ダイエットと便秘
ダイエット中の便秘は多くの方が経験する悩み。この記事では、ダイエットと便秘の悪循環を断ち切るための原因と具体的な解消方法をご紹介します。※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療に代わるものではありません。便秘の症状が続く場合や、健康に関して不安な点がある場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。
ダイエットと便秘の関係性
ダイエットを始めると、便秘という悩みに直面する方は少なくありません。その原因として、食事制限による摂取量の減少や、栄養バランスの偏りが考えられます。特に、極端な食事制限は便の材料不足を引き起こし、結果として便秘につながることがあります。さらに、便秘によって腸の働きが鈍くなると、基礎代謝が低下し、太りやすい体質になってしまう可能性も。厚生労働省の行っている国民生活基礎調査の結果では、便秘は若い女性に多く発症が見られますが、男女とも加齢に伴って患者さんが増加し、高齢では男女差が消失するとされています。
便秘がダイエットに及ぼす悪影響
便秘は、美容と健康に様々な悪影響を及ぼします。体調不良や肌荒れはもちろんのこと、ダイエットの妨げになることも。便秘が続くと腸内の悪玉菌が増殖し、腸内環境が悪化します。その結果、摂取した栄養素が十分に吸収されず、代謝が低下し、老廃物を溜め込みやすい体質に。また、血行不良やむくみを引き起こし、痩せにくい体質へと導く可能性もあります。さらに、便秘によって排出されないガスが腸内に溜まり、お腹の張りや痛みを引き起こすことも。ニキビや肌荒れといった肌トラブルも、便秘による自律神経の乱れや血行不良が原因と考えられています。便秘による口臭の強さは腸内細菌に左右される。腸内の悪玉菌が多いとガス(腐敗物質)が多く発生し、腐敗物質が血液で肺まで運ばれて口臭をより強くします。便秘で起こる口臭は、排泄物が腸内で腐敗し悪玉菌による分解で出たガス(腐敗物質)が原因になるため、臭いも便に近いものになることがあります。さらに、便秘になっている期間が長いほど、排泄物が腸内に停滞する時間も長く、腐敗物質も多く発生するようになります。そのため便秘から口臭につながる可能性も高くなるといわれています。
便秘とはどのような状態か?
排便の習慣は人それぞれ異なるため、「便秘」の定義も一様ではありません。医学的には、便秘は「本来体外へ排出すべき糞便を、十分な量かつ快適に排出できない状態」と定義されます。これは、排便回数の減少、または排便困難な症状がある状態を指します。排便回数の減少は「週3回未満の排便」を目安とし、排便困難な症状としては、硬い便による過度のいきみ、頻回な便意、残便感、コロコロ便、腹痛、腹部膨満感などが挙げられます。週に3回程度の排便でも、残便感や腹痛などがなければ正常とみなされます。逆に、毎日排便があっても、これらの排便困難な症状に悩まされている場合は、便秘と診断されることがあります。
便秘の種類
便秘は様々な原因によって引き起こされますが、大きく「器質性便秘」と「機能性便秘」に分類されます。器質性便秘は、大腸がんなどの病気が原因で大腸そのものに異常が生じ、便の通過が妨げられることで起こります。機能性便秘は、神経や肛門周辺の筋肉など、排便に関わる機能の低下が原因です。機能性便秘はさらに、原因別に3つのタイプに分けられます。
- ①大腸の蠕動運動が低下するタイプ: 胃や小腸で消化吸収された食物の残りかすは大腸を通過する際に水分が吸収され、適度な硬さになります。しかし、大腸の働きが低下し、蠕動運動が弱まると、便が大腸内をスムーズに運ばれず、水分が過剰に吸収されて硬くなり、排便が困難になります。このタイプは女性に多く見られます。女性ホルモンの「黄体ホルモン」は大腸の蠕動運動を抑える作用があります。その為、黄体ホルモンの分泌が活発になると、腸の動きが鈍くなり、便秘になりやすくなります。
- ②排便をコントロールする筋肉がゆるまないタイプ: 便が直腸に到達し、直腸が拡張されると、通常は内外の肛門括約筋が緩み、排便が促されます。しかし、これらの筋肉や骨盤底筋などに障害があり、筋肉が弛緩しないと、便が直腸に溜まっていても排便が難しくなります。原因は加齢による筋肉の衰えが多く、特に高齢の男性に増加傾向があります。
- ③生活習慣が原因のタイプ: 大腸や直腸、肛門などの機能に異常がないにも関わらず便秘になる、現代の生活習慣に起因するタイプです。
ダイエットと便秘、意外な関係性とは?
