秋の味覚の代表格、サツマイモ。ホクホクとした甘さは、焼き芋、天ぷら、お菓子など、様々な料理で楽しめますよね。実はサツマイモは、家庭菜園でも比較的簡単に育てられる野菜の一つです。この記事では、初心者の方でも安心してサツマイモ栽培を始められるよう、苗の選び方から植え付け、日々の管理、収穫までを徹底解説します。甘くて美味しいサツマイモを、自分の手で育ててみませんか?
基本情報
サツマイモは、暑さや乾燥に強く、痩せた土地でも比較的容易に育てられる丈夫な野菜です。ただし、肥料が多いと葉ばかり茂って芋が大きくならないため、肥料は控えめに、蔓が伸びすぎないようにするのが上手に育てるポイントです。収穫後、貯蔵することで甘みが増すため、長く楽しめるのも魅力の一つです。
栽培カレンダー
サツマイモの栽培スケジュールは、一般的な地域を基準にすると、5月中旬から下旬に苗を植え付け、10月頃に収穫時期を迎えます。ただし、地域やその年の気候によって、苗の入手時期や植え付けに適した時期は多少前後します。近年は、異常気象の影響で、従来の栽培時期が適さない場合もあるため、状況に応じて植え付け時期を調整したり、品種選びを工夫したりする柔軟な対応が大切です。特に、サツマイモは寒さに弱いので、必ず霜が降りる前に収穫を終えるようにしましょう。
栄養の豊富さ
サツマイモには、ビタミンC、食物繊維、カリウム、ビタミンB群といった栄養素が豊富に含まれています。さらに、サツマイモ特有の成分であるヤラピンは、整腸作用があると言われています。これらの栄養を効果的に摂取するためには、皮ごと食べるのがおすすめです。
品種による違いと選び方
サツマイモは、皮の色や果肉の色、味わい、用途など、多種多様な品種が存在します。食感も「ホクホク系」や「ねっとり系」など様々ですので、ご自身の好みや、収穫後の利用方法に合わせて品種を選ぶのがおすすめです。豊富な選択肢の中から、自分にぴったりの品種を見つけることで、家庭菜園がさらに楽しくなるでしょう。サツマイモには本当にたくさんの品種があり、それぞれに食感や色合いといった個性があります。例えば、人気の品種である「紅はるか」と「紅あずま」。どちらも果肉は黄色ですが、紅はるかはしっとりとした食感が特徴で、紅あずまはホクホクとした食感を楽しめます。「パープルスイートロード」や「アヤムラサキ」は、鮮やかな紫色の果肉を持つ品種です。パープルスイートロードは、紫芋の中でも甘みが強く、ホクホクとした食感が楽しめます。一方、アヤムラサキは、その美しい色を活かして加工品に使われることが多く、甘みは控えめです。サツマイモを栽培する際は、それぞれの品種が持つ個性に注目してみると、より深くサツマイモ栽培を楽しめるでしょう。
さまざまな活用方法
サツマイモは、その用途の広さも魅力です。料理やお菓子作りの材料として使われるのはもちろんのこと、でんぷんを抽出してジュースなどの甘味料として利用されることもあります。また、焼酎やビールといったお酒の原料としても活用されています。ただし、酒造に関しては法律による規制が厳しく、サツマイモを使ったお酒を製造できるのは、許可を得た一部の企業に限られています。家庭菜園で収穫したサツマイモは、焼き芋や天ぷら、スイートポテトなどにして、美味しくいただきましょう。
サツマイモの栽培方法:土作りから植え付けまで
サツマイモ栽培は、土壌の準備から始まり、苗の用意、植え付け、日々の管理、そして収穫という流れで進んでいきます。それぞれの段階で適切な作業を行うことが、美味しいサツマイモを収穫するための重要なポイントとなります。
土作り
