葡萄の品種:日本の食卓を彩る人気品種の魅力と特徴を徹底解説

秋の味覚として、食卓を華やかに彩るぶどう。日本で栽培されている品種は数多く、それぞれが個性豊かな風味と特徴を持っています。この記事では、日本人に愛される人気品種に焦点を当て、その魅力を徹底解説。定番品種から近年話題の新品種まで、それぞれのルーツや味わいの違い、おすすめの食べ方などを詳しくご紹介します。知れば知るほど奥深いぶどうの世界へ、ご案内いたします。

葡萄品種の奥深さ:世界と日本の多様な葡萄の世界

葡萄は世界中で愛される果実であり、その種類は実に豊富です。地球上には1万を超える葡萄が存在するとされ、それぞれの品種が独自の風味、色合い、形状、そして栽培特性を持ち、多様な食文化を育んでいます。数ある葡萄の中から、この記事では日本で特に馴染み深い主要品種に焦点を当て、その魅力と特徴を深く探求します。日本では主に50~60種類の葡萄が商業的に栽培されており、それぞれが独自の歴史と味わいを持ち、消費者に多彩な選択肢を提供しています。例えば、一般的に流通しているのは生食用葡萄ですが、ワイン醸造用葡萄など、用途によっても品種は細分化されます。また、葡萄の消費形態として近年特に注目を集めているのが、「種なし葡萄」の存在です。葡萄には「種あり」と「種なし」のタイプがありますが、その手軽さから消費者の間では圧倒的に種なし葡萄が好まれる傾向にあります。種なし葡萄は、特殊な栽培技術によって種が形成されないように管理されており、お子様からご年配の方まで誰もが気軽に、そして安心して楽しめるという利点があります。この人気の高い種なし葡萄は、日々の食卓だけでなく、贈り物としても高い需要があります。このように、葡萄の品種選びは、単に味の好みだけでなく、食べやすさや用途、そしてその品種が持つ物語や背景まで含めて楽しめる奥深いものです。

日本で親しまれる主要葡萄品種の詳細解説:色と特徴で見る人気の葡萄

日本国内で広く栽培され、親しまれている葡萄の品種は数多く、それぞれが独自の個性を持っています。ここでは、果皮の色や主要な特徴に基づいて品種を分類し、各品種の具体的な情報をお届けします。親の品種、誕生の地、品種登録された年、そして味わいの特徴まで、それぞれの葡萄が持つ個性を詳しく見ていきましょう。

黒葡萄の代表品種とその魅力

果皮が濃い紫色から黒色の葡萄は、その濃厚な甘さと、葡萄ならではの芳醇な香りが魅力です。日本で特に人気のある品種群の一つであり、様々な交配を経て生まれた個性豊かな葡萄が数多く存在します。

安芸(あき)クイーン

安芸(あき)クイーン」は、巨峰を両親とする(巨峰の自家受粉実生)大粒の黒葡萄です。1993年(平成5年)に品種登録されました。果皮は紫黒色で、果肉はやや硬めながらも果汁が多く、マスカットを思わせる爽やかな香りを持つのが特徴です。糖度は20度前後に達し、酸味は穏やかなため、濃厚な甘さが際立ちます。種なしで皮ごと食べられる品種ではありませんが、皮は比較的剥きやすく、食べやすいとされています。栽培は比較的容易で、病害虫にも強い傾向があるため、生産者にとっても扱いやすい品種です。収穫時期は9月上旬から中旬で、秋の味覚として親しまれています。その美しい見た目と優れた食味から、贈答品としてもよく選ばれる葡萄です。

あづましずく

福島県生まれの「あづましずく」は、大粒の黒ぶどうとして知られています。福島県農業総合センターで、「ヒムロッド・シードレス」と「高妻」を交配して開発され、2004年に品種登録されました。果皮は深みのある黒紫色で、一粒あたり12~15gと大きく、食べごたえがあります。最大の特徴は、種がなく皮ごと食べられる手軽さで、人気を集めています。果肉は非常にみずみずしく、糖度は18~19度と高い甘さを誇りながらも、酸味は穏やかです。マスカットを思わせる上品な香りが、口の中に広がります。栽培のしやすさも魅力で、裂果しにくい性質のため、安定した収穫が期待できます。収穫時期は8月下旬から9月上旬と比較的早く、生食はもちろん、ジュースやゼリーなど、様々な加工品としても楽しめます。

オーロラブラック

「オーロラブラック」は、「巨峰」や「ピオーネ」に似た紫黒色の果皮を持つ、大粒のぶどうです。鳥取大学で「ブラックオリンピア」と「リザマート」を掛け合わせて育成され、1997年に品種登録されました。一粒15~20gという大きさは、見た目にもインパクトがあります。この品種の最大の魅力は、種がなく、皮ごと食べられる点です。果肉は弾力のある食感で、非常にジューシー。糖度は18~20度と濃厚な甘さが特徴ですが、酸味は控えめで、すっきりとした後味です。香りは穏やかで、ぶどう本来の風味が豊かに感じられます。ハウス栽培と露地栽培の両方に対応しており、鳥取県を中心に西日本各地で栽培されています。収穫時期は8月上旬から9月上旬で、贈答用としても人気があります。手軽に食べられる点、強い甘み、そして大粒であることから、幅広い世代に支持されています。

キャンベル・アーリー(Campbell Early)

「キャンベル・アーリー」はアメリカで生まれたぶどうで、日本には明治時代に伝わった歴史ある品種です。親品種は「ムーア・アーリー」の自家受粉実生とされていますが、正確な交配の詳細は不明です。果皮は濃い紫黒色で、粒は中粒(5~8g程度)です。特徴的なのは「フォクシーフレーバー」と呼ばれる、甘くワイルドな香りです。この独特な香りは好みが分かれることもあります。果肉はゼリーのような食感で、水分を多く含んでいます。種があり、皮は厚めで渋みがあるため、生で食べる際は皮を剥くのが一般的です。糖度は16~18度と比較的高いですが、適度な酸味もあり、甘酸っぱいバランスの取れた味わいです。生食の他、ジュース、ジャム、ワインの原料としても利用されます。特に北海道や東北地方といった冷涼な地域での栽培に適しており、日本の夏から秋にかけて収穫期を迎えます。耐病性に優れ、比較的育てやすいことから、家庭菜園でも親しまれています。

