胡麻の効果

食卓に欠かせない存在、ごま。その小さな粒には、知られざるパワーが秘められています。風味豊かなアクセントとしてだけでなく、古くから栄養価の高い食材、そして生薬としても重宝されてきたごま。実は、現代人に不足しがちなビタミンやミネラルを豊富に含み、私たちの健康を力強くサポートしてくれるのです。今回は、そんなごまの知られざる効果に迫ります。その小さな体に秘められた、驚くべき健康効果を一緒に見ていきましょう。

ごまとは?:小さな粒に秘められた力

ごま(英名:Sesame)は、アフリカを原産とする一年草の植物です。その植物は白い美しい花を咲かせ、種子を宿した鞘を実らせます。この種子こそが、日々の食卓で私たちが口にしているごまなのです。独特の風味と心地よい食感で料理にアクセントを加えるごまは、太古の昔から栄養豊富な食品として、また、生薬としても重宝されてきました。現代人が不足しがちなビタミンやミネラルを豊富に含み、体のエネルギー代謝を助け、抗酸化作用を高める効果が期待できます。

ごまの種類:白ごま、黒ごま、金ごまの個性の違い

スーパーマーケットなどでは、白ごま、黒ごま、金ごまといった、さまざまな種類のごまが販売されています。色合いはもちろんのこと、香りや風味もそれぞれ異なり、料理の種類や好みに合わせて使い分けることで、食の世界がより一層広がります。

ごまの栄養素:健康を支える多彩な栄養成分

ごまは、良質な脂質、タンパク質、炭水化物をバランス良く含んでいるだけでなく、鉄分やカルシウム、セレンといったミネラル類、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなどのビタミン類、そして食物繊維も豊富に含んでいます。中でも特に注目すべきは、ごま特有の成分である「ゴマリグナン」です。ゴマリグナンは、ごまの粒全体から見てもごくわずか1%程度しか存在しない貴重な成分であり、特に若々しさを追求する人々から熱い視線を集めているセサミンも、このゴマリグナンの一種です。ごまに含まれる良質な脂質とタンパク質は、美容と健康を維持するために欠かせない栄養素です。不足しがちな栄養を補給してくれるごまは、まさに優れた食材と言えるでしょう。ゴマリグナンは、セサミン、セサモリン、セサモールといった成分によって構成されています。

ゴマリグナン:ごまの健康効果の源

ごまがもたらす効果・効能について語る上で決して見過ごせないのが、ごま特有の成分である「ゴマリグナン」の存在です。ゴマリグナンは、非常に高い抗酸化作用を持ち、「脂質の酸化を抑制する」「脂肪酸の代謝を促進する」「肝臓の機能を向上させる」といった効果が期待されています。ゴマリグナンは単独で作用するだけでなく、ごまに含まれるその他の栄養素と相互に作用することで、より一層の効果を発揮すると考えられています。

ごまがもたらす効果・効能:抗酸化作用、生活習慣病の予防など

ごまには、優れた抗酸化作用をはじめ、コレステロール値のコントロール、血圧を下げる効果、便秘の改善、貧血の予防、アルコールの分解サポート、白髪の予防など、健康をサポートする様々な効果が期待できます。

抗酸化作用/老化の抑制:若々しさを維持する

ごまに含まれるゴマリグナンとビタミンEが互いに作用することで、強力な抗酸化力が生まれます。抗酸化作用とは、体内で過剰に生成された活性酸素を取り除く働きのことです。活性酸素は、細胞を酸化させてダメージを与えたり、遺伝子を傷つけ、様々な疾患や老化の要因になると考えられています。ゴマリグナンそのものにも、老化を抑制する効果が認められています。かの有名なクレオパトラや楊貴妃も美容のためにごまを愛用したという記録があり、遣唐使も薬として利用していたと伝えられています。

コレステロールの減少:生活習慣病のリスクを低減

ゴマリグナンの一種であるセサミンには、血中の中性脂肪値を低下させる効果が期待できます。また、ごまに含まれるオレイン酸は、悪玉(LDL)コレステロールを下げる働きがあります。これらの効果とゴマリグナンやセレンによる抗酸化作用が組み合わさることで、がんや生活習慣病の予防に役立つと考えられています。

抗高血圧作用:血圧を下げる効果

ごまに含まれるセサミンには、血圧を下げる作用があることが研究で示されています。実際、人を対象とした臨床試験においても、ごまの降圧効果が確認されており、かつ副作用がないことも確認されています。

便秘改善:お腹の調子を快適に

ごまは、腸内フローラを健全に保つために重要な食物繊維をたっぷり含んでいます。成人が1日に必要とする食物繊維は約18gと言われていますが、ごまを大さじ2杯食べることで、その約20%を補うことができます。

貧血対策:鉄分を手軽にチャージ

ごまは、非ヘム鉄という種類の鉄分を豊富に含んでいます。人が1日に必要とする鉄分は約10mg。ごまには、大さじ1杯あたり約1.8mgの鉄分が含まれています。

二日酔い軽減:アルコール分解を助ける

ゴマリグナンの一種であるセサミンは、アルコールの分解を促す効果が期待できます。これは、ゴマリグナンが肝臓におけるアルコール代謝酵素の働きを活性化するためです。二日酔いの原因となるアセトアルデヒドの分解も促進します。

白髪ケア:健やかな頭皮と髪のために

白髪の主な原因の一つは活性酸素であると考えられています。ごまは優れた抗酸化作用に加え、タンパク質、ミネラル、ビタミンB群、ビタミンE、亜鉛など、頭皮や髪の健康維持に欠かせない栄養素を豊富に含んでいます。

