栗産地

栗産地

秋の味覚の代表格、栗。その美味しさを追求するなら、産地ごとの違いを知るのが近道です。日本各地で栽培される栗は、気候や土壌によって個性豊かな味わいを生み出します。この記事では、主要な栗の産地をピックアップし、それぞれの栗が持つ独特の風味や特徴を徹底解説。産地ごとの栗の違いを知れば、いつもの栗がさらに美味しく感じられるはず。さあ、栗の奥深い世界へ足を踏み入れてみましょう。

栗の生産量ランキング:トップ5県を徹底比較

農林水産省が公表している令和3(2021)年の作況調査によると、栗の収穫量ランキングは1位が茨城県(3,800t)、2位が熊本県(2,210t)、3位が愛媛県(1,300t)、4位が岐阜県(685t)、5位が埼玉県(581t)、6位が宮崎県(527t)となっています。これらの県が、全国の栗生産量の大部分を占めています。それぞれの県で栽培されている栗の種類や特徴を詳しく見ていきましょう。

茨城県:作付面積・収穫量ともに日本一の栗どころ

茨城県は、作付面積、収穫量ともに日本一を誇る栗の産地として有名です。茨城県における栗の栽培は明治30年頃から活発になり、主な産地としては笠間市、かすみがうら市、石岡市が挙げられます。茨城県で主に栽培されている品種は、丹沢、筑波、銀寄、大峰、ぽろたん、岸根、石鎚などです。特に笠間市では、ブランド価値を高めるために「貯蔵栗」という取り組みを行っています。冷蔵保存(0℃前後)することで栗に含まれるアミラーゼがデンプンを分解し、甘さが増します。
温暖な気候と、保水性と通気性に富んだ火山灰土壌が、美味しい栗を育む笠間市。「笠間の栗 貯蔵栗(極み)」は、大粒の栗を一定期間冷蔵貯蔵し、甘さを最大限に引き出してから出荷される、その優れた品質から高い人気を集める栗です。また、産地では毎年「かさま新栗まつり」といったイベントが開催され、焼き栗や栗を使ったスイーツの販売、栗を使ったゲームなど、大人から子供まで楽しめる催し物が企画されています。

熊本県:西日本最大の栗産地、山鹿栗の魅力

熊本県は、栗の収穫量で全国第2位です。熊本県の中でも特に栗栽培が盛んなのは、山鹿市、山都町、菊池市などの地域です。特に山鹿市で生産される山鹿和栗は、その美味しさが全国的に知られています。山鹿市では、主に丹沢、筑波、ぽろたん、銀寄、利平といった品種が栽培されています。
熊本で栗栽培が盛んになったのは、昭和36年に果樹振興法ができ、重点果樹に指定されてからといわれています。山鹿市で美味しい栗が育つ理由としては、養分を豊富に含んだ粘土質の土壌、適した気候、そして長年にわたり培われてきた栽培技術が挙げられます。また、山鹿市では毎年9月の秋分の日には「あんずの丘マロンフェスタ」、その他「西日本一の栗まつりウィーク」といったイベントも開催されています。

愛媛県:中山栗と栗の祭典

愛媛県は、昼と夜の寒暖差、適度な降水量、そして栗の育成に適した土壌や気候条件が揃う、栗の理想的な産地です。特に大洲市、伊予市、城川町などで盛んに栽培されています。主な品種としては、銀寄、大峰、筑波、石鎚、岸根などが挙げられます。中でも伊予市中山町で育つ中山栗は、その昔から名高く、16世紀頃から栽培されてきました。江戸時代には、大洲藩主が三代将軍徳川家光に中山栗を献上したという記録も残っています。
中山栗が美味しいとされる理由は、標高200mから500mの中山間地域特有の昼夜の大きな気温差と、安定した降水量に加え、結晶片岩を母材とする肥沃な土地で栽培されているからです。中山栗は、一般的な栗と比較して非常に大きいことが特徴で、近年は生産者の減少により市場に出回ることが少なくなり、「幻の栗」とも呼ばれています。中山町では毎年9月に「なかやま栗まつり」が開催され、栗拾いや栗のつかみ取りといったイベント、栗を使った寿司などのグルメを楽しむことができます。