巨峰

「巨峰」は、「石原早生」と「センテニアル」を交配して作られた、日本を代表する黒ぶどうです。1942年に静岡県で育成が始まり、1957年に品種登録されました。「ぶどうの王様」とも呼ばれるように、一粒10~15gと大粒で、果皮は美しい紫黒色をしています。果肉は程よく引き締まっており、非常にみずみずしく、豊かな甘みが特徴です。糖度は18~20度と高く、ほどよい酸味とのバランスがとれており、濃厚な味わいを楽しめます。種ありと種なしがありますが、近年ではジベレリン処理によって種なしにしたものが主流です。皮を剥いて食べるのが一般的で、その芳醇な香りと奥深い味わいは、多くの人々を魅了し続けています。栽培地域は日本全国に広がり、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、長期間にわたって出荷されています。山梨県、長野県、福岡県などが主な産地として知られています。贈答品としても人気が高く、日本の食卓に欠かせない存在です。

グローコールマン

「グローコールマン」は、漆黒の果皮と大粒の実が特徴的な晩生種のぶどうです。そのルーツはイギリスにあり、「ブラック・ハンブルグ」と「ゴールデン・ハンブルグ」という品種の交配によって生まれました。日本には明治時代に渡来した歴史ある品種でもあります。一粒あたり約10~15gの重さがあり、深みのある紫黒色の果皮は、その美しさで人々を魅了します。果肉は硬く、独特の芳醇な香りを放ちます。糖度は17~19度と高く、酸味が少ないため、凝縮された甘さを堪能できます。種はありますが、皮は比較的むきやすいのが特徴です。また、非常に優れた貯蔵性を持ち、適切な冷蔵保存により年末年始まで美味しさを保てることから、「お正月ぶどう」という愛称でも親しまれています。主な産地は岡山県で、特に温室栽培が盛んです。収穫時期は10月から12月と遅めで、その長期保存性を活かし、年末年始の贈答用に重宝されています。栽培には高度な技術が求められるため、希少価値が高く、高級ぶどうとしてその名を知られています。

高尾

「高尾」は、東京都で生まれた大粒の黒ぶどうです。東京都農業試験場において、「巨峰」と「コンコード」を掛け合わせて育成され、1978年(昭和53年)に品種登録されました。果皮は美しい紫黒色を帯び、一粒10~15gと大ぶりで、その外観は巨峰を彷彿とさせます。この品種の特筆すべき点は、種がなく、皮ごと食べられることです。果肉はしっかりとし食感を持ち、噛むほどにジューシーな果汁が溢れ出します。糖度は18~20度と高く、濃厚な甘みが口いっぱいに広がりますが、酸味は控えめで、巨峰よりもさっぱりとした後味が特徴です。また、特有の芳香があり、豊かな風味を楽しめます。主な産地は東京都ですが、栽培が難しく、収穫量も限られているため、市場での希少価値は高くなっています。収穫時期は9月上旬から中旬と短く、旬の時期には少量しか出回らないため、見かけた際にはぜひ味わっていただきたい逸品です。手軽に食べられる高級大粒ぶどうとして、多くの方に愛されています。

高妻(たかつま)

「高妻(たかつま)」は、長野県の育種家、山越幸男氏によって「ピオーネ」と「リザマート」を交配して育成され、1999年(平成11年)に品種登録された大粒の黒ぶどうです。その果皮は、深みのある紫黒色で覆われ、一粒15~20gと非常に大きく、その堂々とした姿は見る者を圧倒します。果肉は締まっており、程よい歯ごたえと、口の中に広がる豊かな果汁が魅力です。糖度は18~20度と非常に高く、酸味はほとんど感じられず、濃厚な甘みが口中に広がります。香りは穏やかですが、ぶどう本来の奥深い味わいを堪能できます。種はありますが、皮はむきやすいのが特徴です。比較的栽培しやすく、裂果しにくい性質を持つため、品質が安定しているという利点があります。長野県を中心に栽培されており、収穫時期は9月上旬から中旬です。その大粒な外観と優れた味から、贈答品としても高い人気を誇り、見た目の美しさも相まって、高級ぶどうとしての地位を確立しています。

多摩ゆたか

「多摩ゆたか」は、東京都で誕生した爽やかな青ぶどうです。東京都調布市で、故・澤登晴雄氏が「巨峰」と「リザマート」を交配し、丹精込めて育成。1986年(昭和61年)に品種登録されました。果皮は、黄緑色をしており、熟すとやや黄色味を帯びてきます。一粒10~15gと大粒で、丸みを帯びた形をしています。果肉は引き締まっており、サクサクとした食感が特徴で、非常にジューシーです。糖度は18~20度と非常に高く、酸味は穏やかで、口にした瞬間、マスカットを思わせる上品な香りが広がります。皮ごと食べられることが多いですが、種はあります。栽培はやや難しく、裂果しやすい性質があるため、生産量は限られており、希少価値の高い品種です。主な産地は、東京都や山梨県などです。収穫時期は9月上旬から中旬で、その上品な甘さと芳醇な香りは、一度味わうと忘れられないほどの魅力を持っています。独特の食感と豊かな風味は、ぶどう愛好家から高い評価を得ています。

