柿 育て方
秋の味覚として親しまれる柿は、ご家庭でも栽培できる人気の果樹です。この記事では、初心者の方でも安心して柿栽培を始められるよう、品種選びから植え付け、日々の管理、剪定のコツまでを徹底解説します。日本の食文化に深く根ざした柿の栽培に挑戦し、甘くて美味しい実をたくさん収穫しましょう。
柿(カキ)の育て方の基礎知識
柿は日本の気候によく合い、比較的容易に育てられる果樹として知られています。家庭果樹として非常におすすめです。ここでは、柿を育てる上で知っておきたい基本的な知識をご紹介します。
柿(カキ)とは?
柿はカキノキ科カキノキ属の落葉樹で、東アジアから東南アジア原産の温暖な地域に自生し、日本でも古くから栽培されてきました。高さは2〜5メートルほどになり、庭木としても適しており、剪定で高さや形を調整できます。新緑や花、紅葉、果実と四季を通じて楽しめるのが魅力です。秋を代表する果物として、健康や縁起に関することわざや言い伝えも多く、「秋の季語」として俳句にも詠まれてきました。果実は生食や加工品として広く利用され、葉はお茶に、果実の渋み成分であるタンニンから作られる柿渋は、防腐や塗料として活用されます。熟すと甘く栄養価が高く、ビタミンやミネラルを豊富に含み、風邪予防や二日酔いの緩和にも効果があるとされます。世界の温暖地でも広く栽培され、寒冷地では渋柿も適応可能です。このように、柿は食用としての価値に加え、文化的・実用的にも日本人の生活に深く根付いた重要な植物です。
柿(カキ)は栄養も豊富
柿は、豊富な栄養を含んでいることも魅力です。ビタミンA、ビタミンC、カリウム、ペクチン、タンニン、食物繊維など、様々な成分が含まれています。特にビタミンCは豊富で、いちごに匹敵するほど含まれており、柿1つで1日に必要なビタミンCをほぼ摂取できます。また、柿に含まれるカリウムの利尿作用、ビタミンCとタンニンの働きによって、血液中のアルコールを体外へ排出しやすくするため、二日酔いにも効果があると言われています。このように栄養満点でありながら、柿のカロリーは1個あたり約60キロカロリーと低めなので、ダイエット中でも安心して食べられる果物です。
柿(カキ)の種類と品種
柿には実に多くの品種が存在し、その数は1000を超えるとも言われています。これから柿の栽培を始めようとする方にとって、どの品種を選べば良いのか迷ってしまうのは当然のことでしょう。柿は、果実に渋みがあるかないかによって大きく「甘柿」と「渋柿」に分けられます。栽培を始めるにあたっては、まずどちらのタイプを育てるのかを決めることが、スムーズな品種選びの第一歩となります。さらに甘柿は、種子の有無に関わらず常に甘い「完全甘柿」と、果実の中に種子ができなければ甘くならない(渋いままの)「不完全甘柿」に分けられます。不完全甘柿で甘さを引き出すためには、近くに雄花をつける‘禅寺丸’や‘筆柿’などの品種を植えるか、あるいは栽培している柿の木の枝の一部に、雄花をつける品種を接ぎ木するなどの工夫が必要です。ここでは、品種を選ぶ際の簡単なポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【代表的な甘柿品種:富有と次郎】
甘柿には、果汁が豊富で柔らかな食感と甘みが特徴の品種や、歯ごたえのあるしっかりした肉質を持つ品種など、さまざまな種類があります。柔らかなタイプはとろけるような口当たりで風味豊か、硬めのタイプはコリコリとした食感で種が少なく食べやすいのが特徴です。なかには、受粉しなくても実がなる性質を持つものもあります。ほかにも、大玉で歯ごたえがある品種や、果汁を多く含むもの、濃厚な甘みを楽しめるもの、早生タイプなど多彩です。甘柿は、種がなくても自然に渋が抜ける「完全甘柿」と、一部に渋が残る「不完全甘柿」に分かれます。栽培には気候条件が重要で、年間平均気温13℃以上、特に9月は21~23℃以上、10月は15℃以上が望ましく、温暖な地域に適しています。寒冷地では、秋の気温低下前に収穫できる早生品種を選ぶことで、渋みが残らず安定した甘みを楽しむことができます。
【代表的な渋柿品種】