ダイエットに取り組む際、方法によっては便秘を引き起こすことがあります。その背景には、主に3つの誤ったダイエット法が潜んでいます。まず、食事量を極端に減らすこと。これは単に排出するものが少なくなるだけでなく、体に必要な栄養素が不足し、便秘を招きやすくなります。次に、油分の摂取を過度に制限すること。脂質の源となる油を極端に減らすと、便が腸内をスムーズに移動するための潤滑油が不足し、排便が困難になるのです。そして、ストレスをため込むダイエット。食事制限による欲求不満や、体重減少の停滞などがストレスとなり、消化器官の働きを鈍らせ、便秘につながることがあります。無理な食事制限をしている人や、もともと食が細い人も、便秘になりやすい傾向があります。食べる量が少ないと、当然便の量も減ります。安易な食事制限は、食物繊維の不足にもつながります。これでは、快適な排便は期待できません。食事を減らす場合は、栄養バランスを考慮し、食物繊維が豊富な食品を積極的に摂ることが大切です。
ダイエット中でも便秘知らず!10の生活習慣
ダイエットと便秘解消を両立させるために、以下の10のポイントを意識しましょう。
- 温かい飲み物やスープなど、水分を多く含む温かい食品を摂る:冷たい飲食物は体を冷やし、代謝を低下させます。腸の働きも鈍くなるため、氷入りの飲み物などは控え、できるだけ温かいものを摂るようにしましょう。食事では、温かいスープや味噌汁などを取り入れ、腸を温めながら水分補給を心がけましょう。
- 食事は夜9時までに済ませる:腸が最も活発に働くのは午前中と言われています。夜は胃腸を休ませ、朝に備えましょう。できる限り、夜9時以降は飲食を控えるようにしましょう。
- 食べたいものを我慢しすぎない:好きなものを完全に禁止すると、反動で過食に走る可能性があります。便秘改善に効果的な食物繊維を豊富に含む野菜や果物を積極的に摂りましょう。例えば、甘いものが欲しい時は、ケーキの代わりに干し芋やドライフルーツ、ナッツ類を選ぶなど工夫してみましょう。干し芋は食物繊維が豊富で血糖値が上がりにくく、ビタミンCも豊富で美容にも良い効果が期待できる選択肢の一つです。
- 油分を極端に減らさない:ダイエット中は敬遠しがちな油ですが、便の潤滑油として重要な役割を果たします。血糖値の上昇を穏やかにするオレイン酸を含むオリーブオイルなど、質の良い油を積極的に摂りましょう。脂肪を極端に制限することも便秘の原因となります。脂肪は便を柔らかくし、滑りを良くする作用があり、腸内で脂肪酸に変わることで腸の水分吸収を抑制し、便秘のリスクを軽減します。
- 朝食を抜かない:体内時計が狂うと、代謝が低下して太りやすくなるだけでなく、排便リズムが乱れ、便秘や睡眠障害を引き起こす可能性があります。朝食を摂ることで体内時計をリセットし、規則正しい生活を送りましょう。特に、穀物とタンパク質の組み合わせは体内時計のスイッチを入れやすいとされています。例えば、ラーメンや丼ものなど、夜に食べるのを避けたいものでも、量を調整すれば朝食に適しています。
- 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く摂取する:便秘には食物繊維が良いと一般的に知られていますが、食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。食物繊維と聞くと、穀類や野菜に多く含まれる不溶性食物繊維を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、ダイエット中に不足しがちなのは水溶性食物繊維です。水に溶けやすく、便の排出を促す働きがあり、アオサやワカメ、ところてんなどの海藻類や、なめこなどのきのこ類に豊富に含まれているため、意識して摂取しましょう。食物繊維とは、人が消化できない栄養素の総称で、便の硬さを調整し、排便をスムーズにする効果があります。便秘の予防・改善には積極的に摂りたい成分です。水溶性食物繊維は保水性があり、腸内で水分を吸収してゲル状になり、老廃物や有害物質を吸着し、排出を促します。さらに、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える効果もあります。昆布やワカメ、こんにゃく、大麦などに多く含まれています。一方、不溶性食物繊維は吸水性が高く、腸内で水分を吸収して便の体積を増やし、腸壁を刺激することで腸の蠕動運動を活発にします。穀類や野菜、豆類、きのこ類、果実、海藻などに含まれています。