デラウェア

鮮やかな赤紫色の小粒が特徴の「デラウェア」は、アメリカで偶然生まれた実生から発見され、日本へは明治初期に伝わった長い歴史を持つぶどうです。一粒1.5~3gと小ぶりながら、房にはたくさんの実をつけます。薄い果皮に包まれた果肉は、柔らかく、口に含むとジューシーでとろけるような食感が楽しめます。糖度は18~22度と非常に高く、濃厚な甘みが際立ちますが、酸味は穏やかなため、お子様からご年配の方まで幅広い世代に愛されています。特筆すべきは、ジベレリン処理によって容易に種なしぶどうにできることで、日本の種なしぶどうの代表として広く栽培されるようになりました。一般的には皮を剥いて食べますが、その手軽さと甘さから、夏の味覚として非常に人気があります。ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、5月下旬から9月までと比較的長い期間市場に出回り、日本のぶどうシーズンを彩る重要な品種の一つです。生食はもちろんのこと、ジュース、ジャム、ゼリーなど、様々な加工品にも利用されています。

ナガノパープル

長野県で生まれたオリジナル品種「ナガノパープル」は、「巨峰」と「リザマート」を交配して育成され、2004年に品種登録されました。光沢のある美しい紫黒色の果皮を持ち、一粒12~15gと大粒なのが特徴です。何と言っても、種がなく皮ごと食べられる点がこの品種の最大の魅力です。果肉は密度が高く、しっかりとした歯ごたえがあり、口いっぱいにジューシーな果汁が広がります。糖度は18~20度と高く、酸味は控えめなので、濃厚な甘さを存分に堪能できます。ぶどう本来の芳醇な香りが強く、その優れた食味から「次世代のぶどう」として期待されています。また、皮にはポリフェノールが豊富に含まれており、栄養価が高いのも嬉しいポイントです。収穫時期は9月中旬から10月上旬で、秋の味覚として楽しまれています。そのまま食べるのはもちろん、ケーキやタルトなどのデザートにも最適で、その高級感と高品質から、贈り物としても大変喜ばれています。

ネオ・マスカット

「ネオ・マスカット」は、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と「甲州」を掛け合わせて生まれた、日本生まれの緑(白)ぶどうで、1952年に品種登録されました。果皮は黄緑色をしており、熟すとわずかに黄色味を帯びてきます。一粒は5~8g程度の中粒で、形状はマスカット・オブ・アレキサンドリアに似た細長い卵形をしています。果肉は柔らかくジューシーで、口に含むと爽やかなマスカットの香りが広がり、独特の上品な風味が楽しめます。糖度は17~19度と高く、適度な酸味もあるため、甘さと酸味のバランスが絶妙です。種あり品種ですが、皮は薄くて剥きやすいのが特徴です。比較的栽培が容易で、病気にも強いため、家庭菜園でも親しまれています。主な産地は山梨県や岡山県などです。収穫時期は9月上旬から10月上旬にかけてで、秋の味覚として食卓を彩ります。生食はもちろんのこと、デザート、ジュース、ワインの原料としても利用され、その芳醇な香りと上品な味わいは多くの人々を魅了しています。

ピオーネ

大粒で紫黒色の果実が目を引く「ピオーネ」は、「巨峰」を母親に、「カノンホール・マスカット」を父親に持つ交配品種で、1957年に静岡県で育成が始まり、1973年に品種登録されました。その名前はイタリア語で「開拓者」を意味し、その名の通り、日本のぶどう栽培に新たな可能性を切り開いた品種です。一粒の大きさは15~20gと非常に大きく、巨峰よりもさらに大粒で、果皮は美しい紫黒色をしています。果肉はプリッとした弾力があり、とてもジューシーで、口いっぱいに豊かな甘みが広がります。糖度は18~20度と高く、適度な酸味とのバランスが良く、濃厚で深みのある味わいが堪能できます。種ありと種なしの両方がありますが、近年ではジベレリン処理によって作られる種なしの「ニューピオーネ」が主流となっており、皮を剥いて食べるのが一般的です。芳醇な香りが特徴で、その優れた食味と大粒で見栄えが良いことから、贈答品としても大変人気があります。主な産地は山梨県、岡山県、長野県などで、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、7月から10月にかけて比較的長い期間出荷されています。

藤稔(ふじみのり)

濃い紫黒色の果皮を持つ「藤稔(ふじみのり)」は、日本の誇る大粒ぶどうの代表格です。神奈川県のぶどう農家が「ピオーネ」と「井川682号」を掛け合わせ、1985年に品種登録されました。その一粒は20~30gと非常に大きく、中には50gを超えるものも存在し、「ぶどうの王様」と称される巨峰を大きく上回ることから、「ぶどうの横綱」とも呼ばれています。果肉は瑞々しく、口にした瞬間、芳醇な果汁が広がります。糖度は18~20度と高く、酸味が少ないため、際立つ甘さが堪能できます。種はありますが皮はむきやすく、香りも豊かです。栽培しやすい品種であり、樹勢が強く、実りも多いため、多くの農家で栽培されています。主に神奈川県で栽培されていますが、その美味しさから全国各地で栽培されています。収穫期は8月中旬から9月上旬で、旬を迎えるとその圧倒的な存在感で市場を彩ります。見た目のインパクトと味の良さから、贈答品としても重宝され、パーティーなど華やかな場にもぴったりのぶどうです。

ブラックオリンピア

「ブラックオリンピア」は、東京都の育種家、沢登春雄氏が「巨峰」と「ヒムロッド・シードレス」を交配させ、1981年に品種登録した大粒の黒ぶどうです。美しい紫黒色の果皮を持ち、一粒12~15gと、巨峰に似た外観をしています。果肉は柔らかくジューシーで、口に含むと豊かな甘みが広がります。糖度は18~20度と高く、酸味は穏やかなため、その濃厚な甘さを存分に楽しめます。最大の特徴は、種がなく皮ごと食べられることです。皮が薄く渋みが少ないため、手軽に味わえるぶどうとして人気があります。マスカットのような独特の香りがあり、爽やかな風味も魅力です。比較的栽培は容易ですが、完熟すると実が割れやすいため、収穫時期の見極めが重要となります。主な産地は東京都や長野県などです。収穫時期は8月下旬から9月中旬で、手軽さと美味しさから家庭用としても広く親しまれています。

