アレルギーのない食べ物
「うちの子、アレルギーがあるから…」と、家族みんなで同じ食事ができないとお悩みではありませんか?アレルギーを持つお子様がいるご家庭では、日々の食事作りが大きな負担になりがちです。でも、諦めないで!本記事では食物アレルギーに関する一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。アレルギーに関する個別の症状や治療法については、必ず専門の医療機関にご相談ください。アレルギーっ子も、そうでない家族も、みんなが笑顔で食卓を囲める、簡単で美味しいアレルギー対応レシピと、安心して選べる食品ガイドをご紹介します。今日から、食の悩みを解消して、家族みんなで楽しい食卓を実現しましょう!
食物アレルギーとは?免疫系の誤作動とアレルゲン
食物アレルギーは、本来は体に害のないはずの食物に対して、免疫システムが過剰に反応してしまう状態を指します。免疫システムが、摂取した食物を危険な異物だと誤って認識することで、アレルギー反応が引き起こされるのです。アレルギー反応を引き起こす原因となる物質はアレルゲンと呼ばれ、食物アレルギーの場合、食品に含まれる特定のタンパク質が主なアレルゲンとなります。アレルギー反応は、原因となる食物を食べたり、触れたりした際に、その特定の食物成分に対してのみ起こります。
食物アレルギーの罹患率:年齢に伴う変化
文部科学省『学校保健統計調査』によると、令和4年度(2022年度)の小・中・高等学校における食物アレルギー有症率は、小学生で2.7%、中学生で1.7%、高校生で1.3%と報告されている。これは、乳幼児期に多く見られる鶏卵、牛乳、小麦に対するアレルギーが、成長とともに症状が軽減したり、食べられるようになる(耐性獲得)ことが多いためです。しかし、その他の食品に対するアレルギーは改善しにくく、学童期以降や成人期においても、原因となる食物を食事から除去する必要がある場合が多くあります。新たにアレルギーを発症する原因となる食物アレルゲンは、年齢によって大きく異なるため、各世代ごとの注意が必要です。
食物アレルギーと間違えやすい症状:食中毒、食物不耐性
食物アレルギーと間違えやすい症状として、食中毒と食物不耐性があります。食中毒は、食品に付着した細菌やウイルスなどの病原体、またはそれらが作り出す毒素によって引き起こされます。一方、食物不耐性は、体内の酵素が正常に機能しないために症状が現れたり、食品中に含まれるヒスタミンなどの物質によってアレルギーに似た症状が出たりする状態を指します。これらの症状と食物アレルギーを区別するためには、専門医による正確な診断を受けることが重要です。
食物アレルギーの原因となる食品:鶏卵、牛乳、小麦、木の実類
食物アレルギーの原因となる食品は多岐にわたりますが、鶏卵、牛乳、小麦が代表的なものとして挙げられます。その他には、木の実類、ピーナッツ、甲殻類(エビ・カニ)、魚卵、魚類、果物類などがあります。近年、木の実類(特にクルミ、カシューナッツ)によるアレルギーが増加傾向にある。
食物アレルギーの症状:皮膚、呼吸器、消化器、神経、循環器
食物アレルギーは、皮膚、呼吸器、消化器といった体の様々な部位に影響を及ぼす可能性があります。症状は多岐にわたり、例えば、皮膚の発疹、じんましん、かゆみ、皮膚炎、目の充血、まぶたの腫れ、鼻水、鼻づまり、咳、喘鳴(呼吸時のゼーゼー、ヒューヒュー音)、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、意識の混濁、血圧の低下などが挙げられます。これらの症状は単独で発生することもあれば、複数の症状が同時に現れることもあります。
アナフィラキシー:複数の臓器に現れる重篤なアレルギー反応
アナフィラキシーとは、アレルギー反応によって複数の臓器に急激かつ重度の症状が現れ、生命を脅かす危険性がある状態です。特に、血圧の低下や意識障害を伴うアナフィラキシーはアナフィラキシーショックと呼ばれ、迅速な対応が不可欠です。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある場合は、アドレナリン自己注射薬(例:エピペン®)を常に携帯し、その使用方法を熟知しておくことが重要となります。
特殊な食物アレルギー:食物依存性運動誘発アナフィラキシー、口腔アレルギー症候群
食物アレルギーには、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)や口腔アレルギー症候群(OAS)といった特殊なタイプも存在します。FDEIAは、特定の食品を摂取してから4時間以内に運動を行った場合にのみ症状が現れるアレルギーです。一方、OASは、特定の食品を食べた直後に、口の周りの赤みや口の中の腫れ、違和感などが現れるアレルギーで、花粉症との関連性が指摘されています。
食物アレルギーの重症度:軽症、中等症、重症
