7月、蒸し暑い日が続きますが、日本の夏は風情ある和菓子で涼を感じてみませんか?見た目も涼やかな水ようかん、果実を閉じ込めたゼリー、抹茶の香りが心地よいお菓子など、日本の伝統が息づく和菓子は、暑さを忘れさせてくれるだけでなく、心まで潤してくれるでしょう。この記事では、7月を彩る、とっておきの涼やか和菓子をご紹介します。夏の贈り物にも最適な、日本の美意識が詰まった和菓子の世界へ、ご案内いたします。
体を温める食べ物と和菓子の関係
寒さが身に染みる季節や、普段から冷えやすい体質の方にとって、体を内側から温める食品は欠かせません。日本の伝統的な甘味である和菓子の中にも、体を温める効果が期待できる素材を用いたものが存在します。代表的なものとして、小豆が挙げられます。小豆は体を温める性質があると言われており、小豆をふんだんに使用したあんこを使った和菓子は、特に寒い時期に美味しくいただけます。
年中行事と和菓子の結びつき
日本の伝統的な年中行事と和菓子は、切っても切れない深い繋がりを持っています。それぞれの季節の行事には、その時期ならではの特別な和菓子が楽しまれてきました。これらの和菓子は、季節の移り変わりを目と舌で感じさせてくれ、古くから行事をより豊かなものにする役割を担ってきました。
年中行事 「夏の土用」
土用とは、日本の暦における雑節の一つで、立春、立夏、立秋、立冬の直前、それぞれ18日間を指し、一年間に4回巡ってきます。この期間中は、土を動かす作業(土いじり)を避けるという風習が古くから存在しました。特に夏の土用は重要視され、土用入りから土用明けまでの期間中の丑の日には、精のつく鰻を食べる習慣が広く知られています。これは、厳しい暑さを乗り越えるための栄養補給という側面があります。
和菓子 「あんころ餅 / 土用餅(どようもち)/「う」のつく御菓子」
夏の土用に食される和菓子として、最もポピュラーなのは、お餅を丁寧に餡で包んだあんころ餅で、別名、土用餅とも呼ばれています。小豆の鮮やかな赤色には、古来より魔除けの意味があるとされ、また、お餅には力持ちに通じる意味が込められています。土用入りの日に、その年の夏の無病息災を祈願して食べる習慣があります。また、「う」の音を含む食べ物を口にすると、夏バテしないという言い伝えがあり、「う」のつく和菓子を食べるのも良いでしょう。具体的には、ういろうや上品な甘さが特徴の浮島などがおすすめです。
7月の和菓子:涼を味わう京菓子の魅力
7月といえば祇園祭。古都、京都では見た目も涼やかな和菓子が親しまれます。夏の暑さを和らげるため、各店が趣向を凝らした和菓子が楽しめます。
鉾餅(ほこもち)【鍵甚良房(かぎじんよしふさ)】
祇園祭の鉾の装飾である“網隠し”をモチーフにした鉾餅は、7月上旬から店頭に並びます。香ばしい焼き皮に包まれた紅色の味噌餡が特徴で、口に含むと祇園囃子が聞こえてくるような、活気あふれる味わいです。お菓子を通して祇園祭の情緒を感じられます。
葛焼(くずやき)【緑菴(りょくあん)】
吉野葛に小豆餡を混ぜて蒸し焼きにした葛焼は、滋養豊富な葛を使った夏の定番茶菓子です。かつては、夏のスタミナ源として鰻の代わりに食されていたとも言われ、暑い夏を乗り切るための先人の知恵が息づいています。
水ぼたん【亀屋重久】
可憐な牡丹の花を模した水ぼたんは、ピンク色の餡を透明な葛で包んだ涼しげな和菓子です。その名の通り、牡丹の美しさに加え、「水」という言葉で清涼感を表現しています。冷やしていただくと、より一層美味しく味わえます。
涼音【御菓子司 聚洸(じゅこう)】
涼音は、京都の夏の夕暮れを思わせる創作和菓子です。口に含むと淡雪羹の優しい甘さが広がり、その上に重ねられた透明感あふれる吉野羹が清涼感を演出します。中には丹波大納言小豆が静かに佇み、上品な甘さを添えています。夏の暑さを忘れさせてくれる、見た目も味わいも涼やかな逸品です。
暁の空【長久堂 北山店】
