甘酸っぱい香りと可愛らしい見た目で人気のラズベリー。庭先で育てて、摘みたてを味わえたら素敵ですよね。でも、「難しそう」「何から始めたら良いの?」と不安に思う方もいるかもしれません。この記事では、初心者さんでもラズベリー栽培を成功させるための秘訣を徹底解説!品種選びから日々の管理、収穫量アップのコツまで、わかりやすくご紹介します。ポイントを押さえれば、あなたもきっと美味しいラズベリーをたくさん収穫できますよ!
ラズベリーの基礎知識

ラズベリーは、ヨーロッパとアジアを原産とする低木で、キイチゴ属の一種です。その特徴は、赤色や紫色などの鮮やかな色合いと、柔らかくプチプチとした食感の果実です。ケーキなどのデザートのトッピングとしてよく利用されます。自家結実性を持つものが多く、夏と秋の年に2回実をつける二季なり性の品種があることも、人気の理由の一つです。
ラズベリーの種類と品種の選び方
ラズベリーは、果実の色によって大きく3つのグループに分けられます。それは、赤ラズベリー、黒ラズベリー、そして紫ラズベリーです。日本で一般的に見られるのは、赤ラズベリーと黒ラズベリーで、近年では赤ラズベリーから生まれた黄色い果実の品種も流通しています。
ラズベリーの品種改良は、もともとヨーロッパや北米を中心に進められてきました。特に、1865年にアメリカ・ニューヨーク州で発見された「カスパート(Cuthbert)」は、耐病性や収穫量に優れた品種として広く普及し、その後のラズベリー栽培の発展に大きな影響を与えたと言われています。現在では、より甘みが強いものや大粒のものなど、様々な特徴を持つ品種が世界中で栽培されています。
ラズベリー栽培に最適な環境
ラズベリーは、夏に涼しい気候を好むため、特に関東地方以北の寒冷地での栽培に適しています。しかし、西南地方のような温暖な地域でも、鉢植えで育てることで十分に収穫を楽しめます。ラズベリーは日当たりの良い場所を好みます。たっぷりと日光を浴びることで、美味しい実をたくさん収穫できます。ただし、真夏の強い直射日光や西日は避け、半日陰で管理するのが理想的です。
ラズベリーの栽培方法:鉢植えと庭植え
ラズベリーは非常に生育が旺盛で、地下茎を伸ばしてどんどん広がっていく性質を持っています。庭に直接植えることも可能ですが、その場合、周囲に広がり過ぎて他の植物の生育場所を奪ってしまうことがあります。そのため、収穫量に特にこだわりがないのであれば、生育範囲を制限できる鉢植えやプランターでの栽培がおすすめです。
鉢植え・プランター栽培の利点
鉢植えでラズベリーを育てる場合、通常、植え付けから3年以上経過すると、根が鉢の中で密集し、新しい枝が出にくくなることがあります。そのため、2年ごとに植え替えることで、毎年安定した収穫が見込めます。鉢植えやプランターでの栽培方法は、基本的に地植えと同様の手順で行います。初期の鉢のサイズは、直径約24cm(8号鉢)を目安にすると良いでしょう。市販されている野菜・果樹用の培養土を使用すれば、手間を省けます。
地植えにおける留意点
ラズベリーは地下茎で広範囲に繁殖するため、他の植物に影響を与えにくい場所を選んで植えましょう。必要であれば、地中に仕切り板や根止めを設置し、地下茎の過剰な広がりを抑制することが大切です。植え穴は深さ40~50cm程度に掘り、苗を丁寧に植え付けます。
ラズベリー栽培の準備:苗の選び方と植え付け
ラズベリーの苗は、秋から早春にかけて、オンラインショップや園芸店で購入可能です。一般的に販売されているのは、株分けや挿し木で増やされた1~2年生の苗がほとんどです。苗を選ぶ際は、茎がしっかりとしていて太く、根がポリポットの中で十分に生育しているものを選びましょう。植え付けに最適な時期は、ブルーベリーと同様に休眠期が良いとされ、特に厳寒期を避けた3月頃が適しています。温暖な地域では、秋植えでも根付きやすく、9月から11月頃に植え付けを行うこともできます。
鉢植えの植え付け手順
まず、ポリポットから苗を取り出し、根を傷つけないように軽くほぐします。直径18cm程度の6号鉢に、赤玉土小粒、腐葉土、川砂を6:3:1の割合で混ぜ合わせた土を使用し、植え付けを行います。植え付け後、表土に1株あたり約3gの粒状肥料を施し、たっぷりと水を与えれば完了です。
庭植えの植え付け
庭に植える場合は、直径が40cm、深さが30cmほどの穴を掘ります。掘り出した庭土10Lに対し、腐葉土を約3L、小粒の赤玉土を約1L、完熟堆肥を約1Lの割合で混ぜ合わせ、さらに1株あたり50gほどの粒状肥料をしっかりと混ぜ込みます。次に、混ぜ合わせた土の約3分の2を植え穴に戻し、苗を丁寧に植え付けます。植え付け後、枝を3分の1程度切り戻し、支柱を立てて紐で固定します。最後に、たっぷりと水を与えましょう。