渋柿には、やや縦長で比較的早く実をつけるものや、果肉がきめ細かくまろやかな味わいのもの、病害虫に強く育てやすいものなど、さまざまな品種があります。平たい形の種なしタイプや、大ぶりで存在感のあるもの、やや小ぶりながら甘みが強いものなども広く知られています。渋柿の渋みは、果実に含まれるタンニンによるもので、水に溶ける性質かどうかで渋みの強さが変わります。このタンニンを変化させて渋みを抜くことで、甘く食べやすくなります。また、渋柿は干し柿づくりにも欠かせず、多くの実をつける品種や、種が少なくカビにくい品種が加工に適しています。干し柿は、渋柿特有の強い甘みと濃厚な風味を引き出し、保存性も高める伝統的な加工法として、今も家庭や産地で受け継がれています。
甘柿と渋柿の選び方と生育条件
柿を生で楽しむなら甘柿、干し柿など加工して味わうなら渋柿を選ぶのが適しています。甘柿は渋抜きの必要がなく、収穫後すぐに食べられるのが魅力ですが、栽培には温暖な気候が必要です。特に年間平均気温が13℃以上、4月から10月の平均気温が19℃以上であることが望ましく、この条件を満たさない地域では渋みが残ることがあります。そのため、甘柿を育てる際は地域の気温条件を事前に確認することが重要です。一方、渋柿は比較的広い地域で栽培でき、甘柿ほど高い気温を必要としません。ただし、収穫後には渋抜きや干し柿への加工といった手間が必要です。こうした工程を経ることで、渋柿特有の濃厚な甘みと深い味わいが引き出されます。それぞれの特徴や栽培条件、加工方法を理解して選ぶことで、柿の魅力を最大限に楽しむことができます。
受粉樹の重要性と選び方のポイント
柿の品種は、受粉樹の必要性によって大きく分類できます。受粉樹がなくても実を結ぶ品種は、一本でも育てられるため、手間が少なく、庭のスペースが限られた場所にも適しています。一方、受粉樹が必要な品種は、確実に実を収穫するために、異なる品種の木を一緒に植える必要があります。手間は増えますが、収穫量を増やせる可能性があります。受粉樹が不要な品種でも、受粉樹を植えることで実付きが向上することがあります。庭に余裕があれば、受粉樹の植栽を検討すると良いでしょう。受粉樹として一般的な品種には、‘禅寺丸’や‘筆柿’などがあります。
柿(カキ)栽培に適した環境とは
柿を栽培する際は、日当たりと水はけの良い場所を選びましょう。柿は比較的育てやすい果樹ですが、生育環境が悪いと十分に育たないことがあります。日当たりの良い場所を選び、乾燥を防ぐために適切な土壌を選びましょう。水はけが良く、腐植質を多く含む土壌が理想的です。土壌改良を行い、水はけと保水性を高めることで、美味しい柿を育てることができます。日陰では実の付きが悪くなるため、日当たりと風通しの良い場所が最適です。土壌は、排水性と有機物のバランスが重要で、pHは中性から弱アルカリ性が適しています。
柿(カキ)の年間栽培スケジュールと管理
柿の栽培は、年間を通して様々な作業が必要です。適切な時期に適切な作業を行うことで、美味しい柿をたくさん収穫することができます。各時期の作業内容を理解することで、栽培における失敗を防ぎ、より深く柿栽培を楽しむことができます。柿の栽培スケジュールを確認し、各時期の作業を把握しましょう。
12月~2月の作業【休眠期】
落葉後、木が活動を停止する期間を休眠期と呼びます。品種や地域によっては11月頃から休眠期に入りますが、この時期には重要な作業が多くあります。葉が落ちてから3月に発芽するまでの間に、これらの作業を完了させるようにしましょう。
植え付け時期と方法
柿の苗木は、晩秋から冬の休眠期(おおよそ11月~2月)に植え付けるのが理想です。この時期の作業は、その後の健全な生育を左右します。庭植えでは、1か月前に直径約70cm、深さ約50cmの穴を掘り、掘り上げた土に有機肥料や堆肥、苦土石灰を混ぜ、半量を戻しておきます。植える際は根を広げ、浅めに植え付け、接ぎ木部分が土に埋まらないようにします。支柱で固定し、たっぷり水を与えて根と土を密着させます。鉢植えは7号以上の鉢を用意し、鉢底石を敷き、培養土を半分ほど入れた上で根を広げて植え付け、上から土を足します。こちらも接ぎ木部分を地上に出し、植え付け後は主幹を1/3ほど切り詰めて枝の生育を促します。鉢植えは高さを鉢の3倍程度に収めると管理しやすく、植え付け時に緩効性肥料を混ぜ込むと効果的です。