ブラックビート

「ブラックビート」は、熊本県の河野隆夫氏によって生み出された大粒の黒ぶどうです。「ピオーネ」と「藤稔」を交配して育成され、2006年に品種登録されました。光沢のある紫黒色の果皮を持ち、一粒15~20gと非常に大きく、藤稔に匹敵するほどの存在感です。果肉は柔らかくジューシーで、口いっぱいに果汁が溢れます。糖度は18~20度と非常に高く、酸味はほとんど感じられず、際立つ甘さが特徴です。香りは控えめながらも、ぶどう本来の深い味わいを堪能できます。種なしで皮ごと食べられるわけではありませんが、皮は比較的むきやすいです。栽培は比較的容易で、実が割れにくい性質を持つため、安定した品質が期待できます。熊本県が主な産地ですが、全国各地でも栽培されています。収穫時期は8月中旬から9月中旬で、その大粒さと優れた食味から、贈答用としても高い人気を誇ります。見た目のインパクトと美味しさを兼ね備えた、将来が期待される品種です。

マスカット・ベリーA(Muscat Bailey A)

「マスカット・ベリーA(Muscat Bailey A)」は、日本のワインぶどうの父と称される川上善兵衛氏が、「マスカット・ハンブルグ」と「ベリー」を交配し、1927年に品種登録した日本を代表するワイン用ぶどうです。果皮は紫黒色で、粒は中粒(4~6g程度)です。果肉は柔らかくジューシーで、豊かな甘みが特徴ですが、「フォクシーフレーバー」と呼ばれる、独特の土のような香りを持ちます。これはアメリカ系品種特有のもので、この香りを好む人もいれば、そうでない人もいます。主にワインの醸造に使われ、そのワインは軽やかでフルーティーな香りと、やさしいタンニンが特徴です。日本の風土に合うワイン造りを目指して開発された品種であり、赤ワインの原料として広く用いられています。生食も可能ですが、独特の風味があるため、ワイン用としての認知度が高いです。栽培は日本各地で行われており、特に山梨県、長野県、山形県などが主な産地です。収穫時期は9月中旬から10月上旬で、日本のワイン産業を支える重要な品種の一つです。

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赤ぶどうの華麗な色彩と多彩な風味

赤ぶどうは、その目を引く色彩で、食卓を華やかに彩ります。甘さと酸味の調和がとれており、品種によっては皮ごと味わえるものもあり、食感のバラエティに富んでいるのも魅力です。

甲斐路(かいじ)

甲斐路(かいじ)」は山梨県特産の赤ブドウで、「フレームトーケー」と「ネオ・マスカット」の交配から生まれ1977年(昭和52年)に品種登録されました。果皮は鮮やかな赤色を帯び、熟すと深紅の色合いを増します。一粒の重さは8~12g程度で、やや細長い楕円形をしています。果肉はパリッとした食感が楽しめ、果汁も豊富です。糖度は18~20度にもなり、程よい酸味との組み合わせが絶妙で、上品な甘さが際立ちます。マスカット特有の芳香があり、その豊かな香りに魅了されるファンも少なくありません。種はありますが、皮が薄く、渋みが少ないため、皮ごと食べられることも多いです。主な産地は山梨県で、特にハウス栽培が盛んに行われています。収穫時期は9月上旬から10月上旬で、秋の味覚として親しまれています。その美しい色と優れた вкуса から、「赤いマスカット」とも呼ばれ、ギフトとしても人気を集めています。

クイーンニーナ

「クイーンニーナ」は、広島県で誕生した赤ぶどうです。1992年(平成4年)に、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所で「安芸津20号」と「安芸クイーン」を交配して育成され、2011年(平成23年)に品種登録されました。果皮は光沢のある鮮やかな紅色で、一粒15~20gと大きく、見た目のインパクトがあります。果肉はしっかりサクサクとした食感が特徴です。果汁をたっぷり含み、糖度は20~23度と非常に高く、酸味はほとんど感じられないため、濃厚な甘みが口の中に広がります。香りは控えめながらも、ぶどう本来の奥深い味わいを堪能できます。種なしで皮ごと食べられる品種ではありませんが、皮は比較的剥きやすいです。栽培しやすく、裂果しにくい性質を持つため、安定した品質が期待できます。主な産地は広島県や山梨県などです。収穫時期は8月下旬から9月下旬で、旬の時期には、その圧倒的な甘さと大粒さから、贈答品としても重宝されています。まさに「ぶどうの女王」の名にふさわしい逸品です。

クリムゾン・シードレス

「クリムゾン・シードレス」は、アメリカで生まれた赤ぶどうです。「エンペラー」と「レッド・マスカット」を掛け合わせて開発され、1989年に品種登録されました。世界中で栽培されている代表的な輸入ぶどうの一つで、日本のスーパーでもよく見かけます。果皮は明るい赤色から濃い赤色で、粒は比較的小さめ(3~5g程度)です。この品種の一番の魅力は、種がなく皮ごと食べられることです。果肉は締まっており、カリッとした食感が特徴で、果汁も豊富です。糖度は16~18度と比較的高いですが、適度な酸味もあり、甘酸っぱいバランスの取れた味わいです。香りは穏やかですが、さっぱりとした後味が楽しめます。保存性に優れているため、長期間の流通が可能で、一年を通して手に入りやすいのが特徴です。主な産地はアメリカ、チリ、オーストラリアなどで、日本には主に南半球から輸入されます。手軽に食べられるため、おやつやデザートに最適です。

紅環(べにたまき)

「紅環(べにたまき)」は、シャインマスカットに似た外観を持つ赤ぶどうで、長野県で育成されました。2017年に品種登録されたばかりの新しい品種です。果皮は光沢のある鮮やかな紅色で、円筒形の果粒が特徴です。一粒は約10~15gと中粒で、房全体が美しい円錐形になります。果肉は硬めで締まっており、シャキシャキとした食感が楽しめます。糖度は18~20度と高く、酸味は穏やかなため、上品な甘さが際立ちます。マスカット香とまではいきませんが、芳醇な香りが口の中に広がります。種なしで皮ごと食べられる手軽さが魅力です。栽培は比較的容易で、安定した品質が期待できます。長野県を中心に栽培されており、今後の生産量増加が期待されています。収穫時期は9月中旬から10月上旬で、贈答用としても人気が高まっています。外観の美しさと食味の良さを兼ね備えた、期待の新品種です。