植え付けを行う前に、しっかりと土作りを済ませておくことが大切です。サツマイモは、日当たりの良い場所を好み、水はけの良い、乾燥気味の土壌が適しています。肥沃な土地では、つるばかりが茂って芋が大きくならない「つるぼけ」という現象が起こりやすいため、比較的痩せた土地の方が適しています。以前に他の野菜を栽培していた畑で、肥料成分が残っている場合は、肥料を加えずに植え付けるのが良いでしょう。初めて家庭菜園に挑戦する場合は、堆肥や緩効性肥料を混ぜて耕しておくと良いでしょう。野菜が育ちやすいように土壌酸度(pH)を調整することも重要で、サツマイモ栽培に適したpHの目安は5.5〜6.0です。石灰を施して調整しましょう。ふかふかの土にするために堆肥を混ぜて耕しますが、未熟な有機物が残っていると、コガネムシの幼虫が発生して芋を食害したり、ネコブセンチュウが増殖して芋の表面を汚したりする原因となるため、土作りの際には、未熟な堆肥を使用しないように注意が必要です。サツマイモの組織内には、空気中の窒素を固定する微生物(アゾスピリラム)が共生しており、自ら栄養を作り出す能力を持っています。また、肥料が多すぎると、つるばかりが伸びて芋の生育が悪くなる「つるぼけ」の原因となるため、肥料は控えめにすることが大切です。基本的に追肥は行わず、必要な肥料の全量を元肥として施します。以前に野菜を栽培していた畑であれば、ほとんど肥料を与えなくても栽培できる場合もあります。肥料を使用する場合は、芋の肥大に重要なカリウムを多く含み、窒素・リン酸がバランス良く配合された、サツマイモ専用の肥料がおすすめです。排水性と通気性を良くするために、畝を立てることも重要です。水はけと通気性を良くするために高畝にし、畝の間に水が溜まらないように排水対策も行い、高さ30cm程度の畝を立てておきましょう。畝を立て、表面を平らに整えたら、マルチングをすると効果的です。畑で作る場合は、マルチを使用することで、生育初期の地温を確保し、芋の肥大を促進したり、食味を向上させたりする効果が期待できます。また、雑草の抑制や乾燥防止にもつながり、収穫量のアップにも貢献します。さらに、収穫時のつる剥がし作業が楽になるというメリットもあります。マルチは、定植後の発根・活着を促進する効果も期待できます。プランターで栽培する場合も同様に、水はけの良い土を使用することが重要です。市販されている野菜用の培養土を利用するのがおすすめです。土作りのより詳しい方法については、専門の記事などを参考にすることをおすすめします。
苗の準備と選び方
サツマイモ栽培では、一般的に「さし苗」と呼ばれる、種芋から伸びたツルを切り取った苗を使用します。植え付け時期が近づくと、園芸店やホームセンターなどで、10本程度を束ねた状態で販売されるのが一般的です。また、ウイルスフリーの「メリクロン苗」と呼ばれるポット苗を購入し、少し大きめの鉢に植え替えて育てる方法もあります。本葉が7~8枚になったら、中心の葉を摘み取ることで、節から新しいツルを出させます。8節以上伸びたら切り取って植え付けます(1ポットから7~8本のツルを採取可能)。苗を選ぶ際は、茎が太く、節の間隔が詰まっており、葉の色が濃く肉厚なものがおすすめです。長さは30cm程度で、葉が5~6枚、節が豊富についていると、生育が順調に進み、収穫量も期待できます。購入した苗の葉がしおれている場合は、植え付け前に水に浸けて、水分を補給させましょう。すぐに植え付けられない場合は、根元を湿らせた新聞紙で包み、風通しの良い日陰で保管します。水に挿した状態で日陰に置いておけば、1週間程度は保管可能です。それ以上保管する場合は、一時的にプランターなどに仮植えしておくと、苗の品質を維持できます。
挿し苗づくり
挿し苗は購入するだけでなく、自宅で育てることも可能です。種芋、培養土、プランターを用意し、植え付け予定日の約1ヶ月前から準備を始めましょう。挿し苗を作る際は、種芋を48℃程度のぬるま湯に40分ほど浸けておくと、発芽を促進できます。その後、種芋をプランターに植え、日当たりの良い場所で水やりをしながら育てます。つるが伸びて葉が7~8枚になったら、挿し苗として使用できます。下の方についている葉を2枚ほど残して切り取り、日陰で3~4日乾燥させましょう。根が少し生えてきたら植え付け可能です。品種や種芋の大きさによって異なりますが、1つの種芋から約20本の苗を採取できます。
植え付けのタイミングと方法
