日本の夏の風物詩、マクワウリ。懐かしい甘さと香りが魅力で、家庭菜園でも人気が高まっています。摘芯や誘引といった難しい作業は必要なく、病気にも強く、忙しい方でも安心して育てられます。水はけの良い場所を選び、苗を植えるだけ。あとは自然の力で、甘くて美味しいマクワウリが実ります。今年の夏は、手間いらずのマクワウリ栽培に挑戦してみませんか?
マクワウリが放任栽培に最適な理由
マクワウリが家庭菜園、特に「放任栽培」に最適なのは、その植物が本来持つ特性によるものです。「放任栽培」とは、支柱の設置、ツルの誘引、摘芯といった細かな手入れを最小限に抑え、植物が自然のままに成長するのを促す栽培方法です。この方法は、忙しい現代人や、日々の管理に時間を割けない人にとって魅力的な選択肢ですが、すべての野菜に適しているわけではありません。では、なぜマクワウリはこの栽培方法に特に向いているのでしょうか。その理由は、マクワウリならではの3つの特徴に集約されます。まず、マクワウリは非常に生育が旺盛で、地面を這うようにしてツルを素早く、かつ広範囲に伸ばします。そのため、栽培者が支柱を立ててツルを誘導する必要がなく、畝や庭の空きスペースに自然にツルを広げさせるだけで、しっかりと成長します。この旺盛な生育力により、通常は手間のかかるツルの管理が大幅に軽減され、放任栽培の基礎となります。
次に、マクワウリの丈夫さも重要なポイントです。暑さや乾燥に対する耐性が比較的強く、多少水やりを忘れてもすぐに枯れることはありません。また、メロンやスイカなどの他のウリ科植物と比較して、病害虫の被害が少ない傾向にあるため、日々の管理の手間が大幅に軽減されます。この丈夫さは、特に家庭菜園初心者にとって大きな安心材料となります。マクワウリはウリ科に属し、原産地はインドのインダス渓谷付近と考えられており、そこから東に伝わった「東洋系メロン」に分類されます。日本には弥生時代の遺跡から種が見つかるほど古くから伝わり、各地に“ご当地マクワウリ”が存在するなど、日本の気候風土に長く適応してきた歴史があります。そのため、西洋系メロンが日本での栽培が難しいのに対し、マクワウリはスイカ、メロン、マクワウリの中で最も育てやすく、家庭菜園向きであると言えます。その素朴な甘さと食感、そして育てやすさから、初心者の方にも特におすすめできる品種です。メロンが栽培初期に寒さに当たると苗が弱ってしまうように、マクワウリも寒さに弱いですが、全体的には適応性が高いです。
さらに、マクワウリは子づるや孫づるにも自然と実をつける特性を持っています。これは、摘芯や整枝(芽かきなど)といった、実のつき方を調整する作業が不要であることを意味します。多くの果菜類では、適切な摘芯や整枝を行わないと実がつきにくかったり、形が悪くなったりすることがありますが、マクワウリの場合、これらの手間を省いても自然と豊かな収穫につながりやすいのです。結果として、放任栽培でも質の高い果実を収穫することが可能です。また、ウリ科の野菜に共通する性質として、肥料が多すぎるとツルばかりが茂り、実のつきが悪くなる「ツルボケ」を起こしやすい点も注意が必要です。この特性を理解し、適切な肥培管理を心がけることで、放任栽培でも甘く美味しいマクワウリを安定して収穫することができます。これらの特性から、マクワウリは本来の生命力が強く、栽培者が積極的に手を加えなくても十分に育ち、多くの実を結ぶ野菜であることがわかります。家庭菜園で無理なく、そして持続的に栽培の喜びを味わいたいと考える方にとって、マクワウリはまさに理想的なパートナーと言えるでしょう。
マクワウリ放任栽培の事前準備と最適な環境づくり
マクワウリの放任栽培を成功させるためには、栽培を始める前の「準備」が非常に重要です。栽培期間中の手間を最小限に抑えるために、スタート時点で適切な環境を整えておくことが、その後の管理を楽にし、豊かな収穫につながります。ここでは、家庭菜園でマクワウリを放任で育てるために必要となる具体的な準備と、理想的な環境づくりのポイントについて詳しく解説します。
種まき時期の最適化と育苗のコツ
