イタリアのクリスマスを彩る伝統的な甘いパン、パネットーネ。そのふっくらとしたフォルムと、口に広がる芳醇な香りは、クリスマスの食卓に欠かせない存在です。近年、日本でも専門店が登場するなど、その人気は高まりつつあります。この記事では、数あるパネットーネの中から、おすすめの逸品を徹底比較。本場イタリアの伝統製法を守るものから、現代風にアレンジされた革新的な味わいのものまで、選び方のポイントと共にご紹介します。今年のクリスマスは、最高のパネットーネで特別なひとときを過ごしませんか?
パネットーネとは?イタリア伝統のクリスマス菓子
イタリアでクリスマスシーズンを迎えるにあたり、欠かせない存在がパネットーネです。国内には様々なクリスマス菓子が存在しますが、パネットーネはその中でも特別な地位を確立しています。近年では、東京都内にも専門店が登場するなど、日本国内でも徐々に人気が高まっています。また、その日持ちの良さも、近年の状況下で注目される要因の一つと言えるでしょう。

パネットーネの誕生秘話:ミラノから広がる物語
パネットーネの起源については、いくつかの説が存在します。その中でも有力なのは、15世紀頃、ミラノを治めていたスフォルツァ家のクリスマスディナーのために用意されていたケーキが誤って焦げてしまった際、見習い料理人であったトーニが、残った材料に砂糖漬けのフルーツやレーズンを加えて焼き上げたところ、非常に美味しかったため、「パン・デ・トーニ(トーニのパン)」と呼ばれるようになり、それが「パネットーネ」へと変化したというものです。他にも、貧しい父親が娘の恋人のために奮発して焼いたケーキが起源であるという説も存在します。イタリアでは、料理や菓子の誕生にまつわる複数の物語が存在することは珍しくありません。当時、小麦粉は貴重品であり、ケーキは上流階級の人々や特別な日にしか口にすることができなかったため、これらの説はどちらも歴史的背景を考慮すると十分にあり得る話と言えるでしょう。20世紀に入ると、ミラノのパン職人アンジェロ・モッタが、紙製の型を使用することで、ドーム型のパネットーネを大量生産することに成功し、広く普及させました。
パネットーネの材料:パネットーネ種とは?
パネットーネを作る上で必要不可欠なのが、北イタリアで発見された「リエヴィト・マードレ」と呼ばれる、酵母と乳酸菌が共生する特別な酵母菌、通称「パネットーネ種」です。イタリアにおけるパネットーネは、法律によってその性質が定められているため、アルティジャナーレ(職人による手作り)でもインダストリアルでも、内容はほぼ同じです。アルティジャナーレでは、良質なリエヴィト・マードレ(自然発酵種)を使うことによって、その乳酸菌が大量のポリサッカライドを生成し、生地に微細なゼラチン質をもたらす。...インタストリアルのパネットーネは、アルティジャナーレのそれよりもさらに長期間の保存が可能なものが多いのですが、それを可能にしているのは、リエヴィト・マードレに加え、一般的に乳化剤を使用しているからです。(出典: パネットーネ発酵事情(Panettone Society), URL: https://panettonesociety.org/lievitazione_italia/, 2020-12-15)
パネットーネの製法:手間暇かけた発酵と熟成
パネットーネ作りには、非常に多くの時間と手間がかかります。パネットーネ種に小麦粉などの材料を加え、数十時間かけてじっくりと発酵させた後、丁寧に焼き上げます。焼き上がった生地は、その美しい形状を保つために逆さまに吊るし、1日から2日かけてゆっくりと冷まします。発酵と生地を休ませる工程を何度も繰り返すため、一般的なパンに比べて格段に時間がかかります。天然酵母であるパネットーネ種は、毎日欠かさず徹底的に管理し、活性化させ続ける必要があります。水分量が少なく、特殊な乳酸菌の働きによって長期保存が可能なパネットーネは、まさに先人の知恵が生み出した発酵食品と言えるでしょう。2005年7月22日に制定され(2017年5月16日に改定)、2006年1月29日に施行された省令において、パネットーネは「サワー種を用いた自然発酵による柔らかな生地で、丸い形状、表面には特徴的な切り込みがあり、中は縦長の気泡が見られる空気を含んだテクスチャーで、サワー種発酵による典型的な香りがする焼き菓子」と定義され、原料やその最低使用量も規定されています。(出典: パネットーネ大学その1 パネットーネのルール | Panettone Society, URL: https://panettonesociety.org/2021/01/20/universitapanettone01_disciplinare/, 2021-01-20)
本場イタリアのクリスマスケーキ:パネットーネの選び方
