チコリー:多様な用途を持つキク科の植物

鮮やかな青い花を咲かせるチコリーは、ヨーロッパ原産のキク科植物。和名「キクニガナ」の通り、独特の苦味が特徴です。サラダやシコンとして食用にされる他、根はコーヒーの代用品や食品添加物としても利用されてきました。近年では、イヌリンという食物繊維が注目を集め、健康食品としても幅広く活用されています。世界中で栽培され、多様な用途を持つチコリーの魅力に迫ります。

チコリーとは?知っておきたい基本情報と様々な利用方法

チコリー(学名:Cichorium intybus)は、キク科に分類される多年生の草本植物です。ヨーロッパから地中海沿岸、中央アジアにかけてが原産で、野生種も広く分布しています。通常、高さは60cmから150cm程度に成長し、特徴的な鮮やかな青色の花を多数咲かせますが、まれに白色やピンク色の花を咲かせることもあります。和名では「キクニガナ(菊苦菜)」と呼ばれ、これはキク科の植物であることと、葉に独特の苦味があることに由来します。また、漢名では「菊苣」と表記されます。チコリーは古代から人々に利用されており、現代でもその用途は非常に多岐にわたります。食用としては、若葉がサラダとして楽しまれるほか、軟白栽培された若芽は「シコン」として珍重されています。船のような形をした葉が特徴で、色は淡く、先端が黄緑色のものと赤色のものがあります。光を遮断して栽培することで白く柔らかい食感になり、サクサクとした歯触りと、ほろ苦い風味が楽しめます。新鮮なチコリは、ツヤとハリがあり、ふっくらとしているのが特徴です。根は焙煎・粉砕されてコーヒーの代用品として利用されることが多く、食品添加物としても用いられてきました。21世紀に入ると、チコリーの根から抽出されるイヌリンが、甘味料や食物繊維源として食品製造に広く利用されています。さらに、チコリーは栄養価が高いため、家畜の飼料作物としても栽培されており、その利用範囲の広さを示しています。原産地であるヨーロッパの道端には野生植物として自生しており、現在では北アメリカ、中国、オーストラリアなど世界各地で広く見られ、帰化しています。国内ではベルギーやオランダでの栽培が主流ですが、日本国内でも北海道や岐阜県、埼玉県などで栽培されており、その認知度を高めています。

チコリーの様々な呼び名とエンダイブとの混同について

チコリーは、国や地域によって異なる名称で呼ばれるため、混乱を招くことがあります。日本では一般的に「チコリー」として知られていますが、フランスでは「アンディーブ (endive)」または「シコレ・ソバージュ (chicorée sauvage)」、イタリアでは「チコリア (cicoria)」または「ラディッキオ (radicchio)」という名前で呼ばれます。特に、英語とフランス語の間で、この命名の複雑さが見られます。「チコリ」という英語名は、フランス語では軟白栽培されたチコリーの若芽を指す「アンディーブ」と訳されることがあります。しかし、フランス語で「シコレ」または「チコリ」という言葉が使われる場合、それは英語の「エンダイブ」、つまり葉が縮れた別の葉物野菜(和名:キクヂシャ)を指す場合があります。特に赤色の品種群は、英語で「チコリア・ロッソ (cicoria rosso)」、フランス語で「トレヴィス (trevise)」、イタリア語で「ラディッキオ・ロッソ (radicchio rosso)」と呼ばれており、日本では主にフランス流の「トレビス」の名前で流通しています。これらの赤いチコリーは、結球品種や半結球品種、早生種、晩生種など、様々な種類が主にヨーロッパで栽培されており、美しい色合いと独特の苦味が特徴です。さらに、アメリカ合衆国では、「Chicory」という名前が、同属の近縁種であるエンダイブ(英: curly endive、学名: Cichorium endivia、和名:キクヂシャ)の一般的な名前として使われることがあり、これが「チコリー」と「エンダイブ」の混同を引き起こす原因となっています。日本市場においても、軟白栽培されたチコリーが「チコリ」として流通する一方で、フランス風に「アンディーブ」と呼ばれる場合があるなど、英名「Endive」を持つ和名「キクヂシャ」との名前の混乱や認識のずれがしばしば見られるため、注意が必要です。チコリーとエンダイブは、共にキク科のCichorium属に属する近縁種ではありますが、異なる植物として区別されるべきです。

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チコリーの形態と生態:茎、葉、花、根に見られる特徴

チコリーは多年生植物であり、その形態と生態には独自の特徴があります。開花期のチコリーは、高さが最大1.5メートルにも達する丈夫で筋のある茎を持ち、表面にはわずかに毛が生えています。茎から生える葉は、細長い披針形、倒披針形、または広長楕円形をしており、縁には不規則な鋸歯が見られるものと、そうでないものがあります。葉の中心には太い主脈が目立ち、茎に直接付く無柄で、長さは10cmから32cm、幅は2cmから8cm程度です。興味深いことに、上部の枝には葉が出ないのが特徴です。チコリーの開花期は主に7月から10月にかけてで、青紫色や白色の美しい頭状花を咲かせます。これらの花は朝に開花し、その日の午後にはしぼんでしまう一日花です。頭花の直径は3cmから4cmで、花を包む苞葉よりも短い苞葉に包まれています。花の色は通常、薄紫色や水色が多いですが、まれに白色や淡桃色の花も見られることがありますが、これは非常に珍しいとされています。花を包む苞葉は2列の内反苞葉から構成されており、内側の苞葉は長くて直立しているのに対し、外側の苞葉は短く広がっているのが特徴です。地下には直根または側根があり、根部の発達が非常に旺盛であることも、チコリーの生態的な特徴の一つです。また、春化(低温処理)を経た後の開花は、光の強い長日条件によってさらに促進されることが知られています。