食物アレルギーの重症度は、症状の程度に応じて、軽症、中等症、重症の3段階に分類されます。軽症の場合、皮膚症状は限定的で、消化器症状も軽度であり、元気がない程度で済みます。中等症になると、皮膚症状が全身に広がり、強いかゆみや軽度の呼吸困難を伴うことがあります。重症の場合、全身に症状が現れ、激しい腹痛や嘔吐を繰り返し、意識を失うこともあります。重症の場合は命に関わる危険性もあるため、直ちにアドレナリン自己注射薬を投与し、救急車を呼ぶ必要があります。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎:合併症と誤解について
食物アレルギーを持つお子様は、しばしばアトピー性皮膚炎も併発しているケースが見られます。そのため、アトピー性皮膚炎の原因が食物アレルギーであると勘違いされることがあります。アトピー性皮膚炎の症状悪化に食品が関係していると感じたとしても、自己判断で食事内容を制限するのではなく、必ず専門医に相談するようにしましょう。
食物アレルギーの診断方法:問診、血液検査、皮膚テスト、食物経口負荷試験
食物アレルギーの正確な診断には、詳細な問診、血液検査、皮膚テスト、そして食物経口負荷試験といった、複数の検査を組み合わせることが重要です。問診の際には、いつ、何を、どれくらいの量を摂取して、その後何分くらいで、どのような症状が出たのかを、できる限り詳しく医師に伝えるようにしてください。血液検査や皮膚テストでは、特定の食物に対するIgE抗体が体内に存在するかどうかを調べます。しかし、IgE抗体が陽性反応を示したとしても、それが必ずしも食物アレルギーであるというわけではありません。食物アレルギーを確定診断するためには、食物経口負荷試験が非常に重要な役割を果たします。
食物経口負荷試験:医療機関での実施と注意点
食物経口負荷試験とは、食物アレルギーの原因と考えられる食品を実際に摂取してみて、症状が現れるかどうかを慎重に観察する検査です。アナフィラキシーのような重篤な症状を引き起こすリスクがあるため、万全の準備が整った医療機関で、必ず医師の厳密な監視下で行われなければなりません。ご自身の判断で、自宅などで食物経口負荷試験を行うことは、非常に危険な行為ですので、絶対に避けてください。
食物アレルギーの治療:除去食と食品表示の確認
食物アレルギーの治療の中心は、アレルゲンとなる食物を可能な限り除去する除去食と、万が一症状が現れてしまった際に適切に対応するための対策です。除去食を行う際は、食物アレルゲンをできるだけ食事から排除しますが、必要以上に制限しすぎることは避けるべきです。食品を購入する際には、食品表示をしっかりと確認し、アレルゲンが含まれていないかをチェックすることが大切です。もし誤ってアレルゲンを摂取してしまった場合は、症状の重さに応じて適切な対応を行う必要があります。具体的な対応については、「症状が出た際の対応:症状に応じた処置」のセクションを参照してください。
除去食:必要最小限の制限と代替品の活用
食物アレルギーの治療における基本は除去食ですが、過度な制限は栄養の偏りを招くことがあります。アレルギーの程度や原因となる食品の種類に応じて、摂取可能な食品を見極めることが大切です。栄養バランスを考慮し、代替食品を積極的に利用しましょう。管理栄養士による指導を受けることで、より安全かつ効果的な除去食の実践が可能です。
食品表示:義務表示と推奨表示
食品表示法に基づき、加工食品にはアレルギーに関する表示が義務付けられています。特定原材料として、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目は必ず表示されます。また、特定原材料に準ずるものとして、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの20品目は表示が推奨されています。これらの表示を確認し、アレルゲンとなりうる食品を避けるように注意しましょう。
外食・中食での注意点:表示がないケースも
レストランやファストフードなどの外食、または店頭で販売される弁当や総菜、デリバリーフードといった中食においては、アレルギー表示に関する規則が適用されない場合があります。重度のアレルギーを持つ方は、外食・中食の利用をできるだけ避けるか、十分な注意が必要です。アレルギー対応メニューを提供する飲食店を選ぶことも有効な手段です。
症状が出た際の対応:症状に応じた処置
誤ってアレルゲンとなる食品を摂取し、症状が現れた場合は、その重症度に応じて適切な処置を行う必要があります。軽い症状であれば、抗ヒスタミン薬を服用し、安静にして経過を観察します。アナフィラキシーショックなどの重篤な症状が出た場合は、速やかにアドレナリン自己注射薬を投与し、救急車を呼んで医療機関へ搬送してもらいます。緊急時に備え、日頃からアドレナリン自己注射薬の使用方法を習得しておくことが重要です。
経口免疫療法:アレルギー体質改善への挑戦
食物アレルギーの治療戦略の一つとして、経口免疫療法が注目されています。これは、アレルゲンとなる食物を極微量から摂取し、段階的に量を増やしていくことで、体がアレルギー反応を示しにくい状態を目指す治療法です。ただし、経口免疫療法には、アナフィラキシーをはじめとする深刻な副作用のリスクが伴います。そのため、専門的な知識と経験を有する医師の厳密な管理下で行われるべきです。経口免疫療法に関心がある場合は、まずかかりつけ医に相談し、適切な医療機関への紹介を依頼することが重要です。
食物アレルギーの原因は28品目だけではない?
