古来より多くの人々に愛され、重宝されてきた柿は、実に豊かな恵みを人間にもたらしてきました。平安時代においても、その栄養価の高さや様々な効能が広く知られていました。時代を超えて愛され続ける柿の魅力と、平安時代における柿の役割について、ここで探っていきましょう。
多岐にわたる渋柿の利用用途
渋柿の柿渋は、平安時代から現代に至るまで、多様な用途で活用されてきました。江戸時代には、柿渋を扱う「渋屋」が存在するほど、その需要が高まりました。柿渋は、防虫、防腐、防水、医薬品などの目的で利用され、生活に密着した存在でした。
庶民の服を染める染料として使われていたほか、木材の防水や腐食防止、建築資材のシックハウス対策にも活用されてきました。また、漆器の下地塗りや和紙製品の強度と防水に役立ち、漁師の魚網や釣り糸にも塗布されていました。さらに、木造船の船体の防水・防腐・補強にも欠かせない材料でした。
近年では、柿渋の金属回収能力が注目され、携帯電話の基盤から金を回収する研究が進められています。SDGsの観点からも、柿渋を利用した環境配慮型製品の開発が推進されています。また、新型コロナウイルスなどの不活化効果が明らかになり、天然素材としての柿渋への関心が高まっています。このように、柿渋は日本の伝統的な自然素材として、多面的な役割を果たしてきました。
“柿タンニン”の高い効果に加え、柿そのものの栄養価もかなり高い逸材
日本の秋を彩る食材として愛される柿は、健康面でも魅力的な働きを持っています。柿に含まれる ""柿タンニン"" には優れた抗酸化作用があり、活性酸素による細胞の酸化ストレスを防ぐ効果があります。さらに整腸作用もあり、お腹の調子を整える期待がもたれます。
柿は栄養価も高く、ビタミンA、ビタミンC、食物繊維を豊富に含みます。ビタミンAは目の健康維持に、ビタミンCには強い抗酸化作用があり風邪予防に役立ちます。食物繊維は便秘解消に効果的で、コレステロール値を下げる働きもあります。このように、渋みのタンニンと豊富な栄養素の相乗効果により、柿は健康促進食品としての可能性に富んでいるのです。
柿タンニンには ""収れん作用"" があり、タンパク質を変形させることで細胞組織や血管を収縮させる働きがあります。この作用により、止血、鎮痛、抗炎症、防腐などの効果が期待できます。また、柿は抗酸化物質を豊富に含み、緑茶や赤ワインの10倍以上ものポリフェノールを含んでいます。これらの成分が活性酸素を抑え、ウイルスや菌の増殖を抑制、脂肪燃焼やコレステロール低下、血圧・血糖値の上昇抑制など、様々な健康作用が期待されています。
さらに柿の果肉にはビタミンA、C、カリウム、βカロテン、リコピンなど多くの栄養素が含まれています。ヘタには漢方薬としての活用例もあり、若葉にはビタミンC、ビタミンK、B群、タンニン、ミネラル、フラボノイドなどが豊富で、血管強化や止血作用があるとされ、柿葉茶などの民間療法に利用されてきました。柿の葉のビタミンC含有量はみかんの30倍にものぼり、柿の葉寿司の殺菌効果は有名です。このように柿は、その実、葉、ヘタすべてが健康促進に役立つ食材なのです。
まとめ
平安時代の柿は、貴族から庶民に至るまで、幅広い階層に親しまれていました。柿渋を利用した生活用品が数多く生み出され、また、古くから漢方薬としても重宝されていたことから、その効能は広く認識されていました。時代を超えて愛され続ける柿は、当時の人々の生活に寄り添い、身近な存在として大切にされていたのです。