近年、SNSを中心に世界中で話題沸騰中の「ドバイチョコレート」。エキゾチックな響きとともに、その魅力的な見た目と味わいが人々を虜にしています。特に注目すべきは、濃厚なピスタチオクリームと、サクサクとした食感が楽しいカダイフを贅沢に使用している点。チョコレートの甘さとピスタチオの香ばしさ、そしてカダイフのユニークな食感が織りなすハーモニーは、まさに至福のひととき。アラブ首長国連邦ドバイ発祥のこのスイーツは、一体なぜこれほどまでに人気を集めているのでしょうか?その秘密を紐解きます。
ドバイチョコレートとは?
ドバイチョコレートは、独特の風味を持つピスタチオクリームと、繊細な食感のカダイフをチョコレートで包み込んだ、板状のスイーツです。アラブ首長国連邦のドバイで生まれ、その斬新な組み合わせと食感で、世界中で注目を集めています。
ドバイチョコレート流行のきっかけ
ドバイチョコレートが世界的な人気を得たのは、あるフード系インフルエンサーがTikTokに投稿した実食動画がきっかけでした。この動画がSNSを通じて急速に広まり、「#dubaichocolate」のハッシュタグが付いた動画は、合計で数億回以上も再生されるほどの反響を呼びました。その美しい見た目と、咀嚼音が心地よいASMR効果が話題となりました。
ドバイチョコレートの構成要素と特徴
ドバイチョコレートは、チョコレートの中に、細かく砕いたカダイフとピスタチオペーストを混ぜ合わせた、甘美なクリームがたっぷりと詰め込まれています。多くの場合、200グラム程度の平たい板状で販売され、表面には色鮮やかな食用色素で装飾が施されています。特に、ねっとりとしたクリームと、カダイフのザクザクとした食感が織りなすハーモニーが特徴で、このユニークな食感が人気の秘密と言えるでしょう。
ドバイチョコレートの歴史:FIXデザート・ショコラティエの誕生
ドバイチョコレートは、2021年にイギリスとエジプトの血を引く起業家、サラ・ハムーダによってドバイに設立されたFIXデザート・ショコラティエによって、「Can't Get Knafeh of It」という商品名で誕生しました。FIXという店名は、「信じられないほど素晴らしい体験」を意味する"freaking incredible experience"から取られています。ハムーダは、他にはない食感と風味のチョコレートを生み出すことを目標とし、フィリングにこだわり、競合他社との差別化を図りました。
FIXデザート・ショコラティエの革新的なアプローチ
FIXデザート・ショコラティエは、製品開発において、創業者自身が妊娠中に渇望した味覚や、デーツ、カラック、クナーフェといった伝統的な中東の食材や風味からインスピレーションを得ています。様々なフレーバーのチョコレートバーを展開していますが、「ドバイチョコレート」として知られるようになったのは、もともと「Can't Get Knafeh of It」という名前で販売されていた商品で、現在も同店で同じ名前で販売されています。
ドバイチョコレートの拡散とインフルエンサーの影響
ドバイチョコレートが最初に広く知られるきっかけとなったのは、2023年12月18日に、マリア・ベヘラというフードインフルエンサーが、ユーザー名mariavehera257でFIXデザート・ショコラティエのチョコレートを試食する動画をTikTokに投稿したことでした。ベヘラの動画は大きな話題を呼び、他のインフルエンサーたちも同様の動画を制作し、ドバイチョコレートの人気をさらに押し上げました。
ドバイチョコレートの価格高騰と密輸問題
ドバイチョコレートの複雑な製造工程と急増する需要が、価格の高騰を招きました。さらに、アラブ首長国連邦国内でのみ販売されるという限定的な供給に対し、需要がそれを大幅に上回ったため、個人がショップや製造元からドバイチョコレートを大量に購入し、市場で高額で転売する行為が見られるようになりました。中には、ドバイチョコレートを入手するための窃盗事件も報告されています。2024年には、密輸業者が大量のドバイチョコレートを国境を越えて不正に持ち出そうとし、摘発される事例も発生しました。
ドバイチョコレートを巡る法的紛争:偽造品、模倣品、オンライン詐欺
FIXの動画が拡散されると、すぐに多くの人々が独自の「ドバイチョコレート」を作り始めました。インフルエンサーの中には、自宅のキッチンで「ドバイチョコレート」を作り、自分がその発明者であると主張する者も少なくありませんでした。2024年9月頃には、FIXデザート・ショコラティエの公式オンラインショップと見分けがつかないほど巧妙に作られた偽のウェブサイトが報告されています。これらのサイトは注文者から支払いを受け取るものの、商品を送らずに閉鎖し、消費者が商品を受け取ることも返金を受けることもできないという被害が発生しました。
FIXデザート・ショコラティエの取り組み
昨今、模倣品やインターネットを利用した詐欺が急増している現状を受け、FIXデザート・ショコラティエは、直営店、公式オンラインストア、正規取扱店を持たず、アラブ首長国連邦内では法人を通じてのみ製品を提供している旨を繰り返し告知しています。
「ドバイチョコレート」をめぐる法的な争い
FIXデザート・ショコラティエに加え、リンツのような大手企業も自社製品を「ドバイチョコレート」として製造・販売を開始しました。特にリンツは、厳選された高級食材を使用した「ドバイチョコレート」を数量限定で販売したため、正規品と同様に高額な価格で転売される事態となりました。一方、ドバイで製造された模倣品「FEXドバイ・チョコレート」のドイツ輸入業者は、リンツなどのメーカーの製品がドバイ産ではないとして、販売停止を求める警告書を送付しました。