マクワウリ栽培において、種まきに最適な時期は、気候が安定し始める5月から6月にかけてです。この時期であれば、地温が20℃を超える日も多くなり、種の発芽や苗の生長がスムーズに進みます。ただし、地域によって気候条件は異なるため、特に寒冷地では、一般的な時期よりも少し遅らせて、霜の心配が完全になくなってから植え付けるのがおすすめです。マクワウリは寒さに弱いため、栽培初期に寒さにさらされると、苗が弱り、その後の生育に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、十分に暖かくなってから植え付けることが重要です。
放任栽培では、特に初心者の方には、市販の苗から栽培を始めることを強くおすすめします。市販の苗は、ある程度の大きさに育っているため、種から育てる場合に比べて、発芽の失敗リスクを回避できます。また、植え付け後すぐにツルが伸び始めるため、初期の管理が比較的容易です。苗を選ぶ際には、病害虫の被害がなく、根元がしっかりしているものを選びましょう。もし、種から育てる場合は、4月中旬から下旬頃に、直径9〜12cm程度のポットに種まき用の土を入れ、種を3粒ずつ間隔を空けてまきます。その上に、1cm程度の土をかぶせ、たっぷりと水を与えます。まだ気温が低い時期なので、保温資材などを活用して、暖かい環境で育苗することが大切です。本葉が1〜2枚になったら、生育の良いものを2本残して間引き、さらに本葉が2〜3枚になったら、最終的に1本立ちにします。本葉が4〜5枚程度に育った苗を、植え付けの時期まで大切に育てましょう。
栽培場所選びの重要ポイント
マクワウリを放任栽培する上で、ツルが広範囲に伸びることを考慮し、十分なスペースを確保することが重要です。庭や畑など、地面に直接植えられる場所が理想的ですが、広いプランターや鉢植えでも栽培可能です。場所を選ぶ際のポイントはいくつかあります。まず、日当たりの良い場所を選びましょう。マクワウリは日光を好むため、1日に6時間以上の日光が当たる場所が適しています。十分な日光は、光合成を促進し、実を甘くするために不可欠です。次に、風通しの良い場所を選びましょう。風通しが悪いと、湿気がこもり、うどんこ病などの病気が発生しやすくなります。特に梅雨の時期は、風通しを良くすることで病害虫の発生を抑えられます。また、水はけの良い場所を選ぶことも重要です。マクワウリは過湿を嫌うため、水はけの悪い場所では根腐れを起こす可能性があります。ウリ科の植物は一般的に乾燥した環境を好むため、水はけが悪い場合は、排水対策を講じましょう。日本の夏は雨が多く、湿度が高いため、特に注意が必要です。露地栽培の場合は、株元に雨よけを設置することで、根腐れや病気のリスクを軽減できます。最後に、他の植物の生育を妨げない、十分なスペースがある場所を選びましょう。マクワウリのツルは想像以上に広がるため、周囲の植物との競合を避ける必要があります。また、ツルが地面を這うため、雑草と絡みやすくなることがあります。黒マルチや敷きわら、防草シートなどを活用することで、雑草の抑制、地温の安定、土壌の乾燥防止などの効果が期待できます。
収穫量を左右する土づくりと肥料
マクワウリの生育には、水はけが良く、有機物を豊富に含んだ肥沃な土壌が適しています。栽培を始める前の土づくりは、放任栽培を成功させるために非常に重要です。畑や庭に直接植え付ける場合は、植え付け予定日の2週間ほど前から土づくりを始めましょう。まず、植え付け場所を深さ30cm程度まで掘り起こし、土を柔らかくします。これにより、根が深く張りやすくなります。次に、掘り起こした土に、堆肥を土全体の約1/3程度混ぜ込みます。堆肥は、土壌の保水性、排水性、通気性を向上させ、微生物の活動を活発にする効果があります。土壌の酸度を調整するために、苦土石灰を適量加えて混ぜ合わせます。土壌診断キットでpHを測定するのが確実ですが、一般的な畑では1平方メートルあたり100g程度が目安です。その後、初期生育に必要な養分を補給するために、化成肥料などの緩効性肥料を規定量混ぜ込み、土を元に戻します。マクワウリは、窒素分が多いとツルばかりが茂り、実がつきにくくなる「つるぼけ」を起こしやすいので、元肥は控えめにしましょう。肥料は、窒素、リン酸、カリウムがバランス良く配合されたものを選ぶのがおすすめです。最後に、畝を立てて植え付けの準備を完了させます。畝を立てることで、水はけが良くなり、根腐れを防ぐことができます。特に水はけの悪い畑では、幅2m程度の広い畝を立て、その上にツルを這わせることで、良好な栽培環境を維持できます。