チコリーの歴史:古代からの利用と文化との関わり

チコリーの起源は古く、原産地はアジア小アジア、あるいはヨーロッパから地中海沿岸にかけての地域であると考えられています。人類によるチコリーの栽培が始まった時期は正確には分かっていませんが、およそ4000年前の古代エジプト時代から利用されていたという説があり、紀元前3000年頃の古代メソポタミア文明でも、その利用を示す記録が見つかっています。古代ローマ時代にはチコリーの名前が記録されており、詩人ホレスが自身の食生活について述べた中で、チコリーの新芽を使った「lactucae agrestes」(野生のレタス、チコリーを指す)という料理に触れています。彼は「Me pascunt olivae me malvae」(私の食事はオリーブとマロウ、そしてチコリ)と述べ、質素な食生活の中にチコリーが含まれていたことを示唆しており、当時のローマ社会においてチコリーが日常的な食材として親しまれていたことがうかがえます。チコリが文献に初めて記述されたのは17世紀のこととされ、初期のヨーロッパ入植者によって北アメリカに持ち込まれました。このように、チコリーは古代から様々な文明で食用や薬用として利用され、その歴史は深く、多様な文化の中で重要な役割を果たしてきました。

1766年、プロイセン王国がコーヒーの輸入を禁止した際、ブランケンブルクの宿屋の主人クリスチャン・ゴットリーブ・フェルスター(1801年没)がコーヒーの代用品を開発しました。彼は1769年から1770年の間にブランケンブルクとブラウンシュヴァイクで製造する権利を得て、1795年にはブラウンシュヴァイクに22から24軒ものチコリ工場があったと記録されています。ドイツの植物学者フィリップ・コンラート・ファブリキウスは、1779年にこの植物を「チコリー」と表現し、当時のフランス人はポットハーブとして栽培していたと述べています。ナポレオン時代のフランスでは、チコリはコーヒーの混ぜ物として、あるいはコーヒーの代用品として頻繁に利用されていました。米国では、チコリーの根は刑務所でコーヒーの代わりとして長い間使用されてきました。1840年代には、ニューオーリンズ港はニューヨークに次ぐ第2位のコーヒー輸入量を誇っていましたが、南北戦争中に北軍がニューオーリンズ港を封鎖した際に、地元の人々がコーヒーにチコリーの根を加えるようになり、それが長年の伝統として根付きました。

チコリーの花は、19世紀に起こったドイツ・ロマン主義の中心的象徴である「青い花」(独: Blaue Blume)のモチーフとしてしばしば見立てられます。ヨーロッパの民間伝承では、チコリーが鍵のかかったドアを開けることができると信じられていました。現在行われているチコリーの軟白栽培は、ベルギーの首都ブリュッセルで19世紀に開発されたものです。ベルギーの農民が、地下室に置き忘れたチコリーの根から黄色がかった長い葉が出ているのを見つけ、これを食べてみたところ思いがけず美味であったため、軟白栽培が始まったのが食用チコリの起源と言われています。日本へは明治初期に導入され、当初はあまり普及しませんでしたが、近年イタリア料理やフランス料理が一般家庭にまで浸透してきたことにより、サラダなどの材料の一つとして注目されるようになりました。特に需要が多いレッドルーフタイプ(レッドチコリー)はトレビスと呼ばれ、日本へは1980年代に導入された比較的新しい野菜です。日本では軟白栽培されたウィットルーフタイプのチコリよりも早く一般に知られるようになったため、チコリとは呼び方を区別している背景があります。

チコリーの主な種類と品種

チコリーは、主に葉を食用とする野菜であり、サラダの材料として生で楽しまれることが多いです。栽培されているチコリー(学術名:Cichorium intybus)は、大きく分けて、ベルギーエンダイブ(ブリュッセルチコリまたはウィットルーフ)、ラディッキオ(レッドチコリーまたはトレビス)、カタローニャチコリーの3つの系統に分類され、それぞれに多くの品種が存在します。特に原産地であるイタリアでは、野生種に近いものから、軟白栽培されるウィットルーフタイプ、鮮やかな赤色が特徴のレッドルーフタイプ(日本名:トレビス)、さらにベルハートタイプ(ズッチェロ: zucchero)など、様々なニーズに応じた品種改良が行われてきました。これらの栽培種は、葉の色、形状、苦味の強さ、軟白栽培の有無などの特性によって区別され、世界中で多様な名前で親しまれています。例えば、日本では軟白栽培されたものが「チコリ」として流通している一方、フランスでは「アンディーブ」、イタリアでは「チコリア」や「ラディッキオ」など、地域によって異なる呼び名が用いられ、その多様な姿を反映しています。

リーフチコリーの種類と特性

リーフチコリーとは、葉を食用とするチコリーの品種群の総称です。英語圏では「エンダイブ」(endive)と呼ばれることがありますが、これは誤解を招く可能性があります。本来のエンダイブ(学名:Cichorium endivia、和名:キクヂシャ)は、ベルギーエンダイブ(ウィットルーフチコリ)とは異なるキクニガナ属の植物であり、区別が必要です。リーフチコリーには様々な種類が存在し、それぞれ独自の風味、色、食感、栽培方法を持っています。