サツマイモは、節から発生する根が肥大して芋になります。芋がつきやすいように、苗の切り口に近い2~3節を土中に埋め、残りの葉は必ず地上に出して植え付けます。節を土に埋めないと、水分や養分を吸収する細い「吸収根」ばかりが発達し、芋になる太い「不定根」が十分に育たず、芋ができない原因となります。サツマイモの根には、苗の切り口近くから出る細い根(吸収根)と、葉柄の付け根から出る太い根(不定根)の2種類があり、私たちが食べる芋は、この不定根が肥大したものです。植え付け時期は、霜の心配がなくなり、平均気温が18℃以上、地温が15℃以上になった頃(5月上旬~6月下旬)が目安です。早ければ3~5日で根付きます。根付くためには土壌の水分が必要なので、畝が乾燥している場合は、植え付け後にたっぷりと水を与えましょう。また、植え付け直後の強い日差しから苗を守るために、新聞紙などで一時的に覆うと、根付きが促進されます。ビニールマルチを使用すると地温を保ち、根張りが良くなります。植え付けの際は、先端にある生長点を埋めないように注意してください。土を被せてしまうと芽が伸びず、成長が阻害されます。サツマイモには様々な植え方があり、芋の付き方も異なるため、目的に合った方法を試してみるのがおすすめです。
斜め植え・垂直植え
「斜め植え」は、初心者にもおすすめの、比較的失敗の少ない植え方です。畝に対して斜めに苗を植え付けるため、短いツルでも植え付けが可能です。水平植えや船底植えに比べると、芋の数は少なく、細長い形になる傾向がありますが、根付きやすいのがメリットです。一方、「垂直植え」は、地面に対して垂直に苗を挿す方法で、根が縦方向に伸びるため、芋は短く丸い形に育ちます。芋の数は少なくなりますが、一つ一つが大きく育つのが魅力で、植え付け作業も簡単です。これらの植え方は、地面に苗を突き刺すように植え付けるため、マルチ栽培との相性が良く、手軽に作業できます。具体的には、マルチの上から棒を挿して植え穴を開け、その穴に苗を差し込み、苗の周りに土をかけて軽く押さえます。大規模栽培や苗の数が多い場合は、補助器具を使用することで、立ったまま素早く植え付けられ、作業負担を軽減できます。
水平植え・舟底植え
サツマイモ栽培でよく用いられるのが「水平植え」です。これは、苗を地面に対して水平に寝かせるように植える方法で、深さ5~10cm程度の溝に苗を丁寧に配置します。水平植えのメリットは、イモの数が増えやすく、サイズも均一になりやすいことです。また、比較的浅植えになるため、収穫時の負担を軽減できます。「改良水平植え」という、水平植えよりもやや深めに植える方法もあります。ただし、水平植えは乾燥しやすく、寒さに弱いという点に留意が必要です。一方、「舟底植え」は、深さ10cmほどの楕円形の穴を掘り、苗の中央部を少しへこませ、両端をわずかに持ち上げるように、船底のような形状で苗を植え付ける方法です。舟底植えは、水平植えに比べて寒さや乾燥への耐性が高まりますが、植え付け作業にやや手間がかかります。これらの植え方は、収穫量を増やしたい場合に適しています。
釣り針植え
「釣り針植え」は、苗のつるを釣り針のような曲線を描くように植える方法です。短い苗でもイモが育つ深さを一定に保ちやすく、結果として収穫量の増加につながりやすいという利点があります。
株間と植え付けの注意点
株間は、苗の種類や大きさ、植え方によって調整が必要ですが、一般的には30~40cm程度の間隔を空けるのが目安です。苗を植え付ける際には、つるを畝と平行になるように寝かせるのがおすすめです。これは、サツマイモの根が植え付けた方向に長く伸びる性質を利用するためです。もし畝に対して垂直に植えてしまうと、イモが通路や隣の畝にまで広がってしまい、収穫作業が困難になる可能性があります。植え付け時に土壌が乾燥している場合は、植え付け後たっぷりと水を与えるようにしましょう。
植え付け後の管理と肥料
