「タンパク質」は、私たちの体を作る上で欠かせない栄養素。筋肉や臓器、皮膚、髪の毛など、体のあらゆる組織を構成する重要な栄養素です。不足すると体力低下や免疫力低下につながることも。しかし、タンパク質と一口に言っても、その効果や種類、適切な摂取方法を知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では、タンパク質の効果を最大限に引き出すための知識を、わかりやすく徹底解説します。理想的な体作りの第一歩を踏み出しましょう!
動物性タンパク質と植物性タンパク質:それぞれの特性と摂取バランス
タンパク質は大きく分けて、動物性食品に由来する「動物性タンパク質」と、植物性食品に含まれる「植物性タンパク質」の2種類が存在します。肉、魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質は、アミノ酸スコアが100に近いものがほとんどです。植物性タンパク質と比較して、100gあたりの含有量が多く、摂取しやすいという利点がありますが、同時に脂質を多く含む傾向があります。特に肉類に含まれる飽和脂肪酸は、コレステロール値の上昇や腸内環境の悪化を招くリスクがあります。一方、植物性タンパク質は、大豆をはじめ、豆腐、豆乳、納豆といった大豆製品に豊富です。その他、小麦、米、そばなどの穀物や、大豆以外の豆類にも含まれています。動物性タンパク質に比べて脂質が少ないものが多く、カロリーコントロールがしやすいだけでなく、食物繊維も一緒に摂取できるというメリットがあります。しかし、アミノ酸スコアが低い傾向にあるため、植物性タンパク質だけで必要な量を十分に摂取するのは難しい場合があります。完全に菜食主義の場合、ビタミンB12が不足し、悪性貧血を引き起こすリスクも高まります。これらの違いを踏まえると、動物性タンパク質と植物性タンパク質の摂取割合を考慮する必要があるのでしょうか?アミノ酸スコアの高い食品から必要な量を十分に摂取できていれば、どちらをどれだけ摂取しなければならないという決まりはありません。しかし、それぞれのメリットとデメリットを考慮することが重要です。また、タンパク質以外の栄養素も考慮すると、偏らずに様々な食品から摂取することが理想的です。
1日あたりのタンパク質推奨摂取量とエネルギー産生栄養バランス
「厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、1日あたりのタンパク質推奨量は、18歳から64歳の男性で65g、18歳以上の女性で50gとされています。また、三大栄養素のエネルギー摂取比率を示すエネルギー産生栄養バランスでは、タンパク質は13~20%、炭水化物は50~65%、脂質は20~30%が適切とされています。例えば、1日に2000kcalを摂取する場合、タンパク質は約75g(※15%で計算)となります。日常的に運動をする人や50代以降の人は、タンパク質の消費率が高まるか、消化吸収率が低下するため、若い世代の平均よりも多くのタンパク質を摂取する必要があります。1食あたりの摂取量としては、20gを目安に摂取することが理想的です。
タンパク質不足が招くリスク:見過ごされがちな体のサイン
ダイエットをしている人、1日の食事が1~2回になりがちな人、朝食がパンとコーヒーだけといった偏った食生活をしている人は、タンパク質が不足しやすいので注意が必要です。また、タンパク質の必要摂取量は、体格や運動量によって異なります。筋肉量が多い人や運動量の多い人は、比較的多く摂取することが望ましいでしょう。では、タンパク質が不足すると、どのような影響があるのでしょうか?私たちの体は常に新しい細胞を作り続けています。その材料であるタンパク質が不足すると、体は筋肉を分解して利用するため、筋肉量が減少し、代謝が低下して太りやすくなる可能性があります。また、髪や肌、爪が荒れたり、体調を崩しやすくなったりする可能性も考えられます。
タンパク質を効率的に摂取するための「小分け摂取」と「手ばかり法」、そして良質な選び方
タンパク質は一度に吸収できる量に限りがあるため、3食での分割摂取が基本です。タンパク質を消化・吸収できる量には上限があり、「食べだめ」はできません。そのため、朝食、昼食、夕食の3食でバランス良く摂取する必要があります。3食すべてに"主菜"を取り入れるようにすれば、必要な量を満たすことは難しくありません。量を把握するために、"手ばかり法(※)"を目安にして、手のひら1枚分の肉や魚を食べるようにしましょう。また、忙しい朝には肉や魚を焼くのが面倒な場合もあるので、手軽にタンパク質を摂取できる卵、納豆、豆乳、ヨーグルトなどを活用するのもおすすめです。
※手ばかり法:自分の手をスケールとして使い、食べる食品の量を推定する方法。手のサイズは骨格に比例するため、その人に適した量を把握できると考えられています。
良質なタンパク質の明確な定義はありませんが、アミノ酸スコアが高く、過剰摂取を避けたい飽和脂肪酸などの栄養素が少ないものが良いでしょう。例えば、魚介類や、脂質の少ない鶏むね肉、ささみなどが挙げられます。しかし、ささみだけを食べていればタンパク質の摂取が完璧というわけではありません。他の栄養素が不足する可能性もあるため、結局は様々な食品をバランス良く食べることが大切です。
