卵アレルギーを持つ方にとって、食品選びは常に慎重にならざるを得ません。特に、様々な食品に含まれる「乳化剤」は、卵由来の成分が含まれているのではないかと不安に感じる方もいるのではないでしょうか。この記事では、乳化剤の基礎知識をわかりやすく解説し、卵アレルギーを持つ方が安心して食品を選ぶための注意点を紹介します。乳化剤の種類や表示の見方を知り、日々の食生活をより安全で豊かなものにしましょう。
食物アレルギーの基本
食物アレルギーは、特定の食品に含まれるタンパク質に対して、体が過剰な免疫反応を示す状態です。症状は、皮膚のかゆみや発疹、胃腸の不調、呼吸困難など、様々な形で現れます。重篤な場合には、アナフィラキシーと呼ばれる命に関わる状態を引き起こすこともあり、注意が必要です。
鶏卵アレルギーについて
鶏卵アレルギーは、鶏卵に含まれるタンパク質が原因で発生します。特に卵白に含まれるタンパク質がアレルギーの原因となりやすいですが、加熱によってアレルギーを引き起こす力が弱まることがあります。

鶏卵アレルギーの食事における注意点
鶏卵アレルギーの方は、鶏卵(うずら卵やアヒルの卵も含む)そのものだけでなく、鶏卵を使用した料理や食品を避ける必要があります。鶏卵はパン、お菓子、ハム、調味料など、様々な食品に使用されていることが多いため、原材料表示をしっかりと確認することが重要です。
卵が使われている可能性のある食品例
- パン類(ロールパン、クロワッサン、甘いパン、惣菜パンなど)
- 麺類(中華麺、焼きそば、即席めん、パスタ(フレッシュ)など)
- お菓子(ケーキ、クッキー、ビスケット、プディング、ババロア、マシュマロ、アイスクリームなど)
- 魚の練り製品(はんぺん、かまぼこ、ちくわなど)
- 食肉加工品(ハム、ウィンナーソーセージ、ベーコンなど)
- 調味料(マヨネーズ、タルタルソース、一部のサラダドレッシングなど)
- お惣菜(揚げ物、コロッケ、天ぷら、ハンバーグ、お好み焼きなど)
- 粉類(天ぷら粉、ホットケーキミックス、お好み焼き粉など)
卵アレルギーに関する留意点
鶏肉のタンパク質は、卵アレルギーの原因物質とは異なるため、卵アレルギーを持つ場合でも、通常は鶏肉を避ける必要はありません。ただし、鶏肉の摂取については、医師の指導に従ってください。魚卵(イクラなど)のタンパク質も卵アレルゲンとは異なりますが、魚卵に対するアレルギーを併発している場合もあるため、注意が必要です。
卵アレルギーでも摂取できる食品添加物
食品添加物である卵殻カルシウムは、卵のタンパク質を含まないため、卵アレルギーがあっても避ける必要はありません。ただし、「レシチン(卵由来)」と表示されているものについては、除去するようにしてください。
鶏卵不使用時の調理における工夫
鶏卵が使えなくても、小麦粉などの粉類、パン粉、すりおろしたじゃがいもやレンコン、または潰したご飯などを繋ぎとして利用したり、膨張剤(ベーキングパウダー)でふっくらとさせたり、バターや牛乳、豆乳などを加えてしっとり感を出すといった工夫で、ハンバーグのような料理や焼き菓子なども美味しく作ることが可能です。

鶏卵アレルギーの原因物質と、食べられる範囲を広げる方法
鶏卵のアレルゲンは、加熱によってアレルギー反応を引き起こす力が弱まる傾向があるため、加熱処理された食品であれば症状が出ずに食べられるケースもあります。摂取可能な範囲(量)を広げるためには、専門医の指示のもとで食物経口負荷試験を受け、その結果に基づいて判断するようにしましょう。
乳化剤について
乳化剤とは、通常では混ざり合わない水と油を均一に混ぜるための添加物です。食品だけでなく、化粧品や洗剤など、幅広い分野で使用されています。食品に使用されている乳化剤は摂取可能なものですが、化粧品や洗剤に含まれる界面活性剤は食用ではありません。
乳化のメカニズム
乳化とは、通常は分離してしまう水と油が、安定して混ざり合った状態になることを指します。身近な例としては、牛乳、バター、マヨネーズ、チョコレートなどが挙げられます。乳化には、水の中に油の粒子が分散する水中油型(O/W型)と、油の中に水の粒子が分散する油中水型(W/O型)の2つのタイプが存在します。
乳化剤の役割
