ミカンの栽培で、甘くて美味しい実を収穫するためには、適切な肥料が欠かせません。肥料は、ミカンの木が必要とする栄養を補給し、生育を促進する重要な役割を果たします。この記事では、ミカンの生育ステージに合わせた肥料の選び方、与え方、タイミングを徹底解説。初心者の方でもわかりやすく、美味しいミカンを育てるためのノウハウを余すところなくご紹介します。さあ、あなたも美味しいミカン作りに挑戦してみましょう!
ミカン(蜜柑)の魅力
みかんは、日本国内で非常に多く生産されている果物です。私たちの食生活に欠かせない存在として、多くの人に愛されています。
中でも特に人気が高いのは温州みかん(ウンシュウミカン)でしょう。日本生まれの品種で、様々な種類が栽培され、市場に出回っています。
その他、中国原産の紀州みかん(キシュウミカン)や、インド原産のポンカンなど、多様な種類が存在します。
みかんの花は、5月頃に開花します。小さな白い花からは、心地よい香りが漂います。収穫時期は、品種や栽培条件によって異なりますが、9月下旬から12月にかけてが一般的です。実がなってから収穫までの期間が長いため、病害虫への対策が重要になります。

ミカン(蜜柑)の代表的な種類
みかんには数多くの品種が存在し、それぞれに個性があります。ここでは、特に広く知られている温州みかんを例に、栽培期間による分類をご紹介します。
極早生
極早生は、収穫までの期間が最も短いタイプです。9月から10月頃、冬が訪れる前に収穫できます。栽培期間が短いため、比較的管理が容易なのが特徴です。温州みかんの極早生品種は、早生品種に比べて樹が小さく、皮が薄い傾向があります。品種にもよりますが、晩生のものに比べて酸味が強く、甘酸っぱい風味が楽しめます。
早生種
早生種は、比較的早い時期に実をつける品種です。収穫時期は10月から11月頃。極早生種と同様に果肉が柔らかく、お子様からご年配の方まで幅広い世代で楽しめます。また、極早生種に比べると甘味が強い傾向にあります。
中生種
中生種は、11月下旬から12月にかけて収穫時期を迎えます。早生種と晩生種の中間的な性質を持ち、一般的に「みかん」として広く知られているのはこのタイプです。じょうのう(内側の薄皮)は早生種よりもやや厚めですが、糖度が高くなるのが特徴です。
晩生種
晩生種は、収穫時期が最も遅い品種です。12月以降に収穫されます。他の品種に比べて皮やじょうのうがしっかりしていますが、濃厚な甘味が魅力です。収穫後に貯蔵することで甘さを増し、酸味を和らげることができるため、一定期間貯蔵してから出荷されることもあります。例えば、12月に収穫したものを貯蔵し、1月から2月に出荷するケースなどが見られます。
家庭栽培におすすめ!みかんの人気品種
みかんには様々な品種が存在するため、どれを選べば良いか迷ってしまう方もいるかもしれません。ここでは、ご家庭での栽培に適したおすすめのみかんの品種をご紹介します。品種選びに迷った際は、ぜひ参考にしてください。
日南1号
日南1号は、非常に早い時期に収穫できる早生みかんです。果実がまだ緑が残る状態から味わうことができ、その時期ならではの風味を楽しめます。外皮だけでなく、内側の薄皮も薄いため、手軽に皮むきができるのが魅力です。酸味が穏やかで甘みが際立つ傾向にありますが、緑色が濃い時期には酸味もやや強く感じられます。成熟が進むにつれて果皮全体が鮮やかな黄色に変わり、甘さも一層増していくでしょう。
ゆら早生
ゆら早生は、特に早期に収穫される品種です。早生品種の中でも、際立った甘さが特徴として知られています。内側の薄皮が非常に薄く、口の中でとろけるような食感で、袋ごと食べられる手軽さが魅力です。丸みを帯びた可愛らしい形状も、ゆら早生の人気の理由の一つです。
宮川早生
宮川早生は、早生みかんの代表的な品種として広く知られています。大正時代から日本各地で栽培されてきた長い歴史を持ちます。実が付きやすく、豊かな収穫を期待できるのが利点です。収穫初期は酸味がやや強く、時期が進むにつれて甘みが増していきます。酸味と甘みの調和がとれたみかんを求める方におすすめです。
南柑20号
南柑20号は、中程度の時期に収穫される中生品種のみかんです。その名は広く知られており、穏やかな酸味と豊かな甘みが特徴です。外皮がむきやすく、内側の薄皮も薄いため、食べやすさも魅力の一つです。また、保存性に優れており、比較的長く品質を保てるのも利点です。
向山
向山は、中部地方で広く栽培されている人気品種です。中生種の中では比較的遅い時期に収穫できます。酸味が穏やかで、糖度が高いことが特徴です。晩生種ほどではありませんが、じょうのう膜はやや厚めで、収穫後に貯蔵されることがあります。貯蔵された果実は酸味がさらに抜け、濃厚な風味が増します。
ミカン栽培の基本:肥料、土、植え付け、管理
