柑橘かいよう病とは?原因・症状・防除法まで徹底解説
柑橘かいよう病は、ネーブルやレモンなどの柑橘類に発生しやすく、果実や葉に病斑をつくって品質や収量を大きく下げる恐れがある病害です。この記事では、柑橘かいよう病の特徴や症状、発生原因、農家が取るべき予防・防除のポイントまでをわかりやすく解説します。早期対策で大切な柑橘を守りましょう。

柑橘かいよう病とは?


柑橘かいよう病(カンキツかいよう病)は、Xanthomonas(ザントモナス)属の細菌、主に *Xanthomonas citri pv. citri* (旧名:*Xanthomonas campestris pv. citri*)によって引き起こされる病害です。この病気は、柑橘類の葉・果実・枝に褐色の病斑を形成し、病斑が進行すると中央部がコルク化、亀裂を生じ、周囲の組織が黄色く縁取られるなどの特徴があります。
被害が広がると、落葉・枝枯れ・樹勢低下を引き起こし、果実の外観品質を著しく損なうため、農家にとっては極めて深刻な病害です。

柑橘かいよう病の原因と感染経路

原因菌は Xanthomonas campestris pv. citri で、以下のような感染経路で広がります。
  • 雨水や飛沫を介した伝染(雨媒伝染)
  • 気孔からの侵入(特に新葉や若い枝)
  • 風害・虫害による傷口からの侵入
  • 前年の病斑からの越冬感染
これらの経路により、特に降雨や台風、強風が多い季節に急速に感染が広がります。

かいよう病の主な症状と見分け方

主な症状は以下のとおりです。
  • 葉:中心部がコルク化した褐色の病斑とその周囲の黄変
  • 果実:かさぶた状の潰瘍や表皮の亀裂
  • 枝:病斑が進行すると枯れ込み
  • 重症化:落葉や樹勢の著しい低下
症状はそうか病や黒点病と似ている部分もありますが、病斑の中心がコルク化する点や黄変の有無などで見分けが可能です。

かいよう病が発生しやすい条件と時期

発生しやすい条件は以下のとおりです。
  • 20〜30℃の温暖多湿な気候
  • 強風や大雨などの気象条件
  • 風通しが悪く、害虫による傷が多い園地
  • 窒素過剰施肥による軟弱新梢の多発
発病時期は春から梅雨にかけて(3月〜7月)が中心ですが、気象条件次第では秋まで継続することもあります。

かいよう病に弱い柑橘品種とは?

柑橘かいよう病への感受性には品種間で違いがあります。
  • 文旦は感受性が高く、特に注意が必要です。
  • 温州みかんは中程度の感受性です。
  • ぽんかん・はっさく・日向夏などは比較的耐性があります。
  • ユズは耐性が非常に高い品種のひとつとされます。
  • ネーブルやレモンも感受性が高い部類に入ります。
栽培環境や過去の発生歴を踏まえて、耐性のある品種を選定することも重要です。

柑橘かいよう病の予防と防除対策

耕種的防除(栽培管理による対策)

  1. 伝染源除去:発病枝や病葉を剪定・処分し、越冬菌の温床を断ちます。
  2. 防風対策:風による傷や飛散感染を防ぐため、防風ネットなどを設置します。
  3. 施肥管理:窒素過剰を避け、軟弱な新梢の発生を抑えます。
  4. 通風・日照確保:樹の間隔や剪定で風通しを良くし、湿度を下げます。
  5. 害虫防除:ハモグリガなどの食害を防ぐことで、細菌の侵入を抑えます。

薬剤防除(化学的防除)

  1. 防除時期の設定:発芽前〜5月、梅雨時期、台風前後などが適期です。
  2. 使用薬剤:銅剤を中心に使用。
  3. 散布計画:残効期間と降雨量に応じて再散布を計画します。
  4. 混用注意:無機銅剤と他剤の混用は薬効や安全性に影響する場合があるため要注意です。
※農薬の使用にあたっては、適用病害虫を確認し、使用基準を遵守して下さい。

まとめ

柑橘かいよう病は、果実や葉・枝に深刻な被害を与える細菌性の病害です。品種ごとの感受性を把握し、風通しのよい環境作りや害虫防除、適切な薬剤散布を組み合わせることで、被害を最小限に抑えることが可能です。
農家の皆さんにとっては、気象の変化や品種特性を踏まえたきめ細やかな管理が、柑橘栽培の成功につながります。日々の園地観察と早期対応を心がけましょう。

出典

柑橘かいよう病は家庭菜園でも発生しますか?

はい、柑橘かいよう病は家庭菜園でも発生する可能性があります。特に風通しが悪く、雨水の跳ね返りが多い環境では感染リスクが高まります。早期発見と剪定・風通しの改善が重要です。

かいよう病にかかった葉や枝はどう処理すればいいですか?

病気が確認された葉や枝は、園地外に持ち出さずに焼却または適切に廃棄する必要があります。そのまま放置すると翌年の感染源になる可能性があるため注意しましょう。

感染した果実は食べても問題ありませんか?

かいよう病に感染した果実は、見た目が悪くなりますが、内部にまで細菌が及んでいなければ食べることは可能です。ただし、品質は著しく低下しているため、市場出荷には適しません。

銅剤を散布すれば必ず予防できますか?

銅剤は有効な防除手段ですが、適切な時期・回数・方法で使用することが重要です。また、風通しの確保や害虫防除など、複数の対策と組み合わせることで、より高い予防効果が期待できます。

かいよう病に強い柑橘品種はありますか?

比較的耐性のある品種としては、ユズや日向夏、はっさく、ぽんかんなどが挙げられます。一方、ネーブル、文旦、レモンなどは感受性が高いため、栽培時には特に注意が必要です。



柑橘かいよう病