さくらんぼの育てかた

春の訪れを告げる桜の開花も美しいですが、その後に実るさくらんぼもまた格別な魅力を持っています。宝石のように輝く赤い実は、甘酸っぱくてジューシー。自分で育てたさくらんぼを味わえる喜びは、何物にも代えがたいものです。しかし、さくらんぼの栽培は少し難しいというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。この記事では、初心者の方でも安心して美味しいさくらんぼを実らせるための、育て方のコツを徹底的に解説します。苗選びから収穫まで、さくらんぼ栽培の全てを網羅した完全ガイドとして、あなたのさくらんぼ栽培をサポートします。

さくらんぼの魅力

春には、桜に似た純白の愛らしい花を咲かせ、初夏には、ルビーのように輝く美しい実を実らせ、私たちを楽しませてくれるさくらんぼ。その実は、口に含むと弾けるような食感と共に、甘酸っぱい風味が軽やかな香りと共に広がります。一般的に、木は桜桃、果実はさくらんぼと区別されています。ソメイヨシノなど観賞用の桜との違いは、桜が白やピンクの花を咲かせるのに対し、さくらんぼの花は純白で、花粉の量が多く、花の下にくびれがあり、密集して咲く点です。また、ほとんどの木は、相性の良い他の品種の花粉で受粉しないと実を結びません。さくらんぼの名前は、「桜の坊(桜の実)」から来ていると言われています。

さくらんぼの相性

さくらんぼの実を収穫するためには、異なる品種の木を近くに植える必要があります。しかし、どの品種でも良いわけではなく、相性の良い組み合わせを選ぶことが重要です。庭が狭いと2本の木を植えるのは難しいと感じる方もいるでしょう。そんな方には、1本で実をつける品種や、1本の木に相性の良い2品種を接ぎ木したものがおすすめです。ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

さくらんぼの栽培環境

庭植えが適している果樹ですが、鉢植えでも栽培可能です。土質はそれほど選びませんが、排水性と保水性のバランスが重要です。市販の培養土を利用する際は、赤玉土小粒と腐葉土を混ぜたものがおすすめです。

さくらんぼの栽培における重要点

水やりは、庭植えと鉢植えで方法が異なります。庭植えの場合は、夏の乾燥が続く時期以外は特に水やりの必要はありません。一方、鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えてください。冬場は水やりを控え、やや乾燥気味に管理しましょう。肥料は、庭植えの場合は2月と10月に、鉢植えの場合は2月、5月、10月に与えます。2月には有機肥料、5月と10月には化成肥料の使用がおすすめです。病害虫については、葉に発生するせん孔細菌病、葉や果実に発生する灰星病や褐斑病、根に発生する根頭癌腫病、枝を枯らす胴枯病などが挙げられます。また、害虫としては、幹を食害するコスカシバ、果実を食害するシンクイムシ、新梢や枝から汁を吸うアブラムシやカイガラムシなどがいます。特にコスカシバは農薬が効きにくく、対策が難しい害虫です。

さくらんぼの詳しい育て方

苗を選ぶ際は、実生苗よりも接ぎ木苗がおすすめです。実がなるまでの時間や、どのような実がなるか不確実な実生苗に対し、接ぎ木苗は安定した品質が期待できます。接ぎ木部分が目立たず、幹がしっかり太く、皮につやがあり、硬く大きな芽が多数ついているものを選びましょう。こぶ状になっていないか、根がしっかりしているかも確認してください。種から育てる方法は、発芽率が低く、品種の特定も難しいため、あまり推奨できません。市販されているさくらんぼの多くは接ぎ木で増やされているため、種から育てても親と同じ品種になるとは限りません。植え付けの適期は12月から3月です。さくらんぼは日光を好むため、庭植え・鉢植えに関わらず、日当たりの良い場所を選んでください。風通しも重要ですので、場所選びの際は考慮しましょう。鉢植えの場合は、大きめの鉢を用意してください。植え付け時には、有機質の元肥を施しましょう。ただし、肥料過多は実がつきにくくなる原因となるため、チッ素分は控えめにすることが大切です。さくらんぼは、日当たり、風通し、水はけの良さが重要です。剪定は、冬と夏の年2回行うのが基本です。冬の剪定は12月から2月が適期で、細い枝を20~30cm程度に切り詰めます。夏の剪定は7月下旬から8月が適期で、太い枝や伸びすぎた新梢を摘心したり、切り戻したりします。さくらんぼは寒さを必要とするため、温暖な地域での栽培には不向きです。また、自家受粉しにくい性質を持つため、相性の良い異なる品種を2本以上植える必要があります。収穫は開花後40~50日程度で、日当たりの良い実から順に、十分に色づいたものから収穫しましょう。

さくらんぼ