クリスマスを彩るイタリアの伝統的なケーキ、パネットーネ。選ぶ際は、昔ながらの製法を重んじたものか、斬新なアレンジを加えたものか、お好みに合わせてセレクトしましょう。素材や製法にこだわったパネットーネは、その風味と食感が別格です。近年では、様々なフレーバーが登場しているので、色々な種類を試してみるのもおすすめです。

2024-2025年:パネットーネ徹底比較レビュー
毎年数々のパネットーネを味わっている筆者が、2024年冬に味わったパネットーネを徹底レビューします。
イータリー(EATALY):初のオリジナルパネットーネ
今年初めてEATALYから登場したオリジナルブランドのパネットーネ。高級感あふれる赤い箱が、クリスマス気分を盛り上げます。原材料を厳選し、時間をかけて丁寧に発酵させた生地に、高品質なレーズンとマダガスカル産ブルボンバニラを使用。保存料、香料、植物性油脂は一切使用せず、伝統製法にのっとり職人の手によって作られています。
評価:3.5 ★★★☆
EATALY初のオリジナル商品という事で期待が高かったものの、正直なところ、記憶に残るほどのインパクトはありませんでした。ナイフを入れた際の口どけはよいですが、生地はむっちりとしており、期待値を超えるものではありませんでした。おいしいパネットーネの特徴である大きな気泡も、あまり見られませんでした。具材はジューシーなレーズンとオレンジピールのみで、カットする場所によっては、量が少なく感じるかもしれません。
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味:classico(クラシコ)
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大きさ:1kg
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値段:税込12,800円
ボニファンティ(BONIFANTI):安定した品質
長年おすすめしている「BONIFANTI」は、価格帯がお手頃ながら、しっとりとした安定感のある品質が魅力です。
評価:4 ★★★★
カットした時、断面がややパサついているように見えたので少し心配しましたが、口に運ぶと、みずみずしく、もっちり、むっちりとした食感でとても美味しい!サワーチェリーの量はそれほど多くありませんが、甘酸っぱく、洋酒のような芳醇な香りが楽しめます。期待を裏切らない、安定のおいしさです。
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味:amarena(アマレーナ)
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大きさ:750g
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値段:税込7,280円
ジャンベルラーノ(GIAMBERLANO):魅惑的なしっとり感
北イタリアの小さな村にひっそりと佇むお菓子屋さん、Giamberlano。私が数年前に初めてここのパネットーネを味わった時、その並外れた潤いを含んだ生地と、ふっくらとジューシーなレーズンに心奪われました。
評価:4.5 ★★★★☆
ナイフを入れる瞬間に、生地の潤いを感じます。口に運ぶと、期待を裏切らない、ふんわりと柔らかくもっちりとした食感。大きな気泡は控えめながらも、生地は縦方向に美しく裂け、その質の高さを物語っています。他のパネットーネと比較して、ドライフルーツが全体的に大ぶりなのも特徴。定番のレーズン、オレンジ、レモンに加え、杏が使用されているのもGiamberlanoならではのこだわりです。
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味:classico
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大きさ:1kg
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値段:税込10,260円
レナート・ボスコ(Renato Bosco):極上のしっとり体験
ヴェローナ近郊に拠点を置くレナート・ボスコ。昨年初めてその味を知った時、その圧倒的な水分を保った生地と、舌を唸らせる美味しさに衝撃を受けました。イタリアの権威あるグルメ専門メディア「ガンベロ・ロッソ」主催のパネットーネ・コンテスト職人手作り部門で、幾度となく頂点に輝く、まさに最高峰レベルのパネットーネです。
評価:4.5 ★★★★☆