「ドバイチョコレート」という名称の地理的表示をめぐる問題点
多くの専門家は、「ドバイチョコレート」という言葉は既に市場に広く浸透しており、地理的表示としての意味合いは薄いと見ています。しかし、今後のアラブ首長国連邦が他国との間で二国間協定を締結し、相手国で地理的表示を保護する可能性も考えられます。また、「ドバイチョコレート」として販売されていても、実際にはドバイで製造されていない、あるいはドバイ産の原材料を使用していない場合、消費者に誤解を与える表示と判断される可能性も指摘されています。
裁判所の判決とアルディへの販売差し止め命令
2025年1月、ドイツの裁判所は、アルディが販売していた「アリヤン・ドバイ・ハンドメイド・チョコレート」に対し、販売差し止めの判決を下しました。このチョコレートはトルコで製造されドイツに輸入されたものでしたが、裁判所は、消費者がドバイで製造されドイツに輸入されたものだと誤認する可能性があると判断しました。裁判所は、製品の裏面にトルコ製と記載されているだけでは、誤認を避けるための措置として不十分であると指摘しました。さらに、アルディの商品が実際には工場で製造されているにもかかわらず、「ハンドメイド」と表示している点も問題視されました。アルディは控訴する可能性があり、リンツとリンデルに対する訴訟については、まだ判決が出ていません。
リンツ社の対応:ドバイ風チョコレートへの改名
訴訟が進む中、リンツは自社の類似商品を、オリジナルの「ドバイチョコレート」という名称から「ドバイ風チョコレート」へと変更しました。これは、裁判で不利な判決を受ける可能性を考慮した措置であると考えられます。
ドバイチョコレートが世界に与えたインパクト
ドバイチョコレートの驚異的な普及は、世界中の家庭や食品業界に影響を与え、様々な食品にピスタチオを加える動きを加速させました。板チョコレート以外にも、「ドバイ風○○」といった商品が登場し、ドバイの名を冠した製品が数多く生まれています。この需要に応えるため、ピスタチオの世界的な生産量も増加しており、世界最大の生産地であるアメリカ・カリフォルニア州では、2024年の生産量が前年比69%増と、過去最高を記録しました。また、世界第2位の生産国であるトルコでも、同時期に生産量が倍増しています。
トルコにおけるピスタチオ価格の高騰
トルコでは、「ドバイチョコレート」の人気が急上昇した結果、原材料であるピスタチオの価格が高騰しました。2025年1月、トルコ貿易省は、ピスタチオの闇取引や、価格操作を目的とした買い占めを懸念し、イランからのピスタチオ輸入を検討し始めました。これは、価格安定化を図るための措置です。
ドイツにおけるドバイチョコレートのブーム
ドバイチョコレートは、ヨーロッパにおいて最初にドイツで人気となりました。その背景には、ドイツに多くのトルコ系移民が存在することが挙げられます。ドバイチョコレートに使用されるカダイフは、トルコの伝統的な食材であり、トルコにルーツを持つ人々にとって馴染み深いものでした。SNSを通じて、ドイツのトルコ系コミュニティ内で急速に人気が拡大したのは、必然的な流れと言えるでしょう。
ドイツで花開くドバイチョコレートのアレンジ
ドイツでは、ドバイチョコレートに触発された、創造性あふれるスイーツが生まれています。チョコレートとピスタチオの組み合わせが「ドバイスタイル」として認知され、板チョコレートから、高級トリュフ、マカロン、バウムクーヘン、さらにはドバイチョコレート風味のミルクといった飲み物まで、多種多様な商品が展開されています。
日本におけるドバイチョコレートブームとdivanの進出
韓国から火が付いたドバイチョコレート人気は、日本でも本格的なトレンドとなりつつあります。トルコの有名企業が運営するスイーツブランド「divan(ディヴァン)」の日本における正規代理店である株式会社エフェトレーディングは、「ピスタチオドバイチョコレート」を2025年のバレンタイン商戦に向けて発売を開始しました。SNSでの情報拡散と、その贅沢な味わいが組み合わさり、日本国内でも高い人気を集めています。
まとめ
ドバイチョコレートは、その独特な食感と、SNSを通じた情報拡散を原動力に、世界中で愛されるお菓子へと成長しました。しかし、人気が高まるにつれて、模倣品や商標を巡る問題など、解決すべき課題も出てきています。今後、ドバイチョコレートがどのような進化を遂げるのか、そしてこの人気がどのように維持されていくのか、その動向から目が離せません。
質問:ドバイチョコレートはどこで手に入りますか?
回答:divan 松屋銀座店をはじめ、全国の百貨店オンラインストアやバレンタイン催事会場で販売されています。オンラインストアでもお買い求めいただけます。
質問:ドバイチョコレートが話題を集めている理由は?
回答:特徴的なピスタチオの風味と、クリスピーなカダイフ生地がチョコレートと絶妙に調和した、これまでにない味わいが魅力です。また、SNSで拡散されたことが、人気に火をつけた要因と言えるでしょう。
質問:ドバイチョコレートの模倣品があると聞きましたが、本物を見分ける方法はありますか?
回答:FIX Dessert Chocolatierは、自社の店舗やオンラインストアを持たず、UAE国内では特定の正規代理店を通じてのみ販売されています。購入する際は、信頼のおける販売店を選ぶことが重要です。