独特の香りとシャキシャキとした食感が魅力のみょうが。薬味として料理に添えれば、爽やかな風味をプラスしてくれます。日本原産の香味野菜として古くから親しまれてきたみょうがですが、旬の時期ごとの味わいの違いをご存知でしょうか?この記事では、みょうがの旬の時期と、それぞれの時期ごとの特徴、そして美味しい食べ方をご紹介します。みょうがをより深く知って、日々の食卓を豊かに彩りましょう。
みょうがとは?特徴と歴史
みょうがは、東アジアを原産とする香味野菜であり、とりわけ日本で食用として栽培されています。一般的に食べられているのは、地下茎から生じるつぼみの部分で、「花みょうが」と呼ばれており、特有の香りと心地よい歯ごたえが魅力です。その歴史は非常に古く、古代中国の書物である「魏志倭人伝」にもその名が登場しています。
みょうがの旬:種類と時期
みょうがは品種によって旬の時期が異なり、春、夏、秋と年に3回旬を迎えます。市場でよく見かけるのは主に「花みょうが」と「みょうがたけ」の2種類です。
花みょうが
花みょうがは、スーパーマーケットなどでよく見かける赤紫色のミョウガで、地下茎の先にできるつぼみの部分を指します。施設栽培も行われていますが、通常は6月から10月頃、夏から秋にかけてが旬となります。開花時期によって夏みょうがと秋みょうがに分けられ、夏みょうがは6月下旬から7月、秋みょうがは8月から9月頃に出回ります。夏みょうがは小ぶりで緑がかった色合いをしており、秋みょうがは大ぶりで鮮やかな赤紫色をしているのが特徴です。
みょうがたけ
みょうがたけは、地下茎に土を盛り、20~30cmほどの長さに伸ばしたものです。日光を遮断して栽培するため、花みょうがに比べて白っぽく見えます。旬は春で、1月頃から初夏にかけて出荷されますが、栽培に手間がかかるため、一般家庭ではあまり見かけず、高級食材として扱われることが多いです。斜めに薄切りにして、そのシャキシャキとした食感を堪能し、手巻き寿司やサラダ、かき揚げなどに使用されます。
家庭菜園でみょうがを育てる:栽培方法
みょうがは家庭菜園でも育てやすく、地域によって異なりますが、通常7月から10月頃に収穫時期を迎えます。植え付けは春に行い、地面からタケノコのように芽が出た時に収穫します。収穫する際は、根元をしっかりと握り、ねじるように引き抜くのがコツです。花が咲いてしまうと風味が落ちて品質が低下し、虫が入りやすくなるため、つぼみが固いうちに早めに収穫することが大切です。花みょうがは次々と出てくるので、こまめに確認しましょう。一度植えれば毎年自然に生えてくるため、手間がかかりません。1年目の収穫量は少ないですが、2年目以降は収穫量が増え、3年目以降は株が大きく成長し、立派なみょうがが収穫できるようになります。
みょうがの産地:地域ごとの特徴
みょうがの国内生産量の大部分は、高知県、奈良県、秋田県の3県で占められています。それぞれの産地には、独自の特徴があります。
- 北海道
北海道でみょうがを栽培しているのは八雲町のみです。生産者の高齢化などにより栽培農家は減少しており、近年ではわずか12軒の農家が栽培を続けています。八雲町のみょうがは全て露地栽培で育てられており、お盆を過ぎた頃に旬を迎えます。
- 東北
東北地方では、宮城県と秋田県が主な産地として知られています。宮城県では、「仙台みょうが」とも呼ばれるみょうがたけの生産が盛んです。特に名取市での栽培が盛んで、根株栽培から収穫まで約1年半の時間をかけて丁寧に育てられています。秋田県では、能代市や山本郡を中心に栽培されており、「JAあきた白神」が手掛ける「白神みょうが」はブランドみょうがとして知られています。白神みょうがは、豊かな香りとみずみずしさが特徴で、8月頃に収穫のピークを迎えます。
- 関東・中部
関東・中部地方では、群馬県、新潟県、長野県などが主な産地です。群馬県では、夏でも涼しい中山間地域で栽培されており、夏秋みょうがとして出荷されています。また、土を使わない養液栽培によって、一年を通して安定的な出荷を実現しています。新潟県では、上越市で棚田を利用して栽培される「棚畑(たなばた)みょうが」が特産品として有名です。上越市で昔から栽培されてきた伝統野菜である「上越野菜」にも認定されています。長野県佐久市には、「みょうがが生える家は繁栄する」という言い伝えがあり、古くからみょうが栽培の文化が根付いています。長野県の郷土料理である「やたら」には、みょうがが欠かせない食材として使われています。
- 関西
関西地方でみょうがの産地として知られているのは京都府です。京都では、「京みょうが」としてみょうがたけがブランド化されています。冬の時期に株を「カマ」と呼ばれる専用の室に入れ、湧水を利用して一定の温度を保つ独特の栽培方法が用いられています。収穫時期は4月から5月頃です。また、奈良県には「茗荷町」という地名が存在します。吉野山で自然に生えたみょうがを、夏季限定で販売している農家もあります。吉野山で収穫されるみょうがは、身が引き締まっており、食感が良く、さわやかな香りが特徴です。
- 四国
高知県は、みょうがの全国生産量の約90%を占める、日本一の産地です。中でも須崎市は、みょうがの名産地として広く知られています。高知県では、ハウス栽培と露地栽培を組み合わせることで、一年を通して安定的にみょうがを収穫することができます。ハウス栽培では、土を使わない養液栽培が主流となっています。肥料の管理、液体の供給、温度や湿度の調整、二酸化炭素濃度の管理、照明の照度、排液のモニタリングなど、全ての工程が自動制御によって行われています。ちなみに、6月13日は「みょうがの日」として制定されています。これは、6月がみょうがの出荷量が増える時期であることと、「いいみょうが」という語呂合わせから13日になったそうです。
みょうがの栄養価と健康効果
みょうがには、独特の香り成分であるアルファピネンが含まれており、食欲を増進させたり、消化を助ける効果があると言われています。アルファピネンには血行を促進する効果も期待できるため、体の冷えが気になる方にもおすすめです。また、赤紫色の部分には、高い抗酸化作用を持つアントシアニンが含まれており、美容や健康維持に役立ちます。特に、目の健康に良いとされています。その他にも、むくみや高血圧の予防に効果的なカリウムも豊富に含まれています。さらに、便秘の予防や血糖値のコントロールに役立つ食物繊維も豊富です。
みょうがの下処理と保存方法
みょうがを美味しく食べるためには、適切な下処理が重要です。まず、穂先に泥が付着している場合は、丁寧に洗い流しましょう。みょうがの表面につやがある場合は、皮を剥かずにそのまま使用することができます。表面が黒ずんでいたり、変色している部分は取り除いてください。みょうがにはアクが含まれているため、生のまま食べる場合は水にさらす必要があります。ただし、水にさらしすぎると香りが損なわれてしまうため注意が必要です。水洗い後やアク抜きのために水にさらした後は、キッチンペーパーなどで丁寧に水分を拭き取ってください。保存する際は、水気をしっかりと拭き取り、ラップで包んで冷蔵庫で保存します。なるべく早めに使い切るようにしましょう。
まとめ
みょうがは、独特の香りと優れた栄養価で、日本の食文化に深く根付いた香味野菜です。旬の時期を意識して、色々な料理に活用することで、美味しさを最大限に引き出し、健康的な食生活を送ることができます。この記事でご紹介した情報を参考に、ぜひみょうがをあなたの食卓に取り入れてみてください。