ラディッキオ(トレビス)

ラディッキオ(伊: Radicchio)は、イタリアを中心に栽培されているリーフチコリーの一種で、通常、鮮やかな赤色、または赤と緑が混ざった葉が特徴です。一部では、白い縞模様が入った赤い葉のタイプのみを「ラディッキオ」と呼ぶこともあります。英語圏では、レッドエンダイブ (red endive) やレッドチコリー (red chicory) とも呼ばれますが、日本ではフランス語由来の「トレビス」という名前で広く知られています。一般的に、赤紫色で丸く結球するタイプを指すことが多いですが、結球の有無に関わらず、赤芽チコリやレッドチコリー全般を「トレビス」と呼ぶこともあります。ラディッキオは独特の苦味と辛味がありますが、焼いたり炒めたりすることで苦味が和らぎ、より奥深い味わいになります。その美しい色合いから、サラダの彩りとしてもよく利用されます。主な産地はイタリア北部で、特にヴェネト州とフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州が中心です。日本にも多く輸入されています。イタリアでは様々な品種が栽培されており、特にトレヴィーゾ産の「ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ(Radicchio rosso di Treviso)」、ヴェローナ産の「ラディッキオ・ディ・ヴェローナ(Radicchio di Verona)」、キオッジャ産の「ラディッキオ・ディ・キオッジャ(Radicchio di Chioggia)」は、PGI(地理的表示保護)の対象となるほど高品質で、地域特有の風味を持っています。

ベルギー産エンダイブ(チコリ)

ベルギー産エンダイブ(英: Belgian endive)は、日光を遮断して軟白栽培されたチコリーの芽を食用とする品種群で、日本では一般的に「チコリ」または「ベルギーチコリ」として知られています。その名称は地域によって異なり、オランダ語圏では「白い葉」を意味する witloof(ウィットローフ)または witlof(ウィットロフ)、ドイツでは witloof(ウィットルーフ)、イタリアでは indivia(インディヴィア)、スペインでは endivias(エンディヴィアス)、アメリカ合衆国では chicory(チコリー)、オーストラリアでは witlof(ウィットラフ)、イギリスでは endive(エンダイブ)、そして北フランスの一部地域やベルギーのワロン地域ではフランス語で chicon(シコン)と呼ばれます。外見はクリーム色で、わずかに苦味のある葉が小さなラグビーボールのような形状にしっかりと巻かれているのが特徴です。

収穫した根を日光の当たらない室内で発芽させる軟白栽培を行うことで、葉が緑色になるのを防ぎ、淡い色合いと繊細な風味を保ちます。店頭では、光による品質劣化を防ぐため、遮光用の青い紙に包まれて販売されていることがよくあります。なめらかでクリーミーな白い葉は、料理の詰め物、焼き物、茹で物、ミルクソース煮込み、または生のまま細かく刻んでサラダなど、様々な調理法で楽しむことができます。柔らかい葉には軽い苦味がありますが、根元に近い硬い部分は苦味が強いため、調理前に切り取るとより美味しく食べられます。この軟白栽培技術は、1850年代にベルギーのブリュッセルにある植物園で偶然発見されたとされています。現在、ベルギーは40カ国以上に chicon / witloof の名前で製品を輸出しており、チコリーの最大の生産国はフランスです。

ズッケロ

ズッケロ(イタリア語: cicoria pan di zucchero)は、パン・ディ・ズッケロまたはチコリア・ミラノとも呼ばれる、結球するタイプのリーフチコリーの一種です。名前が示すように、「砂糖パンチコリー」という意味を持ち、ミニ白菜のような独特な形状をしています。葉の色は明るい黄緑色で、葉全体が内側に巻き込むように結球していくのが特徴です。軟白栽培の手間が不要で比較的育てやすいため、家庭菜園でも人気があります。ウィットルーフタイプ(ベルギーエンダイブ)に比べ、歯切れが良く、濃厚な味わいが特徴で、サラダなどの生食はもちろん、加熱調理にも適しています。

カタローニャチコリ

カタローニャチコリ(英語: Catalogna chicory、学名: Cichorium intybus var. foliosum)は、チコリーの変種であり、特にカタルーニャ地方が名前の由来とされています。イタリア全土で栽培され、開花前の茎は「プンタレッラ」(イタリア語: puntarelle)または「アスパラガスチコリ」とも呼ばれます。日本では「カタロニア」と呼ばれることもあります。この品種は北ヨーロッパ原産とされ、名前はスペインのカタルーニャ州(Catalogna)に由来すると考えられています。イタリア語のプンタレッラという名前は、「芽を出す」という意味のスプンターレ(spuntare)に由来し、若芽の形状を的確に表しています。葉の縁には深い切れ込みがあり、葉幅は細く、直立して成長するのが特徴です。主にサラダ用として品種改良されており、葉と茎に包まれるように内側にある、穂先のような若芽を食用とします。プンタレッラの中心にある管状の茎を細かく裂いて冷水にさらし、アンチョビとニンニクのソースで和えたサラダは、早春のローマを代表する料理として、一般家庭でも広く親しまれています。独特のほろ苦さと、シャキシャキとした食感が魅力です。