仕立て方について
柿の木の仕立ては、庭植え・鉢植えを問わず、将来の管理のしやすさを考えて選ぶことが重要です。家庭栽培では、樹高を低く抑えて作業をしやすくする「変則主幹仕立て」や「開心自然仕立て」が適しています。変則主幹仕立ては、幼木期に主幹をまっすぐ伸ばし、一定の高さで切り戻してから側枝を複数発生させる方法で、剪定や収穫が容易になります。一方、開心自然仕立ては、株元近くから2〜4本の主枝を出し、斜めに誘引して樹高を抑える方法で、日当たりや風通しが良くなり病害虫の予防にも効果的です。若木のうちは開心自然仕立てで育て、4年目頃から不要な枝を整理して高さを調整すれば、農薬散布や収穫の負担を軽減できます。
剪定の重要性とタイミング
柿の剪定は、木の健康維持と果実の品質向上のために欠かせない重要な作業です。不要な枝を取り除き樹形を整えることで、見た目が美しくなるだけでなく、日当たりや風通しが改善され、管理もしやすくなります。柿は葉が大きく、枝が密集すると日陰ができやすく、光が当たらない部分の枝が枯れてしまうことがあります。これにより、低い位置の枝が失われ、高所にばかり実がつき、収穫が難しくなったり鳥獣被害を受けやすくなることもあります。剪定は冬と夏に行うのが基本で、冬剪定(12〜2月)は休眠期に実施するため木への負担が少なく、翌年の成長や結実を促進します。夏剪定(6〜7月)は新芽が伸びる時期に行い、樹形を整えて風通しを良くし、病害虫の発生を抑える効果があります。
剪定に必要な道具
柿の剪定では、枝の太さや用途に応じた道具を使い分けることが重要です。細い枝は剪定鋏、やや太い枝は太枝切り鋏、さらに太い枝には剪定鋸を用います。作業中の怪我を防ぐため、園芸用手袋は必須です。高所の枝を切る際は高枝切り鋏が便利で、枝やゴミから目を守るために保護メガネもあると安心です。剪定後は切り口から病原菌が侵入するのを防ぐため、癒合剤の塗布が推奨されます。作業後の片付けには、ビニールシートや新聞紙を敷いて落ちた枝葉をまとめ、ゴミ袋に入れると効率的です。チリトリやほうきも清掃に役立ちます。高所作業で脚立を使う際は、安定した足場を確保し、説明書をよく読んでから使用し、転倒に十分注意しましょう。特に高所作業に慣れていない場合は、無理をせず専門業者に依頼することが安全です。
柿の剪定方法と切るべき枝
柿の剪定で最も注意すべき点は、花芽の位置を理解することです。柿の花芽は前年に伸びた枝(結果母枝)の先端から数個の芽にしか形成されず、それより下の芽は葉芽となります。そのため、枝先を切り揃えてしまうと翌年の花も実もつかなくなります。剪定では、花芽のない徒長枝や混み合った枝、枯れ枝、病害虫被害のある枝を根元から間引く「透かし剪定」が基本です。真上に伸びる徒長枝、幹の内側へ伸びる逆さ枝、絡み枝なども除去します。今年実をつけた枝は翌年実をつけないため1/3程度切り詰め、実がならなかった枝は残しておきます。また、枝が過密にならないよう数年に1度は強剪定を行い、樹形をコンパクトに保つことが大切です。太い枝を切った際は、切り口に癒合促進剤を塗り、枯れ込みや病気の侵入を防ぎます。こうした管理で日当たりと風通しを確保すれば、安定して良質な果実を収穫できます。
3~7月の作業【開花・結実期、新梢伸長期】
新しい枝が芽吹いてから、開花、結実、枝の成長と、この時期は植物の中で様々な変化が起こっています。この時期の管理は、その年の収穫だけでなく、翌年の実つきにも大きく影響します。
摘蕾(てきらい)・摘果