40代からの若々しさを応援:抗酸化力に着目

ごまは、年齢を問わず誰にでも良い食品ですが、特に40代以降の方におすすめです。その理由は、ごまが持つ優れた抗酸化作用にあります。年齢を重ねるごとに抗酸化力は低下しやすくなりますが、ごまはそれをサポートしてくれるでしょう。また、日本人の生活習慣病リスクは年齢とともに高まる傾向にあります。ごまには、がん予防、肝機能サポート、血圧調整、血栓予防、動脈硬化予防、コレステロール値のコントロールといった効果が期待されています。活性酸素は特に肝臓で発生しやすく、老化を促進する原因となりますが、ごまの抗酸化作用は肝臓を守り、老化のスピードを緩やかにする可能性があります。「ごまを食べることで若々しさを保てる」と言われるのは、このような背景があるからです。

ごまの栄養を逃さない!効果的な摂取方法:すりごま、炒りごま、ごま油

ごまには様々な栄養成分が豊富に含まれていますが、硬い皮に覆われているため、そのままでは消化されにくいという側面があります。そのため、ごまの栄養を効率良く摂取するためには、皮を砕いてから摂取するのがおすすめです。

・すりつぶして:吸収率アップ

ごまの栄養を最も効率的に摂取できるのは、皮をすり潰した状態の“すりごま”です。食べる直前にすり潰せば、香りも楽しむことができます。市販のすりごまは手軽で便利ですが、酸化しやすいという弱点も。開封後の保存方法に注意し、できるだけ早めに使い切るようにしましょう。

・炒る:抗酸化作用をさらに高める

芳醇な香りが際立つごまの楽しみ方として、炒った「煎りごま」があります。炒ることで生まれる変化は、香りだけではありません。ゴマリグナンの一種、セサモリンは加熱されることで、より強力な抗酸化力を持つセサモールへと変化します。熱を加えることで栄養価が高まるというのは、興味深い点です。炒り加減によって風味も変化するため、ご自宅で炒りごま作りに挑戦するのも良いでしょう。

ごまの栄養を摂り入れられる食品:ごま豆腐、ごま油

ごまは、さまざまな食品と組み合わせることで、手軽に栄養を摂取できます。

・ごま豆腐:手軽に栄養をプラス

ごまと本葛粉を混ぜて作られるのがごま豆腐です。ごまと本葛粉の相乗効果により、老化防止、体力回復、血糖値の急上昇抑制など、多岐にわたる健康効果が期待できます。日々の食卓に手軽にごまの栄養素をプラスできる一品として、取り入れてみてはいかがでしょうか。

・ごま油:風味豊かに栄養を補給

ごまをそのまま圧搾して作られるのがごま油です。ごま油には、豊富なビタミンやミネラルが含まれており、酸化しにくいという特徴があります。焙煎したごまから作られたごま油は「焙煎ごま油」、生のままのごまから作られたごま油は「太白ごま油」と呼ばれます。食材を炒める際に使用するだけでなく、ドレッシングとしても活用できるため、上質なごま油を一本常備しておくと便利です。

ごまは他の食材と組み合わせて摂ると効果的:相乗効果でさらに健康に

健康維持のためには、1日に大さじ1~2杯(約10g)のごまを摂取することが推奨されます。ごまは単体で大量に食べることは難しいかもしれませんが、様々な料理の風味を引き立てる万能な存在です。他の食材と組み合わせて摂取することで、更なる健康効果が期待できます。例えば、酸化しやすい性質を持つ必須脂肪酸を豊富に含む魚介類は、ごまと一緒に摂取することで酸化を抑制し、異なる種類の脂肪酸をバランス良く取り込むことができます。魚の胡麻焼きや胡麻揚げなどが良い例です。また、ごまには豊富な種類のビタミンが含まれていますが、ビタミンCは含まれていません。そのため、ビタミンCが豊富な食品との組み合わせがおすすめです。ビタミンCとごまに含まれる鉄分を同時に摂取することで、コラーゲンの生成を促進する効果が期待できます。さらに、脂質を多く含むごまは、脂溶性ビタミン(ビタミンAやビタミンD)の吸収を助ける働きがあるため、ほうれん草の胡麻和えなどは理にかなった組み合わせと言えるでしょう。一度に大量に摂取するのではなく、日々の食事に無理なくごまを取り入れていくことが大切です。

ごま1日の摂取量:どのくらい食べていいの?

ごまは健康や美容に良い効果をもたらす一方で、過剰に摂取するとデメリットも存在します。ごまは比較的カロリーと脂質が高いため、摂りすぎると体重増加や高血圧などのリスクを高める可能性があります。また、稀にアレルギー反応を引き起こしたり、消化不良の原因となることもあります。ごまの1日の摂取量の目安は大さじ1~2杯程度です。

白ごまと黒ごまの違い:栄養価に差はある?

白ごまと黒ごまの間には、栄養価に大きな差は見られません。白ごまには、抗酸化作用や血圧を下げる効果が期待されるセサミンが豊富に含まれています。一方、黒ごまには、抗酸化作用が強いポリフェノールが多く含まれており、白ごまと比較して脂質が少ないという特徴があります。

まとめ

ごまは、私たちの食生活に容易に取り入れられる、栄養価に優れた食材です。抗酸化作用をはじめ、健康をサポートする様々な効果が期待できます。毎日の食事にごまをプラスして、健やかな毎日を送りましょう。

胡麻