野生のチコリ

野生のチコリーの葉は、生で食べられますが、特に大きく成長した古い葉は強い苦味を持つ傾向があります。しかし、この独特の風味は、イタリアのリグーリア地方やプーリア地方、インド南部、ギリシャなどの特定の地域では珍重され、積極的に料理に用いられています。イタリアのリグーリア地方の伝統的な料理では、野生のチコリーの葉はハーブミックス「プレボッジョーネ」(イタリア語: preboggion)の重要な材料として使われています。また、プーリア地方には、野生のチコリーの葉とそら豆のピューレを組み合わせた伝統料理「ファーヴェ・エ・チコリエ・セルヴァティケ」(イタリア語: fave e cicorie selvatiche)があります。ギリシャでは、チコリーの葉はホウレンソウの代わりに、主にパイに入れたり、オムレツの具材として利用され、「スピナコピタ」の材料としても使用されます。さらに、クレタ島に自生する野生のチコリーの一種、ステムナガティ(stamnagathi)、別名スパイニィ・チコリーは、オリーブオイルとレモン汁で和えたサラダとして食されます。チコリーの葉は、さっと茹でることで苦味が和らぎ、豚肉や鶏肉などと一緒に炒めたり、肉料理の付け合わせにしたり、スープや煮込み料理に加えても美味しくいただけます。

ルートチコリー

ルートチコリー(英語: Root chicory、学名: Cichorium intybus var. sativum)は、チコリーの一種で、その根は古くからヨーロッパにおいて様々な用途で利用されてきました。特にチコリーが自生する地中海地域では、根を焙煎したり、炒ったり、粉末状にして、食品添加物として利用されてきました。最も一般的な用途はコーヒーへの添加であり、インドのフィルターコーヒーにはチコリーが混ぜられています。また、アメリカ合衆国の一部地域、特に南部やニューオーリンズでもコーヒーの添加物として広く利用されています。フランスではチコリー60%、コーヒー40%の混合物が「リコレ」(フランス語: Ricoré)という商品名で販売されており、このブレンドは1930年代の世界恐慌や第二次世界大戦中など、ヨーロッパ大陸での経済危機において、コーヒーの代替品として広く利用されました。チコリーは、ライ麦や大麦とともに、1976年から1979年の「東ドイツのコーヒー危機」の際に登場した代用コーヒー「ミシュカフェ」(ドイツ語: Mischkaffee、英語: mixed coffee)の主要な材料としても使用されました。さらに、キューバ、ギリシャ、トルコ、南アフリカ、中東、中華人民共和国など、世界各地のコーヒーにチコリーが加えられています。

一部のビール醸造所では、焙煎したチコリーの根をスタウトやポーターなどのビールに風味を加えるために使用しています。また、ベルギーの醸造家の中には、特定のスタイルのエールビールにチコリーを加えて風味を強調し、この植物の名前にちなんだ「ウィトロフビール」(英語: witlofbier:チコリーをベースにしたビールの意)を製造する人もいます。チコリーの根は、アスパラガスのように調理して食べることもでき、独特の苦味と食感を楽しむことができます。

チコリーの栽培方法と国内生産

市場に出回っているチコリーの多くは、根株を肥培し、そこから生じた若芽を遮光して栽培したものです。この軟白栽培によって、茎は白く、葉先が淡い黄色を帯びた独特の姿となります。一方、露地で自然に育てたチコリーの葉や根は、非常に特徴的な強い苦味を持ち、慣れない人には生で食べるのは難しいかもしれません。しかし、この苦味こそがチコリーの個性であり、料理によっては風味を引き立てる要素として重宝されます。現在、日本国内でもチコリーの生産が盛んに行われています。栽培農家はまだ多くはありませんが、ある大手メーカーは、もともともやし栽培を専門としていました。その会社の社長が1990年代にベルギーを訪れた際、もやし栽培で培った技術と設備がチコリー栽培にも応用できると考え、合弁会社を設立して日本にチコリー栽培を導入しました。日本では、まず畑でチコリーを十分に育てて根株を大きくした後、栽培施設内で水耕栽培に切り替え、冷暗環境下で新芽を軟白化させ、「チコリー」として出荷します。さらに、この栽培過程で得られる根からは、お茶やコーヒーの代替品となる他、イヌリンのような機能性食品素材も製造されており、様々な用途に活用されています。2021年時点での都道府県別チコリー生産量では青森県が最も多く、その他、北海道、岐阜県、埼玉県などでも栽培されています。チコリーはハウス栽培に適しているため、北海道のような寒冷地でも施設内で栽培・出荷が可能であり、安定供給体制が整いつつあります。

軟白栽培の詳細

チコリーの軟白栽培では、初夏に種をまき、約5ヶ月間畑で根株をしっかりと育てます。この期間に太く充実した根を育てることが、品質の良いチコリーを収穫するための重要なポイントです。水はけの良い肥沃な土地を選び、畝に30cm間隔で苗を植え、秋まで株を大きく育てます。晩秋に霜が降りる頃、根株を掘り上げ、首部(根と葉の付け根)を3〜5cm残してカットします。枯れた葉は根元から3〜4cmのところで切り、根元から出ている不要な芽は丁寧に取り除きます。その後、根を30〜35cmの長さに切り揃え、適切な湿度と温度に保たれた冷暗所に保管します。軟白栽培の方法としては、ハウス内に深さ30〜40cmほどの穴を掘り、そこにピートモスや赤土を敷き、準備した根株を約4cm間隔で垂直に植えます。根株を植えたら、さらにピートモスや赤土を被せ、敷き藁などで覆って光を完全に遮断します。光が当たらないようにトタン板などを利用することも効果的です。温度を18〜20℃に保ち管理すると、約20日ほどでクリーム色に軟白された美味しいチコリーの若芽が収穫できます。この繊細な工程によって、独特の苦味が抑えられ、まろやかで甘みのある食用チコリーが育ちます。

