近年、日本でも人気が高まっているシードル。その魅力は、りんご本来の爽やかな風味と、微炭酸によるすっきりとした飲みやすさにあります。しかし、シードルを選ぶ際に気になるのが「度数」ではないでしょうか。この記事では、シードルの度数に関する基礎知識から、味わいとの関係性、そして自分にぴったりの一本を選ぶためのポイントまでを詳しく解説します。シードルの世界をさらに深く楽しむための第一歩を踏み出しましょう。
シードルとはどんなお酒?
シードルは、リンゴ果汁を発酵させて造る、ヨーロッパで古くから愛される醸造酒です。ワインやビールのように親しまれており、フランス語ではシードル、英語ではサイダー、またはハードサイダーと呼ばれます。日本では一般的に「シードル」という名前で知られています。

シードルの原材料はりんごだけ
シードルは基本的に、リンゴの果汁のみを発酵させて作られます。 完熟リンゴを収穫し、様々な品種をブレンドすることで、甘口から辛口まで幅広い味わいが生まれます。日本では主に生食用リンゴが使われますが、世界にはシードル専用のリンゴを栽培している国も多くあります。750mlのボトル1本あたり、平均して4~5個のリンゴが使用されており、リンゴ100%で作られたシードルは、グルテンフリーで体に優しく、美容効果も期待されています。
シードルのアルコール度数とカロリー
シードルのアルコール度数は平均3~8%と低めで、お酒に弱い方でも比較的飲みやすいのが特徴です。特に甘口シードルは、アルコール度数が低い傾向があります。一般的なワインのアルコール度数が平均10~15%、ビールが平均5%程度であることを考慮すると、シードルはアルコールに強くない方にもおすすめです。また、シードルは他のお酒に比べてカロリーが低く、100mlあたり約40kcalです。ワインは約70kcal、日本酒は約100kcalなので、カロリーを気にせずに楽しめるのも魅力です。
シードルの味わい:甘口と辛口
シードルには、大きく分けて甘口と辛口の2つのタイプがあります。多くは発泡性で、リンゴの風味と酸味、そして炭酸による爽快感が楽しめます。特に暑い季節にぴったりの飲み物です。甘口シードルは、その名の通り甘く、ピュアな味わいが特徴で、食前酒やデザートとの相性が抜群です。アルコール度数も4%前後と低めで、非常に飲みやすくなっています。一方、辛口シードルは、すっきりとしていて繊細な味わいが魅力です。アルコール度数は7%前後で、肉料理や魚料理などのメインディッシュによく合います。
シードルと料理のマリアージュ
シードルのバラエティ豊かな風味は、食との組み合わせにおいてもその真価を発揮します。日本では、そば粉のクレープであるガレットとのコンビネーションが一般的ですが、白身魚のフライであるフィッシュ&チップスや、ムール貝のワイン蒸しなど、多様な料理とのハーモニーを楽しむことができます。油分が多い揚げ物や餃子といった料理には、さっぱりとしたシードルがおすすめです。洋食、中華、エスニック、そして和食まで、料理のカテゴリーに応じてシードルを選べば、食体験はより豊かなものになるでしょう。ドライなシードルはメインディッシュと相性が良く、特に魚介類や肉料理と合わせることで、それぞれの持ち味を最大限に引き出します。ミディアムドライのシードルは、肉料理の濃厚な風味と調和し、辛口のシードルは魚介本来の味を際立たせます。甘口のシードルは、デザートとの相性が抜群で、特にチョコレートとの組み合わせは格別です。食前酒として楽しむのも良いでしょう。
シードルのルーツと歴史
シードルの起源を特定する確固たる証拠は存在せず、その発祥は謎に包まれています。しかし、りんご栽培の普及とともに、シードルの歴史を辿ることができます。りんごは世界で最も古い果物のひとつであり、原産地である天山山脈から、中国の遊牧民によってヨーロッパへ伝えられたと言われています。トルコでは、8000年前の炭化したリンゴが発見されています。シードルの起源として有力視されているのは、紀元前55年のローマ時代、ガイウス・ユリウス・カエサルがヨーロッパ各地を遠征していた際、ケルト民族が小さなりんごを使ってシードルのような飲料を製造していたという記録です。紀元前1世紀中頃にローマ帝国が成立すると、ローマには多種多様なりんごの木が植えられるようになり、オリーブを搾るための機械が導入されたことで、りんごの果汁を容易に抽出することが可能になり、シードルをはじめとする果実酒が広まったと考えられています。
シードルのバリエーション
シードルには多種多様なバリエーションが存在し、近年ではりんご以外の果実をブレンドしたり、ホップやハーブを加えて風味を加えたりと、新しい楽しみ方が生まれています。
スパークリングタイプ
繊細な泡が特徴のスパークリングタイプは、気密性の高い容器内で二次発酵させることで、炭酸飲料のような爽快感が生まれます。すっきりとした酸味がその魅力です。
スティルタイプ
炭酸を含まないスティルシードルは、タンク内でりんごを発酵させるか、発酵過程で自然に発生する炭酸ガスを抜いて製造されます。そのまったりとした口当たりから、「りんごワイン」と表現されることもあります。
