パントテン酸はビタミンB群のひとつであり、エネルギー産生やストレス軽減、美肌などに関わる重要な栄養素です。その名前の由来はギリシア語の"pan"(いたるところ)からきており、さまざまな食品に広く含まれています。本記事では、パントテン酸の役割や効果、摂取方法について詳しく解説します。
パントテン酸とは
パントテン酸は、体内で補酵素A(コエンザイムA)やアシルキャリアタンパク質(ACP)などの形で存在し、脂質や糖質の代謝に関わる重要な栄養素です。補酵素Aはクエン酸回路や脂肪酸のβ酸化に関与し、エネルギー産生に不可欠な役割を果たします。また、善玉コレステロールの増加やホルモン、抗体の産生にも関わり、ストレスに対する耐性を高める働きがあることから「抗ストレスビタミン」とも呼ばれています。
パントテン酸の吸収と代謝における役割
パントテン酸は食事から摂取されると消化管で分解・吸収され、体内で活性化されて補酵素AやACPの成分となります。これにより、エネルギー産生、脂質代謝、ホルモン合成など、多岐にわたる生理機能をサポートします。さらに、腸内細菌によっても一部合成されるため、通常の食生活では不足することはほとんどありません。
パントテン酸の推奨摂取量
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人の目安摂取量は1日5mgとされています。妊娠中は非妊娠時と同様の5mg、授乳中は6mgが推奨されています。令和元年の国民健康・栄養調査では、日本人の平均摂取量は5.65mgであり、穀類や肉類、乳類、野菜類から広く摂取されています。
パントテン酸不足によるリスク
パントテン酸が不足すると、エネルギー代謝の低下による疲労感や食欲不振、便秘などの初期症状が現れる可能性があります。さらに、めまい、頭痛、不眠、動悸、手足のしびれなどの神経症状が生じることもあります。ただし、パントテン酸は多くの食品に含まれているため、通常の食生活では欠乏症のリスクは低いと考えられています。

パントテン酸を豊富に含む食品
パントテン酸は以下の食品に多く含まれています。
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肉類(鶏レバー、鶏ささみ)
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魚介類(たらこ)
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乳類(牛乳)
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きのこ類
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豆類
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野菜類(カリフラワー、ブロッコリー、サツマイモ、トマト)
水溶性のため、水に溶けやすく熱にも弱い性質を持ちます。調理時にはシンプルな方法を選ぶことで栄養を損なわずに摂取できます。また、カフェインやアルコールはパントテン酸の吸収を阻害するため、摂取バランスに注意が必要です。
パントテン酸の過剰摂取と安全性
パントテン酸単独での過剰摂取による健康被害の報告はほとんどありません。ある研究では、高用量(3664mgを2週間)の摂取でも問題は確認されませんでした。ただし、パントテン酸カルシウムを他の成分と組み合わせて長期間大量に摂取した場合、吐き気や食欲不振、腹痛といった症状が現れることがあるため、サプリメント利用時には注意が必要です。
まとめ
パントテン酸はエネルギー代謝やホルモン合成など、体のさまざまな機能に関わる重要なビタミンです。通常の食生活を送っていれば欠乏のリスクは低いですが、バランスの取れた食事を意識し、適切に摂取することが大切です。水溶性で熱に弱いため、調理法にも工夫が必要です。サプリメントを利用する際は、過剰摂取に注意しながら適量を守るようにしましょう。