高タンパク質な食品例と、多様な摂取による利点
タンパク質源となる食品は、往々にして脂質も一緒に含んでいることが多いです。加えて、メインのおかずは調理の過程で油分を使用することも少なくないため、タンパク質を摂取する食材の種類や部位、そして使用する油の量にも配慮することが大切だと述べています。手軽に摂取できる食品として挙げられる卵は、Mサイズ1個(可食部50g)あたり約6.1gのタンパク質を摂取できる一方で、約5.1gの脂質も含まれています。また、納豆1パック50gあたりでは、約8.3gのタンパク質に対し、約5.0gの脂質が含まれており、決して少ない量ではありません。そのため、過剰摂取には注意が必要です。高タンパク質でありながら低脂質な食品としては、皮なしの鶏むね肉や、油不使用のツナ缶、マグロの赤身などが挙げられます。さらに、乳タンパク質と大豆タンパク質を同時に摂取することで、体内のアミノ酸濃度を一定に保つことができるという研究結果もありますが、日常生活においては、そこまで厳密に考える必要はないでしょう。ただし、多様な食材から栄養を摂取するという点では推奨できますので、Wタンパク質として取り入れるのも良いかもしれません。
朝食におけるタンパク質摂取の重要性と恩恵
タンパク質の重要性は理解しているものの、朝食で十分な量を摂取できていないと感じている方もいるのではないでしょうか。朝にしっかりとタンパク質を摂取することで、その日一日を健康的に過ごせるだけでなく、様々な良い影響も期待できます。朝食で十分な量を摂取できていない方も多いのではないでしょうか。実は、朝のタンパク質摂取には、一日を健康的に過ごすための様々なメリットがあります。ぜひ参考にしてみてください。
朝食はタンパク質が不足しがち
人が一度に消化・吸収できるタンパク質の量には上限があり、「まとめて摂り置き」のようなことはできません。そのため、朝・昼・晩の三食でバランス良く摂取することが重要です。しかしながら、現状では朝食で十分なタンパク質を摂取できていない人が多く見受けられます。ある調査において、一回の食事で20g以上のタンパク質を摂取できているかどうかを調べたところ、「摂取できていない」と回答した人の割合が、三食の中で朝食が最も高いという結果が出ています。したがって、一晩を通してタンパク質の補給が途絶えている朝こそ、意識的にタンパク質を摂取する必要があるのです。
朝にタンパク質を補給する5つのメリット
朝食で十分にタンパク質を摂取すると、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか?ここでは、5つのメリットについて詳しく解説していきます。
体内時計を調整する
私たちの体は、睡眠、体温、ホルモンバランスなど、様々な生理機能を体内時計によってコントロールしています。特に、タンパク質を構成するアミノ酸の一種である「システイン」は、体内時計の調整に重要な役割を果たすと考えられています。朝食で十分なタンパク質を摂取することで、生活リズムを整える効果が期待できます。健康的な一日を送るサポートとなるでしょう。体内時計を整えるためには、食事の内容だけでなく、タイミングも重要です。起床後1時間以内にタンパク質を摂取することを推奨します。
筋肉量の維持に貢献する
筋肉は常に合成と分解を繰り返していますが、筋肉の材料となるタンパク質が不足すると、筋肉の合成が滞り、分解が進んでしまいます。特に睡眠中は、タンパク質の供給が途絶えるため、朝食でしっかりとタンパク質を摂取し、筋肉の分解を抑制することが大切です。タンパク質が不足している状態では、朝食で摂取するタンパク質の吸収率が向上すると言われています。十分なタンパク質を摂取して筋肉の合成を促進し、筋肉量の低下を防ぎましょう。
ダイエットをサポートする
タンパク質は、食欲の抑制や代謝の向上など、ダイエットに役立つ効果が期待できます。例えば、タンパク質が消化される際に分泌されるコレシストキニンやGLP1といったホルモンは、食欲を抑制する作用があります。さらに、タンパク質は食事をエネルギーに変換する働きを助け、脂肪燃焼や基礎代謝の維持にも重要な役割を果たします。朝食にタンパク質を積極的に取り入れることで、一日の摂取カロリーを抑えながら、効率よく痩せやすい体質へと導くことができます。
睡眠の質を高める
朝にタンパク質を摂取することは、質の高い睡眠にもつながります。タンパク質を構成するアミノ酸の一つである「トリプトファン」は、体内で生成できない必須アミノ酸です。朝にタンパク質を摂取することで、トリプトファンは日中に「セロトニン」というホルモンに変換され、精神安定作用をもたらします。そして夜には、睡眠を促すホルモンである「メラトニン」へと変化し、より深い眠りへと導きます。トリプトファンは食事から摂取する必要があるため、朝食でタンパク質を意識して摂取することが重要です。
1日を充実させるために
