すももを食べ過ぎると下痢になる?適量は?栄養の効果も解説
甘酸っぱい香りが食欲をそそるすもも。初夏から夏にかけて旬を迎えるこの果物は、みずみずしい味わいが魅力です。ついついたくさん食べたくなりますが、食べ過ぎると体に良くない影響があるのでしょうか? この記事では、すももの栄養成分、過剰摂取によるリスク、そして1日に摂取すべき適切な量について、栄養士の視点から詳しく解説します。すももは美味しいだけでなく、健康にも良い影響を与える果物ですが、適切な量を守ることが大切です。美味しく安全にすももを味わうために、ぜひ参考にしてください。

すももとプラム、プルーンの基本知識と違い

店頭に並ぶすももは、様々な種類があり、見た目も名前も似ているため、違いが分かりにくいことがあります。ここでは、「プラム」と「プルーン」という大きな分類で、それぞれの特徴を整理します。それぞれの違いを知ることで、より深くすももの世界を楽しむことができるでしょう。

プラム(日本すもも)の特徴と品種

一般的に「プラム」として知られているのは、「日本すもも」です。地域によっては「すもも」と呼ばれたり、古い時代には「はたんきょう」という名で親しまれていました[*1]。(この記事では、日本すもも(プラム)のことを「すもも」と表記します。)日本各地で栽培されており、代表的な品種としては、果肉が鮮やかな赤色で、甘みと酸味のバランスが良い「ソルダム」、そして、果実が大きいのが特徴で、強い甘みが人気の「太陽」などが挙げられます。これらの品種は、早いものでは6月頃から店頭に並び始め、9月頃までが旬の時期です。近年では、アメリカでの日本すももの栽培も盛んになり、2021年には日本への輸入が解禁され、私たちの選択肢が広がりました[*2]。

プルーン(西洋すもも)の特徴と加工品

プラムとよく似た果実であるプルーンは、「西洋すもも」に分類されます[*1]。プルーンというと外国産のイメージがありますが、日本国内でも栽培されており、すももと同じように夏に旬を迎えます。生のまま食べることもできますが、輸入されるプルーンの多くは、長期保存を目的とした加工品として流通しています。代表的なものとしては、乾燥させたドライプルーン、ジャムやジュース、ピューレ、ペーストなどがあります。これらは一年を通して手軽に楽しむことができます。特にドライプルーンは、生のプルーンとは違った濃厚な甘みと、豊富な栄養価が魅力で、健康食品としても広く支持されています。

すももが持つ、健康を支える栄養成分とその効果

すももは、私たちの健康を維持するために不可欠な、多種多様な栄養素を豊富に含んでいます。ここでは、すももの主要な栄養成分と、それらがもたらす健康への恩恵について詳しく解説し、さらに他の果物との比較を通じて、すももの栄養価をより深く理解していきましょう。

カロリーは他のフルーツと大差なし

すもものカロリーは、果肉部分100gあたり約46kcalです[*1]。これは、他の一般的な果物と比較しても大きな差はありません。例えば、温州みかんは100gあたり約49kcal、りんごは約53kcalとなっており、すももはこれらの果物とほぼ同じ程度のカロリー水準です。具体的な摂取量で考えてみると、すもも1個(可食部がおおよそ65g程度)の場合、カロリーは約30kcalとなります[*1]。したがって、すももは、カロリーを気にしている方でも比較的安心して口にしやすい果物と言えるでしょう。

腸内フローラを改善する食物繊維が豊富

すももには、100gあたり水溶性食物繊維が0.4g、不溶性食物繊維が1.2gと、バランス良く食物繊維が含まれています[*1]。食物繊維が豊富な果物としてりんごを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、すももの食物繊維含有量は、りんごとほぼ同程度です。食物繊維は、腸内環境を整えることで便秘の解消を促す効果が期待できるだけでなく、食後の血糖値の急激な上昇を抑制したり、血中のコレステロール値を低下させたりするなど、生活習慣病の予防にも貢献するとされています。現代人の多くは食物繊維の摂取量が不足している傾向にあると言われているため[*3]、すももを日々の食事に取り入れることは、不足しがちな食物繊維を補う効果的な方法となります。様々な種類の野菜や果物と組み合わせて、積極的に食物繊維を摂取していくことが大切です。