その他の栗産地:宮崎県、山口県、長野県、京都府

栗の生産量ランキングで上位に位置する宮崎県と山口県も、独自の栽培方法で栗を生産しています。また、生産量では上位ではないものの、長野県の小布施栗や京都府の丹波栗は、昔から栗の名産地として知られています。

宮崎県

宮崎県では、主に丹沢という品種の栗が栽培されています。温暖な気候を活かし、早生品種である丹沢の栽培に力を入れているのが特徴です。

山口県

山口県は、岸根栗の発祥地として知られています。岸根栗は栗の中でも最大級の大きさを誇り、そのまろやかな甘さが魅力です。

長野県

長野県、特に上高井郡小布施町は、江戸時代初期に松代藩の重要な御林として管理され、そこで収穫された選りすぐりの栗は将軍家への献上品とされていました。小布施は、水はけの良い扇状地であり、栗の栽培に適した酸性の土壌と、北信濃特有の気候が組み合わさることで、格別な味わいの栗が育まれます。その美味しさは江戸時代から広く知られるようになり、「小布施栗」は、当時から全国にその名を知られるブランド栗としての地位を確立しました。
栗の里として知られる小布施では、毎年10月下旬頃に「おぶせ栗祭り」が開催され、栗の収穫を祝います。皇大寺の境内では、多彩なイベントが催されます。例えば、栗や栗羊羹のつかみ取り、利き栗、栗の教室などがあり、子供から大人まで楽しめます。また、伝統行事である栗や新栗餡の奉納も見どころの一つで、時には新栗餡を使った温かいおしるこが無料で振る舞われることもあります。

京都府

京都府は栗の生産量こそ多くはありませんが、丹波地方で生産される栗は特に有名です。京都府における栗の栽培は古く、13世紀初頭に外国から接ぎ木の技術が伝わると、丹波地方で栗の栽培が始まったとされています。「丹波くり」の名が全国に広まったきっかけは、江戸時代に魚商人が「丹波くりー、丹波くりー」と売り歩いた際、参勤交代でその地を通過する武士たちによって、その名が全国へと広められたと言われています。
「丹波くり」とは、かつての丹波国(現在の京都府中部、兵庫県東部の一部、大阪府北辺の一部を含む地域)で生産された栗の総称であり、特定の栗のブランド名ではありません。丹波地方で収穫される栗全般を指します。現在、京都府では、伝統料理をはじめとする31品目を「京のブランド産品」として認定しており、丹波くりもその一つとして登録されています。

栗の種類:日本栗、西洋栗、中国栗、アメリカ栗

世界には多種多様な栗が存在しますが、大きく分けると日本栗(和栗)、西洋栗(ヨーロッパ栗)、中国栗、アメリカ栗の4種類に分類できます。これらの栗はそれぞれ原産地や特徴が異なり、用途も様々です。ここでは、それぞれの栗の特徴について詳しく解説していきます。

日本栗(和栗)

日本栗は主に日本が原産ですが、ユーラシア大陸の東部にも自生しています。日本に古くから自生している柴栗は実が小さいため、現在栽培されている日本栗の主な品種は、柴栗を品種改良して実を大きくしたものです。日本栗は、実が大きいことと、豊かな風味が特徴です。タンニンを多く含むため渋皮が剥がれにくいという性質がありますが、食用部分のアクが少なく、水分を多く含んでいるため、上品な味わいを楽しむことができます。「筑波」「伊吹」「国見」「利平」など、野生の柴栗を品種改良したものは、100種類ほど存在すると言われています。

ヨーロッパ栗

原産は南東ヨーロッパおよび西アジアとされています。現在では、イタリア、フランス、スペインといったヨーロッパ全域で広く栽培されています。日本の栗と比較するとやや小ぶりで、果肉は締まっており、粘り気が少ないのが特徴です。果実の周囲は硬い皮で覆われていますが、加熱することで容易に剥くことができます。病害虫に弱いため、日本ではあまり栽培されていません。