ナイフを入れた瞬間の、吸い付くような切れ味が、潤いを保った生地の質感を物語ります。パサつきがちな底の部分でさえ、驚くほどみずみずしい。気泡は少なめで、やや詰まった印象を受けますが、さすがはレナート・ボスコ。その潤いは、想像を遥かに超えるものでした。鮮やかな黄色味が印象的で、縦方向への裂け具合も申し分ありません。ただ、少し残念だったのは、具材の少なさ。Giamberlanoと比較すると、レーズンもやや小ぶりです。全体的に甘さ控えめに感じられたのは、フルーツの量が影響しているのかもしれません。
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味:classico
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大きさ:1kg
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値段:税込8,900円
パニフィーチョ・ポンピリオ(Panificio Pompilio):新進気鋭の若手職人
今年、初めて注文したパニフィーチョ・ポンピリオ(Panificio Pompilio)。カンパーニア州でパン屋を営むPompilio Giardino氏が手がけるパネットーネです。優れたパネットーネやパンドーロを選ぶコンテストにおいて、2021年に並みいるベテラン勢を抑え、彗星のごとく優勝を飾った、まさに注目の若手職人です。
評価:4 ★★★★
愛らしい柄のパッケージに包まれ、横長のどっしりとしたフォルムが特徴的です。見た目はややパサついた印象を受けましたが、一口食べると、意外にもしっとりとした食感。気泡の入り具合は、場所によって異なります。縦方向への裂け具合も、やや控えめです。オレンジピールに加え、オレンジペーストも使用されているのは珍しい試み。Panificio Pompilioのパネットーネ生地は、非常に独特な食感で、むっちりとした中に、ほんのりとした粘り気と弾力があり、まさに初めての感覚です。
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味:classico
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大きさ:1kg
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値段:税込12,500円
パネットーネの食べ方:伝統と革新が生み出す味わい
パネットーネは、そのままスライスして味わうのが一般的ですが、その美味しさを最大限に引き出す、様々な楽しみ方が存在します。伝統的な食べ方としては、マルサラ酒を贅沢に使用した「ザヴァイオーネ」クリームを添えるのがおすすめです。ザヴァイオーネは、卵黄、グラニュー糖、マルサラ酒を混ぜ合わせ、湯煎にかけるだけで完成するシンプルなクリームで、パネットーネとの相性は格別です。その他、ビスコッティやサヴォイアルディビスケット(フィンガービスケット)との組み合わせも絶妙です。また、ホイップクリームと混ぜ合わせ、アレンジを加えるのも面白いでしょう。フレッシュなフルーツを添えれば、見た目も華やかになります。
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イタリアのクリスマスケーキ 比較:自分にぴったりのケーキを見つける
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結び
パネットーネは、その長い歴史と受け継がれてきた伝統、そして職人たちの情熱が凝縮された、イタリアを代表するクリスマスのお菓子です。ぜひ、あなたのお気に入りのパネットーネを見つけて、その奥深い味わいを心ゆくまでお楽しみください。そして、パネットーネとともに、温かく幸せなクリスマスのひとときをお過ごしください。
よくある質問1:パネットーネはどこで手に入りますか?
回答1:パネットーネは、百貨店や高級スーパーマーケット、輸入食材を扱うお店、またはインターネット通販などで見つけることができます。近年では、パネットーネに特化した専門店も現れてきています。
よくある質問2:パネットーネの保管方法はどうすれば良いですか?
回答2:パネットーネは、基本的に常温での保存が可能です。ただし、直射日光が当たる場所や、高温多湿になる場所は避けてください。開封後は、なるべく早くお召し上がりいただくことをおすすめします。
よくある質問3:パネットーネはどのような味がするのですか?
回答3:パネットーネは、良質なバターと卵をふんだんに使用した、柔らかく甘いパン生地が特徴です。その生地には、ドライフルーツやオレンジピールなどの香り高い素材が混ぜ込まれています。口に含むと、芳醇な風味と、しっとりとした独特の食感を楽しむことができます。