アイスシードル
冬の寒さの中で、りんごを樹になった状態で凍らせてから仕込むアイスシードルは、際立つ甘味と高いアルコール分が特徴です。デザートワインのように、ゆっくりと味わうのに適しています。
フレイバード・シードル
ベリー類、洋梨、パッションフルーツといった果実や、ジンジャー、ハーブなどを加えて香り豊かに仕上げたフレイバード・シードルは、りんご本来の風味との相乗効果により、これまでにない味覚体験をもたらします。
シードルの産地と特徴
シードルの風味は、使用するりんごの品種やブレンド比率に左右されるだけでなく、生産国や地域ごとの製法によっても大きく変化します。日本では「シードル」という名前が広く知られていますが、国によっては「ハードサイダー」や「シドラ」といった異なる名称で親しまれています。
フランスのシードル(Cidre):甘口からドライまで
かつて世界で最も広大なリンゴ栽培面積を誇ったフランス。今日では、ノルマンディー地方とブルターニュ地方が、シードルの主要な生産地としてその名を知られています。フランスのシードルは、アルコール度数がおおよそ3~5%と穏やかで、甘口からキレのある辛口まで、多様な風味を楽しむことができます。伝統的な製法であるデフェカシオンによって、リンゴに含まれるペクチンを取り除くことで、素材本来の甘さを引き立てたシードルが生まれます。ノルマンディー地方には、シードル街道と呼ばれる醸造所が集まるエリアがあり、シードルと共にガレットを味わえるクレープリーも数多く点在しています。
スペインのシードラ(Sidra):ドライでシャープな酸味
スペインは、高品質なリンゴの産地として知られ、シードルは「シドラ」の名で親しまれています。主な生産地は、スペイン北部に位置するアストゥリアスとバスク地方で、特にアストゥリアスはシードル文化が根強く息づいています。スペインのシードルには、炭酸ガスや糖分を添加しない「シードラ・ナトゥラル」と、これらを加えた「シードラ・ガシフィカーダ」の2つのタイプが存在します。シードラ・ナトゥラルは、その辛口の風味に加え、高い位置からシードルを注ぐ「エスカンシアール」という独特な方法で空気に触れさせることで、口当たりの良いまろやかな味わいに変化します。乳製品を思わせる香りが特徴的で、ドライでキリッとした酸味が際立つものが多いのが特徴です。
イギリスのサイダー(Cider):ビターな辛口と豊かな酸味
イギリスは、ヨーロッパにおいて生産量・消費量ともにトップを誇るシードルの大国であり、シードルは「サイダー」として広く愛されています。主要な産地としては、リンゴ栽培が盛んなサマセット州、清らかな水に恵まれたウェールズ、そして古くからサイダー造りをリードしてきたヘレフォードシャー州の3つが挙げられます。イギリスのサイダーは辛口のものが主流で、しっかりとした酸味とほのかな苦味が感じられるのが特徴です。アルコール度数は約5~8%となっています。
ドイツのアップルワイン(Apfelwein):微炭酸と爽やかな酸味
ビール大国として知られるドイツですが、リンゴの栽培が盛んなフランクフルト周辺のヘッセン州では、アップルワインと呼ばれるシードルが広く親しまれています。イギリスやフランスのシードルとは異なり、微炭酸でさっぱりとした酸味が特徴的で、ミネラルウォーターや炭酸水で割るなど、様々な飲み方が楽しまれています。寒さの厳しい冬の時期には、スパイスを加えた温かいホットアップルワインを提供する店も多く見られます。アルコール度数は3~5%程度です。
アメリカのハードサイダー:爽快な飲み心地
アメリカでは、アルコールを含まないリンゴジュースをサイダー、アルコール入りのものをハードサイダーと区別します。2010年頃からハードサイダーの人気が高まり、市場は拡大傾向にあります。その特徴は、爽快な飲み心地とドライな味わいで、アルコール度数は一般的に4~8%程度です。
日本のシードル:クリアで飲みやすい
日本のシードルの特徴は、生食用リンゴを贅沢に使用している点です。リンゴ本来の美味しさを生かしたシードルは、世界のシードル業界において新たな潮流と見なされ、欧米でも高い評価を受けています。青森県産のシードルが国際的な展示会で賞を獲得するなど、その品質は国際的にも認められています。アルコール度数は4~6%程度で、フランス産のシードルに近い風味を持ち、リンゴの自然な甘みが感じられるものが多いのが特徴です。紅玉やふじといった糖度の高い品種を使用することで、繊細な味わいを実現しています。
シードルの選び方
シードルを選ぶ際には、以下のポイントを考慮すると、より自分好みのものを見つけやすくなります。
産地で選ぶ
シードルは産地によって風味や特徴が大きく異なります。フランス、スペイン、イギリス、アメリカ、日本など、各国の個性を味わってみましょう。
甘さとアルコール度数でセレクト
甘口シードルは、その名の通り、上品な甘さと飲みやすさが魅力で、アルコール度数も控えめな傾向があります。アペリティフやデザートタイムに最適です。一方、辛口シードルは、キレのあるドライな口当たりが特徴で、アルコール度数がやや高めです。お食事との相性が良く、特にお肉料理や魚料理との組み合わせがおすすめです。
