初夏の訪れとともに、ひときわ愛らしい姿を見せる桃「はなよめ」。その名の通り、まるで花嫁のように可憐な姿と、桃の季節の到来を告げる早生品種として、多くの人々を魅了します。山梨県で生まれたこの桃は、淡いピンク色の果皮と、とろけるような甘さが特徴。この記事では、そんな花嫁桃の魅力に迫り、旬の時期や味わい、知られざる物語を紐解いていきます。
はなよめ桃とは?早生品種の概要とルーツ
「はなよめ」は、国産桃の中でも早い時期に出回る品種として有名です。まるで結婚を控えた花嫁のような名前で、桃のシーズンの幕開けを告げるように6月中旬頃からお店に並び、多くの人々を魅了します。この品種は、山梨県で偶然発見された「日川白鳳」の枝変わりから生まれたとされ、丸みを帯びた形と、みずみずしい乳白色の果肉が特徴です。平均的な重さは250g程度で、手軽に食べられるサイズも人気の理由です。果皮は薄いピンク色に染まり、見た目も美しく、高い糖度と穏やかな酸味、そしてたっぷりの果汁が楽しめます。その可愛らしい色合いが、まるで赤ちゃんの頬や花嫁の化粧を連想させること、そして旬を迎える時期が6月であることから「はなよめ」と名付けられたと言われています。繊維が少なく、とろけるような食感の果肉は、口に入れた瞬間に甘さとジューシーさが広がり、桃本来の美味しさを満喫できます。上品な香りと柔らかく果汁たっぷりの果肉に加え、しっかりとした甘さも兼ね備えているため、非常にバランスが良く、一度食べたら忘れられないと評されています。この品種を育てたのは、山梨県八代町(現在の笛吹市)の志茂勝弘氏です。氏は昭和の終わり頃、自身の畑で『日川白鳳』の枝変わりを発見しました。これを丁寧に育てて増やし、1991(平成3)年に八代町農業協同組合(現在のJAふえふき)が品種登録を出願。1995(平成7)年に正式登録されました(出典: 農林水産省 登録品種データベース, URL: https://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=4365&LANGUAGE=Japanese, 2013-03-16)。このような独自の背景と、桃の旬を誰よりも早く楽しめる早生品種であることが、「はなよめ」の大きな魅力となっています。

はなよめ桃の詳しい特徴と品種登録情報
「はなよめ」桃は、見た目から味まで、その具体的な特徴が農林水産省の品種登録データベースにも詳しく記録されています。果実の大きさは平均250g程度で、「やや大きめ」に分類され、見た目には「短楕円形」の果形が目を引きます。果頂部(お尻の部分)は浅く凹んでおり、果梗(軸)の付け根のくぼみの深さや広さは普通です。果実の真ん中と先端を通る縫合線は、どちらも深さが中程度で、美しい外観を作り出しています。果皮の色は、基本となる乳白色に、淡い桃色が広がるように色づきます。切ったばかりの果肉は乳白色で、果肉の中や種に近い部分の着色はほとんど見られません。果肉の密度は普通で、繊維は少なく、皮の剥きやすさも普通程度です。肉質は「溶質性」で、これが「はなよめ」ならではのとろけるような食感を生み出しています。果汁は非常に豊富で、甘味は中程度に感じられ、酸味は控えめ、渋味はごくわずかで、苦味はありません。上品な香りを持ち、全体としてバランスの取れた品種であり、一度食べたら忘れられないような、しっかりとした食感と口の中でとろけるような感覚が楽しめます。種は果肉にねっとりとくっつく「粘核」で、楕円形の中くらいの大きさです。種の色は薄い茶色で、表面はざらざらしています。種割れは普通程度に見られますが、裂果はほとんどありません。果実の保存性も普通程度で、比較的日持ちが良い方です。他の代表的な品種と比較すると、「日川白鳳」よりも葉の縁の波打ちが多い、果実の形が短楕円形、種の表面の粗さが目立つといった違いがあります。「武井白鳳」とは蜜腺の形や香りの強さ、「ちよまる」とは切った直後の果肉の色、「ちよひめ」とは果肉内の着色の少なさや種の表面の粗さで区別できます。このように、「はなよめ」は多岐にわたる品種特性を持ち、他の早生品種との明確な違いがあります。