ネギ鞍つきは、土づくりと同時に畝を作る方法で、水はけと保水性が高く、微生物の活動を活発にする効果が期待できます。苗を植える1か月くらい前にネギ鞍つきを用意しておくと、ネギの根と微生物の活動によって土が団粒化し、水はけと水持ちが向上し、同時に病原菌も抑えられます。メロンとマクワウリの栽培において、畝はネギ鞍つきが有効とされています。
ウリ科の植物は、肥料が多いとツルばかりが茂り、実のつきが悪くなる「つるぼけ」を起こしやすい性質があります。そのため、元肥の量には注意し、必要以上に与えないようにしましょう。ネギ鞍つきは、土壌環境を改善し、過剰な栄養による弊害を防ぎ、植物本来の力を引き出すのに役立ちます。プランターで栽培する場合は、市販の野菜用培養土と元肥入りの肥料を使用すれば、手軽に準備できます。プランターの底には、鉢底石を敷き詰めて水はけを良くすることを忘れないようにしましょう。過去に栽培がうまくいかなかった経験がある場合や、確実に収穫量を増やしたい場合は、土壌改良材や特定の肥料の使用を検討するのも良いでしょう。適切な土づくりと肥料の準備をすることが、放任栽培で甘くて美味しいマクワウリを収穫するための第一歩です。
放任栽培のステップ解説
マクワウリの放任栽培は、植え付けが終われば、あとは自然にツルを伸ばし、最低限の管理をするのが基本です。ここでは、植え付けから収穫までの流れを4つのステップでご紹介します。これらのステップを実践することで、手間をかけずに豊かな収穫を楽しめるはずです。
ステップ1:苗の植え付け、初期の水やり、そして寒さ対策
マクワウリの苗を植え付ける時期は、一般的に5月から6月頃で、気温が十分に上がった時期が最適です。生育の良い苗を選びましょう。本葉が4~5枚程度まで育った、しっかりとした苗を選ぶことが大切です。苗をポットから取り出す際は、根を傷つけないように丁寧に扱いましょう。事前に用意した植え穴(深さ10~15cm程度)に、苗を少し浅めに植え付けるのがポイントです。深く植えすぎると、根の呼吸が妨げられ、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。植え付け後には、根が新しい土に馴染むように、株元にたっぷりと水を与えましょう。最初の水やりは、苗の活着を促す上で非常に重要です。マクワウリのツルは大きく広がるため、複数の苗を植える場合は、株間を75cm程度確保しましょう。十分なスペースを確保することで、ツルの生育を妨げず、その後の管理が容易になります。
植え付け直後は、苗の生育促進と害虫からの保護のために、保温対策を施すことをおすすめします。「あんどん」や「ホットキャップ」を利用すると効果的です。あんどんは、肥料袋やポリ袋の底を切り抜き、円筒状にして苗を覆うように設置します。四方に支柱を立てて固定することで、簡易的な保温・防虫カバーとなります。ホットキャップは、短い支柱や竹などを十字に交差させ、その上からポリフィルムを被せて裾を土で固定します。換気のために頂部に穴を開けておくと良いでしょう。市販のホットキャップも手軽に利用できます。被覆資材は、苗が成長して内部がいっぱいになったら、速やかに取り外しましょう。
ステップ2:ツルの自然な成長と敷きわら・マルチングによる保護
マクワウリの放任栽培では、ツルが自然に伸びるのを妨げないことが基本です。支柱を立てたり、誘引したりする作業は基本的に不要です。植え付け後は、ツルを地面に這わせるようにして、自然な成長に任せて育てましょう。ただし、ツルの広がりを考慮して、事前に黒マルチや敷きわら、防草シートなどを活用すると、雑草の抑制に効果的です。これにより、雑草を取り除く手間を減らせるだけでなく、土壌の乾燥を防ぎ、地温を安定させる効果も期待できます。特に、葉が茂り始め、株元からツルが伸びる方向に「敷きわらマルチ」を行うのがおすすめです。ツルがワラに巻き付くことで、地面にしっかりと固定され、風雨による被害を軽減できます。
さらに、実がなってから熟すまでの間、実の下にワラや刈草などを敷いておくことで、ダンゴムシなどの害虫から実を守り、カビの発生を抑制し、品質を保つことができます。敷きわらの代わりに、市販のマルチシートを使用することもできます。広いスペースがある場合は、特に手を加えなくても、マクワウリのツルは自然に広がり、成長していきます。
