パッションフルーツの育て方 剪定

パッションフルーツの育て方 剪定

パッションフルーツは、南米原産のつる性熱帯果樹です。花が時計の文字盤に似ていることから和名では「クダモノトケイソウ」と呼ばれ、その名前は花の形がキリストの受難を連想させることに由来します。甘酸っぱい独特の風味と香りが特徴で、果肉の中にあるゼリー状の仮種皮に包まれた種子も一緒に食べられます。近年では、グリーンカーテンとしても利用され、見た目の美しさだけでなく、夏の暑さ対策にも役立つ植物として人気を集めています。

パッションフルーツとは

パッションフルーツには様々な品種がありますが、主に紫色系統、黄色系統、そしてその交雑種に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自分の栽培環境や好みに合った品種を選びましょう。

パッションフルーツの種類

パッションフルーツは、主に紫色系統、黄色系統、そしてその交雑種に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自分の栽培環境や好みに合った品種を選びましょう。

紫色系統

紫色系統(ムラサキクダモノトケイ)は、ブラジル南部原産で、比較的耐寒性があります。果実は一般的に30〜50g程度と小ぶりですが、甘みが強く、生食に向いています。

黄色系統

黄色系統(キイロトケイ)は、アマゾン川流域が原産で、耐暑性に優れています。果実は紫色系統よりも大きく、酸味が強めで濃厚な味わいです。熱帯地域や低地での栽培に向いています。

交雑系統

交雑系統は、紫色系統と黄色系統の特性を併せ持っており、亜熱帯や温暖帯での栽培に適しています。両親の品種の良いところを受け継ぎ、栽培環境への適応力も高いのが特徴です。

主な品種

日本国内で比較的容易に入手できる代表的な品種としては、下記のようなものがあります。
  • エドリス赤紫:果皮が赤紫色で、生食向けの品種です。甘味が強く、芳醇な香りと酸味があります。果実の重さは100~200gで、甘味に比べて酸味が強いですが、皮の表面がシワになるまで追熟すると甘味が増します。種も食べられるため、そのまま楽しむことができます。
  • エドリス黄:果皮が黄緑に近い黄色で、生食向けの品種です。甘味が強く、芳醇な香りと酸味があります。果実の重さは120~140gで、大きさや形がそろいやすく、品質が安定しています。エドリス赤紫と同様に、酸味が強いですが、皮の表面がシワになるまで追熟すると甘味が増します。種も食べられるため、そのまま楽しむことができます。
  • ルビースター:豊かな香りと強い酸味が特徴で、ジャムやシャーベットなど、加工品への利用に向いています。
  • ミズレモン:レモンのような見た目の果実で、非常に甘く、酸味が少ないのが特徴です。

パッションフルーツの栽培環境

日当たり

パッションフルーツは、通常、毎日少なくとも6~8時間の直射日光を必要とします。屋外で栽培する場合は、一日中日が当たる場所を選んでください。

気温

パッションフルーツにおいて、非ストレス条件(葉温が30°C)下で蒸散速度が高い品種・系統は、葉温が40°C以上になる極めて高温の条件下でも高い純光合成速度を維持する。交雑品種および近縁種を含む様々なパッションフルーツ13品種・系統について葉温30–45℃における個葉の光合成を人工気象室内の精緻な環境下で測定する。光合成速度と蒸散速度および気孔コンダクタンス、気孔形態との関係を分析して、高温域での光合成能と強く関連する形質を明らかにする。寒さに弱いため、10℃を下回る環境では生育が停止し、霜に当たると枯れてしまうこともあります。

土壌

水はけの良い土壌を好みます。プランター栽培の場合は、市販の果樹用培養土を使用すると便利です。地植えの場合は、植え付け前に腐葉土や堆肥を混ぜ込み、土壌改良を行うことが重要です。