植え付け後、根は徐々に伸びていきますが、つるの成長は比較的緩やかです。そのため、最初の1ヶ月間は特に丁寧な除草作業が重要になります。つるがある程度伸びて地面を覆うようになれば、その後は雑草の発生を抑えることができます。サツマイモは基本的に追肥を必要としない作物であり、土作りの段階で必要な肥料を施す元肥だけで十分に育ちます。肥料を与える際は、特に窒素の量に注意が必要です。窒素が過剰になると「つるぼけ」という現象が起こり、葉やつるばかりが茂ってしまい、イモの生育が妨げられることがあります。そのため、窒素・リン酸・カリウムがバランス良く含まれた肥料や、カリウムをやや多めに含む肥料を選ぶのがおすすめです。緩効性肥料を使用する場合は、一度撒くだけで約2~3ヶ月間効果が持続するタイプを選ぶと便利です。追肥は基本的に行わず、植え付け前に土に混ぜ込む元肥だけで育てることが基本です。ただし、7月~8月頃に葉の色が薄くなったり、黄色くなったりするなど、生育不良の兆候が見られる場合に限り、肥料不足の可能性を考慮して、畝の肩部分に少量の追肥を施すことがあります。追肥を行う場合も、肥料の与えすぎ(特に窒素成分)は「つるぼけ」の原因となり、イモの肥大を妨げる可能性があるため、十分な注意が必要です。
水やり
サツマイモは多湿な環境を好みません。苗を植え付けた直後から一週間程度は、たっぷりと水を与えますが、その後は基本的に水やりは不要です。ただし、雨が降らず、乾燥した状態が続く場合は、適宜水を与えるようにしましょう。
つる返し
気温が上がってくると、サツマイモのつるは非常に勢いよく伸びます。そのままにしておくと、隣の畝にまで広がってしまうことがあります。サツマイモのつるは、地面に接した部分から新たな根(不定根)を発生させます。これらの根に養分が分散してしまうと、最初に植えたイモが十分に大きくならず、収穫できるサイズが小さくなる可能性があるため注意が必要です。地中のイモを大きく育てるために、「つる返し」という作業を行います。つる返しとは、地面に根を張ったつるの先端を持ち上げて、土から根を剥がし、つるをひっくり返して葉の上に置く作業です。地面に根が生えたつるを見つけたら、適宜つる返しを行いましょう。近年では品種改良が進み、節から生えた根がイモになることは少なくなっているため、積極的に「つる返し」を行う必要はないという考え方もあります。しかし、つるが過剰に茂ることによるイモの小型化を防ぐためには、依然として有効な管理方法と言えるでしょう。
除草作業
雑草が増えると、サツマイモに日光が当たりにくくなり、必要な養分も奪われてしまいます。植え付け後、根は伸び始めますが、つるの成長は比較的遅いため、最初の1ヶ月間は特にこまめな除草作業が重要です。雑草はすぐに大きくなり、手に負えなくなる可能性があるため、早めに抜き取るようにしましょう。サツマイモがある程度成長し、つるが地面を覆うようになれば、その後は雑草はあまり生えなくなります。つる返しや除草作業の手間を減らすために、マルチングもおすすめです。地面をビニールで覆うことで、つるから根が生えにくくなり、雑草の抑制にもつながります。
収穫のタイミングと適期
サツマイモは、植え付けから約120〜140日後に収穫できます。イモが大きく成長するのは7月〜10月頃ですが、収穫時期は10月~11月を目安にすると良いでしょう。肥大期に日照時間が長く、乾燥した状態が続くと、デンプンが蓄積されて美味しいイモになります。収穫が早すぎると味が十分に向上せず、逆に遅すぎるとイモは大きくなるものの、色や形が不揃いになる傾向があります。そのため、適切なタイミングで収穫することが重要です。葉が黄色く枯れ始めたら収穫の目安です。地上部の様子だけでは判断が難しい場合は、試し掘りをして、イモの大きさや形を確認し、収穫時期を逃さないようにしましょう。十分に大きくなったイモから順に収穫することも可能です。また、霜に当たると収穫したイモが腐りやすくなり、保存期間が短くなるため、初霜が降りる前に収穫を終えるようにしましょう。
具体的な収穫方法と収穫後の処理
サツマイモの収穫は、天候に左右される作業です。収穫適期は、土壌が乾燥している晴れた日の午前中が最適です。雨天時や土が湿った状態での収穫は、サツマイモが腐敗しやすくなる原因となります。まず、株元から伸びるツルを切り離し、扱いやすい長さに整理します。次に、マルチを丁寧に取り除きます。スコップや鍬を使用する際は、サツマイモを傷つけないように、株元から少し距離を置いて土に差し込み、手で土を払いながら慎重に掘り起こします。サツマイモの皮はデリケートなため、優しく扱うことが大切です。株元をしっかり掴み、ゆっくりと引き抜いて収穫します。掘り起こした跡にサツマイモが残っていないか確認しましょう。収穫したサツマイモは、水洗いをせずに、表面の土を軽く落とす程度にとどめます。風通しの良い日陰で2~3日ほど乾燥させた後、適切な方法で保存処理(キュアリング)を行いましょう。水洗いは腐敗の原因となるため避けてください。