予算で選ぶ
シードルは比較的リーズナブルな価格帯で入手できるため、日常的に楽しむことができます。普段使いにはお手頃なものを、特別な日には少し贅沢なシードルを選ぶのも良いでしょう。
おすすめ甘口シードル
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メルシャン シードル 酸化防止剤無添加
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ドメーヌ・ド・コックレル シードル
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ヴァル・ド・ランス クリュ・ブルトン(甘口)
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ラシャス フレンチアップルシードル
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アングリー・オーチャード・ハードサイダー
おすすめ辛口シードル
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シードラ アバロン トラバンコ
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ダンカートン ドライオーガニックサイダー
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菊水 シードル ドライ
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アバヴァス シードル ブリュット
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シードル フェルミエ プティ・ブリュット
アルコールフリーシードル
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ヴァルドランス オーガニック ノンアルコールシードル
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ポミヨン シードル
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ピュアポム 発泡アップルジュース
シードルの最適な飲み方
シードルをさらに美味しく味わうための飲み方をご紹介します。
グラスの選択
シードルを味わうグラスの種類によって、香りや風味の印象が変化します。泡を長く維持したい場合は、口径の狭いフルートグラス、アロマを堪能したい場合は、口の広いタンブラーグラスが適しています。
アレンジレシピ
シードルはそのまま飲むのが一般的ですが、気分転換にアレンジを加えるのも良いでしょう。甘味を加えたい場合は、トニック、奥行きのある風味を追求したい場合は、カシスリキュールで割ってみてください。
保存温度
シードルを保管する際は、およそ10℃が理想的です。お召し上がりになる2~3時間前に冷蔵庫で冷やすことで、炭酸がより際立ち、一層美味しくお楽しみいただけます。ワインセラーをお持ちであれば、より適切な温度管理が可能です。

シードルは、知れば知るほど奥深い魅力的なお酒|まとめ
シードルは、使用するりんごの品種や産地によって風味が大きく変わる、非常に奥深いお酒です。甘口から辛口まで様々なタイプがあり、お料理との相性も抜群です。ぜひ、あなたのお好みにぴったりのシードルを見つけて、その豊かな味わいをご堪能ください。
結び
この記事では、シードルの基本的な情報から、種類、選び方、おすすめの銘柄、そして美味しい飲み方まで、幅広くご紹介しました。シードルは、そのバラエティ豊かな風味と親しみやすさから、普段の生活の様々な場面で楽しめるお酒です。ぜひ、この記事を参考に、あなたにとって最高のシードルを見つけ、充実した時間をお過ごしください。
質問1:シードルとサイダーは何が違うのですか?
回答:シードルはフランス語の名称で、りんごを発酵させて造られたお酒のことを指します。英語ではサイダー、またはハードサイダーと呼ばれます。ただし、アメリカ合衆国では、アルコールを含まないりんごジュースをサイダーと呼ぶのが一般的ですので、注意が必要です。
質問2:シードルはどんな風に保管するのがベスト?
回答:シードルの保管に最適なのは、およそ10℃くらいの涼しい場所です。飲む少し前に冷蔵庫で冷やすと、さらに美味しく味わえます。ワインセラーがあれば、温度管理が簡単にできるので便利です。
質問3:シードルと相性の良い料理は?
回答:シードルのタイプによって、合う料理は変わってきます。ドライなシードルは、お肉やお魚を使った料理と、甘口のシードルはデザートとよく合います。シードルは、日本の料理から西洋の料理まで、色々な料理に合わせやすいのが良いところです。