はなよめ桃の食味傾向:甘さと食感のハーモニー
「はなよめ」桃は、早生種ながらもしっかりとした甘さととろけるような果肉が特徴の品種です。果汁をたっぷり含み、口当たりはなめらか。果皮は薄く手でむきやすく、果肉はややしっかりした食感を保ちながらも、口の中で優しくほどけていきます。糖度は12~16度前後と高く、酸味は控えめ。個体差はあるものの、全体的に甘さが際立ち、渋みや香りも穏やかで上品な印象です。収穫時期や産地によって微妙な違いはありますが、いずれも「とろける甘さとジューシーさ」が共通する味わいとされています。このような特徴から、「はなよめ」は甘さ・香り・食感のバランスに優れた早生桃として、多くの人々に親しまれています。
はなよめ桃の主な産地と旬の時期
「はなよめ」桃は、早生品種であることから、日本各地で栽培されていますが、中でも山梨県が主要な産地として知られています。2018年(平成30年)に行われた特産果樹生産動態等調査によると、山梨県は全国の「はなよめ」の生産量の約半分を占める圧倒的なシェアを誇っています。次いで、熊本県、和歌山県、岡山県が主な産地として挙げられます。桃全体の品種が多い中で、「はなよめ」が桃全体に占める生産量は約1%程度ですが、それでも上位20位以内に入るほどの存在感を示しており、特に早生品種の中では非常に重要な品種として位置づけられています。具体的な栽培面積を見ると、山梨県が37.2ヘクタール、和歌山県が8ヘクタール、岡山県が7ヘクタール、香川県が5.6ヘクタール(2022年/令和4年調査)と報告されており、主要な産地が安定した生産を続けていることが分かります。別のデータでは、山梨県:40.4ha(49%)、熊本県:11.0ha(13%)、和歌山県:8.3ha(10%)、岡山県:7.0ha(8%)、愛知県:5.7ha(7%)という詳細な情報も示されており、各地で高品質な「はなよめ」が生産されています。「はなよめ」の収穫時期は、原産地である山梨県では6月下旬に最盛期を迎えます。市場に出回る時期は、地域ごとの気候や栽培方法によって異なりますが、比較的温暖な地域での露地栽培のものが6月上旬頃から店頭に並び始めます。また、ハウス栽培も積極的に行われており、これらの施設栽培の「はなよめ」は、さらに早い5月下旬頃から出荷が開始されます。このように産地を移動しながら、おおむね7月中旬頃まで市場で見かけることができ、最も美味しい旬は6月中旬から下旬にかけてとなります。この時期が、「はなよめ」が最も美味しく味わえる時期として、多くの消費者に知られています。

まとめ
「はなよめ」は、山梨県で生まれた早生桃で、6月中旬頃から旬を迎えます。果肉は白く、口どけの良い柔らかさとたっぷりの果汁、糖度13.5~15%の上品な甘さが特徴。繊維質が少なく、なめらかな食感と華やかな香りで、まさに“花嫁”の名にふさわしい魅力を持った品種です。
桃の季節のはじまりを告げる「はなよめ」、ぜひ一度その甘さと香りを味わってみてください。
はなよめ桃はどんな桃ですか?
「はなよめ」桃は、山梨県で発見された「日川白鳳」の枝変わりとして誕生した、早い時期に収穫できる桃です。市場に出回るのは6月中旬頃から。一個あたり約250gで、少し丸みを帯びた楕円形をしており、果肉は乳白色で、とろけるように柔らかく、なめらかな舌触りが特徴です。糖度は13.5~15%と高く、酸味が少ないため、非常に甘くてジューシー。気品のある香りも楽しめます。
はなよめ桃はいつが旬ですか?
「はなよめ」桃が最も美味しくなる時期は、原産地の山梨県では6月下旬頃です。お店では、温暖な地域で育ったものが6月上旬から、ハウス栽培されたものは5月下旬頃から見かけるようになり、7月中旬頃まで味わうことができます。旬のピークは6月中旬から下旬にかけてです。
はなよめ桃はどこで栽培されていますか?
「はなよめ」桃の主要な産地は山梨県で、全国の生産量の約半分を占めています。その他には、熊本県、和歌山県、岡山県、香川県、愛知県などでも栽培されています。山梨県が中心的な産地ですが、日本各地で高品質な「はなよめ」桃が栽培されています。