アトピー性皮膚炎のつらい痒み、少しでも和らげたいですよね。実は、毎日の食事が痒みの緩和に大きく影響することをご存知でしょうか?この記事では、アトピーの痒みを内側からケアするための食事対策をご紹介します。積極的に摂りたい栄養素や、反対に避けるべき食品を具体的に解説。今日からできる食事改善で、痒みの少ない快適な毎日を目指しましょう。
アトピー性皮膚炎と食生活の重要性
アトピー性皮膚炎によるかゆみを和らげるには、毎日の食事が非常に大切です。特定の栄養成分を積極的に摂り、控えるべき食品を知ることで、炎症を鎮め、お肌の防御機能を向上させることができます。食事によるケアは、お薬による治療やスキンケアと合わせて行うことで、より高い効果が期待できます。
アトピー性皮膚炎のかゆみが生じるメカニズム
アトピー性皮膚炎は、Ⅰ型アレルギーの一種であり、アレルゲンに対する過剰な免疫反応が原因と考えられています。アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体が生成され、肥満細胞からヒスタミンが放出されます。このヒスタミンがかゆみや炎症を引き起こすのです。免疫細胞の制御がうまくいかない状態だと、本来は無害な物質にも過剰に反応してしまうことがあります。アトピー性皮膚炎のお子様は、食物アレルギーを発症しやすい傾向にあります。
アトピー症状の緩和に欠かせない栄養成分
アトピー性皮膚炎の方の血液検査では、亜鉛やオメガ3脂肪酸が不足しているケースが見受けられます。これらの栄養成分は、皮膚の健康を維持したり、炎症を抑制したりする上で重要な働きをします。炎症を抑える作用のあるオメガ3脂肪酸、抗酸化物質、免疫機能を調整するプロバイオティクス、皮膚の修復をサポートする亜鉛、腸内環境を改善する水溶性食物繊維、お肌のバリア機能を高めるビタミン類などをバランスよく摂取することが重要です。
アトピーと腸内フローラの深い繋がり
腸内細菌のバランスが崩れてしまうと、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の発症や悪化のリスクが高まります。特に、善玉菌が減少し悪玉菌が増加することで、免疫機能が正常に働かなくなることがあります。アレルギー体質の方は、免疫の過剰な反応を抑制する「Treg(制御性T細胞)」が少ない傾向にあります。腸内で「酪酸菌」を増やすことによって、Tregを増やし、免疫バランスを正常に近づける効果が期待できます。
抗炎症作用を持つオメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は、細胞膜を構成する成分として重要であり、肌の潤いを保ち、柔軟性を高める効果が期待できます。これらの働きにより、肌のバリア機能をサポートし、乾燥から守ります。さらに、炎症を抑制する作用があるため、肌の赤みやかゆみを鎮めるのに役立ちます。体内で十分に生成されないため、食事から積極的に摂取する必要があります。乾燥が原因となる炎症や刺激を和らげることで、肌の調子を整えることが期待できます。
オメガ3脂肪酸には、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ALA(α-リノレン酸)といった種類があります。EPAやDHAは、サケ、マグロ、サバ、イワシなどの脂の多い魚や、カニ、ムール貝、カキなどの甲殻類・貝類に豊富に含まれており、血行促進や炎症抑制に貢献します。ALAは、亜麻仁油、えごま油、大豆油などの植物油やナッツ類に多く含まれ、体内で少量ながらEPAやDHAに変換されます。
体内の炎症を抑える抗酸化物質
抗酸化物質は、体内で生成される活性酸素による酸化から体を保護する役割を担っています。活性酸素は、細胞を傷つける可能性がありますが、抗酸化物質が優先的に酸化されることで、細胞へのダメージを軽減します。日々の食生活で、野菜や果物を積極的に摂取し、バランス良く抗酸化物質を取り入れることが大切です。