雄宝(ゆうほう)

「雄宝(ゆうほう)」は、大粒で円筒形の赤ぶどうで、山梨県で誕生しました。藤稔とルーベルマスカットを交配して育成され、2003年に品種登録されました。果皮は紫紅色で、果粉(ブルーム)をまとっています。一粒の重さは20gを超える大粒で、存在感があります。果肉は柔らかく、果汁が豊富です。糖度は17~19度と比較的高く、酸味は穏やかなため、甘さが際立ちます。マスカットの香りがほのかに感じられ、上品な味わいです。種なし栽培が一般的で、果皮は薄く、皮ごと食べられます。栽培は比較的容易で、豊産性です。山梨県を中心に栽培されています。収穫時期は8月下旬から9月中旬で、大粒で食べ応えのあるぶどうとして人気があります。近年、栽培面積が拡大しており、今後の普及が期待されています。

スカーレット

「スカーレット」は、鮮やかな赤色が目を引く赤ぶどうで、アメリカで育成されました。日本には1980年代に導入されました。果皮は光沢のある鮮紅色で、粒は中粒(5~7g程度)です。果肉は柔らかく、ジューシーで、果汁が豊富です。糖度は16~18度と高く、酸味はやや強めですが、バランスが良く、爽やかな甘さが楽しめます。香りは強くありませんが、ぶどう本来の風味が感じられます。種あり品種です。栽培は比較的容易で、耐病性にも優れています。山梨県、長野県などで栽培されています。収穫時期は8月中旬から9月上旬で、比較的早く収穫できる品種です。生食はもちろんのこと、ジュースやジャムなどの加工用としても利用されます。その鮮やかな色合いは、デザートやお菓子作りにも彩りを添えます。

シナノスマイル

シナノスマイルは、1995年に品種登録された長野県生まれの赤色ぶどうです。巨峰とリザマートを掛け合わせて誕生しました。その果皮は目を引く鮮やかな紅色で、一粒あたり10~12gと大きめです。果肉はしっかりとしていて、心地よいサクサクとした食感が楽しめます。また、果汁が豊富でジューシーなのも魅力です。糖度は18~20度と高く、酸味が少ないため、口の中に濃厚な甘さが広がります。香りは穏やかですが、ぶどう本来の奥深い味わいを堪能できます。種はありますが、皮は比較的剥きやすいのが特徴です。栽培しやすい品種であり、裂果しにくい性質を持つため、安定した品質が期待できます。主な産地は長野県です。旬は9月上旬から中旬で、この時期には、その大粒さと美味しさから贈答品としても喜ばれます。美しい色と甘さで、多くの人に笑顔を届ける、まさに名前通りのぶどうです。

赤嶺(せきれい)

赤嶺は、甲斐路の枝変わりとして生まれた赤色ぶどうで、1981年に山梨県の植原葡萄研究所で発見され、品種登録されました。果皮はつやのある鮮やかな紅色で、熟すとさらに濃い色になります。粒の大きさは中~大粒(8~12g程度)で、形は甲斐路によく似た細長い楕円形です。果肉は硬めで、パリッとした食感が特徴で、果汁もたっぷりです。糖度は18~20度と高く、適度な酸味もあるため、甘さと酸味のバランスが取れた味わいが楽しめます。特筆すべきは、マスカットのような芳醇な香りです。種はありますが、皮が薄く渋みが少ないため、皮ごと食べることも可能です。甲斐路よりも色づきが良く、栽培しやすいというメリットがあります。山梨県が主な産地で、収穫時期は9月上旬から10月上旬です。その美しい色と優れた食味は贈答用としても人気があり、食卓を華やかに彩ります。

紅伊豆(べにいず)

紅伊豆は、8月上旬から収穫できる大粒の赤色ぶどうで、静岡県でヒムロッド・シードレスと巨峰を交配して育成され、1990年に品種登録されました。果皮は鮮やかな紅色で、熟すとやや濃い赤紫色になります。一粒10~12gと大粒で、外観は巨峰に似ています。果肉は柔らかく、ジューシーで、豊富な果汁が特徴です。糖度は17~19度と高く、酸味が控えめなので、口いっぱいに濃厚な甘さが広がります。香りは強くありませんが、ぶどう本来の奥深い味わいを楽しめます。種なしではありませんが、皮は比較的剥きやすいです。栽培が比較的容易で、早期に収穫できるため、夏のぶどうとして人気があります。静岡県が主な産地ですが、全国各地で栽培されています。収穫時期は8月上旬から8月下旬と早く、お盆の時期によく店頭に並びます。美しい色と甘さは、夏の食卓を豊かに彩ります。

マニキュアフィンガー

マニキュアフィンガーは、山梨県の植原葡萄研究所で生まれた赤色ぶどうです。甲斐路とリザマートを交配して育成され、1988年に品種登録されました。名前の由来は、指先にマニキュアを塗ったかのような美しい形状です。果皮はつやのある鮮やかな紅色で、先端が赤く染まります。粒は10~15gと大粒で、細長い円筒形をしています。果肉は締まっていて、パリッとした食感が特徴で、とてもジューシーです。糖度は18~20度と高く、酸味が控えめなため、濃厚な甘さが際立ちます。香りは穏やかですが、ぶどう本来の爽やかな風味が楽しめます。種はありますが、皮が薄く渋みが少ないため、皮ごと食べることもできます。栽培はやや難しく、裂果しやすい傾向があるため、生産量は多くありません。主な産地は山梨県です。収穫時期は9月中旬から10月上旬で、そのユニークな見た目と優れた食味から、贈答品として大変人気があります。まさに「食べる宝石」と呼ぶにふさわしい逸品です。