肥料は自分で成分を調整して配合することも可能ですが、初心者には難しいかもしれません。市販の果樹用肥料、特にかんきつ類専用肥料を選ぶのがおすすめです。みかんに必要な微量要素などがバランス良く配合されており、大きく美味しい実をたくさん実らせる効果が期待できます。置き肥タイプの肥料は、土の上に置くだけで1~2ヶ月効果が持続し、手軽に使用できます。

土づくり
温州ミカンの有機栽培においては、排水性が良く、かつ乾燥期の保水性も良い土性で、礫と粘土を適度に含む土壌が望ましい。根は浅根性であり、表層0~30cmに細根が密に張る土壌が適している。深い所まで膨軟で保水性の高い土壌は高品質なミカン生産には向かない。(出典: 温州ミカンの有機栽培技術(日本土壌協会報告書), URL: https://www.japan-soil.net/report/h24tebiki_03_II_III_IV.pdf, 2012)市販の培養土を利用するのも良い方法です。元肥として緩効性肥料が配合されている市販の培養土を選べば、土や肥料を混ぜる手間が省け、すぐに使用できます。
元肥
植え付け前に施す肥料が元肥です。みかんが好む土を用意したら、元肥として緩効性肥料を土に混ぜ込みましょう。
植え付け
ミカンの苗を植えるのに最適な時期は、春先の3月から4月にかけてです。苗木を手に入れたら、鉢植えにするか、庭に直接植え付けましょう。ただし、冬の寒さが残る時期の植え付けは、苗木が弱る原因となるため、注意が必要です。
「庭植えの場合、根を十分に広げられるよう、植え穴は少し大きめに掘るのがポイントです。植え穴のサイズについては、情報の確認が必要です。接ぎ木された苗を植える際は、接ぎ木部分が土に埋まらないように、やや浅めに植えるのがコツです。
鉢植えの場合は、根詰まりを防ぎ、空気の通りを良くするために、2~3年に一度は植え替えを行いましょう。
追肥と寒肥の重要なタイミング
ミカンの成長段階に合わせて適切な時期に肥料を与えることは、丈夫な木を育て、美味しい実を収穫するために欠かせません。肥料を与えるタイミングとして、3月、6月、そして9月から10月が特に重要です。
3月頃の施肥(春肥・寒肥)
2月下旬から3月にかけては、新しい芽や花芽が成長する大切な時期です。この時期に肥料を与えることで、新しい芽や枝が力強く成長するための栄養を補給し、花付きを良くする効果が期待できます。庭植えの場合は、土壌改良も兼ねて油かすなどの有機質肥料をゆっくりと効くタイプの肥料を施すと良いでしょう。鉢植えの場合は、これから始まる生育期に備えて肥料を与えましょう。
6月頃の施肥(夏肥)
植え付け後、6月頃になると実がつき始めます。この時期の肥料は、実を大きく育て、木全体の活力を保つために重要です。秋の収穫に向けて、油かすのような有機肥料や、緩効性の肥料を与えましょう。もし木の勢いが弱いようであれば、1週間から10日に一度、即効性のある液体肥料を与えても良いでしょう。
9月~10月頃の施肥(秋肥)
秋肥は、9月から10月にかけて行う重要な作業です。この時期は、ミカンの果実が熟していく時期と重なり、収穫後の樹の体力を回復させる目的があります。特に10月には、油かすなどの有機質肥料や、効果がゆっくりと持続する緩効性肥料を施すことが推奨されます。これは、翌年の花芽が形成されるのを助け、安定した収穫量につながるからです。秋にしっかりと栄養を与えることで、木が受ける疲労を和らげ、次のシーズンに向けての準備をスムーズに進めることができます。
肥料の与え方(施肥方法)
ミカンの木に肥料を与える際には、肥料の吸収効率を高める工夫が大切です。一般的に、果樹は根の先端部分で肥料を吸収するため、肥料は幹の近くではなく、枝先の真下あたりに施すと効果的です。具体的な方法としては、木の周りを中心として円を描くように、深さ10cm程度の溝を掘り、そこに肥料を埋め込むように施肥します。こうすることで、根が伸びやすい場所に栄養分が供給され、効率的な生育を促進します。
収穫
気温が下がるにつれて、ミカンの実は色鮮やかになり、いよいよ収穫の時期を迎えます。より良い実を収穫するために、必要に応じて7月から8月の間に摘果を行い、実の数を調整することも大切です。
温州ミカンの場合、実全体の約7割が色づいた頃から、収穫を始めるのが目安です。果皮に緑色が残っておらず、鮮やかなオレンジ色に染まっていれば、十分に甘味がのっているはずです。
みかん(ミカン)の栽培に関する注意点
ミカンを栽培する際には、これからご紹介する点に注意して育ててみましょう。ここでは、ミカン栽培で特に注意すべきポイントをまとめました。
病害虫対策
みかん栽培において、カイガラムシ、ミカンハモグリガ、ハダニといった害虫は、発生頻度が高く、注意が必要です。これらの害虫は大量発生する可能性があるため、早期発見と迅速な駆除が重要となります。