レッドチコリー(トレビス)の栽培方法

レッドチコリー、特に日本ではトレビスとして知られる品種は、植え付け間隔や肥料の与え方が玉レタスとほぼ同じです。種まきから収穫までの期間は2〜3ヶ月と比較的短く、適切な時期に収穫することで形の良い結球したものが得られます。栽培には日当たりの良い場所が適しており、土壌のpHは6.0〜6.5が理想的です。生育に適した温度は15〜20℃、発芽に適した温度は18〜24℃です。連作障害を防ぐため、同じ場所での栽培は1〜2年空けることが推奨されます。育苗ポットに種をまき、本葉が4〜6枚になるまで育てます。その後、土壌のpHを調整し、堆肥を施して土作りをした畑に畝を立て、元肥を施します。苗を20〜30cm間隔で丁寧に植え付けていきます。土の表面が乾いたら水を与え、植え付けから2週間ごとに追肥することで、株の成長を促進します。葉が赤紫色に色づき、株の中心がしっかりと締まってきたら収穫の時期です。収穫は、株の根元を包丁などで切り取って行います。病害虫の防除方法はレタスと同様ですが、一般的に病害虫の発生は少ないとされています。しかし、栽培期間が比較的長く、特に収穫期が近づくと腐敗性の病気が発生しやすくなるため、適切な管理が必要です。

食用としての利用と選び方・保存法

軟白栽培されたチコリーは、穏やかな苦味とシャキシャキとした食感から、様々な料理に使われます。国産チコリーの旬は12月から春先にかけてで、輸入品は一年を通して流通しています。選び方のポイントは、葉の巻きがしっかりしていてツヤがあり、表面に傷がなく葉先が淡黄色をしているものが良質です。葉が緑色のものは、時間が経って品質が落ちている可能性があるので避けるのが良いでしょう。チコリーは口当たりが良く、ほろ苦さとわずかな芳香があり、生食に適しています。調理する際は、しっかりと巻いた葉を一枚ずつ剥がしてサラダなどに使うか、縦半分に切って加熱調理に利用します。苦味は根元に近いほど強くなるため、苦味が苦手な場合は根元を厚めに切り落とすと良いでしょう。保存する際は、乾燥を防ぐためにラップで包むかポリ袋に入れ、冷蔵庫で保管し、なるべく早く使い切ることが鮮度を保つコツです。

赤い色が特徴のトレビス(ラディッキオ)は、葉の厚さと歯ごたえがキャベツとレタスの中間くらいで、ほろ苦さと芳香が魅力です。加熱すると苦味が増すため、生のままサラダで楽しむのが一般的ですが、その美しい色合いと食感を活かして加熱調理にも用いられます。トレビスの旬は11月〜3月で、冬の食卓に彩りを与えます。保存方法はチコリーと同様に、ラップで包むかポリ袋に入れて冷蔵庫で保存することで、鮮度を保ちやすくなります。

薬用としての利用

チコリーは、古代からその薬効が注目され、伝統的な医療や民間療法で幅広く利用されてきました。特に、消化器官の健康をサポートする目的で用いられることが多く、根は利尿作用や穏やかな下剤としての効果があるとされ、肝臓機能の向上や胆汁分泌の促進に役立つと考えられてきました。また、食欲を増進させたり、血糖値を調整する効果も期待されており、昔から健康増進のために多様に活用されてきた歴史があります。伝統医学においては、チコリーは1936年にイギリスの医師エドワード・バッチによって確立された、心のバランスを取り戻すための自然療法であるバッチフラワーレメディにおいて使用される38種類の液体レメディの植物の一つとして知られています。

具体的な料理と活用方法

軟白チコリーは、その上品な風味と独特の食感を活かして、様々な料理に用いられます。サラダとして生で食されることが多いですが、ソテー、グリル、オーブン焼きにして肉料理の付け合わせとしても人気があります。フランス語圏、特にベルギーやフランス北部では「シコン」と呼ばれ、シコンのグラタンは代表的な郷土料理として親しまれています。また、細長い舟形の葉を器のように使い、前菜として様々な具材を盛り付けて提供されることもあります。チコリーの持つほのかな苦味は、ブルーチーズやマスタードといった風味の強い食材と組み合わせることで、それぞれの味わいを引き立て、より奥深い風味を楽しむことができます。 トレビス(ラディッキオ)は、その鮮やかな赤紫色と独特の歯ごたえから、サラダとして生で食されるのが一般的です。ソテーやグリルにして肉料理や魚料理の付け合わせにしたり、リゾット、パスタ、グラタンなど、様々なイタリア料理の食材としても利用されます。加熱すると苦味が際立つ傾向があるため、その特性を理解した上で調理することが大切です。イタリアでは、チコリー(伊: cicoria)の葉は茹でて付け合わせとして食され、特に柔らかい先端部分は「プンタレッラ(伊: puntarella)」と呼ばれ、生のまま細かく裂いてサラダとして楽しまれます。チコリーの花も食用として利用でき、料理に添えることで彩りを添えることができます。