鉄分の供給源としての側面

すもも、とりわけドライプルーンに関して、鉄分が豊富であるというイメージを持っている方もいるかもしれません。実際のところ、すもももプルーンも、鉄分の含有量は100gあたり0.2mgと、特に突出して多いわけではありません。例えば、鉄分が豊富であることで知られているほうれん草と比較した場合、すももの鉄分量は約10分の1程度に過ぎません[*1]。しかしながら、鉄は体への吸収率が低い栄養素であるため、特定の食品から大量に摂取することは困難であり、様々な食品を組み合わせて総摂取量を増やすことが重要です。すももだけで十分な量の鉄分を補給することは難しいかもしれませんが、日々の食生活において鉄分を補給する食材の一つとして、他の食材とバランス良く組み合わせることによって、鉄分摂取の多様性を高めることができるでしょう。

むくみや高血圧予防に役立つカリウム

すももは、体内の余分なナトリウムを排出し、むくみ軽減や高血圧予防に貢献するカリウムを含んでいます。すもも100gあたり約150mg、プルーン100gあたり約200mgのカリウムが含まれています [*1]。他の果物、例えばバナナ100gあたり約360mg、りんご100gあたり約120mgと比較すると、すもものカリウム含有量は突出して多いわけではありません。しかし、カリウム補給源の一つとして十分に活用できます。ただし、腎臓疾患などでカリウム摂取制限を受けている方は注意が必要です。生の野菜や果物全般でカリウム摂取量が制限されるため、すももも例外ではありません。摂取量については必ず医師に相談し、指示に従ってください。

すももの過剰摂取による影響と適切な摂取量

すももは食物繊維や、わずかながら鉄分といった有益な栄養素を含んでいます。しかし、どんな食品も同様に、過剰な摂取は体に不調をもたらす可能性があります。ここでは、すももの摂り過ぎがもたらすリスクと、健康維持のための適切な摂取量について詳しく解説します。

消化器系への影響:腹痛、下痢、便秘のリスク

どんな食べ物でも、短時間に大量に摂取すると消化器官に負担がかかり、消化不良を起こすことがあります。その結果、腹痛や下痢といった症状が現れることがあります。すももも例外ではありません。すももやプラムは食物繊維が豊富であり、適量を摂取すれば腸を刺激し、便通を促す効果が期待できます。しかし、すももは比較的食物繊維を多く含むため、過剰に摂取すると腸内の食物繊維量が急増し、消化不良を引き起こしてお腹の調子を崩す可能性があります。この消化不良は、人によっては排便リズムを乱し、便秘を引き起こしたり、逆に食物繊維の刺激が強すぎて下痢を誘発する原因となることがあります。腸の機能は個人差が大きいため、自身の体調を考慮しながら摂取量を調整することが非常に重要です。

ソルビトールの影響と安全性

すももやプルーンには、糖アルコールの一種であるソルビトールが含まれていると考えられています。ソルビトールは、すももの他に桃、りんご、梨などにも自然に含まれており、低カロリー甘味料としても使用されます。ソルビトールは下剤にも含まれる成分であり、腸内で水分を引き寄せることで便を柔らかくする作用(緩下作用)があります。少量であれば便秘解消に効果的ですが、ソルビトールは小腸で吸収されにくいため、大量に摂取すると消化不良を引き起こし、下痢や腹痛の原因となることがあります。ただし、通常、一度に大量に摂取しない限り、健康上の問題は起こりにくいと考えられています。下痢を引き起こす量については明確な基準はありませんが、体重1kgあたり1gのソルビトールを摂取しても影響がないという見解がある一方で [*4]、20~30gの摂取で下痢のリスクがあるとする見解もあります [*5]。仮に20gをソルビトールの過剰摂取の目安とした場合、ドライプルーンに換算すると約2.8kgもの量を一度に食べる必要があり、現実的にはプルーンに含まれるソルビトールだけで下痢になる可能性は低いと言えるでしょう。したがって、一般的な摂取量であればソルビトールによる影響は少ないと考えられます。

血糖値の急上昇による体質変化と体重増加

すももは、お店で手軽に購入できる果物ですが、カロリーや糖質が少ないと思われがちです。しかし、すもも一個がおよそ130gであることを考慮すると、決して小さくはないものの、一個あたり7.8g以上の糖質を含んでいます。そのため、たくさん食べ過ぎると血糖値が急激に上がり、体脂肪が蓄積しやすくなり、太りやすい体質になる可能性があります。特にダイエットをしている方は、すももの摂りすぎには注意が必要です。血糖値が急に上がると、インスリンがたくさん分泌され、それが体脂肪として蓄えられやすくなるため、健康的な体重を維持するためには、食べる量とタイミングに気を配ることが大切です。