中国栗

主な原産地は中国の華北地方です。日本では甘栗として親しまれています。果実はやや小さめで渋皮が剥きやすく、果肉は締まっていて割れにくいのが特徴です。強い甘みを持ち、加熱することでさらに皮が剥きやすくなり、甘みも増すため焼き栗に最適です。原産の華北地方は乾燥した高地であるため、高温多湿な環境では育成が難しく、日本ではあまり栽培されていません。

アメリカ栗

別名アメリカンチェスナットと呼ばれています。渋皮が剥きやすく、果実は粉質で甘いのが特徴です。クリ属の中でも特に香りが優れており、木材としても優れた品種です。しかし、1900年代に胴枯病が蔓延し、壊滅的な被害を受けたため、現在では市場に出回ることはほとんどありません。アメリカ栗は病気に弱く栽培は困難ですが、病原菌への耐性を持つ中国栗との交配による品種改良が進められており、復活が期待されています。

日本で栽培されている栗の品種:丹沢、筑波、銀寄、利平など

日本国内で栽培されている栗の代表的な品種としては、丹沢、筑波、銀寄、利平などが挙げられます。これらの品種は、それぞれ独特の味、風味、食感を持っており、用途も多岐にわたります。ここでは、それぞれの品種が持つ特徴について詳しく解説します。

銀寄(ぎんよせ):旬 9月下旬~10月

銀寄は、丹波栗を代表する品種として知られ、その栽培は江戸時代にまで遡ると言われています。数ある丹波栗の改良品種の中でも、特に歴史のある品種です。主な産地は愛媛県であり、次いで熊本県、兵庫県と続きます。その他、北海道から九州に至るまで、日本各地で栽培されています。外観は、他の栗と比較して表面に美しい光沢があり、重厚感のある扁平な形状をしています。特に、底の部分との境界線が太く、はっきりとしている点が特徴的です。果実は大きく、粉質で、加熱調理することで甘みとほくほくとした食感を楽しむことができます。

岸根(がんね):旬10月中旬~11月

岸根は山口県が原産地とされ、国の推奨品種にも選ばれるほどの知名度を誇ります。その起源は、平家の落人が自生していた栗の木に穂木を接ぎ木し、その技術を近隣の農民に広めたことにあるとされています。主な産地は山口県、愛媛県、茨城県ですが、市場への流通量が限られているため、非常に希少な品種です。栗の中でも最大級の大きさを誇り、一つあたり30~40gにもなります。果肉は粉質が強く、まろやかな甘さが際立っています。

丹沢(たんざわ):旬8月下旬~9月

丹沢は、乙宗と大正早生を交配して生まれた実生を選抜・育成した品種で、「くり農林1号」として農林認定を受けています。早生種であるため、市場に出回る時期が早く、収穫量は筑波栗に次いで多いのが特徴です。主な産地は熊本県、茨城県、宮崎県であり、全国のシェア率の約2割を占めています。見た目は、おにぎりのような形で、表面の艶は控えめです。裂果と呼ばれる縦方向の筋が多く見られます。栗の中では比較的粒が大きく、甘みや香りは穏やかであっさりとした風味が特徴です。加熱することで、栗本来のほくほくとした食感を堪能できます。

筑波(つくば):旬9月下旬~10月

筑波は、岸根と芳養玉を交配して生まれた実生を選抜・育成した品種で、「くり農林3号」として農林認定されています。日本国内で広く栽培されており、総収穫量の約3割を占めています。安定した品質の高さと、多収穫性に優れている点が魅力です。主な産地は、熊本県、茨城県、愛媛県であり、数ある和栗の中でも主要な品種として位置づけられています。外観は、先端がやや尖っており、丸みを帯びた典型的な栗の形をしています。果肉は淡い黄色で、粉質であり、強い甘みと豊かな香りが特徴です。