追熟の方法と貯蔵
収穫したばかりのサツマイモは、デンプン質が多いため、甘みが少ない状態です。追熟という貯蔵期間を経ることで、デンプンが糖に変わり、甘みが増します。美味しくサツマイモを味わうためには、収穫後2~3週間から1ヶ月程度の追熟期間を設けるのがおすすめです。追熟を成功させるには、温度と湿度が重要です。サツマイモの貯蔵に適した温度は13℃前後、湿度は90~95%が理想とされています。10℃を下回ると低温障害を起こし、腐敗や味の低下につながるため注意が必要です。逆に、15℃を超えると発芽を促してしまう可能性があります。貯蔵中は、サツマイモに直接風が当たらないように工夫しましょう。家庭で追熟させる場合は、サツマイモを新聞紙で一つずつ包み、発泡スチロールの箱や段ボール箱に入れて冷暗所で保管します。もみ殻があれば、箱の中にもみ殻を敷き詰めるのも効果的です。発泡スチロールを使用する場合は、通気性を確保するために空気穴を開けましょう。サツマイモ同士が重ならないように並べるのもポイントです。土に埋めて保存する方法も有効です。冷蔵庫での保管は低温障害の原因となるため、避けてください。
大量貯蔵:穴貯蔵の方法
大量のサツマイモを保存する場合は、畑に穴を掘って貯蔵する方法が適しています。適切な方法で行えば、翌春まで保存することも可能です。地下水位が低く、水はけの良い場所を選び、サツマイモを埋めるための穴を掘ります。穴の深さは、保存するサツマイモの量に応じて調整しますが、70~80cmを目安にしてください。穴の中に藁やもみ殻を敷き、ツルが付いたままのサツマイモを丁寧に積み重ねていきます。サツマイモを傷つけないように注意しましょう。穴を土で覆い、さらに藁を被せます。雨水が溜まらないように、土は山型に盛り上げます。周囲に排水用の溝を掘っておくと良いでしょう。竹筒などを挿して換気口を設けることも重要です。
連作障害
連作障害とは、同じ種類の作物を同じ場所で繰り返し栽培することで、土壌の栄養バランスが崩れ、病害虫が発生しやすくなる現象です。サツマイモは、比較的連作障害が起こりにくい作物とされています。しかし、近年問題となっている基腐病が発生した畑では、病原菌の蓄積を防ぐために連作を避けることが推奨されます。また、水はけの悪い場所では、長雨などによる冠水でサツマイモが枯死するリスクがあるため、適切な土壌管理が重要となります。
コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは、複数の種類の植物を近くに植えることで、病害虫を防いだり、互いの成長を助けたりする効果が期待できる組み合わせのことです。サツマイモと特に相性が良いとされるコンパニオンプランツの一つが「赤ジソ」です。赤ジソは、土中の余分な肥料分を吸収し、サツマイモの「つるぼけ」を抑制する効果が期待できます。さらに、赤ジソの葉の色が、サツマイモを食害するコガネムシの幼虫などの害虫を寄せ付けない効果があるとも言われています。
サツマイモ栽培で起こりがちなトラブルや対処方法
サツマイモ栽培では、「つるぼけ」などの問題に直面することが少なくありません。事前に適切な対策を知っておくことが大切です。ここでは、サツマイモ栽培においてよく見られるトラブルと、その解決策について解説します。
つるぼけ対策
つるぼけとは、葉や茎ばかりが過剰に成長し、芋が十分に大きくならない状態を指します。つるぼけを起こしたサツマイモは、味が落ちてしまうため、適切な対策が不可欠です。つるぼけは、サツマイモが土中の養分や水分を過剰に吸収することで発生し、芋の肥大を妨げます。主な原因としては、①肥料の過多(特に窒素成分)、②生育初期の長雨や日照不足、③畑の排水性の悪さ、④前の作物の肥料分の残留、⑤肥料に弱い品種の栽培などが挙げられます。これらの要因によってつるぼけが発生すると、芋のデンプン含有量が減少し、粘り気が強くなり、食味が低下します。それぞれの原因に応じた対策を講じることが重要です。