すももの1日の適量と食事バランスガイドの推奨

すももを美味しく、健康的に楽しむためには、適切な量を守ることが重要です。「食事バランスガイド」では、一日に食べる果物の目安は約200gとされています。この量をすべてすももで摂ることもできますが、栄養バランスが偏らないように、色々な種類の果物を組み合わせて食べるのがおすすめです。具体的には、すももの大きさによって変わりますが、一日あたり100gから200gを目安に食べるのが良いでしょう。すもも一個の食べられる部分が約65g程度であることを考えると、小さいものであれば一日2~3個、大きいものであれば一日1〜2個程度にすると良いでしょう。この量を守ることで、すももの栄養をしっかり摂りつつ、糖質、食物繊維、ソルビトールなどの摂りすぎによる消化不良や血糖値の急上昇を防ぐことができます。

すももの効果的な食べ方と健康上のメリット

すももは、その栄養を最大限に活かし、健康的な食生活に役立てるために、効果的な食べ方があります。食べる量を守るだけでなく、食べ方を工夫することで、より健康効果を高めることができるでしょう。

食前の皮ごと摂取がもたらす効果

すももは、朝、食事の前に皮ごと食べるのがおすすめです。すももの皮には栄養がたくさん含まれているので、捨ててしまうのはもったいないです。すももの皮は薄いので、そのまま食べやすいですが、もし食べにくい場合は、ジャムにするなど調理法を工夫してみましょう。また、食事の前に食べるのがおすすめなのは、食後の血糖値の急上昇を抑える効果があるからです。血糖値の上昇が緩やかになれば、インスリンが必要以上に分泌されるのを防ぎ、結果として太りにくい体質につながります。このように、食べるタイミングや食べ方を意識することで、すももの健康効果をさらに高めることができます。

まとめ

夏の味覚、すもも。日本すもも(プラム)と西洋すもも(プルーン)があり、風味も見た目もそれぞれ異なりますが、どちらも旬の時期には食卓を彩ります。鉄分、食物繊維、カリウムなど、体に不可欠な栄養素が豊富に含まれており、お腹の調子を整えたり、スムーズな排便を促したり、むくみや高血圧の予防に役立つと考えられています。しかし、体に良いとされる食品でも、摂りすぎは禁物。消化不良によるお腹の痛み、下痢、または便秘といった不快な症状を引き起こすことがあります。特に食物繊維やソルビトールは、摂取量によっては消化器官に影響を与える可能性があります。さらに、糖分の過剰摂取は血糖値の急上昇を招き、体重増加のリスクも伴います。すももの良いところを最大限に活かすためには、1日に小さいもので2~3個、大きいもので1~2個を目安に摂取することが大切です。朝食前に皮ごと食べれば、皮に含まれる栄養を無駄なく摂取でき、血糖値の上昇を抑え、太りにくい体質へと導く効果も期待できます。適切な量を守り、効果的な食べ方を実践することで、旬のすももを美味しく楽しみ、健康的な食生活に役立てましょう。

すももとプラム、プルーンの違いは何ですか?

「プラム」は一般的に「日本すもも」を指し、ソルダムや太陽などが代表的な品種です。一方、「プルーン」は「西洋すもも」のことで、ドライフルーツとしてよく知られていますが、近年では生食用のプルーンも国内で栽培されています。つまり、どちらも「すもも」の仲間であり、品種や加工方法によって呼び名が変わると考えると良いでしょう。

すももを食べ過ぎると下痢になるのはなぜ?

すももには、食物繊維やソルビトールが多く含まれています。そのため、一度に大量に食べると、消化不良を起こしたり、腸を刺激したりして、腹痛や下痢の原因になることがあります。特に、食物繊維を過剰に摂取すると、腸の働きが乱れることがありますので、注意が必要です。

すももの1日の適量はどれくらいですか?

食事バランスガイドでは、果物全体で1日200gの摂取が推奨されています。すももだけで考える場合、100g~200g、つまり小さいものであれば1日に2~3個、大きいものであれば1日に1~2個程度が適量です。糖質や食物繊維、ソルビトールの摂りすぎを防ぐためにも、この量を参考に、他の果物と組み合わせてバランス良く摂取することをおすすめします。

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