利平(りへい):旬9月中旬~10月末

利平は、日本を代表する栗の優良品種として知られています。岐阜県山県市の土田氏が、在来種と中国種を交配させて育成したもので、その名は土田家の屋号である「利平治」に由来します。主な産地としては、埼玉県、熊本県、茨城県が挙げられますが、東京都でも栽培されています。外観は丸みを帯びた形で、先端部分に細かい毛が多く見られます。また、他の栗と比較して色が濃く、深煎りのコーヒー豆を思わせる色合いが特徴です。食感はホクホクとしており、強い甘みがあるため、美味な栗として高く評価され、「栗の王様」と称されることもあります。

美味しい栗の選び方と保存方法

美味しい栗を選ぶには、いくつかの重要な点があります。また、栗は鮮度が落ちやすい食材なので、適切な保存方法を理解しておくことが重要です。ここでは、美味しい栗の選び方と、鮮度を保つための保存方法について詳しく解説します。

美味しい栗の選び方

皮にハリとツヤがあり、手に持った時にずっしりと重みを感じるものを選びましょう。時間が経つと水分が失われ、重さが軽減してしまいます。

生栗の保存方法

生の栗は傷みやすいため、できるだけ早く消費しましょう。保存する際は、ポリエチレン袋に入れ、密閉せずに口を軽く折り曲げて、冷蔵庫のチルド室(0℃付近)で保管してください。乾燥を防ぐことが鮮度維持の秘訣で、およそ1週間程度は保存可能です。

むき栗の保管方法

軽く茹でた後(およそ20分)、冷水で冷まし、水気を切ってから密閉できる袋に入れ、空気をしっかり抜いて冷凍庫へ。およそ半年間は風味を保てます。使用する際は、解凍せずにそのまま調理にお使いいただけます。

栗を使ったおすすめレシピ:栗ご飯、栗きんとん、モンブランなど

栗は、お料理からスイーツまで幅広く使える魅力的な食材です。ここでは、栗の美味しさを最大限に引き出す、定番レシピをご紹介します。栗ご飯、栗きんとん、モンブランなど、栗の豊かな風味を心ゆくまでお楽しみください。

栗ご飯

栗ご飯は、秋を感じさせる代表的な一品です。栗の自然な甘さと香りがご飯全体に広がり、食欲をそそります。

栗きんとん

栗きんとんは、お正月の定番であるおせち料理としても人気があります。栗本来の甘さを活かした、上品で優しい味わいが魅力です。

栗を使ったお菓子:モンブラン

モンブランは、栗のペーストを贅沢に使用した、誰もが知る人気スイーツです。栗本来の香りと、なめらかなクリームの甘みが織りなすハーモニーが特徴です。

秋の味覚狩り:栗拾い体験ができる農園

秋のシーズンには、全国各地の農園で栗拾いを楽しむことができます。自分で収穫した栗は、普段お店で買うものとは違う、特別な味わいです。ここでは、おすすめの栗拾いスポットをいくつかご紹介します。ご家族や親しい方々と一緒に、秋の恵みを探しに出かけてみませんか。

まとめ

栗は、育つ土地や品種によって、その風味や個性が大きく変わる奥深い食材です。この記事では、栗の産地、品種の違い、美味しい栗の選び方、適切な保存方法、そして栗を使ったレシピなど、栗に関する様々な情報をお届けしました。ぜひ、この記事を参考に、秋の味覚である栗を心ゆくまでお楽しみください。

よくある質問

質問1:栗はいつ頃が一番美味しい時期ですか?

栗が最も美味しくなる旬な時期は、9月~10月頃と言われています。早い時期に収穫できる品種は8月下旬頃から、遅い時期に収穫できる品種は11月頃まで楽しむことができます。

質問2:栗を長持ちさせるには、どういった保存方法が良いでしょうか?

生の栗は鮮度が落ちやすいので、冷蔵庫のチルド室での保存、または冷凍保存がおすすめです。むき栗の場合は、一度茹でてから冷凍することで、より長く保存できます。

質問3:栗は栄養豊富ですか?

栗は食物繊維、ビタミンB1、カリウムといった栄養素を豊富に含んでいます。さらに、抗酸化作用を持つポリフェノールも含まれており、健康的な食材として注目されています。
産地