《乗せる》

アボカドサーモンのチコリカナッペ:濃厚なアボカドサーモンと、わさび醤油のピリッとした風味が、チコリーの爽やかさと見事に調和します。まろやかなクリームチーズも加わり、おもてなし料理にも最適です。

チコリーの生ハムカナッペ:生ハムでブロッコリースプラウトを丁寧に巻いたおしゃれな一品です。チコリーに盛り付けることで、その鮮やかな色合いが際立ち、食欲をそそります。手軽に作れるので、もう一品加えたい時に重宝します。

チコリーとサーモンのカルパッチョ風:サーモンやレモン、ナッツを盛り付けた華やかなカルパッチョです。下に敷いたポテトサラダにレモン汁を加えることで、爽やかな味わいに仕上がります。チコリーに具材を乗せれば、手軽に楽しめるさっぱりとした前菜が完成します。

チコリーのマッシュポテトのせ:チコリーのほのかな苦味は、じゃがいもの甘みと絶妙にマッチします。カリカリに炒めたベーコンがアクセントとなり、おつまみにもおすすめです。チコリーを使うことでマッシュポテトがより食べやすくなり、レタスなどの葉物野菜とは異なる食感が楽しめます。

チコリーのマグロボート:チコリーを使った和風アレンジの一品です。相性抜群のマグロとアボカドに、チコリーのサクサクとした食感をプラスしました。和のテイストにも合うチコリーを使用し、いつもとは違う前菜として楽しんでみてはいかがでしょうか。

《サラダに使う》

チコリーのシーザーサラダ:定番のクリーミーなシーザーサラダに、ほろ苦いチコリーを加えました。苦味が味を引き締め、濃厚ながらもさっぱりとした味わいが楽しめます。大きめのクルトンが目を引く、食べ応えのあるサラダです。

生ハムとチコリーのサラダガレット:そば粉を使用したおしゃれなガレットが、家庭でも手軽に作れます。シンプルな生地でチコリーの美味しさを存分に味わえる一品です。野菜に加え、生ハムや卵など様々な具材を使用しながらも、軽い食感で美味しくいただけます。

《焼く》

チコリのシンプルソテー ケッパー風味: チコリ本来の風味と食感を満喫できるソテーです。カットして焼くだけの簡単調理。芳醇なバターとケッパーの酸味がチコリの味わいを引き立て、やみつきになる美味しさです。

チコリとエビのクリーミーグラタン: 濃厚でとろけるグラタンと、チコリのほのかな苦味が絶妙なハーモニーを生み出します。大きめにカットしたチコリのシャキシャキとした食感が、なめらかなホワイトソースの中で際立ちます。エビの旨みとガーリックの香りが食欲をそそる、みんなが喜ぶ一品です。

チコリのベーコンチーズはさみ焼き: チコリに切り込みを入れれば、ボリューム満点のはさみ焼きが手軽に作れます。あっという間に完成する上、ベーコンとチーズの塩気がお酒との相性抜群で、家飲みを充実させてくれます。野菜を使った、食べ応えのあるおつまみとして最適です。

《煮る》

チコリとチーズのポトフ: ベーコンの旨味が溶け込んだスープに、チーズのコクが加わった、心温まるポトフです。バゲットを添えればボリュームも満点で、これ一品で満足できるでしょう。チコリのほろ苦さが、味全体を引き締め、奥行きのある味わいを演出します。

チコリとベーコンのまろやかミルクスープ: 優しい味わいのミルクスープは、バターで炒めたチコリの苦味が抑えられ、飲みやすくなっています。心と身体に染み渡るミルクスープで、ほっと一息つきませんか。野菜を炒めてから煮込むことで甘みが増し、スープ全体に溶け込むため、様々な旨味を堪能できます。

《炒める》

チコリとアスパラのアンチョビ風味炒め: アンチョビとチコリを組み合わせた、いつもとは一味違う炒め物です。アスパラも加えて、春の訪れを感じさせる一品に。独特の風味を持つアンチョビは、爽やかなチコリと組み合わせることで、その美味しさが一層引き立ちます。

ホタテとチコリのシンプルソテー: 材料はホタテとチコリのみ。さっと炒めることで、それぞれの食感を最大限に活かしています。弾力のあるホタテと、シャキシャキとしたチコリの、異なる食感が織りなすハーモニーが楽しめる、飽きのこない一品です。

《揚げる》

チコリの天ぷら: チコリを天ぷらにすると、まるで山菜の天ぷらのように、素材本来の味が際立ち、ほろ苦さを楽しめます。衣のサクサクとした食感と、チコリの風味が絶妙にマッチし、あっという間に食べ終えてしまうでしょう。そのまま食べるのはもちろん、蕎麦のトッピングにもおすすめです。

チコリの根は、ローストして挽いたものがコーヒーの風味付けや、コーヒーの代用品として利用されています。ベトナムコーヒーにはチコリがブレンドされていることが多く、ニュージーランドのカフェオレもチコリ入りが一般的です。日本でも、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の「じっくりコトコト」シリーズのカップスープや、2リットルタイプの飲料など、様々な商品にチコリが使用されており、パッケージにその旨が記載されています。このように、チコリは飲み物から料理まで、幅広い形で私たちの食生活に取り入れられています。