柿の栽培では、花が咲く前につぼみを間引く「摘蕾」と、結実後に果実を減らす「摘果」が欠かせません。果実の大きさや甘さは葉の光合成力に左右されるため、1つの枝に多くの実をつけるより、1果に十分な葉(理想は15枚)を確保する方が品質が向上します。摘蕾では、新しい枝に5〜7個つく蕾を1つに減らし、中央や下向きの健全な蕾を残します。葉が5枚未満の枝は蕾を全て除去します。結実後はできるだけ早く摘果を行い、7月上旬に1枝1果、7月下旬に葉25枚につき1果に最終調整します。摘果が遅れると細胞数が増えず、大きくても質の低い果実になります。上向きや枝元の果実から優先的に除去し、養分を集中させます。また、実を放置すると小玉化や隔年結果(豊作と不作の繰り返し)を招くため、計画的な摘果が翌年の収穫安定と高品質化につながります。
生理落果の原因と対策
柿の栽培では、せっかく実った果実が途中で落ちてしまう「落果」がよく相談されます。特に肥料の与えすぎは、木の成長に栄養が偏り、花や実への供給が不足して落果を招きます。周囲の畑や花壇の肥料も影響するため注意が必要です。また、若木は成長力が強く、落果しやすい傾向があります。梅雨時期(6〜7月)は日照不足や枝の過密化によって光が届かず、実の発育が阻害されるため、適切な剪定で日当たりと風通しを確保することが重要です。さらに、害虫や病気も落果の原因となります。カキノヘタムシガやカメムシは実への被害をもたらし、炭疽病は果実に黒斑を生じさせます。これらを防ぐには、適切な時期(特に6月)の農薬散布が有効です。家庭栽培では、害虫被害による落果を見極めるため、6月下旬まで摘果を待つ方法も効果的です。
人工授粉
柿は、通常、昆虫や風の力で自然に受粉するため、特に人工的な受粉作業をしなくても実をつけることが多いです。したがって、人工授粉は必ず行わなければならないものではありません。しかし、品種によっては人工授粉を行った方が、より確実に実を結ぶものも存在するため、苗木や品種を選ぶ前に、その必要性を確認することが大切です。特に、種ができないと十分に甘くならない不完全甘柿と呼ばれる品種の場合、受粉を確実に行うための手段として人工授粉が効果的です。また、前年の収穫量が少なかった場合や、より多くの実を収穫したいと考える場合には、翌年に人工授粉を試してみるのも良いでしょう。具体的な手順としては、まず、小さく釣り鐘状の雄花を採取し、花びらを取り除いて雄しべを露出させます。次に、その雄しべを雌花の雌しべに丁寧にこすりつけることで受粉を促します。この作業は必須ではありませんが、結実の安定化や品質の向上を目指す上で有効な方法と言えるでしょう。
8~11月の作業【果実肥大期~収穫】
この時期は、夏の暑さを乗り越えて成長した柿の実を、いかに大きく、美味しく育て上げ、病害虫から守るかが重要になります。この段階まで来れば、柿栽培において最も大切なことは、残った実を大切に守り、収穫の時を迎えることだと言えるでしょう。
柿(カキ)を収穫する時期
柿の収穫時期は品種によって異なりますが、一般的には9月下旬から11月頃に行われます。早生・中生・晩生などさまざまな品種があり、それぞれ適期を見極めることが重要です。果皮の色や実の重さが収穫の目安となり、橙色や朱色、黄色など品種ごとに変化のタイミングがあります。未熟なうちに収穫すると甘みや風味が不足するため、十分に熟してから収穫します。晩生品種は霜による傷みを避けるため、適期を迎えたら早めに収穫することが望まれます。収穫はハサミでヘタのすぐ上を切ると、実を傷つけずに行えます。
【柿の保存方法】
収穫後の柿を長持ちさせるためには、ヘタの部分に湿らせたキッチンペーパーやティッシュを当て、その上からラップでしっかりと包むと効果的です。さらに、数個まとめて保存袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保管すると良いでしょう。冷凍保存する場合は、ラップで包んだ柿を保存袋に入れて冷凍庫に入れることで、約3ヶ月間の保存が可能です。冷凍した柿は、少し解凍してからシャーベットのような食感を楽しむのもおすすめです。常温で保存すると、柿は5日程度で熟しすぎて柔らかくなってしまいます。冷蔵庫や冷凍庫を上手に活用して、より長く柿を美味しく味わってください。
水やり