ステップ3:生育状況に応じた追肥、水やり、人工授粉
基本的に放任栽培で問題ありませんが、マクワウリの生育状況に応じて追肥を行うことで、より健全な成長と豊かな収穫を促すことができます。目安として、植え付けから約1ヶ月後と、果実が鶏卵くらいの大きさになった頃の2回、化成肥料や液体肥料を少量ずつ与えましょう。鶏卵大の時期に行う追肥は、果実の肥大を促進するために「玉肥(たまごえ)」とも呼ばれます。マクワウリの根は広範囲に伸びるため、株元を中心に円を描くように施肥すると効果的です。葉の色が薄くなってきた場合や、実の付きが悪いと感じる場合は、栄養不足の兆候である可能性があるため、追肥を検討してください。ただし、肥料を与えすぎると、葉ばかりが茂って実が付きにくくなる「つるぼけ」を起こすことがあるため、肥料のパッケージに記載されている指示に従って適切な量を守ることが重要です。
水やりについては、地植えの場合は雨水に任せて基本的に問題ありません。ただし、乾燥した状態が長く続く場合は、水やりが必要です。特に、実が成長する時期に水不足になると、実の肥大が悪くなることがあります。プランター栽培の場合は、地植えよりも土が乾燥しやすいため、土の表面が乾いていることを確認したら、朝または夕方に、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えましょう。ただし、水の与えすぎは根腐れの原因となるため、水はけの良い土壌を使用し、適切な水やりを心がけてください。
マクワウリは、受粉しないと果実が大きくならない性質があります。自然に受粉することもありますが、家庭菜園などで昆虫が少ない場合は、人工授粉を行うことをおすすめします。人工授粉は、晴れた日の早朝に行いましょう。雄花を摘み取り、雌花に雄しべを優しくこすりつけて受粉させます。雌花は、花の下に膨らみがあるのが特徴です。受粉しないと、実は大きくならずに自然に落下してしまいます。
ステップ4:収穫時期の見極めと玉直し
マクワウリの収穫適期は、交配してから大体40日前後です。果実が黄色などに色づき、ほんのりとした甘い香りが出始め、果実の直径が8~10cmほどになったら収穫タイミングです。美味しいマクワウリを収穫するためには、適切なタイミングを見極めることが大切です。いくつかのサインを総合的に判断して収穫時期を判断しましょう。まず、実が十分に大きくなり、長さが15cmくらいになったら収穫が近づいているサインです。皮の色も、品種によって黄色や黄緑色に変化してきます。例えば、黄色の「黄金マクワウリ」は、実が鮮やかな黄色になり、甘い香りが漂ってきた頃が収穫に適しています。緑色の「駒マクワウリ」の場合は、実の表面に縦の模様がはっきりと現れてきた頃が目安です。全体的に均一な色合いになっているかどうかも確認しましょう。
さらに、実から特有の甘い香りが強く感じられるようになったら、完熟に近い状態です。指で実を軽く押してみて、少し弾力がある場合は食べ頃です。最も確実なサインの一つは、実とツルの繋ぎ目が自然に外れそうになっているか、または軽く触れるだけで簡単に外れる状態です。この状態は「離層」と呼ばれ、完熟している証拠です。特に甘くて美味しい完熟マクワウリを味わいたい場合は、ツルと繋がっている部分に輪状のひび割れができるタイミングで収穫するのがおすすめです。このひび割れは、甘みが最大限に引き出されているサインです。
放任栽培では、多少収穫タイミングがずれても問題ありませんが、熟しすぎると果肉が柔らかくなり、食感が損なわれたり、日持ちが悪くなったりすることがあります。そのため、これらのサインが見られたら、早めに収穫することをおすすめします。収穫する際は、ハサミでツルを切って収穫しましょう。品種によっては、熟すと自然にヘタが取れるものもあります。収穫したマクワウリは、冷やして食べると、その素朴で優しい甘さが際立ちます。
また、マクワウリは地面に這って成長するため、実が地面に接している部分には日が当たらず、色ムラができることがあります。見た目だけで味に変わりはありませんが、色や形を整えるために、果皮の色が濃くなってきたら、実の位置を変えて裏面にも日光を当てて、色を均一にする「玉直し」を行いましょう。勢いよく動かすとヘタが取れてしまうことがあるので、慎重に行ってください。地這栽培果実用の台座やマットを使用すると、色ムラを防ぐだけでなく、土との接地面の腐敗を防止する効果も期待できます。