ラズベリーの用土と土づくり
ラズベリーは、水はけの良い土壌を選び、日当たりの良い場所から半日陰程度の場所で育てると良いでしょう。特に、温暖な地域では夏の強い日差しを避けるため、鉢植えの場合は半日陰に移動させるのがおすすめです。ラズベリーは弱酸性の土を好みますが、土質には比較的寛容です。庭植えの場合は、庭の土でも問題ありません。鉢植えの場合は、市販の果樹用培養土を使用すると良いでしょう。植え付けを行う前に、あらかじめ植える場所に腐葉土を混ぜておくと、より良い環境になります。
水やり
庭植えの場合、植え付け時にしっかりと水を与えれば、その後は土の表面が乾いた時に水やりをする程度で十分です。鉢植えの場合は、4月から7月は1日に1回、8月から9月は1日に2回、10月から3月は土の表面が乾いたタイミングで水やりを行いましょう。ベランダで栽培する場合は、特に夏場の乾燥に注意が必要です。鉢植えは土が乾きやすいので、こまめに状態を確認し、必要に応じて1日に2回水やりをしてください。
肥料・追肥
ラズベリーの収穫量を増やすためには、定期的な肥料の施しが大切です。6月、9月、そして2月頃に、有機質肥料や速効性の化成肥料を与えましょう。庭植えの場合は、芽が出る前の3月までに、元肥として粒状肥料を1株あたり50g程度施し、5月から6月と8月から9月には、追肥として同様の肥料を1株あたり25g程度施します。株の成長に合わせて、肥料の量を少しずつ増やしていくと良いでしょう。肥料は、株元ではなく、枝が広がっている範囲よりも外側に施してください。鉢植えの場合は、同様の時期に同様の肥料を、1株あたり3g程度施します。葉の色や状態を確認しながら、肥料を与える量を調整しましょう。
ラズベリーの剪定:一季成りと二季成り、それぞれの違い
ラズベリーに限らず、果樹の冬剪定では、その木の結果習性を理解しておくことが非常に重要です。特にラズベリーは、他の果樹とは少し異なる性質を持っているため、注意が必要です。ラズベリーの剪定に適した時期は、落葉後の11月から2月頃です。剪定方法は、一季成り性と二季成り性で少し異なるため、それぞれの特徴を把握し、枯れた枝や生育の良くない細い枝などを取り除いて、樹形を整えていきましょう。
一季成り性の剪定
まず、ラズベリーの花芽は「混合花芽」と呼ばれ、ブドウのように一つの芽の中に葉となる部分と花芽の両方を持っています。その花芽が分化する時期は、一般的に7月上旬から中旬頃と言われています。一季成り性のラズベリーは、春に地下茎から出てくるサッカーや、株元から発生するシュートのような栄養枝(1年枝、またはプライモケーン)が成長し、冬の低温にさらされた後、結果母枝(2年枝、またはフロリケーン)となります。そして、翌年の春に、この結果母枝から伸びる結果枝の先端に果実が実ります。この結果母枝と結果枝は、結実後、冬までには枯れてしまいます。したがって、一季成り性のラズベリーの剪定方法は、収穫を終えた枝を夏のうちに地際で切り取ります。その後、冬の休眠期(1〜2月)に、枯れ枝や混み合った枝を整理する剪定を行うと、翌春の生育が良くなります。
二季成り性の剪定
一方、「二季成り性」のラズベリーは、まず春に結果母枝から発生した結果枝の先端に果実が実ります(春果)。この結果母枝は、一季成り性と同様に冬に枯れてしまいます。さらに、春に発生したサッカーが結果枝となり、秋にはその先端に果実が実ります(秋果)。このような仕組みによって、一年で二回収穫を楽しむことができるのです。ちなみに、この秋果をつけたサッカーは、翌年には結果母枝となり、結果枝を発生させて春果をつけます。その収穫後には枯死するというサイクルを繰り返します。二季成り性の場合は、夏だけでなく秋にも収穫があるため、秋に実をつけた花芽はカットせずに残し、結実した部分と枯れている枝を選んでカットします。
具体的な剪定方法
ラズベリーの剪定は、1月から2月頃に行います。果実をつけたすべての枝(結果枝)を、根元から切り取ります。ただし、「二季成り性」の場合は、秋に果実がついた枝には翌年も果実がつくので、切り取らずに残すようにしましょう。切り取っても良い枝は、枯れ込んで灰色になっているので、見分けやすいはずです。次に、残す結果母枝を決め、枯れた部分があれば切り取ります。結果母枝から出ている側枝は、1~2芽を残して切り詰めます。春になると結果枝が30cm以上に伸びるので、株全体のバランスを考えて切り詰めますが、十分なスペースがある場合は、2芽以上残しても構いません。また、夏に通気性を良くしたり、株の中に光が入るように、細い枝は切除して枝と枝の間隔を空けます。最終的には、しっかりとしていて大きく、充実した芽を持つ、太い結果母枝を、1株あたり5~6本残すようにします。剪定後は、実がなった時の姿をイメージしながら、支柱やトレリスなどに誘引します。剪定後の切り口や傷口の保護、癒合促進のために、殺菌剤を剪定時の枝の切り口に塗布することをおすすめします。