食品表示法では、アレルギー表示が義務付けられた8品目と、表示が推奨される20品目が定められています。しかし、10代以降の食物アレルギー患者の中には、これらの28品目だけでは自身のアレルゲンを網羅できないと訴える人がいる。この背景には、木の実や果物に対するアレルギーを持つ人が増加しているという現状があります。
28品目不使用食品の限界を知る
28品目のアレルゲンを使用していない食品は、多くの食物アレルギーを持つ人々の食生活を支える上で重要な役割を果たしています。しかし、これらの食品がすべての食物アレルギーを持つ人にとって万能であると考えるべきではありません。特定の子供を対象とする場合、魚介類、木の実、果物などのアレルギーを持つ人がいないか、または28品目の表示義務・推奨品目だけでアレルゲンを十分にカバーできているかを慎重に確認する必要があります。
アレルギー対応レシピを食卓へ
食物アレルギーを持つ子供たちは、食べられる食材が限られてしまうため、家族や友達と同じような食事を共有することが難しい場合があります。特に、子供に人気のハンバーグやスパゲッティなどのメニューが食べられないことは、栄養面だけでなく、食事を楽しむという精神的な側面においても大きな負担となることがあります。近年では、アレルギーに対応したレシピが数多く公開されているため、それらを参考にしながら、様々なアレンジを加えて食卓を豊かにすることをおすすめします。
- 小麦粉の代わりに米粉を100%使用したスパゲッティ・ミートソース
- パン粉の代わりにじゃがいもを使用したハンバーグ(小麦アレルギー対応)
- 中華麺の代わりに米粉麺、卵の代わりにじゃがいもとかぼちゃと片栗粉を使用したオムレツ風料理
まとめ
アレルギーを持つ人が安心して食べられる食品は多岐にわたりますが、その選択肢は個々のアレルギーの種類や重症度によって大きく異なります。一般的に、新鮮な果物や野菜、精製されていない穀物、豆類、種実類はアレルギー反応を起こしにくい食品として挙げられます。ただし、これらの食品群の中にも、特定の果物や野菜(例えば、セロリやキウイなど)、豆類(例えば、大豆やピーナッツなど)に対してアレルギーを持つ人がいるため、注意が必要です。また、アレルギー表示が義務付けられていない食品や、加工食品に含まれる添加物などにも注意を払う必要があります。安全な食品を選ぶためには、原材料表示を注意深く確認し、不明な点があれば製造元に問い合わせるなどの対策が重要です。
よくある質問
質問1:食物アレルギーは遺伝するのでしょうか?
食物アレルギーになりやすい体質は遺伝する可能性はありますが、親が食物アレルギーを持っていたとしても、子供が必ず食物アレルギーになるとは限りません。また、親と同じ種類の食物アレルギーになるとも限りません。
質問2:大人になってから食物アレルギーを発症することもありますか?
はい、大人になってからでも食物アレルギーになることがあります。特に、花粉症と関係の深い口腔アレルギー症候群(OAS)は、大人になってから発症することが多いことで知られています。
質問3:食物アレルギーを克服する方法はあるのでしょうか?
食物アレルギーの治療法として経口免疫療法が知られていますが、その効果は全ての人に認められるものではありません。加えて、アナフィラキシーといった深刻なアレルギー反応を誘発するリスクも伴います。経口免疫療法に関心をお持ちの場合は、アレルギー専門医にご相談いただき、治療内容やリスクについて十分な情報提供を受けた上で、慎重に判断することが重要です。