暁の空は、夏の夜明けを表現した外郎菓子です。夜空から徐々に明るくなる空を、外郎の色合いで繊細に表現しました。口に含むと、外郎独特のもっちりとした食感とともに、爽やかな甘さが広がります。新しい一日への希望を感じさせる、美しい和菓子です。

夏の和菓子:涼を呼ぶ日本の伝統
夏には、水羊羹や葛切りなど、涼しさを感じさせる和菓子が数多く店頭に並びます。これらの和菓子は、見た目にも涼しげで、日本の夏の風情を感じさせてくれます。
水牡丹
水牡丹は、夏の定番和菓子として親しまれています。透明な葛の中に、美しい牡丹の花を模した餡を閉じ込めた、見た目も涼やかな一品です。口に含むと、つるりとした葛の食感と、上品な甘さの餡が絶妙に調和し、暑さを忘れさせてくれるでしょう。
水無月
水無月は、京都で親しまれている、夏を代表する和菓子です。ういろうの上に甘く煮た小豆を散らしたもので、三角形に切られているのが特徴です。暑気払いの意味も込められており、つるりとした食感が涼を感じさせます。
和菓子店:デパートの和菓子売り場
デパートの和菓子売り場には、全国各地の有名和菓子店が出店しており、様々な種類の和菓子を手軽に楽しむことができます。贈り物を選ぶのにも最適です。
おかし処 うばがもちや
滋賀県草津市に店を構える「おかし処 うばがもちや」は、1569年(永禄12年)に創業した長い歴史を持つ和菓子店です。草津宿にちなんだお菓子を数多く手がけており、中でも看板商品の「うばがもち」は、徳川家康や松尾芭蕉も食したと伝えられる由緒ある逸品です。
越中和菓子処 引網香月堂
富山県富山市にある「越中和菓子処 引網香月堂」は、1919年(大正8年)に創業した老舗和菓子店として知られています。卓越した技術を持つ和菓子職人が、選び抜かれた素材を使用し、熟練の技と豊かな発想で美しい和菓子を作り上げています。夏には、暑さ対策にもなる梅を使った「万葉の梅園」が特に人気を集めています。
御菓子処 松華堂
愛知県半田市に位置する「御菓子処 松華堂」は、江戸時代の終わり頃に創業した歴史ある和菓子店です。毎週内容が変わる季節の上生菓子は、その繊細な色使いとデザインで四季折々の風情を表現し、多くの人々を魅了しています。夏には、見た目も涼しげな葛菓子の「夏木立」がおすすめです。
餅文總本店
名古屋市にある「餅文總本店」は、1659年(万治2年)創業の名古屋ういろ発祥の店として知られています。かつて尾張藩主に献上されたという「献上外良」は、厳選された素材と伝統的な製法によって作られています。夏の新作「ラムネういろ」も注目を集めています。
和菓子の選び方と味わい方
和菓子選びでは、季節感や年中行事を意識すると、より趣深く楽しめます。原材料や製法に目を向けることで、和菓子の奥深さに触れられるでしょう。通常はお茶請けとして親しまれていますが、コーヒーや紅茶との組み合わせも意外な発見があります。あなたならではの楽しみ方を追求してみてください。
まとめ
和菓子は、日本の豊かな四季や伝統文化を映し出す、魅力あふれる食べ物です。季節の移ろいを感じながら、それぞれの和菓子に込められた意味や歴史を学ぶことで、より豊かな食の世界が広がります。多種多様な和菓子を味わい、日本の食文化の素晴らしさを改めて感じてみてください。
質問1 「土用餅」とはどのようなお菓子でしょうか?
土用餅は、土用期間中に食される和菓子で、多くの場合、あんころ餅を指します。小豆の赤色には厄除けの願いが込められ、餅には力が宿るとされています。夏の健康を祈って食される習慣があります。
質問2 京都の夏におすすめの和菓子はありますか?
京都の夏には、見た目も涼しげな鉾餅、葛焼き、水ぼたん、打ち水、京の朝といった和菓子が豊富です。これらの和菓子は、厳しい暑さを少しでも心地よく過ごせるように考えられています。
質問3 和菓子をより美味しく味わうには、どのような方法が良いでしょうか?
和菓子は、通常、お茶請けとして親しまれていますが、意外にもコーヒーや紅茶との組み合わせもおすすめです。さらに、季節感や年中行事を意識して和菓子を選んでみたり、使われている素材や製法に目を向けてみることで、和菓子の奥深さをより一層感じることができるでしょう。