な摂取量の約3.7倍にもなります。また、キャベツと比較すると、β-カロテンは約60倍、ビタミンCは約2倍、ビタミンEは約24倍、カルシウムは約5倍も多く含まれています。その他、ビタミンA、B6、葉酸、マンガン、鉄分、マグネシウム、カリウム、リンなどのミネラル、ルテイン、メラトニン、食物繊維も豊富です。
ケールにはどんな種類があって、それぞれどんな特徴があるのですか?
ケールには様々な品種が存在します。代表的なものとして、葉が広く肉厚な「コラード系」、葉が縮れていてサラダにも向く「カーリーケール」、寒さに強く苦味が強い「シベリアンケール」、細長い葉で煮込み料理に最適なイタリアの「トスカーナケール(カーボロネロ)」などがあります。他にも、大きく育つ「ツリーケール」、茎が太くなる「マローステムケール」、たくさんの枝が出る「サウザンドヘッドケール」などがあり、用途に応じて栽培されています。
ケールを食べる上で気をつけるべきことはありますか?
はい、いくつか注意すべき点が存在します。ケールは特にビタミンKを豊富に含んでいるため、血液をサラサラにする薬(例えばワルファリン)を服用中の方は、摂取量に関して事前に医師や薬剤師に相談することが大切です。加えて、シュウ酸も含まれているため、過剰な摂取は尿路結石のリスクを高める可能性があるとされています。特に過去に尿路結石を患った経験がある方は、特に注意が必要です。妊娠中または授乳中の方については、大量に摂取した場合の影響に関する情報が十分ではないため、念のため摂取を控えることが望ましいとされています。
自宅でケールを育てることは可能ですか?
はい、ご自宅でケールを栽培することは比較的簡単です。ケールは暑さや寒さに強く、さまざまな種類の土壌で育てられますが、特に水はけが良く、有機物を豊富に含んだ砂壌土が最も適しています。肥料をたくさん必要とするため、十分な肥料を与えることが大切です。春から秋にかけて種をまくことができ、苗がある程度育ったら畑やプランターに植え替え、株の根元に肥料を与え、土寄せを定期的に行うことで、長期間にわたって収穫を楽しむことができます。ただし、アブラナ科の植物を同じ場所で続けて栽培すると生育が悪くなる連作障害を起こしやすいため、同じ場所での連作は避けるようにしてください。