飼料としての利用

チコリーは、家畜にとって消化吸収が良く、繊維質が少ないため、優れた飼料として活用できます。特に、チコリーの根はタンパク質と脂質を豊富に含むため、馬にとって穀物の代わりとなる優れた選択肢となります。また、チコリーには、反芻動物のタンパク質利用効率を高める可能性のある還元型タンニンが少量含まれており、ある種のタンニンは腸内寄生虫を減らす効果も期待されています。実際に、チコリーを摂取した家畜を対象とした研究では、寄生虫の数が少ないという結果が出ており、チコリーが家畜の体内寄生虫に対して何らかの影響を与えている可能性が示唆されています。チコリーの原産地は、フランス、イタリア、ベルギーなどと言われていますが、家畜用飼料としてのチコリーの研究開発は、ニュージーランドで盛んに行われています。

飼料用チコリーの品種

飼料として一般的に知られているチコリーの品種としては、'Chico'(チコ)、'Ceres Grouse'(セレス・グラウス)、'Good Hunt'(グッド・ハント)、'El Nino'(エル・ニーニョ)、'Lacerta'(ラセルタ)などが挙げられます。

主要な栄養素とカロリー

チコリーの生葉は、約92%が水分で構成されており、その他に約5%の炭水化物、約2%のタンパク質、そしてわずかな脂質が含まれています。生葉100グラムあたり約23キロカロリーと低カロリーでありながら、カリウム、カルシウム、リンといったミネラルを豊富に含み、さらに鉄分、ビタミンC、葉酸なども含まれています。ビタミンAとビタミンKも適度に含まれており、バランスの取れた栄養構成となっています。特に、軟白栽培されたチコリー(アンディーブ、ウィットルーフ)は、水分量が94%とさらに高く、100グラムあたり約16キロカロリーと非常に低カロリーです。このタイプのチコリーは、一般的なチコリーに比べて栄養素の含有量は少ない傾向にありますが、食物繊維が豊富であるため、腸内環境の改善や便秘解消に役立つと考えられています。

栽培品種であるトレビス(ラディッキオ)は、特定の栄養素が特に多いというわけではありませんが、ビタミンC、カリウム、食物繊維などをバランス良く含んでいます。また、赤チコリやトレビスの鮮やかな赤色はアントシアニンによるもので、このアントシアニンは強力な抗酸化作用を持つことが知られています。そのため、生活習慣病の予防やアンチエイジング効果が期待されており、健康に関心の高い人々からも注目されています。

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苦味成分と生理活性物質

チコリー独特の苦味の主な原因となるのは、「インティビン」という化合物で、その中にはラクチュシンとラクチュコピクリンという2種類のセスキテルペンラクトンが含まれています。これらの成分が、チコリー特有の苦味を作り出しています。また、チコリーにはこれらの成分以外にも、様々な生理活性物質が含まれています。例えば、ポリフェノールの一種であるチコリー酸やクロロゲン酸、カフェ酸といったヒドロキシケイ皮酸類、さらにエスクリンやチコリンなどのクマリン類も含まれており、これらが体内で抗酸化作用や抗炎症作用など、多様な健康効果を発揮すると考えられています。特に、これらの苦味成分には、活性酸素を抑制する働きや消化を促進する効果があると言われています。

チコリーの根とイヌリン

1970年頃の研究で、チコリーの根にはデンプン質の多糖類であるイヌリンが豊富に含まれていることが明らかになりました。その含有量は最大で20%に達すると言われています。イヌリンは主にキク科植物に蓄えられる貯蔵糖質であり、生のチコリー根には、重量比で約13~23%も含まれています。食品業界においては、砂糖の約10%程度の甘味を持つ甘味料として利用され、水溶性食物繊維源として様々な食品に添加されています。

まとめ

チコリー(学名:Cichorium intybus)は、ヨーロッパを原産とするキク科の多年草で、和名ではキクニガナ、漢名では菊苣と呼ばれます。草丈は1.5mに達することもあり、丈夫な茎と独特の苦味を持つ葉、そして美しい青色の一日花が特徴です。古代エジプトやローマ時代から食用として利用され、その歴史は4000年前に遡ります。17世紀には文献に記録され、18世紀にはコーヒーの代替品として広く普及しました。19世紀のベルギーでは、偶然に軟白栽培が発見され、現在の食用チコリーの基礎が築かれました。今日では、軟白栽培された若葉がサラダやシコンとして、根はコーヒー代用品やイヌリンの抽出源として広く用いられています。特にイヌリンは、甘味料や食物繊維として加工食品に頻繁に使用され、その機能性が注目されています。また、フランスのアンディーブ、イタリアのラディッキオ、日本のトレビスなど、地域によって異なる名称で呼ばれ、エンダイブ(キクヂシャ)と混同されることもありますが、それぞれ異なる特徴を持つ植物です。ラディッキオ(トレビス)、ベルギー産エンダイブ、ズッチェロ、カタローニャチコリなど、多様な栽培品種が存在し、野生種も一部地域で食用とされています。日本国内では、1990年頃から本格的な国産化が進み、青森県などが主要な産地として高品質なチコリーを生産しています。チコリーの栽培には、軟白栽培やレッドチコリーの栽培など、品種に応じた専門的な技術が用いられます。栄養面では、低カロリーでありながらビタミンやミネラルを豊富に含んでおり、特にトレビスのアントシアニンやチコリーの苦味成分であるインティビンには、抗酸化作用をはじめとする健康効果が期待されています。さらに、伝統療法であるバッチフラワーレメディにも利用された歴史があり、家畜の飼料としても価値が高いことが知られています。あまり馴染みのない食材と思われがちですが、チコリーは調理が比較的簡単で、生食でも加熱調理でも美味しく、普段の食卓から特別な料理まで幅広く活用できます。おしゃれな見た目と独特の苦味を活かした多様なアレンジで、食卓を豊かに彩ることができるでしょう。チコリーは、その多様な利用方法、高い栄養価、そして文化的背景から、現代の食文化において重要な役割を担っており、今後もその価値は再認識されていくと考えられます。

チコリーとはどんな植物ですか?

