干菓子(ひがし)とは? 美しい日本の伝統菓子を徹底解説

繊細な意匠と優しい甘さが魅力の干菓子。茶道の世界ではおなじみですが、実は普段私たちが口にする和菓子の中にも、様々な種類の干菓子が存在します。この記事では、日本の伝統的なお菓子である干菓子(ひがし)について徹底解説。その特徴や種類、歴史、そしてより美味しく味わうためのヒントまで、干菓子の奥深い魅力に迫ります。贈答品としても喜ばれる干菓子の世界を、一緒に覗いてみましょう。

干菓子の意味や特徴とは?

干菓子(乾菓子)とは、水分含有量が10%以下の和菓子のことを言います。「ひがし」と読み、代表的なものとしては、和三盆(わさんぼん)やあられなどが挙げられます。茶道では、主に薄茶をいただく際に用いられます。

<和生菓子・和半生菓子類>は、和菓子のうち水分含量が20 %以上のものとされています。なお、食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づく「標示を要する生菓子類の定義について」では、生菓子類とは、(1)出来上がり直後において水分40 %以上を含有するもの、(2)餡、クリーム、ジャム、寒天又はこれに類似するものを用いた菓子類であって、出来上がり直後において水分30 %以上を含有するもののいずれかに該当する場合としています。

繊細な甘さが特徴で、一つ一つ丁寧に手作りされる干菓子は、日本の豊かな四季や美意識を表現し、茶席や来客をもてなす役割も担っています。

干菓子の種類

干菓子には、和三盆やあられ以外にも多様な種類が存在します。ここでは、代表的な干菓子の種類について解説します。

打ち物(和三盆・落雁など)

打ち物とは、粉類に砂糖を加えて型に入れ、打ち出して成形する干菓子の一種です。代表的なものとして、和三盆や落雁などが挙げられます。

落雁は、米粉やはったい粉(大麦を粉末にしたもの)に砂糖を加え、型に入れて作られます。型には鶴亀、松竹梅、桜など様々な種類があり、見た目も美しく、お祝い事の引き出物としてもよく用いられます。

特に、和三盆糖を使用して作られた干菓子は和三盆と呼ばれます。和三盆糖そのものを固めたものも和三盆と呼ばれます。和三盆糖は、香川県や徳島県でのみ生産される砂糖であり、竹糖(ちくとう)を原料としています。口溶けが良く、上品ですっきりとした甘味が特徴です。

押し物

押し物は、打ち物と同様に型に入れて成形した後、押し固めてから包丁で切り分けて完成させる干菓子です。小豆、砂糖、米粉を混ぜて蒸した「村雨」や、蒸したもち米を乾燥させ、塩漬けの紫蘇を散らした「塩釜」などが代表的です。

掛け物

掛け物とは、砂糖や水飴などを素材にコーティングして仕上げた干菓子の種類です。具体的には、金平糖や雛あられ、果物の砂糖漬けなどがこのカテゴリーに含まれます。

飴物

飴物とは、その名の通り飴を主原料とした干菓子を指し、代表的なものとして有平糖や翁飴が挙げられます。

有平糖は、カステラや金平糖と同じく、ポルトガルから日本へ伝わったとされています。一般的な飴が水飴を多く使用し砂糖が少なめなのに対し、有平糖は砂糖をふんだんに使い水飴を少量しか使用しない点が特徴です。そのため、口の中で溶けにくく、独特のサクサクとした食感が楽しめます。

翁飴は、水飴に寒天を加えて成形した干菓子で、四角い形状が特徴です。寒天由来の弾力と、水飴の優しい甘さが織りなす、柔らかく独特な食感が魅力です。

焼き物(せんべい・あられなど)

焼き物とは、小麦粉、米、もち米などをベースとし、砂糖、きな粉、あんこなどを加えて焼き上げた干菓子のことです。具体例としては、ボーロ、あられ、せんべいなどが挙げられます。

使用する粉の種類や配合、そして焼き加減によって、焼き物の食感は大きく変化します。軽快なサクサク感、口の中でほどけるような儚さ、あるいはしっかりとした歯ごたえなど、さまざまな食感のバリエーションを楽しむことができます。

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茶席における干菓子(乾菓子)の盛り方

茶道において干菓子は欠かせない存在であり、その盛り付け方にも一定の作法が存在します。もし2種類の干菓子を盛り合わせる場合、格式の高い干菓子、または高さのある干菓子を菓子器の右奥に配置するのが基本です。ここで言う格式の高い干菓子とは、具体的にはせんべいや、和三盆や落雁などの打ち物を指します。そして、それ以外の種類の干菓子は、左手前に盛り付けるのが適切とされています。