放任栽培を成功させるための重要ポイントと注意点
マクワウリの放任栽培は、確かに手間が少なく、家庭菜園を始めたばかりの方でも取り組みやすい栽培方法です。しかし、決して「完全に放置」というわけではありません。自然の力を借りながらも、いくつかの重要なポイントを把握し、少しの手間をかけることで、より甘く、美しい形のマクワウリを、病害虫の被害を抑えて収穫することが可能です。ここでは、放任栽培を成功させ、予期せぬトラブルを回避するための重要なポイントをご紹介します。
ツルの過度な混み合いを防ぐ管理と整枝・摘芯の考え方
マクワウリは成長が早く、どんどんツルを伸ばす性質があります。この旺盛な成長を放置しすぎると、ツル同士が複雑に絡み合い、株全体の風通しが悪化することがあります。風通しが悪い状態は、湿気がこもりやすくなり、うどんこ病などの病気を引き起こす原因となります。これを防ぐためには、定期的にマクワウリの状態を確認し、密集している部分のツルを軽く整理したり、成長を妨げている不要なツルを少しだけ切り取る「軽い整枝」が効果的です。マクワウリは孫づるに雌花をつけるため、多くの果実を収穫し、品質を高めるには、適切な「整枝」によって孫づるの発生を促すことが大切です。整枝が遅れると、ツルが過剰に伸びてしまい、どれが主要なツルか分からなくなるため、タイミングを見て行うようにしましょう。特に、梅雨の時期や湿度が高い時期は、風通しを良くすることが病気の予防に繋がるため、意識して管理することが重要です。株全体に日光が当たりやすくなり、実の成長も促進されます。放任栽培の基本を守りつつ、最小限の整枝・摘芯を行うことで、より多くの高品質なマクワウリを収穫できます。
実の品質を守るための工夫
地面にツルを這わせる放任栽培では、成長したマクワウリの実が直接土に触れることがあります。実が土に直接触れていると、土の中の微生物や湿気の影響を受けやすく、傷みや腐敗の原因になることがあります。せっかく大きく美味しく育った実が、地面との接触面から変色したり、虫に食べられたりするのは避けたいものです。このような状況を防ぎ、実の品質を維持するためには、簡単な工夫が有効です。例えば、実が大きくなり始めたら、その下に藁を敷いたり、ネット、レンガ、または板などを置いて、実が直接土に触れないように保護しましょう。この簡単な工夫をするだけで、実の表面を清潔に保て、病気や腐敗、害虫による被害のリスクを大幅に減らし、収穫できる実の品質を安定させることができます。
害虫発生時の早期発見と対処法
マクワウリは、他のウリ科の植物と比べて病害虫に強いとされています。しかし、ウリハムシやアブラムシなどの一般的な害虫による被害を受ける可能性はあります。特に、苗がまだ小さい時期や、実が付き始めて成長する時期は、害虫の標的になりやすいので注意が必要です。放任栽培では、できる限り農薬を使わない自然な方法で育てたいと考える方が多いので、害虫が発生しやすい時期には、定期的に株全体、特に葉の裏側や株の根元などを丁寧に観察する習慣をつけましょう。害虫を見つけた場合は、初期段階での対応が重要です。手で直接取り除く、水で勢いよく洗い流す、または木酢液や唐辛子スプレーなどの自然由来の忌避剤を散布するなどの方法で対処できます。早期に発見し、対応することで、被害の拡大を効果的に防ぐことができます。
収穫時期の注意とこまめなチェック
放任栽培では、葉が生い茂るため、実が見えにくくなることがあり、熟しすぎに気づかない場合があります。マクワウリは熟れすぎると、果肉が柔らかくなり風味が落ち、保存性も低下します。苦労して育てたマクワウリを美味しく味わうには、収穫時期を見極めることが大切です。対策として、実がなり始めたら、週に1~2回は丁寧に確認する習慣をつけましょう。以前述べたように、皮の色、香りの強さ、実の硬さ、ヘタの離層、表面のひび割れなどから判断し、収穫時期を逃さないようにしましょう。そうすることで、一番美味しいマクワウリを味わうことができます。
連作障害回避のための植え付け間隔