ラズベリーの収穫時期と方法
ラズベリーの収穫時期は、品種によって異なります。一季成り性の品種は6月から7月頃、二季成り性の品種は6月から7月と10月から11月頃が目安です。収穫期には、一つの株に完熟した実からまだ若い実まで、様々な段階の果実が見られます。完熟したラズベリーの色は、赤、黄色、黒など品種によって異なりますが、共通して柔らかく、芳醇な香りを放ちます。収穫は、果実を傷つけないよう、晴れた日の朝か夕方に行うのがおすすめです。開花後、およそ1ヶ月で収穫時期を迎えます。果肉が十分に熟し、香りが強くなったら収穫のサインです。熟した実はデリケートなので、一つ一つ丁寧に手で摘み取りましょう。収穫の際は、実を花托から優しく抜き取るようにすると、きれいに収穫できます。

ラズベリーの病害虫対策
ラズベリー栽培で注意したい病害虫は、うどんこ病、灰色かび病、アブラムシなどです。病害虫の早期発見と早期対策が重要です。発生初期には、お育てのラズベリーと対象の病害虫に登録のある農薬を使用説明書に従って散布します。使用の際は必ずラベルをよく読み、使用時期・回数・濃度を守ってください。また、薬剤を使わない対策として、風通しを良くする剪定や、木酢液の散布なども有効です。さらに、雑草は害虫の隠れ家となるため、定期的な草刈りも欠かせません。
ラズベリーの増やし方
ラズベリーは、株元から生えてくるサッカー(吸枝)を利用して簡単に増やすことができます。4月から5月頃になると、たくさんのサッカーが出てくるので、それを根元から切り取り、新しい鉢に植え付けましょう。この時期はサッカーが出始めたばかりで、根がデリケートなため、切り取るとすぐに萎れてしまうことがあります。採取後は、すぐに水に浸けて乾燥を防ぐことが大切です。
ラズベリー栽培における支柱立てと誘引
ラズベリーには、自立しやすい品種と、そうでない品種があります。つる性のラズベリーなど、自立しにくい品種の場合は、植え付け時に支柱を立てるのがおすすめです。株元から伸びてくるシュート(新しい枝)が、風などで倒れないように誘引します。実がつく前から支柱に枝を這わせておくことがポイントです。太い枝から順番に誘引し、枝同士が重ならないように注意しましょう。オベリスクやあんどん型の支柱を使用する場合は、外周に沿って枝を巻き付けていきます。株元から伸びる枝は太くて硬いため、無理に巻き込まず、そのまま直立させて固定し、そこから伸びてくる枝を巻き付けるようにします。枝を巻き付ける際は、きつく締めすぎると折れてしまうことがあるので、緩めに固定しましょう。オベリスクの外周に沿って、適度な巻き加減で枝を固定していくのがコツです。
結び
ラズベリーの栽培は、品種選びから始まり、土壌の準備、植え付け、丁寧な管理、そして適切な剪定と、愛情を込めた手入れによって、甘美な果実を収穫できる喜びをもたらします。この記事が、あなたのラズベリー栽培の第一歩となることを願っています。収穫したラズベリーで、自家製ジャムや手作りデザートに挑戦するのも素敵ですね。
ラズベリー栽培における注意点は?
ラズベリーは旺盛な繁殖力を持つため、栽培には注意が必要と言われることがあります。地下茎で広がる性質があるため、地植えの際は根止めを施したり、プランター栽培を選択することで、想定外の広がりを抑制できます。また、ラズベリーの茎にはトゲがある品種もあるので、作業時には怪我をしないように注意しましょう。
ラズベリーの収穫時期はいつ頃?
一季なりのラズベリーの場合、植え付けた最初の年は収穫できません。春に植え付けられた株から伸びた枝に花芽が形成され、翌年の夏に収穫期を迎えます。二季なりの品種であれば、植え付けた年の秋から収穫を楽しめます。冬には落葉するため、枯れてしまったように見えることがありますが、根は生きているので、春の芽出しを待ちましょう。
ラズベリー栽培を成功させる秘訣は?
ラズベリー栽培の成功の鍵は、日当たりの良い場所を選ぶこと、水はけの良い土壌を使用すること、適切な剪定を施すこと、そして病害虫から保護することです。これらのポイントをしっかり守ることで、ラズベリーは健全に成長し、美味しい実を豊富に実らせてくれるでしょう。