抗酸化物質には、ビタミンA(にんじん、ほうれん草、ピーマン、ブロッコリー、レバー、乳製品など)、ビタミンC(赤ピーマン、緑ピーマン、芽キャベツ、じゃがいも、さつまいも、オレンジ、グレープフルーツ、キウイフルーツ、アセロラ、イチゴなど)、ビタミンE(小麦胚芽油、ひまわり油、ベニバナ油、大豆油、ピーナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、ほうれん草、ブロッコリーなど)、ポリフェノール類(アントシアニン:ブルーベリー、カテキン:緑茶や紅茶、カカオ:チョコレートやココア、ルチン:そばや柑橘類、イソフラボン:大豆製品)、カロテノイド(緑黄色野菜、マンゴー、パパイヤ、柿、すいか、とうもろこし、赤唐辛子、海藻類、甲殻類)など、様々な種類が存在します。
免疫力を回復させるプロバイオティクス
プロバイオティクスを含む食品は、免疫機能の改善をサポートすると考えられています。プロバイオティクスは、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など、腸内環境を良好に保つ働きをする微生物の総称です。これらの菌は、腸内フローラのバランスを整え、免疫系の調節やアレルギー反応の抑制に効果を発揮することが期待されています。
プロバイオティクスを豊富に含む食品としては、ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、ザワークラウトといった発酵食品のほか、甘酒、ヨーグルト飲料、ケフィアなどの飲料、味噌、塩麹、醤油などの調味料が挙げられます。生きた菌だけでなく、死菌であっても、適切な量を摂取することで健康維持に貢献します。
皮膚の生成や修復を助ける亜鉛
慢性的なアトピー性皮膚炎の場合、広範囲にわたる炎症が続くことで亜鉛の消費量が増加する傾向があります。これは、皮膚が剥がれ落ちる際に亜鉛が失われるため、通常よりも多くの亜鉛が必要となるためです。亜鉛は、皮膚の再生や免疫機能の維持に不可欠なミネラルであり、不足すると皮膚のバリア機能が低下し、炎症が悪化する可能性があります。
亜鉛を多く含む食品としては、牡蠣、豚レバー、牛赤身肉、小麦胚芽、油揚げ、カシューナッツ、卵などがあります。特に牡蠣は、他の食品と比較して非常に多くの亜鉛を含んでいるため、効率的な摂取に適しています。クエン酸やビタミンC、動物性タンパク質と一緒に摂取することで、亜鉛の吸収率を高めることができます。また、アルコールの過剰摂取は亜鉛の排出を促進するため、飲酒量が多い方は特に意識して亜鉛を補給するようにしましょう。
腸内の善玉菌を増やす水溶性食物繊維
食物繊維は、便秘の解消を促すだけでなく、体内の余分な脂質や糖質の排出を助け、腸内細菌のバランスを良好に保つ上で非常に重要な役割を果たします。中でも、水溶性食物繊維は水分に溶けるとゲル状になる性質を持ち、腸内環境を健やかに保つために役立ちます。免疫機能の調整に関わるTreg細胞は、腸内で酪酸を作り出す酪酸菌によって増加すると考えられています。酪酸菌の栄養源となる食物繊維の中でも、特に水溶性食物繊維は酪酸菌を増やす効果が期待できます。水溶性食物繊維は主に植物性食品に豊富に含まれており、動物性食品にはほとんど含まれていません。
水溶性食物繊維を豊富に含む食品としては、海藻類(海苔、ワカメ、昆布など)、穀物類(オートミール、蕎麦、ライ麦パンなど)、野菜類(ゴボウ、アボカド、ニンジンなど)、果物類(ミカン、キウイフルーツなど)が挙げられます。また、海藻類に多く含まれるフコイダンは水溶性食物繊維の一種であり、免疫細胞のバランスを整え、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの放出を抑制する効果が期待されています。アトピー性皮膚炎の症状を持つマウスにフコイダンを投与した実験では、症状の改善が報告されています。
肌のバリア機能を高めるビタミン
健やかな肌を保つためには、ビタミンの摂取が効果的です。ビタミンは肌のバリア機能を強化し、肌の水分保持能力を高め、ターンオーバーを促進することで、乾燥や炎症から肌を守ります。
ビタミンAは、肌の水分バランスを整え、バリア機能の低下による乾燥を改善する効果が期待できます。また、皮膚細胞の成長を促進することでターンオーバーを正常化する働きがあり、古い角質がスムーズに排出され、新しい細胞が肌を保護します。さらに、バリア機能を強化し、水分の蒸発を防ぐ効果も期待できます。