干菓子(和三盆)の製法

特に人気の高い干菓子、和三盆の作り方を分かりやすくご紹介します。

  1. 最初に、水飴(小さじ1程度)と水を同じ分量で混ぜ合わせます。別の容器に、上質な和三盆糖100g程度を丁寧にふるい入れます。
  2. ふるった和三盆糖の中央にくぼみを作り、先ほど混ぜた水飴を注ぎ入れます。周囲の和三盆糖を少しずつ混ぜ込みながら、滑らかなペースト状になるまで丁寧に練り上げます。
  3. 清潔なまな板の上に取り出し、木べらなどを使ってさらに均一になるよう混ぜ合わせます。その後、もう一度ふるいにかけて粒子を整え、最後に型にしっかりと押し込み、硬い場所で軽く叩いて型から取り出します。これで、手作り和三盆の完成です。

干菓子(乾菓子)を用いたアレンジと楽しみ方

ここでは、様々な干菓子の種類に応じたアレンジレシピをご紹介します。もし干菓子が余ってしまった際には、ぜひお試しください。

和三盆・落雁

上品な甘さの和三盆や落雁ですが、口の中で溶けるような食感のため、一度にたくさん食べるのが難しいと感じる方もいるかもしれません。そんな時は、温かい葛湯のようにして味わうのがおすすめです。

マグカップ一つで簡単にできる葛湯風ドリンクのレシピをご紹介します。マグカップに和三盆や落雁を数個入れ、熱湯を注いでよくかき混ぜるだけ。お好みで、細かく刻んだショウガや柚子の皮を加えると、風味豊かな味わいになります。

金平糖

色とりどりの金平糖は、ヨーグルトに加えることで美味しくアレンジできます。まず、器に水切りヨーグルト(無糖)を盛り付けます。次に、お好みの量の金平糖を加え、ヨーグルトと金平糖を交互に重ねていくと、見た目も華やかに仕上がります。最後に冷蔵庫で1時間ほど冷やせば完成です。

ひなあられ

ひな祭りが終わって余ったひなあられは、ちょっと手を加えて美味しいチョコバーに変身させることができます。

まずは、耐熱容器に細かくしたチョコレートを入れ、電子レンジでゆっくりと溶かします。次に、マシュマロを加えて再び電子レンジで加熱し、柔らかく溶かします。マシュマロが溶けてきたら、ひなあられを加えて全体を混ぜ合わせ、クッキングシートを敷いたバットや型に流し込みます。粗熱が取れたら冷蔵庫で約1時間冷やし固めます。完全に固まったら、ひなあられ入りのオリジナルマシュマロチョコバーの完成です。ひなあられの代わりに、お好みのグラノーラや砕いたナッツなどを加えても、風味豊かに仕上がります。

まとめ

干菓子とは、水分含有量が少なく、長期保存が可能な日本の伝統的なお菓子のことで、打ち物、押し物、掛け物、飴物、焼き物など、様々な種類が存在します。洗練された甘さと繊細な美しさを兼ね備えた干菓子は、現代においても特別な時間を豊かに彩る、大切な存在であり続けています。

干菓子と半生菓子の違いは何ですか?

干菓子と半生菓子の最も大きな違いは、水分量にあります。干菓子は水分量が10%以下であるのに対し、半生菓子は水分量が10%以上30%未満と定義されています。この水分量の違いが、保存期間や食感に影響を与えます。干菓子は半生菓子に比べて日持ちが良く、乾燥した独特の食感が特徴です。具体例として、干菓子には和三盆や落雁、あられなどがあり、半生菓子にはゆべしや羊羹などが挙げられます。

和三盆は干菓子の一種ですか?

はい、和三盆は干菓子の一種として分類されます。特に、成形方法による分類では「打ち物」に属します。和三盆は、香川県や徳島県でのみ栽培されている竹糖という希少なサトウキビを原料とした、特別な「和三盆糖」を使用して作られる点が特徴です。口に入れた瞬間にふわりと溶けるような、繊細な口どけと、上品で優しい甘さが魅力です。

干菓子の適切な保存方法とは?

干菓子は水分含有量が少ないため、原則として常温での保存が可能です。しかしながら、開封後の干菓子については、湿気を防ぐために、ジッパー付き保存袋や密閉できる容器などを活用し、できる限り空気に触れないように密封してから常温で保存することが大切です。とりわけ、砂糖を豊富に含む和三盆や落雁は湿気を吸収しやすいため、湿度の高い場所での保管は避けるように注意が必要です。

茶道において干菓子はどのような場面で用いられますか?

茶道においては、主に薄茶をいただく際に干菓子が用いられます。一般的に、薄茶の前に茶菓子として供されます。干菓子の持つ美しい形状や色合いは、季節の移り変わりを表現し、茶席に華やかさを添える役割も担っています。さらに、干菓子の甘みが薄茶のほろ苦さを引き立て、より一層美味しく味わうための工夫として用いられています。

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