また、そうか病、かいよう病、灰色かび病、黒点病といった病気への対策も欠かせません。病気の原因となるカビや細菌を特定し、それぞれの病害に適した殺菌剤を使用することが効果的です。予防のための定期的な薬剤散布も有効ですが、使用する際は、適用病害を確認し、用法・用量を守って使用してください。農薬の使用にあたっては、登録内容をよく確認し、地域の指導機関の指示に従ってください。
摘果
みかんは、一般的に隔年結果を起こしやすい果樹として知られています。隔年結果とは、収穫量が一年ごとに大きく変動する現象を指します。
特に温州みかんは、収穫時期が秋の終わり頃までと遅いため、前年に多くの実をつけた場合、樹木が著しく消耗し、栄養不足に陥りやすくなります。その結果、翌年の結実が極端に悪くなることが、隔年結果の主な原因とされています。
毎年安定した収穫量を得るためには、摘果作業が非常に重要です。摘果は、7月から8月にかけて行いましょう。摘果は、7月から8月にかけて行いましょう。早生温州では一果当り葉果比30~35枚、普通温州は20~25枚を標準に行う。(出典: 高知県農業振興部『温州ミカンの作業暦』, URL: https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/info/dtl.php?ID=8526, 不明(行政機関公式サイト、最新情報反映))
剪定
みかんの木が成長すると、枝が密集し、風通しや日当たりが悪化することがあります。適切な剪定を行い、樹形を整えることで、これらの問題を解決できます。
剪定に適した時期は、2月下旬から4月です。特に、新芽が形成される前の2月下旬から3月初旬に、混み合った枝を取り除くことで、木全体に日光が当たるようにし、翌年の実付きを向上させることができます。剪定の際は、内側に向かって伸びている枝や、垂れ下がっている枝を優先的に切除します。一度に大量の枝を切りすぎると木が弱る可能性があるため、必要最小限の剪定を心がけましょう。
まとめ
みかんは、日本で広く親しまれている果物であり、家庭菜園でも比較的容易に栽培できます。適切な肥料の施用はもちろんのこと、摘果や病害虫対策などの管理を適切に行うことで、長期間にわたって栽培を楽しむことができます。家庭栽培に適した品種も数多く存在するため、お好みの品種を見つけて、庭に植えてみてはいかがでしょうか。美味しいみかんの収穫を目指して、みかん栽培に挑戦してみましょう。
みかん、一番おいしい時期はいつ?
みかんの旬は、品種や育てている場所によって変わりますが、だいたい9月の終わりから12月にかけてが一般的です。温州みかんなら、実の7割くらいが色づいたら収穫時です。
みかんが喜ぶ土ってどんな土?
みかんは、水はけが良くて、なおかつ水分を保てる土が好きです。基本は、小粒の赤玉土と腐葉土を7対3くらいの割合で混ぜたものを使うと良いでしょう。手軽に済ませたいなら、肥料が最初から入っている市販の培養土がおすすめです。
みかんが毎年ちゃんと実るようにするには?
みかんが隔年結果になるのを防ぐには、摘果が大切です。7月から8月の間に、実を間引く作業をしましょう。温州みかんなら、葉っぱ25枚から30枚に対して実が1個残るように調整するのが目安です。
みかんを育てる上で注意すべき虫や病気は?
みかん栽培では、カイガラムシ、ミカンハモグリガ、ハダニなどの虫に気をつけましょう。見つけ次第、すぐに退治してください。また、そうか病、かいよう病、灰色かび病、黒点病といった病気の予防も重要です。症状に合わせて適切な殺菌剤を使うことを考えましょう。
みかんの剪定時期と不要な枝の処理方法
みかんの剪定に最適な時期は、一般的に2月下旬から4月にかけてです。中でも、新芽が伸び始める前の2月下旬から3月上旬にかけて、枝が密集している部分を整理し、太陽光が木の内部まで十分に届くように剪定することで、実の付き具合を向上させ、樹木の生育を調整できます。剪定する際は、内側に向かって伸びる枝や、下方向に垂れ下がっている枝を優先的に取り除きましょう。一度に多くの枝を切りすぎると、木が弱ってしまう原因となるため、必要最低限の剪定を心がけることが重要です。
みかんに肥料を与えるのに最適な時期とその理由
みかんへの施肥は、通常、3月(春肥・寒肥)、6月(夏肥)、そして9月から10月(秋肥)にかけての年3回が理想的です。3月は花芽の成長促進と新梢の発育を促し、6月は果実を大きく育て、樹勢を維持するため、9月から10月は収穫後の樹勢回復と、翌年の花芽形成を目的としています。肥料としては、油かすや有機質の緩効性肥料が効果的です。肥料は根の先端部分で吸収されやすいように、幹から少し離れた枝先の真下あたりに、深さ約10cmの穴を掘って埋めるように施すと良いでしょう。