ビタミンB群は、B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類から構成されています。水溶性ビタミンであるため、体内に蓄積されにくく、毎日積極的に摂取することが大切です。ナイアシン(ニコチン酸)は、肌のバリア機能を強化し、水分を保持する働きを助けます。さらに、肌の再生を促進し、乾燥によるダメージを修復する効果も期待されています。
ビタミンCは、肌のバリア機能をサポートし、水分保持能力を高めることで乾燥を予防する効果が期待できるビタミンです。また、コラーゲンの生成を促進し、肌のハリを保つことで乾燥による肌荒れやシワを防ぎます。抗酸化作用によって、乾燥が原因で起こる炎症や赤みを和らげる効果も期待できます。
ビタミンEは、保湿効果とバリア機能の強化に役立つビタミンです。肌の水分蒸発を抑制し、細胞膜の健康を維持することで、水分を保持する能力を高めます。さらに、抗酸化作用によって乾燥による肌のダメージや炎症を軽減し、刺激感やかゆみを和らげる効果が期待できます。
ヒスタミンを多く含む食品
特定の食品には、ヒスタミンまたはヒスタミンに類似した作用を持つ物質が豊富に含まれており、摂取するとかゆみを誘発したり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。
ヒスタミン様物質を多く含む食品としては、サバ、サケ、イカ、エビ、豚肉、蕎麦などの動物性食品や、タケノコ、ゴボウ、ナス、里芋、ホウレンソウ、トマトなどの植物性食品が挙げられます。ただし、青魚にはアレルギーや炎症反応を抑制する効果のあるn-3系(オメガ3)脂肪酸が豊富に含まれているため、積極的に摂取したい食品です。青魚を摂取した際に蕁麻疹が現れる原因は、青魚に含まれるヒスチジンが、特定の菌の作用によってヒスタミンに変換されるためです。新鮮なイワシ、アジ、サバは比較的安全であると言われています。青魚を調理する際は、衛生的な環境を心がけ、できるだけ新鮮なうちに食べることが重要です。
刺激物
血管拡張作用を持つ食品は、発汗や皮膚のほてりを引き起こし、かゆみを悪化させる可能性があります。アルコールや、唐辛子、キムチ、カレーなどの辛味の強い食品は、摂取を控えめにするように心がけましょう。
食事以外にも重要なこと
アトピー性皮膚炎の症状を管理するためには、食事だけに頼らず、日々の生活習慣や適切なスキンケアも重要になります。お薬による治療も不可欠です。もしサプリメントを試す場合は、自己判断は避け、必ず医師に相談してください。栄養バランスを考え、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることが大切です。食物繊維が豊富な穀物や豆類、良質な脂質を含むナッツ類なども積極的に取り入れましょう。これらは腸内環境を改善し、体全体の健康に良い影響を与えます。いろいろな種類の食材を食べることで、必要な栄養素を幅広く摂取できます。
アトピー性皮膚炎の原因となる食物アレルギーを特定するためには、医師の指導のもとで食物除去試験を行うことが有効です。疑わしい食品を一定期間、食事から除外し、症状の変化を観察します。もし症状が改善するようであれば、その食品がアレルゲンである可能性が高いと考えられます。ただし、自己判断で食事制限を行うと、栄養バランスが崩れる心配があるため、必ず医師の指示に従ってください。食事制限がストレスにならないように、楽しみながら取り組むことが大切です。レシピを工夫したり、家族と一緒に食事を楽しんだりしながら、無理のない方法で食習慣を改善していきましょう。忙しい日でも簡単に栄養を摂る方法として、スムージーやスープに野菜を加えたり、魚を焼くだけで手軽に栄養を摂取する方法などを活用してください。
まとめ
アトピー性皮膚炎によるかゆみを軽減するためには、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質、プロバイオティクスを含む食品をバランス良く摂取し、腸内環境を整えることが重要です。ヒスタミンを多く含む食品や刺激物はかゆみを悪化させる可能性があるため、体調が優れない時は控えるようにしましょう。食事だけに頼るのではなく、日々のスキンケアを丁寧に行い、生活習慣を見直した上で、医師と相談しながら健康的な食生活を心がけてください。