意欲を高める「ドーパミン」や「セロトニン」といった神経伝達物質の材料は、タンパク質を構成するアミノ酸です。ドーパミンは、集中力を向上させ、幸福感や前向きな気持ちを脳内で生み出します。そしてセロトニンは、精神を安定させ、ストレスへの抵抗力を高める作用があります。朝に良質なタンパク質を十分に補給することで、ドーパミンやセロトニンの分泌が促進され、日中の集中力アップやストレス軽減といった効果が期待できるでしょう。
朝のタンパク質摂取を効果的に行うためのヒント
朝食で20gのタンパク質を摂取するためには、具体的にどのような食品をどれくらい摂取すれば良いのでしょうか?普段よく食べる朝食メニューに含まれるタンパク質の量を把握しておくことは非常に大切です。ぜひ、以下の情報を参考に朝食メニューを検討してみてください。
炭水化物・脂質もバランス良く摂取
タンパク質と炭水化物を一緒に摂取することで、体内でタンパク質が分解されるのを抑えることができます。体がエネルギー不足の状態にあると、筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとします。炭水化物はエネルギー源として利用されるため、炭水化物を摂取することで筋肉の分解を防ぐことに繋がるのです。また、体内時計を整え、規則正しい生活リズムを保つためには、タンパク質と炭水化物・脂質をバランス良く摂取することが重要です。
胃腸に優しい食材を選ぶ
朝はエネルギーが不足しがちなので、消化しやすく、素早くエネルギーに変換される食材を選ぶことを推奨します。一般的に、食べ物の消化吸収には約12時間かかると言われています。そのため、朝食を摂るタイミングによっては、前日の夕食がまだ消化吸収しきれていない状態であることも考えられます。胃腸に過度な負担をかけないためにも、脂質の少ない、消化の良い食材を選ぶように心がけましょう。
朝食に魚でタンパク質をチャージ
魚に含まれるタンパク質は、アミノ酸スコアが非常に高く、体への吸収効率が良いのが特徴です。アミノ酸スコアとは、タンパク質の品質を評価する指標であり、必須アミノ酸がバランス良く含まれているかを示します。魚は、肉や卵と比較して動物性脂肪が少なく、消化しやすいという利点もあります。さらに、マグロや鮭といった魚には、タンパク質の分解と吸収を促進するビタミンB6も豊富です。加えて、魚の油には体内時計を調整する効果も期待できるため、朝食のタンパク源として最適と言えるでしょう。
忙しい朝でも簡単!タンパク質補給メニュー
時間がない朝でも、手軽にタンパク質を摂取できるメニューはたくさんあります。例えば、ゆで卵、納豆、ヨーグルト、豆乳、サラダチキン、油を切ったツナ缶などが挙げられます。これらの食品は調理の手間が少なく、タンパク質を効率的に摂取できるため、忙しい朝にぴったりです。
まとめ
タンパク質は体を作る上で欠かせない栄養素であり、動物性と植物性のバランスを考慮した摂取が重要です。一度に大量に摂取するのではなく、3食に分けて摂取することで効率的に利用できます。特に朝食はタンパク質が不足しがちなため、意識して摂取することで、体内時計の調整、筋肉の分解抑制、ダイエット効果など、様々なメリットが期待できます。バランスの取れた食事と適切なタンパク質摂取で、健康的な体づくりを目指しましょう。※本記事は情報提供を目的としており、特定の効果を保証するものではありません。持病のある方や健康に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
たんぱく質の摂りすぎはダメ?
たんぱく質もエネルギー源となるため、過剰に摂取すると消費しきれなかった分は体脂肪として蓄積される可能性があります。また、過剰な摂取が続くと、たんぱく質の代謝に関わる腎臓や肝臓に負担がかかることも考えられます。ただし、極端な食事制限やプロテインのみに頼るような偏った食生活でなければ、過度に心配する必要はないでしょう。トレーニングをしていない人や、食事から十分な量のたんぱく質を摂取できている人が、さらにプロテインを追加で摂取すると、たんぱく質の摂りすぎになる可能性があります。
手軽にたんぱく質を摂取するなら?
手軽にたんぱく質を摂取できる食品としては、高たんぱくヨーグルト、サラダチキン、ノンオイルのツナ缶などが挙げられます。これらは低脂質でありながら、効率的にたんぱく質を摂取できます。その他、お刺身や納豆、ゆで卵なども手軽でおすすめです。また、豆乳は牛乳に比べてたんぱく質が多く、脂質は少なめです。牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる乳糖不耐症の方にとって、豆乳は良い代替品となるでしょう。
たんぱく質を摂っていれば、筋肉の量も増える?
筋肉量を増やすためには、筋力トレーニングと適切な量のたんぱく質摂取が不可欠です。筋トレによって筋肉が刺激を受けると、その修復のためにたんぱく質が利用され、筋肉量が増加します。しかし、たんぱく質を多く摂取するだけでは筋肉量は増えません。過剰なエネルギー摂取は体脂肪の増加につながります。特に、朝食でたんぱく質を摂取することは、睡眠中に途絶えていた筋肉への栄養供給を再開し、筋肉の分解を防ぎ、筋肉合成を促進する上で非常に効果的です。