パッションフルーツの植え付け

パッションフルーツの植え付けは、5月上旬頃が適期です。苗から育てる方法と種から育てる方法がありますが、初心者には苗から育てるのがおすすめです。

苗の選び方

苗を選ぶ際は、以下の点に注意して選びましょう。
  • 葉の色が濃く、つやがあり、元気な状態であること
  • 茎がしっかりとしていて、太いこと
  • 株元が安定していて、ぐらつきがないこと
  • 病気や害虫による被害が見られないこと

プランターへの植え付け

植え付け手順は以下の通りです。

必要なもの

  • パッションフルーツの苗
  • 直径30cm以上の植木鉢またはプランター(深さも重要です)
  • 野菜用培養土(市販のものでOK)
  • 鉢底ネット(害虫の侵入を防ぎます)
  • 鉢底石(水はけを良くします)
  • 支柱、誘引のための麻紐やネット
プランター栽培では、通気性の良い素焼きの鉢を使用し、排水性の良い用土を選ぶことが重要です。鉢やプランターを置く際には、すのこやブロックの上に置き、通気性を確保しましょう。エアコンの室外機などの近くには置かないようにしてください。
  1. 植木鉢に鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を敷き詰めます。
  2. 培養土を鉢の7~8分目まで入れます。
  3. 鉢を軽く叩いて土を落ち着かせ、表面を平らにします。
  4. 苗の根鉢よりも少し大きめの植え穴を掘り、苗を丁寧に植え付けます。鉢やプランターに植える苗は、原則として1株です。
  5. 準備しておいた支柱を立て、麻紐などで誘引します。グリーンカーテン仕立てにする場合は、あらかじめネットを設置しておきましょう。
  6. 植え付け後は、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水やりをします。

地植え

地植えでパッションフルーツを育てる場合、以下のものを用意し、手順に沿って植え付けを行いましょう。

必要なもの

  • パッションフルーツの苗
  • 堆肥(腐葉土など)
  • 肥料(緩効性肥料または配合肥料)

植え付け手順

  1. 植え付けの2週間以上前に、植え付け場所の土作りを行います。堆肥を1株あたり約10kg、元肥として肥料を約150g混ぜ込み、土壌を耕しておきます。
  2. 水はけを良くするために、少し高めの畝を立てます。畝幅は約80cmを目安にしましょう。
  3. 苗の根鉢よりも一回り大きな植え穴を掘り、苗を丁寧に植え付けます。栽植距離は、畝間2m、株間2~3m(10a当たり167~250本)とします。
  4. 植え付け後は、たっぷりと水やりをします。
  5. 株元にわらや腐葉土などを敷き、乾燥や雑草を防ぎます。また、雨による泥はねを防ぐ効果もあります。

パッションフルーツの栽培管理

水やり

パッションフルーツは、乾燥に弱い植物です。生育期である春から秋にかけては、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えてください。特に夏場は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりが必要になることもあります。ただし、水の与えすぎは根腐れの原因となるため、水はけの良い土壌を使用することが重要です。

肥料

肥料は、植え付け時と生育期に与えます。植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施します。生育期には、追肥として液体肥料を月に1〜2回程度与えましょう。肥料の種類は、窒素、リン酸、カリウムがバランス良く配合されたものを使用するのがおすすめです。特に、開花期にはリン酸を多めに与えると、実付きが良くなります。

支柱・誘引

パッションフルーツはつる性の植物なので、支柱やネットを使って誘引する必要があります。支柱は、苗の植え付け時に設置し、つるが伸び始めたら、支柱に絡ませるように誘引します。グリーンカーテンとして楽しむ場合は、ネットを張り、つるをネットに這わせるように誘引します。
支柱やネットに誘引することで、風通しが良くなり、病害虫の発生を抑える効果もあります。また、日当たりも良くなるため、果実の生育促進にもつながります。