肥料の多さが原因の場合
サツマイモは比較的少ない肥料でも良く育つため、肥料を与えすぎないことが重要です。元肥を施す際は、量を控えめにすることを推奨します。それでも肥料過多によるつるぼけが発生した場合は、まず窒素肥料の使用を中止することが大切です。加えて、定期的に「つる返し」を行いましょう。つるから伸びた根を土から引き抜くことで、肥料の吸収を抑えることができます。
悪天候や排水不良が原因の場合
サツマイモは、日光がよく当たり、乾燥した環境を好みます。生育初期に日照不足や長雨が続いたり、畑の排水性が悪い状態が続いたりすると、つるぼけが起こりやすくなります。雨天や曇天が続くと土壌が乾きにくく、過湿状態になりやすいため注意が必要です。畑で栽培する場合、降雨を避けることは難しいですが、土づくりの段階で排水性を高める工夫が重要になります。高畝にすることで、排水性を向上させることが有効です。
前の作物の肥料が残っている場合
以前に栽培した作物の肥料成分が土壌に多く残っていると、サツマイモが過剰に栄養を吸収し、つるぼけを引き起こすことがあります。連作を行う際には、事前に土壌の肥料残量を考慮し、元肥を控えめにする、または無肥料栽培にするなどの対策を検討しましょう。
肥料に弱い品種を栽培する場合
肥料に対する耐性が低い品種を栽培する場合も、つるぼけが発生しやすくなります。品種を選ぶ際には、ご自身の畑の土壌条件や栽培方法に適した品種を選ぶことが大切です。
黒い汚れや白い液体の対処法
収穫したサツマイモに黒いタール状のものが付着しているのを見かけることがあります。これは「ヤラピン」という成分が表面に染み出して固まったものです。つるを切った場所や、皮についた傷などから出てきます。口にしても問題はありません。
ヤラピンは最初から黒いわけではなく、採取したばかりの時は白い色をしています。時間が経過すると、皮に多く含まれるクロロゲン酸などと反応し、黒く変色することがあります。また、調理する際にサツマイモを切ると、切り口から白いヤラピンが滲み出てくることもあります。こちらも食べても問題ありませんが、気になる場合は水で洗い流してから調理してください。
黒い汚れを防ぐためには、サツマイモを丁寧に扱うことが重要です。収穫時や運搬時に、傷がつかないように注意しましょう。
「ヤラピンが多く付着しているサツマイモは甘い」という話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、ヤラピンの量とサツマイモの甘さには直接的な関係はないとされています。甘いサツマイモを食べたい場合は、甘みが強い品種を選ぶのがおすすめです。
まとめ
サツマイモは、比較的育てやすく、家庭菜園にも適した野菜です。乾燥や暑さに強い性質を持ち、一度植えれば手間もあまりかかりません。栽培のコツとしては、肥沃でない土地を選び、肥料を控えめにすることです。特に、窒素肥料が多いと「つるぼけ」を起こしやすいため、土作りと追肥管理が重要になります。また、ツルの伸びすぎを抑えてイモに栄養を集中させる「つる返し」は、品種によっては不要な場合もありますが、ツルが茂りすぎる場合には有効な手段です。収穫後の「追熟」は、サツマイモの甘さを引き出すために欠かせません。適切な温度と湿度で保管することで、デンプンが糖に変わり、より美味しくなります。サツマイモは比較的連作障害に強いですが、近年増えている基腐病には注意が必要です。コンパニオンプランツとして赤ジソなどを植えることで、病害虫対策や生育促進の効果も期待できます。これらのポイントを押さえれば、美味しいサツマイモをたくさん収穫できるでしょう。お好みの品種を選んで、ぜひご自宅で栽培し、秋の収穫を楽しんでください。
サツマイモのツルばかり伸びてイモが大きくならないのはなぜですか?