チコリー(Cichorium intybus)は、ヨーロッパ、地中海沿岸地域、中央アジアを原産地とするキク科の多年草です。生育すると高さ60cmから150cm程度になり、鮮やかな青色の花を咲かせます。和名であるキクニガナ(菊苦菜)は、その名の通り、葉に苦味があることに由来します。食用、コーヒー代用品、イヌリンの抽出源、家畜の飼料など、幅広い用途で利用されています。

チコリーの主な利用方法は何ですか?

チコリーの利用方法は非常に多岐にわたります。若葉はサラダとして生で食べられ、軟白栽培された若芽は「シコン」として珍重されます。根は焙煎・粉砕され、コーヒーの代替品として利用されるほか、21世紀に入ってからは根から抽出されるイヌリンが、甘味料や食物繊維源として食品製造に広く用いられています。また、栄養価が高いことから家畜の飼料としても栽培され、一部のビール醸造においては風味付けの目的で使用されることもあります。さらに、チコリーの花は食用として料理の彩りにも利用されます。

チコリーとキクヂシャ(エンダイブ)の違いとは?

チコリーとキクヂシャ、学名Cichorium endiviaが示すように、両者は共にキク科キクニガナ属に分類される近い種類の植物ですが、区別して扱われます。特に日本においては、軟白栽培されたチコリーが「アンディーブ」という名前で流通しているため、混乱が生じやすくなっています。興味深いことに、英語で言う「Chicory」は、フランス語では軟白チコリーを意味する「アンディーブ」に対応しますが、フランス語の「シコレ」は、葉が縮れた別の野菜であるエンダイブを指すなど、言語や地域によって呼び名が異なることが、混同を招く一因となっています。エンダイブは一般的に、葉が細かく縮れているタイプや、幅広の葉を持つものがあり、チコリーとは異なる食感や独特の苦味を持つのが特徴です。

トレビスはチコリーの一種?

その通り、トレビスはチコリーの一種です。特に、赤色の品種群が「トレビス」という名前で親しまれており、この名称はフランス語に由来します。イタリア語では「ラディッキオ・ロッソ」、英語では「チコリア・ロッソ」とも呼ばれています。目を引く鮮やかな赤紫色の葉が特徴で、独特の苦味とシャキシャキした食感が、サラダや料理の彩りを添える食材として人気を集めています。主な産地はイタリア北部であり、中にはPGI(地理的表示保護)に指定されている有名な品種も存在します。

チコリーはいつ頃から使われていたの?

チコリーは、その歴史が非常に古い植物であり、およそ4000年前の古代エジプト時代には、すでに利用されていたという説があります。古代ローマ時代にも記録が残っており、詩人のホレスは、自身の食生活においてチコリーの新芽(「lactucae agrestes」)について言及しています。17世紀には文献にその名が登場し、18世紀になるとコーヒーの代用品としても広く利用されるようになりました。このように、チコリーは古代から食用や薬用として、様々な文明において重宝されてきたのです。

チコリーの軟白栽培の方法は?

チコリーの軟白栽培は、まず初夏に種をまき、畑で約5か月間根株を育てるところから始まります。晩秋に根株を掘り上げたら、冷暗所に植え付け、光を完全に遮断した状態で18〜20℃の温度を保ちます。そして、約20日間かけてクリーム色に軟白された若芽を収穫します。この特殊な栽培方法によって、苦味が抑えられ、マイルドで繊細な風味を持つチコリーが育つのです。この軟白栽培の技術は、19世紀にベルギーで偶然発見されたと言われています。

チコリーの苦味の正体とは?

チコリー特有の苦味は、主に「インティビン」という物質によるものです。インティビンは、ラクチュシンとラクチュコピクリンという2種類のセスキテルペンラクトンから構成されています。加えて、チコリー酸、クロロゲン酸、カフェ酸といったポリフェノール類や、エスクリン、チコリンなどのクマリン類といった多様な生理活性物質を含んでおり、健康への様々な恩恵が期待されています。

チコリーが最も美味しい時期は?

国産チコリーの旬は、おおむね12月から春にかけてとされています。しかし、輸入されたチコリーは一年を通して手に入るため、いつでもその風味を堪能できます。

チコリーは、生で食べるのと加熱するのでは、どちらが良い?

チコリーは、生でも加熱しても美味しくいただけます。生で食べる場合は、その歯ごたえの良い食感と、わずかな苦味がサラダやカナッペに最適です。加熱すると苦味が穏やかになり、より奥深い味わいが生まれます。炒め物、スープ、グラタン、ソテー、天ぷらなど、多様な調理法でチコリーの良さを引き出すことができます。

日本のどこでチコリーが栽培されているの?

日本国内におけるチコリーの主要産地は、2021年のデータでは青森県がトップです。その他、北海道、岐阜県、埼玉県などでも栽培されています。ハウス栽培が普及しているため、冬の寒さが厳しい時期でも、施設内で安定した生産と出荷が行われています。

チコリ