剪定

パッションフルーツの剪定は、生育を調整し、収穫量を増やすために重要な作業です。剪定時期は、主に収穫後と冬の2回行います。剪定方法や目的は、時期によって異なるため、注意が必要です。
家庭菜園では、収穫するまであまり剪定をしないのが一般的です。茂りすぎて混み合ってしまった部分だけ、若干取り除く程度に留めておきましょう。

収穫後の剪定

収穫後の剪定は、11月〜3月頃に行います。この時期の剪定は、不要な枝を取り除き、株全体の風通しを良くすることが目的です。また、翌年の実付きを良くするために、古くなったつるや、込み合っている枝を切り落とします。
パッションフルーツは、一度実を付けたつるには、翌年実が付きません。そのため、収穫が終わったつるは、元から切り落とします。また、細くて弱い枝や、病害虫に侵された枝も、一緒に切り落としましょう。剪定後は、切り口から病原菌が侵入するのを防ぐために、癒合剤を塗布することをおすすめします。

冬の剪定

冬の剪定は、寒さ対策として行います。寒さに弱いパッションフルーツを、室内で冬越しさせるために、株全体の高さを低く剪定します。具体的には、主幹を1.5m程度の高さで切り詰め、その他の枝も短く剪定します。
冬の剪定を行うことで、株をコンパクトにすることができ、室内に取り込みやすくなります。また、春に新しい芽が出やすくなり、生育が促進される効果もあります。

人工授粉

パッションフルーツは、自家受粉しにくい性質があります。そのため、確実に結実させるためには、人工授粉を行うのがおすすめです。人工授粉は、開花した日の午前中に行います。綿棒や筆などを使って、雄しべの花粉を雌しべに優しく擦り付けます。
人工授粉が成功すると、翌日には子房が緑色になり、ツヤが出てきます。失敗した場合は、ツヤがなく黄色味を帯びます。成功した花は、その後3ヶ月ほどで収穫できます。人工授粉がうまくいかない花柄は2〜3日以内に摘み取ってください。多くの果実が付きすぎると実が小さくなるため、一枝に5個程度を残し、あとは摘果してください。

パッションフルーツの増やし方

挿し木の準備

パッションフルーツは、挿し木で増やすことができます。挿し木は、春または秋に行います。
挿し木用の土は、水はけの良い清潔な土を使用します。市販の挿し木用土を使用するのがおすすめです。

挿し木の方法

挿し木用の土を入れた鉢に、挿し穂を挿します。挿し穂が倒れないように、支柱を立てて固定します。鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと水を与えます。挿し木後は、直射日光を避け、風通しの良い半日陰で管理します。土が乾かないように、こまめに水やりを行いましょう。
挿し木からおよそ1ヶ月程度で発根が見られるようになります。発根を確認したら、徐々に日光に当てる時間を増やし、通常の栽培管理へと移行します。

パッションフルーツの病害虫対策

パッションフルーツは、比較的病害虫に強い植物ですが、風通しが悪い場所や、過湿な状態が続くと、病害虫が発生することがあります。日頃から観察を行い、早期発見、早期対応を心がけましょう。

病気

パッションフルーツがかかりやすい病気としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 疫病:葉や果実に発生し、雨水などが原因で広がりやすい病気です。
  • うどんこ病:葉の表面に白い粉をまぶしたような状態になる病気で、風通しの悪い場所で発生しやすくなります。
  • 立枯病:土壌に潜む病原菌によって根や茎が腐ってしまう病気です。
これらの病気を予防するためには、風通しを確保し、過剰な湿気を避けることが重要です。もし病気に感染した部分を見つけたら、速やかに切り取り、適切に処分してください。農薬の使用にあたっては、必ず最新の登録情報を農林水産省のウェブサイト等で確認し、対象作物(パッションフルーツ)、適用病害虫、使用時期、使用方法(希釈倍数、使用量、使用回数)、総使用回数などの使用基準を厳守してください。また、使用者の安全確保のため、保護メガネ、マスク、手袋などの保護具を必ず着用してください。

