卵は私たちの食生活において欠かせない食材の一つですが、卵に含まれるタンパク質に過敏に反応してしまう「卵アレルギー」は、多くの人々にとって深刻な問題です。特に幼児期に発症することが多く、症状は軽度なものから重篤なものまで幅広くあります。この記事では、卵アレルギーの基本的な知識から、医薬品との関係、さらには卵が使われる代表的な食品やパン作りにおける役割まで、卵とアレルギーについて詳しく解説します。
卵アレルギーとは?
卵アレルギーは、体内に存在する卵白や卵黄のタンパク質に対して過剰反応が起こる状態を指します。主な原因となるのは、オボアルブミンやオボムコイドなどのタンパク質です。症状は軽症の場合は発疹や腹痛などですが、重症化するとアナフィラキシーショックなど命に関わる危険な状態に陥ることもあります。 卵アレルギーの発症はおもに幼児期に見られますが、7割以上が学童期までに寛解します。しかし一生付き合っていく必要のある方もいます。オボアルブミンは60℃で変性しますが、オボムコイドは100℃での加熱や消化酵素にも強いため、加熱が不十分な卵を食べるとアレルギー反応を引き起こす可能性があります。 アレルギーが発症する原因として、皮膚からアレルゲンが侵入することが指摘されています。赤ちゃんの肌に卵の加工食品のかけらが触れることで、アレルゲンが体内に入り込むのかもしれません。 卵アレルギーは成長とともに改善する傾向にありますが、経口減感作療法などの新しい治療法の研究も進められています。他の鳥の卵やアヒル、ガチョウの卵でもアレルギー反応が出る可能性があり、個人差があるため注意が必要です。卵以外の食品から必要な栄養素を摂取することが重要です。
卵アレルギーと医薬品の関係
卵アレルギーは比較的一般的な食物アレルギーの一つですが、生活に影響を及ぼす可能性があります。卵には多くのタンパク質が含まれており、体内で異物と認識されるとアレルギー反応が引き起こされます。症状は発疹や腹痛から呼吸困難を伴うアナフィラキシーショックまで様々です。 医薬品との関係においても、一部に卵由来の成分が含まれているため、卵アレルギーのある人は注意が必要です。代表例としてインフルエンザワクチンがあり、製造工程で卵が使用されています。また、ホルモン剤や抗がん剤にも卵由来成分が含まれる場合があります。 このように、卵アレルギーのある人は医師に正しく伝え、処方薬に卵由来成分が含まれていないかを確認する必要があります。万が一アレルギー反応が出た場合は迅速な対応が求められるため、普段から自身のアレルギー体質を理解し、適切な対処法を身につけておくことが重要です。 一方で、2016年3月の厚生労働省審議会で「卵白由来の医薬品成分の有用性は確認できない」との見解が出され、各社が自主回収に踏み切ったことから、現在は卵を原料とした医薬品の流通はほとんどありません。しかし、ワクチンなどの一部製品では製造工程で卵が使用されている場合があり、重度のアレルギーがある人は細心の注意を払う必要があります。安全な治療を受けるためにも、かかりつけ医や薬剤師への相談が不可欠です。
卵が使われている代表的な食品
卵は、私たちの食生活に欠かせない存在です。パンやサンドイッチ、フレンチトーストなどの主食から、ケーキやクッキー、ビスケットなどのお菓子、アイスクリームやプリンなどのデザートまで、幅広い分野で活躍しています。そして、お菓子類の練り製品や、トンカツ、コロッケなどの揚げ物、麺類、食肉加工食品のつなぎとしても重宝されています。また、マヨネーズや天ぷらの衣など、風味や色付けにも一役買っています。 卵はパンやお菓子の家庭レシピにもよく登場し、熱によりタンパク質が固まる性質から、つなぎとしても優れた食材です。食物繊維とビタミンC以外のほとんどの栄養素が含まれており、特に良質なタンパク質が豊富で、「完全栄養食品」と呼ばれています。 一方で、卵アレルギーが増加傾向にあり、日本で最も多いアレルギー疾患となっています。このため、平成14年4月から加工食品にアレルギー症状を引き起こす物質の表示が義務付けられました。卵は、食生活に欠かせない反面、アレルギーの問題もあり、両面から注目される食材なのです。
パンを作るときの卵の役割
パンを焼く際、卵は重要な役割を担っています。卵は生地に弾力性と柔らかさを与え、理想的な食感を実現します。卵に含まれるレシチンが生地の混ぜ捗りを良くし、なめらかで扱いやすくします。また、卵の保水力がモチモチとした食感を生み出します。さらに、卵に含まれるたんぱく質が焼き色づきを促進し、香ばしい風味を加えます。卵の量を調整することで、食感や風味を微調整できます。つまり、卵はパン作りに欠かせない存在なのです。上手に卵の力を活用することで、職人は理想を形にできるのです。 一方で、クッキーやビスケット、メロンパンの皮のように卵を多用する菓子類では、卵本来の風味を感じることができます。また、マヨネーズを使った惣菜パンでも卵の風味が感じられます。食パンのように卵不使用のパンもありますが、菓子パンや惣菜パンで卵を使わないのは難しいでしょう。卵は生地に黄色の彩りとツヤを与え、テカリを生み出し、おいしそうな仕上がりになります。
まとめ
卵は栄養価の高い「完全栄養食品」として多くの料理に使われる一方で、卵アレルギーは特に幼児期に見られる一般的なアレルギー疾患です。症状には軽度から重度まで幅があり、卵を使用した食品や医薬品には十分な注意が必要です。成長とともにアレルギーが改善することもありますが、日常生活での対応は欠かせません。卵の多彩な役割とアレルギーへの理解を深め、安全な食生活を送るための情報を提供しました。