給食の思い出、街のパン屋さん、そして専門店。コッペパンは、私たちの生活に寄り添い、懐かしい記憶を呼び起こす日本のソウルフードです。ふっくらとした生地に挟まれた、バラエティ豊かな具材。定番のジャムやクリームから、おかず系の惣菜パンまで、その進化は止まりません。シンプルながらも奥深い、コッペパンの魅力に迫ります。
コッペパンとは
コッペパンは、日本で生まれた独特なパンであり、片手で持ちやすいサイズと、底が平らな形状が特徴です。見た目はフランスのクッペやホットドッグ用のパンに似ています。学校給食でおなじみの存在でしたが、近年では専門店も現れ、再び注目を集めています。
コッペパンの語源
コッペパンの名前の由来にはいくつかの説があります。最も有力なのは、フランス語の「coupé（クーペ）」から来ているという説です。「coupé」は「切られた」という意味で、パンを作る際にナイフで切り込みを入れることや、サンドイッチにするために切れ目を入れることから名付けられたと考えられています。また、ドイツ語の「Koppe」または「Kuppe」（それぞれ「山」や「丘」を意味する）が語源だという説もあり、コッペパンの形が山や丘に似ていることが理由とされています。
コッペパンの歴史：日本独自の進化
コッペパンは、明治時代にヨーロッパから伝わったパンを参考に、大正時代に日本で生まれたパンです。ある説によると、明治時代の終わりにアメリカでパンの作り方を学び、大正時代に日本で初めてイーストを使ったパンの製造方法を開発した田辺玄平が考案したと言われています。田辺玄平が創始者の丸十パンによれば、1919年に陸軍に納めるために開発された、食パンの生地を使った小さなパンがコッペパンの始まりとされています。当時、米騒動や食生活の欧米化が進み、一般の人々の間でパンを食べる習慣が広がっていきました。
学校給食におけるコッペパン
コッペパンが全国に広まった大きなきっかけは、1950年代から学校給食に取り入れられたことです。第二次世界大戦後、食糧が不足していた時代に、安価でありながら栄養価が高く、大量に作れる食品として重要視されました。1950年当時の学校給食パンの基準では、原材料の配合割合は重量比で、小麦粉が100、砂糖が3、マーガリンが2、イーストが2、食塩が1.7で、水分は全体の37%以下、製品の重さは10食あたり1424gでした。揚げパンが登場してからは、コッペパンと揚げパンは給食の定番メニューとして親しまれました。しかし、1990年代頃から、ご飯の給食が増えたり、食パンやロールパンなど他の種類のパンが登場したりしたことで、コッペパンの登場回数は減ってきています。背景には、当時の日本とアメリカの間の政治的な状況も関係していました。アメリカから小麦の輸入を増やすために、学校給食にパンを導入し、パン食の習慣を広めることが推進されたという側面もあります。
コッペパンの種類と多様な楽しみ方
コッペパンは、その飾らない味が魅力で、どんな食材とも相性抜群です。そのまま味わうのも良いですが、真ん中に切り込みを入れて、ジャムやマーガリン、ピーナッツクリームなどを塗ったり、お好みの具材を挟んで食べるのが一般的です。具材を挟む際の切り方には、横から切り込みを入れる「腹割り」と、上部に切れ目を入れる「背割り」があります。惣菜パンとしては、焼きそばやコロッケ、卵などを挟んだものが定番です。さらに最近では、生クリームや色とりどりのフルーツを挟んだ、デザート感覚で楽しめるコッペパンも登場し人気を集めています。地域やお店によっては、その土地ならではの食材を使用したユニークなコッペパンも販売され、「ご当地コッペ」として親しまれています。
コッペパン専門店の台頭と新しい潮流
2010年代後半から、コッペパン専門店が続々とオープンし、再び注目を集めています。これらの専門店では、懐かしい焼きそばパンやたまごパンといった定番メニューはもちろん、フレッシュな生クリームや旬のフルーツを贅沢に使ったスイーツ系のコッペパンなど、バラエティ豊かな品揃えが魅力です。注文を受けてから具材を挟んだり、仕上げをしたりする、目の前で作られる臨場感も人気の理由の一つであり、これまでにないコッペパンの楽しみ方を提案しています。
身近な存在、市販のコッペパン
コッペパンは、大手製パンメーカーから街のパン屋さんまで、幅広い場所で製造・販売されています。また、喫茶店チェーンや和菓子店が手掛けるコッペパン専門店も登場しており、「やわらかシロコッペ」、サンメリーの「パンの田島」、「トラヤカフェ・あんスタンド」などがよく知られています。手軽に食べられる点や、どんな具材ともマッチする汎用性の高さが人気の理由ですが、学校給食で親しんだ世代にとっては、懐かしい思い出の味として愛されています。
コッペパン誕生秘話：戦時下の工夫
太平洋戦争中、食糧配給制が敷かれていた時代に、コッペパンは生まれました。当時、コッペパン1個が、1人分の1食分の食事として提供されていました。
コッペパンの多様な楽しみ方
コッペパンは、そのまま味わうのはもちろん、様々なアレンジが可能です。パンを横半分にスライスして、お好みのジャム、バター、ピーナッツクリームなどを塗ったり、色々な食材を挟んでサンドイッチのようにして楽しむこともできます。中には、牛乳に浸して食べるという方もいるようです。地域によっては、マーシャルビーンズ（大豆を原料としたチョコレート風味の菓子、株式会社クリートの商品）を挟んで食べる習慣があるところも。
まとめ
コッペパンは、日本で独自に発展を遂げた、シンプルながらも奥深い魅力を持つパンです。学校給食でお馴染みの味として親しまれてきただけでなく、専門店で独自の進化を遂げた新しい味も堪能できます。ぜひ、様々な具材を組み合わせて、あなただけのオリジナルコッペパンを見つけて、味わってみてください。
コッペパンの「コッペ」の由来とは？
コッペパンの「コッペ」という名称の由来には、いくつかの説が存在します。最も有力なのは、フランス語の「coupé（クーペ）」から来ているという説で、「切られた」という意味合いを持ちます。パンに切り込みを入れる工程に由来すると考えられています。その他には、ドイツ語の「Koppe」や「Kuppe」（それぞれ「山」や「丘」を指す）が語源であるという説も存在します。
コッペパン発祥の地は？
コッペパンは、大正時代に日本で生まれた、日本独自のパンです。明治時代にヨーロッパから伝来したパンをベースに、日本で独自に改良されました。田辺玄平というパン職人が考案したという説が有力です。
なぜ給食でコッペパンは愛されたのか？
コッペパンが学校給食で広く親しまれた背景には、戦後の食料が乏しい時期に、手頃な価格で栄養を補給でき、かつ大量に作れるという利点がありました。また、その飾らない味がどんなおかずにもマッチしたことも、支持された要因と言えるでしょう。