害虫

害虫の発生を予防するためには、風通しを良くし、株を健康に保つことが重要です。また、定期的に株を観察し、早期発見、早期対応を心がけましょう。
  • アブラムシ:新芽や葉に群生し、植物の汁を吸って生育を阻害します。
  • カイガラムシ:枝や葉に付着し、同様に植物の汁を吸います。
  • ハダニ:葉の裏側に寄生し、汁を吸うことで葉を弱らせます。
  • ネコブセンチュウ:根に寄生し、根の機能を低下させて生育を妨げます。
  • ハマキムシ:葉を巻き込んでその中に潜み、葉を食害します。
害虫の発生を予防するためには、日頃から風通しを良くし、株を健康な状態に保つことが大切です。また、定期的に株全体を観察し、早期発見と早期対応を心がけましょう。

パッションフルーツの収穫と追熟

パッションフルーツの収穫時期は、6月〜11月頃です。果実が熟すと自然に落下しますが、鳥などに食べられないように、果実が色づき始めたらネットを被せておくと安心です。収穫したてのパッションフルーツは酸味が強いため、追熟させることで甘味が増し、より美味しく食べることができます。

収穫のタイミング

収穫の目安は、果皮が十分に色づき、表面に細かなシワが現れた状態です。軽く持ち上げてみて、容易に収穫できる状態であれば問題ありません。自然に落下した果実も同様に収穫可能です。

追熟の方法

収穫したパッションフルーツは、風通しの良い場所で追熟させます。室温で数日から1週間程度保管することで、果皮にシワが寄り、芳醇な香りが強まります。追熟が進むにつれて果肉の酸味が和らぎ、甘みが増加します。追熟後のパッションフルーツは、冷蔵庫で保存することで、より長く風味を保つことができます。

パッションフルーツの冬越し

パッションフルーツは耐寒性が低い植物です。そのため、寒冷地や降雪地域では、適切な冬越し対策が不可欠となります。冬越し方法としては、主に以下の2つの方法があります。

鉢上げして室内で管理

冬越し中は、水やりを控えめにし、肥料は与えないようにします。春になり、暖かくなってきたら、徐々に戸外に出して、日光に慣らしていきます。

露地栽培の場合は温室を導入

パッションフルーツの栽培は、適切な知識と管理があれば、初心者でも十分に楽しむことができます。この記事を参考に、ぜひパッションフルーツ栽培に挑戦してみてください。自家製のパッションフルーツは、きっと格別な味わいでしょう。
冬の間は、水やりは控えめにして、肥料は一切与えないようにしましょう。春になり、気温が上昇してきたら、徐々に外気に触れさせて、日光に慣らしていくことが大切です。

まとめ

パッションフルーツの栽培は、少しの注意と適切な管理を行うことで、初心者の方でも十分に楽しむことができます。この記事が、あなたのパッションフルーツ栽培の成功に少しでも役立つことを願っています。自分で育てたパッションフルーツの味は、きっと忘れられないものになるでしょう。

よくある質問

質問1:パッションフルーツは寒冷地でも栽培できますか?

回答:はい、寒冷地でも栽培は可能です。耐寒性のある品種(紫系品種など)を選び、鉢植え栽培で冬は室内で管理するなど、寒さ対策をしっかりと行えば、十分に栽培を楽しめます。

質問2:パッションフルーツの剪定時期と方法について教えてください。

回答:剪定は、主に実を収穫した後と冬場の時期に行います。収穫後の剪定では、余分な枝を整理し、冬の剪定では、株を小さくすることで、冬越しを容易にします。詳細については、本文中の「剪定」のセクションで詳しく解説していますので、ご参照ください。

質問3:パッションフルーツが実を結びません。原因は何でしょうか?

回答:実がならない原因としては、日光不足、栄養不足、人工授粉の不足などが考えられます。日当たりの良い場所で栽培し、適切な肥料を与え、人工授粉をすることで改善される可能性があります。

パッションフルーツ剪定育て方