- 善玉菌を増やして腸内環境を整える:腸内環境が乱れると、肥満ホルモンが分泌されやすくなり、脂肪がつきやすくなります。善玉菌を増やすには、豆類がおすすめです。大豆や豆腐、味噌、納豆など、昔ながらの発酵食品を積極的に摂りましょう。
- できるだけ生の状態で食べる:果物や野菜などの植物に含まれるファイトケミカルは、健康維持や不調の改善に役立つと言われています。免疫力を高め、腸内環境の改善にもつながります。生のまま食べるのが良いとされており、皮ごとスムージーにするなど様々な摂取方法があります。
- 単品ダイエットはしない:特定の食品ばかりを食べるダイエットが話題になることがありますが、健康的に生活するためには、様々な栄養素をバランス良く摂取する必要があります。栄養バランスが偏った食事を続けると、ホメオスタシス(生体恒常性)が乱れ、腸の機能が低下して便秘を招くことがあります。すべての栄養素を一つの食品で補うことは不可能であると考え、単品ダイエットは避けましょう。
- 運動を習慣にする:運動不足は、便秘改善にもダイエットにも悪影響を及ぼします。ウォーキングや、立ったり座ったりする回数を増やすだけでも効果があります。体を動かすことで腸が刺激され、便秘の改善につながります。
便秘解消に役立つとされる食品
食物繊維は、便秘解消に非常に有効な成分です。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、それぞれ異なる働きをします。水溶性食物繊維は、水分を保持する性質があり、腸内でゲル状になり、老廃物を吸着して排出を促します。昆布やワカメ、こんにゃく、大麦などに豊富に含まれています。一方、不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の体積を増やし、腸壁を刺激して蠕動運動を活発にします。穀類や野菜、豆類、きのこ類、果実、海藻などに多く含まれています。
マッサージと便秘解消エクササイズ
便意を促すためには、マッサージが役立つとされています。お腹や腰をマッサージすることで、大腸が直接刺激され、蠕動運動が促進されるからです。方法は簡単です。まず、両手をよく擦り合わせて温めたら、片方の手のひらを右下腹部に当て、へその周りを時計回りに円を描くようにゆっくりとマッサージします。これを10~20回繰り返してください。次に、指を揃え、指の腹に力を入れて、同じようにへその周りを押していきます。指の代わりに、こぶしを使っても構いません。ご自身がやりやすい方法で繰り返しましょう。大腸のねじれや落下腸が原因で便秘になりやすい場合は、お腹のマッサージを習慣にすると良いでしょう。大腸のねじれが特に問題になるのは、便の水分が吸収されて硬くなってくる大腸の後半部分です。そのため、ねじれが起こりやすい箇所や便が引っ掛かりやすい部位を狙って、大腸を揺らすマッサージを行います。また、落下腸の人は、腸全体を上に持ち上げるマッサージが効果的です。お腹の中にある腸の形を意識しながら行うと、より効果的です。
便秘に効果的な腹筋運動
便秘を改善し、快適な毎日を送るためには、定期的な運動が欠かせません。特に、腹筋をある程度鍛えておくことは、便秘解消において重要なポイントとなります。腹筋を鍛えることで、排便時にしっかりと力むことができ、便をスムーズに押し出すサポートになります。また、腹筋を意識的に動かすことは、腸への刺激となり、大腸の蠕動運動を活発化させ、自然な便意を促します。