柿の栽培では、春から秋にかけての水やりが特に重要です。庭植えでは根が深く広がるため、通常は雨で十分な水分を得られますが、夏の高温期や長雨のない時期には水不足で実付きが悪くなることがあります。土の乾き具合を確認し、乾燥している場合は朝夕の涼しい時間にたっぷりと与えます。鉢植えは庭植えより乾きやすく、生育期は1日1〜2回、土が乾いたら鉢底から水が流れるまで与えることが必要です。十分な水やりは養分や空気の入れ替えにもつながります。冬は生育が緩やかになりますが、土が乾いていれば根を守るために水を与えます。乾燥防止には、腐葉土を混ぜた土や株元へのわら敷きが有効です。
肥料
柿の肥料は、冬の「元肥」、夏の「追肥」、収穫後の「お礼肥」と、年3回に分けて与えるのが基本です。まず、休眠期の2月頃に有機肥料を用いた元肥を施し、翌年の生育と実付きの基礎を作ります。油かすや鶏糞など、ゆっくり効く肥料が適しています。夏の追肥は、実が落ちにくくなった時期に行い、果実の肥大と翌年の花芽形成を助けますが、実が少ない年や葉ばかり茂る場合は控えます。収穫後にはお礼肥を与えて木の体力を回復させ、翌年の成長を促します。特にカリウムを含む肥料は効果的です。適切な時期と量を守ることで、安定した収穫が期待できます。
柿(カキ)の植えかえ
柿の木は、生長に合わせて植え替えが必要になることがあります。
【地植え】
庭に植えた柿の木が順調に育っている場合は、無理に植え替える必要はありません。
【鉢植え栽培のポイント】
鉢植えで柿を育てている場合、根詰まりを防ぐために2~3年に一度、植え替えを行うことが大切です。植え替えを怠ると、生育不良の原因となります。植え替えの際は、事前に水やりを控え、鉢の中の土を乾燥させると、柿の木を抜きやすくなります。根が大きく育ちすぎている場合は、適度に切り詰めます。また、根鉢を丁寧にほぐしながら、古い土を落としていきましょう。植え替えの際、同じ鉢を使用することも可能ですが、より大きく育てたい場合は、一回り大きな鉢に植え替えるのがおすすめです。
柿の病害虫予防と対策
柿の栽培では、多くの病害虫に注意が必要です。病気では、うどんこ病、炭疽病、落葉病、黒星病などが代表的で、例えば落葉病は葉に斑点を生じさせ、早期落葉によって実の甘みや品質を低下させます。害虫では、カキクダアザミウマ、フジコナカイガラムシ、イラガ、カキノヘタムシガ、カメムシなどが発生しやすく、果実の外観や味を損ないます。これらは高温多湿、長雨、乾燥などの環境条件で発生しやすく、特に黒星病・炭疽病やカメムシ類は発生頻度が高いため警戒が必要です。品種によって発生しやすい病害虫も異なるため、被害を確認したら種類を正確に特定し、適切な薬剤を時期に応じて使用することが重要です。
【効果的な薬剤散布時期】
薬剤散布は、害虫が活発になり、病害虫が発生しやすい6月頃と8月下旬頃に行うのが一般的です。特に6月は、多くの害虫が飛来し、病害虫が繁殖しやすい時期であり、最も重要な散布時期と言えます。次いで8月下旬も重要な時期です。ヘタムシやカメムシの飛来時期と重なり、病害虫が侵入しやすく、降雨が多い時期でもあるためです。柿の実への被害を最小限に抑えるためには、この2回の薬剤散布は必ず行いましょう。収穫量の増加に繋がります。
柿の渋抜き方法
渋柿を甘くする方法はいくつか存在します。ご自身にとって最適な方法を試してみてください。
【焼酎を使った渋抜き】
採取した渋柿の軸となる部分を、アルコール度数が30度を超える焼酎やその他の蒸留酒に素早く浸し、すぐに取り出します。その後、柿をポリ袋などに入れ、空気を遮断して1週間から10日ほど室温(およそ20度)で保存すると渋みが消えます。これは、アルコールが柿の渋さの原因であるタンニンを変化させ、渋みを感じさせなくする作用によるものです。
【冷凍による渋抜き】
渋柿をそのまま、または食べやすいサイズにカットしてから、一つずつラップで丁寧に包み、冷凍庫で凍らせます。冷凍によって細胞構造が壊れ、解凍する際に渋み成分が抜けやすくなります。食べる際は、冷蔵庫で約1日かけてゆっくりと解凍することで、シャリシャリとしたシャーベットのような食感を楽しむことができます。完全に解凍してしまうと柔らかくなりすぎる場合があるため、お好みに合わせて解凍時間を調整してください。