ルビーオクヤマ

鮮やかな赤い果皮を持つ「ルビーオクヤマ」は、「イタリア」という白ぶどうの枝変わりとして山梨県で発見され、1980年に品種登録された由緒あるぶどうです。その名の通り、果皮は美しいルビー色を帯びており、一粒10~15gほどの大粒で、やや縦長の卵形をしています。果肉は引き締まっており、サクサクとした心地よい食感が特徴で、果汁も豊富です。糖度は18~20度と高く、酸味が穏やかなため、口の中に広がる濃厚な甘さを堪能できます。香りは強くありませんが、ぶどう本来の奥深い味わいを楽しむことができます。種はありますが、皮が薄く、渋みが少ないため、皮ごと食べられることも魅力の一つです。栽培のしやすさも特長で、着色が良い上に裂果しにくいため、安定した品質が期待できます。主な産地は山梨県です。旬は9月上旬から下旬で、その美しい色合いと優れた食味は、贈答品としても喜ばれています。食卓を華やかに彩る、見た目にも美味しいぶどうです。

ルビーロマン

大粒で鮮やかな紅色が目を引く「ルビーロマン」は、石川県が14年の歳月を費やして開発し、2008年に品種登録された、世界でも指折りの高級ぶどうとして知られています。一粒の大きさは直径3.1cm以上、重さ20g以上と、巨峰の約2倍にも達し、中には30gを超えるものもあります。まさにルビーのような輝きを放つその姿は、見る者を魅了します。果肉は柔らかく、口に含むと豊かな果汁が溢れ出し、とろけるような食感が楽しめます。糖度は20度以上と非常に高く、酸味はほとんど感じられないため、濃厚で上品な甘さが際立ちます。香りは穏やかですが、ぶどう本来の深い味わいを堪能できます。種なしで皮ごと食べられる品種ではありませんが、皮は比較的剥きやすいです。厳格な品質基準が設けられており、基準を満たしたものだけが「ルビーロマン」として出荷されます。石川県でのみ栽培され、収穫時期は8月上旬から9月下旬です。その希少性と圧倒的な品質から、初競りでは一房が数百万円もの高値で取引されることもあり、「奇跡のぶどう」とも呼ばれています。贈答用としては最高の品として、特別な日の贈り物として選ばれています。

レッドグローブ

「レッドグローブ」は、輸入ぶどうとして広く親しまれており、スーパーなどでもよく見かける赤ぶどうの代表的な品種です。アメリカで育成され、1954年に品種登録されました。果皮は鮮やかな赤色で、粒は中~大粒(8~12g程度)です。果肉は引き締まっており、パリッとした食感が特徴で、ジューシーな味わいです。糖度は16~18度と比較的高いものの、適度な酸味も感じられ、甘さと酸味のバランスが取れた味わいです。香りは控えめですが、さっぱりとした後味が楽しめます。種はありますが、皮は薄く、比較的剥きやすいのが特徴です。貯蔵性に優れており、長期輸送や保存に適しているため、一年を通して安定的に市場に出回っています。主な産地はアメリカ、チリ、オーストラリアなどで、日本には主に南半球から輸入されています。手軽に食べられる身近なぶどうとして、普段の食卓やお弁当、デザートなど、様々なシーンで活躍します。

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緑(白)ぶどうの爽やかな風味と皮ごと食感

緑色や黄緑色の果皮を持つぶどうは、すっきりとした甘さと独特の香りが特徴です。皮ごと食べられる品種が多く、近年特に人気を集めています。

黄華(おうか)

「黄華(おうか)」は、1994年(平成6年)に品種登録された、鮮やかな黄緑色が目を引くぶどうです。岡山県において、「安芸津21号」と「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を掛け合わせて誕生しました。熟すと果皮は黄金色に輝き、その美しさから「黄金のぶどう」とも呼ばれます。一粒あたり8~12g程度の中~大粒で、縦長の卵形をしています。果肉は非常に柔らかく、口に含むとジューシーな果汁が溢れ出します。糖度は18~20度と高く、酸味が穏やかなため、濃厚な甘みを堪能できます。特筆すべきは、マスカット・オブ・アレキサンドリアから受け継いだ、気品あふれる強いマスカット香です。種はありますが、皮が薄く、渋みが少ないため、皮ごと食べられることも魅力の一つです。比較的栽培しやすく、実割れしにくいことから、安定した品質を保てます。主な産地は岡山県で、9月上旬から9月下旬にかけて旬を迎えます。その時期には、美しい色合いと芳醇な香りで市場を彩ります。まさにマスカットの風味を凝縮したような、上品な味わいのぶどうです。

甲州

「甲州」は、山梨県で生まれた、800年以上の歴史を持つ日本固有のぶどう品種です。そのルーツは様々ですが、中国からシルクロードを経て日本に伝わったという説が有力です。果皮は淡い赤紫がかった灰色(グリ色)をしており、粒は3~5g程度の中粒です。果肉は締まっており、やや硬めの食感が特徴です。糖度は15~17度と控えめで、程よい酸味とのバランスが取れた、すっきりとした味わいが魅力です。和柑橘を思わせる独特の香りと、ほのかな苦みが特徴で、繊細な日本の食文化に寄り添います。主にワイン醸造に用いられ、辛口の白ワインが数多く造られています。そのワインは透明感のあるクリアな味わいで、和食との相性が抜群とされ、国内外で高く評価されています。生食も可能ですが、渋みがやや強いため、ワイン用としての認識が一般的です。主な産地は山梨県で、9月下旬から10月中旬にかけて収穫期を迎えます。日本のワイン文化を語る上で欠かせない、非常に重要なぶどう品種です。