サツマイモのツルばかりが茂り、イモが大きくならない主な原因は、窒素過多による「つるぼけ」です。その他、日照不足や長雨、畑の排水性の悪さ、前作の肥料成分の残留、品種の特性なども影響します。対策としては、肥料を控えめにすること、特に窒素肥料を避けることが重要です。既にツルぼけの症状が出ている場合は、「つる返し」を行い、余分な根を取り除くことで、ツルへの栄養供給を抑え、イモの肥大を促します。土壌の水はけを改善したり、品種を選ぶことも有効です。
収穫したサツマイモの切り口から白い液体が出るのは何ですか?
サツマイモの切り口から出る白い液体は「ヤラピン」という成分です。これは、サツマイモが傷口を保護するために分泌するもので、自然な現象です。ヤラピンは、時間が経つと空気と反応して酸化し、黒く変色することがあります。これは、サツマイモに含まれるクロロゲン酸などの成分と結合するためです。サツマイモを切った際にもヤラピンが出ることがありますが、人体に有害なものではなく、むしろ整腸作用があると言われています。気になる場合は、洗い流してから調理してください。なお、「ヤラピンが多く付いているサツマイモは甘い」という説もありますが、科学的な根拠はありません。
収穫したサツマイモが甘くないのはなぜですか?
収穫したばかりのサツマイモが甘くないのは、追熟期間が不足しているためです。サツマイモは、収穫後しばらく置いておくことで、デンプンが糖に変わり甘みが増します。これは、サツマイモに含まれる酵素の働きによるものです。適切な温度と湿度を保ち、一定期間追熟させることで、本来の甘さを引き出すことができます。サツマイモの種類や保存環境によって追熟期間は異なりますが、しばらく置いてから食べるのがおすすめです。
サツマイモ栽培でマルチングを行う利点は何でしょうか?
サツマイモ栽培においてマルチングは、様々な良い効果をもたらします。第一に、土の温度を最適な状態に維持し、サツマイモの成長促進と味の向上をサポートします。特に、生育初期段階での地温確保に貢献します。また、厄介な雑草の発生を抑制するため、草取りの労力を大幅に軽減できます。加えて、土壌の乾燥を防ぎ、育成を促し、収穫量の増加が見込めるだけでなく、収穫時に蔓を取り除く作業が楽になり、効率的な収穫につながることも重要なメリットです。
良質なサツマイモ苗を選ぶためのポイントは何ですか?
良質なサツマイモ苗を見分けるには、いくつかの重要なポイントがあります。茎がしっかり太く、節と節の間隔が長すぎず、葉の色が濃く肉厚な苗が望ましいです。また、節の数が多く、7~8枚の葉が付いている苗は、その後の成長が順調に進む可能性が高いです。購入後に葉が元気なく萎れている場合は、植え付け前に水に浸けて、みずみずしさを取り戻させてあげましょう。