食品に乳化剤を加えることで、食品の舌触りを滑らかにしたり、風味を向上させたり、品質の劣化を遅らせたりすることができます。その他にも、分散性の向上、保湿性の向上、浸透性の向上、泡立ちの調整、消泡効果など、様々な効果が期待できます。例えば、パンやケーキにおいては、デンプンと反応して食感を柔らかくしたり、泡立ちを良くするために使用されます。また、油脂を均一に分散させることで、生地を滑らかにし、水分の蒸発を抑制して品質の劣化を防ぐ効果もあります。
乳化剤の原料
乳化剤は、卵、大豆、砂糖、昆布、柑橘類、植物油など、多岐にわたる原料から製造されます。日本国内で食品添加物として許可されている乳化剤は複数存在しますが、特に広く使用されているのは、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンの3種類です。
グリセリン脂肪酸エステル
グリセリン脂肪酸エステルは、天然の油脂にも含まれており、食品用乳化剤として最も一般的なものです。乳化剤としての用途以外にも、起泡剤、豆腐製造時の消泡剤、デンプンの品質改良剤など、幅広い用途で利用されています。
ショ糖脂肪酸エステル
長きにわたり甘味料として親しまれてきた砂糖(ショ糖)と、食用油に由来する脂肪酸を組み合わせて作られる乳化剤です。味や臭いがほとんどなく、安全性が高い食品用乳化剤として広く知られています。乳化作用に加え、溶解性向上、分散性向上、泡立ち、消泡、保湿、老化防止、洗浄、食感改良など、様々な目的で使用されています。
レシチン
卵黄、菜種油、大豆などから抽出されるリン脂質の一種です。卵黄、大豆製品、穀物、ごま油、コーン油、小魚、レバー、うなぎなどに豊富に含まれており、抽出されたレシチンを主な成分とする健康食品も製造されています。
食物アレルギー対応の食品選びのポイント
食物アレルギーをお持ちの方が食品を選ぶ際には、原材料表示を丁寧に確認することが何よりも重要です。アレルギー物質の表示が義務付けられている食品については、必ず表示を確認し、不明な点があれば製造元に問い合わせるようにしましょう。また、外食をする際や惣菜を購入する際には、アレルギー物質の使用状況を店員に確認することが大切です。
食物経口負荷テストとは
食物経口負荷テストは、アレルギーを引き起こす可能性のある食品を実際に口にして、症状が現れるかどうかを調べる検査です。専門医の指示のもと実施され、摂取可能な量を見極め、食生活の選択肢を増やす上で非常に重要な役割を果たします。
保育園や学校の給食における対応
保育園や学校などの集団給食では、安全性を最優先に考え、アレルギーの原因となる食物を「完全に除去する」か「除去しない(他のお子さんと同様の食事)」かのいずれかを選択することが基本となります。集団給食の場では、一人ひとりの“食べられる量”に合わせた食事を提供することは困難です。
まとめ
食物アレルギーへの食事対策は、原因となる食物の除去だけでなく、栄養バランスに配慮した代替食品の選択や調理方法の工夫が不可欠です。さらに、乳化剤に関する正確な知識を持つことで、食品を選ぶ際の選択肢を広げることが可能です。食物アレルギーを持つ方が、安全で豊かな食生活を送れるよう、正しい知識と適切な対策を身につけましょう。
質問:食物アレルギーの症状が現れた場合、どのように対処すれば良いですか?
回答:食物アレルギーの症状が現れた際には、速やかに医療機関を受診してください。症状が軽度であっても、自己判断せずに医師の診断を受けることが重要です。重篤な症状の場合は、救急車を呼ぶなどの緊急対応が必要となることもあります。
質問:食品アレルギーは、放っておいても自然に良くなることはありますか?
回答:食品アレルギーは、成長に伴い自然に改善されるケースも見られます。特に、鶏卵、牛乳、小麦といったアレルギーは、幼少期に発症しても、成長するにつれて抵抗力がつくことがあります。しかしながら、自然に治癒するかどうかは人それぞれ異なり、専門医による適切な診断が不可欠です。
質問:食品アレルギーに対応した料理のレシピは、どこで手に入れることができますか?
回答:食品アレルギーに対応したレシピは、ウェブサイトや書籍などで豊富に公開されています。アレルギー対応に特化したレシピサイトや、食品アレルギーに関する情報提供サイトなどを利用するのがおすすめです。さらに、医師や栄養士に相談して、個々の体質やアレルギーの程度に合わせたレシピを紹介してもらうのも良い方法です。