シャインマスカット

「シャインマスカット」は、「安芸津21号」と「白南」を両親に持ち、2006年(平成18年)に品種登録された、日本を代表する人気の高い緑(白)ぶどうです。登場以来、その美味しさと手軽さで、多くの人々を虜にしてきました。果皮は鮮やかな黄緑色で、一粒10~15gほどの大粒です。最大の特徴は、種がなく、皮ごと食べられることです。皮が薄く、渋みが全くないため、老若男女問わず、手軽にそのまま美味しく味わえます。果肉は弾力があり、噛むほどにジューシーな果汁が溢れ出します。糖度は18~20度と高く、酸味が少ないため、口いっぱいに広がる濃厚な甘さが魅力です。上品で芳醇なマスカット香も特徴で、多くの人々を魅了し続けています。栽培地域は日本全国に広がり、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、長期間の出荷を可能にしています。特に、山梨県、長野県、岡山県などが主要な産地として知られています。贈答品としても非常に人気が高く、その優れた食味と食べやすさから、「ぶどうの女王」とも呼ばれる、まさに日本のぶどう界を代表するスター品種です。

翠峰(すいほう)

「翠峰(すいほう)」は、1996年(平成8年)に品種登録された、存在感のある大粒の緑(白)ぶどうです。「ピオーネ」と「センテニアル」を交配して育成されました。果皮は鮮やかな緑色をしており、完熟するとやや黄緑色を帯びてきます。一粒15~20gと非常に大きく、シャインマスカットに匹敵する大粒さが特徴です。果肉は締まっており、サクサクとした食感が楽しめます。また、果汁も豊富でジューシーです。糖度は18~20度と高く、酸味は控えめなので、濃厚な甘さを堪能できます。香りは穏やかですが、ぶどう本来の爽やかな風味が楽しめます。種なしで皮ごと食べられる品種ではありませんが、皮は比較的剥きやすいのが特徴です。栽培は比較的容易で、実割れしにくい性質を持つため、安定した品質が期待できます。主な産地は山梨県や長野県です。収穫時期は9月上旬から9月下旬で、旬の時期には、その大粒さと優れた食味から、贈答用としても高い人気を誇ります。見た目のインパクトと美味しさを兼ね備えた、高級ぶどうとして知られています。

スチューベン

「スチューベン」は、アメリカで1952年に誕生した黒ぶどうで、「ウェイン」と「シェリダン」という品種を掛け合わせて作られました。日本には1950年代に渡来しました。果皮は濃い紫黒色をしており、一粒の重さは3~5g程度の中粒です。果肉は柔らかく、豊富な果汁を含んでおり、口の中でとろけるような食感が楽しめます。糖度は18~22度と非常に高く、酸味は穏やかなため、濃厚な甘さを堪能できます。独特の強い芳香があり、この香りが好き嫌いを分けることがあります。種はありますが、皮は薄く、比較的むきやすいのが特徴です。貯蔵能力が高く、収穫後も長い期間鮮度を維持できるため、冬に出回るぶどうとして重宝されています。特に青森県のような冷涼な気候の地域での栽培に適しており、寒さに強い性質を持っています。収穫時期は10月中旬から11月上旬と比較的遅く、長期保存できる特性を生かして年末年始まで出荷されます。生で食べるだけでなく、ジュースやジャムなどの加工品としても広く利用されています。その際立った甘さと貯蔵性から、冬の味覚として親しまれています。

瀬戸ジャイアンツ

緑黄色の果皮を持つ「瀬戸ジャイアンツ」は、1989年に品種登録された、岡山県を代表する大粒の緑(白)ぶどうです。「グザルカラ」と「ネオ・マスカット」が親品種です。特徴的なのはその粒の形状で、桃のようなハート形をしていることから、「桃太郎ぶどう」とも呼ばれます。一粒は約20gと非常に大きく、その見た目のインパクトは絶大です。この品種の最大の魅力は、種がなく皮ごと食べられるという点です。果肉は引き締まっており、パリッとした食感が特徴で、非常にジューシーです。糖度は18~20度と高く、酸味は穏やかなため、口の中に濃厚な甘さが広がります。マスカット特有の爽やかな香りを持ち、その優れた味わいは多くの人々を魅了しています。栽培は比較的難しく、美しい形に育てるには高度な技術が求められます。主な産地は岡山県で、収穫時期は8月中旬から9月中旬です。そのユニークな外観と優れた食味から、贈答品としても非常に人気があり、高価な高級ぶどうとして取引されています。

トンプソン・シードレス

「トンプソン・シードレス」は、緑色の種なしぶどうです。世界で最も広く栽培されているぶどう品種の一つであり、アメリカのカリフォルニア州で発見され、1878年に品種登録されました。日本へは明治時代に導入されました。果皮は薄い黄緑色をしており、粒は小さく(2~4g程度)、細長い楕円形をしています。この品種の一番の魅力は、種がなく皮ごと食べられることです。果肉は柔らかく、果汁を豊富に含んでおり、さっぱりとした甘さが特徴です。糖度は16~18度と比較的穏やかで、酸味は控えめなので、誰にでも好まれる食べやすい味わいです。香りは強くありませんが、後味はさわやかです。保存に優れており、長距離輸送や保存に適しているため、一年を通して安定的に市場に出回っています。アメリカ、チリ、オーストラリアなどが主な産地であり、日本へは主に輸入されています。生で食されるほか、レーズン(干しぶどう)の原料としても非常に多く用いられており、世界中で愛されている万能なぶどうです。

ナイアガラ

「ナイアガラ」は、1872年にアメリカで生まれたぶどう品種で、日本には明治時代に伝わりました。「コンコード」と「キャサリン」を交配して作られました。果皮は明るい黄緑色で、熟すとやや黄色みを帯びてきます。粒の大きさは中粒(4~6g程度)です。果肉は柔らかくジューシーで、非常に強い「フォクシーフレーバー」と呼ばれる、甘く野性的な香りが特徴です。糖度は18~20度と高く、酸味は控えめであるため、口いっぱいに濃厚な甘さが広がります。種はありますが、皮は薄く、比較的むきやすいです。主にジュースやジャム、ワインの材料として使われることが多いですが、生で食べることもできます。特に冷涼な地域での栽培に適しており、耐寒性が高いのが特徴です。北海道や東北地方などが主な産地となっています。収穫時期は9月中旬から10月上旬にかけてで、その強い香りと甘さで多くのファンを魅了しています。独特の風味を持つぶどうとして、加工用としても生食用としても広く親しまれています。