【ドライアイスによる渋抜き】
ドライアイスを用いる渋抜きは、短時間で効率的に渋さを取り除くことができる方法です。柿とドライアイスを、しっかりと密閉できる容器または厚手のビニール袋に一緒に入れ、ドライアイスが気化する際に発生する高濃度の炭酸ガス(二酸化炭素)を活用します。ドライアイスの使用量は、柿1kgあたり約10gが目安です。およそ24時間から48時間密封することで、渋みが軽減されます。作業は風通しの良い場所で行い、ドライアイスに直接触れないよう注意が必要です。
【樹上での渋抜き】
木になっている状態で渋抜きを行うという、少し変わった方法も存在します。これは、8月下旬以降に、まだ樹になっている渋柿の果実に対して行います。大きめのポリ袋で、しっかりと封ができるものを用意し、中に少量のエタノール製剤を入れます。その袋で柿の実を包み込みます。この時、柿のヘタは袋の中に入れないように注意し、実の部分だけを袋で覆い、袋の口をしっかりと縛って密閉します。2日経過したら袋からエタノールを取り出し、袋はそのままにしておき、通常の収穫時期になったら収穫します。これにより、渋柿であった柿が信じられないほど甘くなっていることを実感できるでしょう。
柿の木の多彩な魅力
柿の木は、秋の実りだけでなく、庭のシンボルや盆栽としての趣、贈り物としての価値も兼ね備えています。庭に植えれば、春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉、冬の枝姿と、四季を通じて景観を楽しめます。年月を重ねるほどに風格が増し、庭の主役として存在感を放ちます。盆栽として仕立てれば、限られた空間でもその魅力を堪能でき、剪定や針金かけで自分好みの樹形を作り上げる楽しみもあります。鉢植えでは、テラコッタやモダンな鉢カバーを選ぶことで、和の趣と現代的な雰囲気を融合させ、空間を引き立てられます。また、収穫した柿を干し柿に加工すれば、生柿とは異なる濃厚な甘みと独特の食感が味わえ、家族や友人と作業を楽しむことで特別な思い出も生まれます。さらに、愛情込めて育てた柿や干し柿を、大切な人への贈り物にすれば、手作りの温もりと感謝の気持ちが伝わり、他にはない特別なギフトとなります。このように、柿の木は栽培・加工・鑑賞のあらゆる面で生活を豊かに彩る存在です。
まとめ
柿は比較的育てやすい果樹ですが、剪定や摘蕾・摘果などを適切な時期に行うことで、大きく甘い実を収穫できます。品種選びでは、甘柿か渋柿か、受粉樹の有無、栽培にかけられる手間などを考慮します。摘果は収穫量と品質を安定させる重要な作業で、剪定では実のなりすぎや隔年結果を防ぐことが目的です。今年実がついた枝は翌年なりにくいため切り詰め、実がつかなかった枝は残します。庭植えは樹勢が強く大きくなりやすいので、コンパクトに仕立てる工夫が必要です。鉢植えなら管理しやすく、初心者にも適しています。病害虫に強く管理作業が少ない品種もあるため、基本の手入れを行えば十分に育てられます。適切な管理で、秋には自家製の甘い柿を楽しむことができ、四季を通じて景観も楽しめます。大きくなりすぎた場合は専門家への依頼が安心です。
よくある質問
質問1:柿は初心者でも育てやすいですか?
はい。柿は日本の気候に適応しやすく、基本的な手入れを行えば庭植えや鉢植えでも栽培が可能です。品種によっては1本でも実がつくため、受粉樹がなくても楽しめます。
質問2:柿の実が途中で落ちてしまうのはなぜですか?
主な原因は、肥料の与えすぎによる栄養バランスの崩れ、日照不足(梅雨時期や枝葉の混みすぎ)、害虫や病気による被害です。適切な肥料管理、日当たりと風通しの確保、病害虫対策が必要です。
質問3:収穫した柿はどう保存すれば良いですか?
ヘタ部分を湿らせたペーパーで覆い、ラップで包んで保存袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存します。冷凍も可能で、約3ヶ月保存でき、半解凍でシャーベットのような食感が楽しめます。常温保存は約5日が限度です。