毎年安定した収穫を得るには、連作障害の知識と対策が欠かせません。連作障害とは、同じ場所に同じ種類の野菜を植え続けることで、土壌の栄養バランスが崩れ、特定の病原菌が増殖し、生育不良になる現象です。マクワウリはウリ科なので、スイカ、メロン、キュウリ、カボチャなどを同じ場所で栽培すると、連作障害のリスクが高まります。連作障害を避けるために、マクワウリを栽培した場所では、次にウリ科の野菜を植えるまでに2~3年空けましょう。その間、別の科の野菜を栽培したり、土壌改良をすることで、土壌環境を改善できます。これにより、土壌の劣化を防ぎ、継続してマクワウリ栽培を楽しめます。
まとめ
マクワウリは、昔ながらの甘さと香りが楽しめる、夏に人気の野菜です。ウリ科の中でも、日本の気候に適しており、スイカやメロンに比べて育てやすいマクワウリは、支柱や剪定の手間が少なく、気軽に栽培できます。今回紹介した放任栽培の方法なら、マクワウリ本来の生命力を活かし、自然の力で手軽に収穫を楽しめます。苗を植えたら、ツルを伸ばすだけで、観察と工夫次第で立派な実が収穫できるのが魅力です。ただし、完全に放置するのではなく、実が地面につかないように保護したり、風通しを良くしたり、雨よけを設置したり、根を強くするために土壌改良を行うなどの手入れは必要です。また、甘くて美味しいマクワウリを収穫するには、適切な時期に摘芯や人工授粉、玉直しなどの管理も有効です。これらを押さえれば、忙しい方や初心者でも気軽に栽培できます。自分で育てたマクワウリを収穫して味わうのは、家庭菜園ならではの楽しみです。手軽に、豊かな時間を過ごせるのが、マクワウリの放任栽培の魅力です。
マクワウリの放任栽培は本当に楽にできるものなのでしょうか?
マクワウリはその驚くべき生命力と丈夫さから、通常行われる支柱の設置、ツルの誘導、摘心などの手間をかけない放任栽培でも、十分に美味しい実を収穫することが可能です。しかし、完全に手を加えないわけではなく、土壌の準備、適切な時期の植え付け、実が地面に直接触れないようにするための工夫、過繁茂になったツルの整理、害虫の早期発見といった、必要最低限の管理を行うことで、より良い品質と収穫量につながります。さらに、整枝や追肥、人工授粉といった栽培管理を取り入れることで、ワンランク上のマクワウリ栽培も目指せるでしょう。
マクワウリの種まきから収穫までの大まかな流れを教えてください。
一般的な地域を基準とした場合、マクワウリの栽培スケジュールは、4月中旬から下旬にかけて、直径9〜12cm程度のポットに種をまき、苗を育てるところから始まります。苗が本葉を4〜5枚つけた頃、気温が十分に上がる5月下旬から6月上旬を目安に、畑やプランターへ定植します。マクワウリは寒さに弱いため、植え付け時期は、霜の心配がなくなるまで待ちましょう。収穫は、植え付けから約50〜60日後、または開花から40〜45日後が目安となり、通常は8月頃に最盛期を迎えます。
マクワウリの初期生育を助けるために、どのような保温・防虫対策をすれば良いでしょうか?
マクワウリの苗を植え付けた直後は、生育を促進し、「ウリハムシ」などの害虫から保護するために、「あんどん」や「ホットキャップ」を使用することをおすすめします。あんどんは、肥料袋などを筒状にして支柱で固定した簡易的なカバーであり、ホットキャップは、トンネル支柱にポリフィルムを被せて裾を土で固定するものです。苗が成長し、あんどんやホットキャップの中にいっぱいになったら、成長を妨げないように取り外します。これらの対策により、苗は安定して成長し、初期段階での病害虫の被害を軽減できます。
マクワウリの放任栽培において、剪定や人工授粉は本当に不要なのでしょうか?
マクワウリは、その生育特性から、親づるだけでなく子づるや孫づるにも自然に実をつけるため、完全に手を加えない「放任栽培」でも栽培は可能です。したがって、必須の作業として摘芯や整枝(不要な芽を取り除く作業)を行う必要はありません。ただし、より甘く、見た目も良く、品質の高いマクワウリをたくさん収穫したいと考えるのであれば、適切なタイミングで軽く剪定を行い、孫づるの成長を促すことが効果的です。加えて、家庭菜園のように昆虫の飛来が少ない環境では、受粉の確率を高めるために、晴れた日の朝早くに人工授粉を行うことで、実のつき具合と肥大を安定させることが期待できます。これらの少しの手間を加えることで、放任栽培の手軽さを維持しながら、収穫物の品質を向上させることが可能になります。