- ① トゥタッチ:仰向けになり、両手を頭の後ろで組み、頭を支えながら上体を起こします。つま先を見るように意識し、その状態を30秒キープした後、少し休憩します。この運動を5~10回繰り返しましょう。
- ② レッグキック:うつ伏せになり、両手を顔の下に置きます。両膝を伸ばしたまま、ゆっくりと大きく交互に足を上下させます。ゆっくりとした動作で行うと効果的ですが、30回を目安に続けましょう。
食事と生活習慣の見直し
便秘の根本的な解決には、食事内容、運動習慣、そして排便習慣の見直しと改善が不可欠です。食事においては、食物繊維を積極的に摂取することを心がけ、朝食は必ず食べるようにしましょう。適度な運動は、ストレス軽減と腸の蠕動運動促進に役立ちます。多くの研究で、運動が自律神経のバランスを整える効果があることが示されています。運動中は交感神経が優位になり、運動後には副交感神経が優位になることで、心身がリラックスした状態になります。通常、これらの神経は状況に応じて切り替わり、バランスを保っています。運動を通して、この切り替えを意識的に行うことで、乱れた自律神経を安定させることができます。したがって、運動はストレスを解消し、腸の機能を改善するのに効果的なのです。ダイエット中は、水分不足にならないように、こまめな水分補給を心がけましょう。また、食事量を極端に減らしすぎると、食物からの水分摂取量も減ってしまうため、注意が必要です。
基礎代謝アップのために
朝、レモン白湯を試してみましょう。白湯だけでも、温かいお湯が胃腸を優しく刺激し、腸の蠕動運動を促進しますが、レモンを加えることで、さらに便通改善効果が期待できます。レモンに含まれるクエン酸は、代謝を高め、体温上昇を促す効果があると言われています。内臓から血流が促進されることで、体の外側まで温まり、体の芯からポカポカになります。また、レモンの香り成分である「リモネン」には、心を落ち着かせ、リラックスさせる効果があります。さらに、リモネンは食欲抑制にも効果的です。
まとめ
ダイエットと便秘、この二つの悩みは多くの方が抱える問題ですが、適切な知識と対策を講じることで必ず解決できます。この記事でお伝えした方法を参考に、腸内環境を整え、健康的なダイエットの一助としていただければ幸いです。短期的なダイエットに終わらず、生涯続けられる生活習慣を確立することが、美しさと健康を維持するための鍵となります。
よくある質問
質問1:ダイエットをしていて便秘気味になった場合、最初に何をすべきでしょうか?
まずは、日々の食事内容を詳しく見直し、食物繊維を意識的に摂取するように努めましょう。同時に、こまめな水分補給を心がけ、軽い運動を習慣に取り入れることも効果的です。特に、朝食を抜かないことが大切です。それでも便秘が改善されない場合は、専門家である医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
質問2:便秘を解消するために、特に効果的な食物繊維の種類はありますか?
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類が存在し、どちらも偏りなく摂取することが重要です。水溶性食物繊維は、海藻類のわかめや昆布、こんにゃくなどに豊富に含まれており、便を柔らかくする作用があります。一方、不溶性食物繊維は、野菜や穀物、豆類などに多く含まれており、便のかさを増やすとともに、腸のぜん動運動を促進する働きがあります。
質問3:運動は便秘の解消にどのように貢献しますか?
運動を行うことで、腸のぜん動運動が活発になり、便通をスムーズにする効果が期待できます。さらに、腹筋を鍛えることで、排便時に便を押し出す力を強化することができます。ウォーキングやジョギング、ヨガなど、無理なく続けられる運動を日常生活に取り入れることを推奨します。