マスカット・オブ・アレキサンドリア

マスカット・オブ・アレキサンドリアは、葡萄の中でも非常に古い歴史を持つ品種として知られ、その起源はエジプトの地中海沿岸地域に遡ります。あのクレオパトラも愛したとされるこの葡萄は、明治時代に日本へ伝わり、「葡萄の女王」と称される高級な緑(白)葡萄となりました。果皮は、瑞々しいエメラルドグリーンから熟成とともに黄金色へと変化します。一粒あたり8~12g程度の中~大粒で、やや縦長の卵形をしています。その果肉は緻密で引き締まっており、独特のパリッとした食感と、溢れるほどのジューシーさが特徴です。糖度は18~20度と高く、程よい酸味とのバランスが、上品で濃厚な甘さを引き立てます。何よりも特筆すべきは、その気品あふれる芳醇なマスカットの香りであり、口にした瞬間に広がる香りの豊かさは、まさに至福のひとときを与えてくれます。種ありの品種ですが、皮は薄く剥きやすいため、手軽に楽しめます。主にハウス栽培されており、特に岡山県がその主要な産地として知られています。「晴れの国岡山」の温暖な気候が、この葡萄の栽培に最適な環境を提供しています。収穫時期は年間を通してありますが、特に夏から秋にかけてが旬となります。生食はもちろんのこと、高級デザートやワイン、ジュースなど、様々な用途で利用され、その美しい見た目と卓越した味わいから、贈答品としても非常に人気があります。

ロザリオ・ビアンコ

ロザリオ・ビアンコは、山梨県の植原葡萄研究所で生まれた緑(白)葡萄です。「ロザリオ・ロッソ」と「紅三尺」を掛け合わせて開発され、1987年に品種登録されました。果皮は鮮やかな黄緑色をしており、熟すとやや黄色味を帯びてきます。一粒の重さは10~15gと大粒で、形状はやや縦長の卵形です。果肉はサクサクとした食感が特徴で、果汁が豊富です。糖度は18~20度と高く、酸味は穏やかなため、口の中に濃厚な甘さが広がります。香りは控えめながらも、葡萄本来の爽やかな風味が楽しめます。種はありますが、皮が薄くて剥きやすいのが特徴です。比較的栽培が容易であり、実割れしにくい性質を持つため、安定した品質が期待できます。山梨県が主な産地ですが、日本各地で栽培されています。収穫時期は9月上旬から下旬にかけてで、旬の時期にはその大きさと優れた食味から、贈答用としても重宝されています。シャインマスカットに似た食感と甘さを持つことから、近年注目を集めている品種です。

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まとめ

この記事では、世界中で1万種以上、日本国内でも50~60種類が市場に出回る多様な葡萄の中から、特に人気のある生食用葡萄に焦点を当て、それらの特徴や由来を詳しく解説しました。黒葡萄の深みのある甘さ、赤葡萄の鮮やかな色合い、緑(白)葡萄の爽やかな風味と手軽に皮ごと食べられる点など、それぞれの生食用葡萄品種が持つ独自の魅力とその背景について、より深く理解していただけたことと思います。また、多くの消費者に愛される種なし葡萄についても触れ、葡萄選びの際に考慮すべき重要なポイントとしてご紹介しました。この情報が、皆様が葡萄を選ぶ際の参考となり、より豊かな食体験へと繋がることを願っています。葡萄の世界は非常に奥深く、それぞれの品種が持つ個性や歴史を知ることで、その味わいを一層楽しむことができるでしょう。季節ごとに旬を迎える葡萄を味わい、その多様な魅力をぜひ体験してみてください。

葡萄の品種は世界に何種類くらいありますか?

葡萄の品種は世界中に非常に多くの種類が存在し、現在確認されているだけでも1万種類以上と言われています。これには、生食用だけでなく、ワイン醸造用やジュース加工用など、様々な用途の品種が含まれています。日本国内では、およそ50~60種類の葡萄が商業的に流通しており、消費者に広く親しまれています。

種なしぶどうが重宝される理由とは?

種なしぶどうが広く支持される最大の要因は、その手軽さにあります。種を取り除く必要がなく、そのまま手軽に口に運べるため、小さなお子様からご年配の方まで、あらゆる世代に親しまれています。特殊な栽培方法によって種が作られないように管理されており、普段の食卓を彩るだけでなく、贈り物としても高い人気を誇っています。

皮も一緒に味わえるぶどうにはどんな種類がある?

近年、皮ごと食べられるぶどうの種類は増えており、その筆頭として「シャインマスカット」が挙げられます。また、この記事で取り上げた品種の中では、「サニードルチェ」や「瀬戸ジャイアンツ」、「クリムゾン・シードレス」、「ナガノパープル」なども皮ごと食べられることで知られています。果皮と果肉の間には美味しさが凝縮されており、皮ごといただくことで、ぶどう本来の風味をより深く堪能できます。

ぶどうを選ぶ際に注目すべき点は?

ぶどうを選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮すると良いでしょう。まず、皮の色つやが良く、ムラがないものが新鮮である証です。次に、実がふっくらと張りがあり、表面に白い粉(ブルーム)が付いているものは、鮮度が良い状態であると考えられます。軸が丈夫で変色していないかどうかも確認しましょう。さらに、甘さと酸味のバランス、香り、そして皮ごと食べたいかどうか、種があるかないかなど、ご自身の好みに合わせて選ぶことが肝心です。用途に応じて、生で食べるのか、ワインにするのかを選ぶことも大切です。

「巨峰」や「ピオーネ」は、どんなぶどうから生まれたの?

「巨峰」は、「石原早生」と「センテニアル」を掛け合わせて生まれた品種です。日本を代表するぶどうとして広く知られています。「ピオーネ」は、「巨峰」を母親とし、「カノンホール・マスカット」を父親として交配された大粒の紫黒色ぶどうです。これらの品種のルーツを辿ることで、それぞれのぶどうが持つ風味や特性の源泉を知ることができます。

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