初夏の訪れを告げる、宝石のような赤い実、さくらんぼ。その可愛らしい姿と甘酸っぱい味わいは、多くの人々を魅了します。特に旬の時期には、さくらんぼ狩りを楽しむ方も多いのではないでしょうか。しかし、繊細なさくらんぼの栽培には適した気候が不可欠で、生産地は限られています。この記事では、日本におけるさくらんぼの生産量ランキングを徹底解説。主要な産地とその土地で育まれる人気品種に焦点を当て、さくらんぼの魅力を余すことなくお伝えします。
都道府県別さくらんぼ生産量ランキングと各産地の特徴
1位:山形県(生産量シェア74.7%)
山形県がさくらんぼ生産量日本一を誇る背景には、気候、土壌、そして長年にわたる生産者の努力が複合的に作用しています。まず、さくらんぼの栽培に適した冷涼な気候が挙げられます。春の開花時期に霜が降りることが少なく、夏は比較的雨が少ないため、さくらんぼが十分に日光を浴びて甘みを蓄えることができます。また、盆地特有の昼夜の寒暖差が大きいことも、さくらんぼの糖度を高める要因となっています。さらに、水はけの良い肥沃な土壌も重要な要素です。長年の栽培技術の蓄積も忘れてはなりません。品種改良や栽培方法の研究が重ねられ、高品質なさくらんぼを安定的に生産できる体制が整えられています。これらの要素が組み合わさり、山形県は日本一のさくらんぼ産地としての地位を確立しているのです。
2位:北海道(生産量シェア10.1%)
さくらんぼの国内生産量において、北海道は第2位の地位を確立しています。年間でおよそ1,490トンが生産され、これは全国の生産量の10.1%に相当します。北海道産さくらんぼの収穫時期は、主に6月下旬から8月上旬にかけてです。栽培面積は約495ヘクタールに及び、北海道全体の約0.067%、つまり「北海道の約1493分の1がさくらんぼ園」という計算になります。北海道では、定番品種の「佐藤錦」に加え、明治時代に小樽市で発見された道内オリジナル品種「北光」が栽培されています。「北光」は「水門(すいもん)」という愛称で親しまれており、その可愛らしいハート型の外観が特徴です。その他、深紅色の美しい実をつける「おりひめの季節」や、珍しい黄色の果皮を持つ「月山錦」なども栽培されており、特に「月山錦」は希少価値が高く、贈答品として人気を集めています。北海道の冷涼な気候が、さくらんぼの成熟を緩やかにし、甘みと酸味の絶妙なバランスを生み出す要因となっています。
3位:山梨県(生産量シェア4.1%)
「フルーツ王国」として知られる山梨県は、国産さくらんぼの生産量で第3位に位置しています。年間生産量は約1,010トンで、全国シェアの4.1%を占めています(2019年のデータでは6.3%)。山梨県では、さくらんぼ栽培が盛んに行われており、観光客向けのさくらんぼ狩りも人気を集めています。栽培面積は約299ヘクタールで、山梨県全体の約0.008%を占め、「山梨県の約13224分の1がさくらんぼ園」に相当します。山梨県では、代表的な品種である「佐藤錦」に加え、温暖な地域でも栽培しやすい「高砂」が主要品種として栽培されています。さらに、山梨県はオリジナル品種の開発にも注力しており、2015年に品種登録された「甲斐ルビー」(商標名:甲斐ルビー、品種名称:甲斐オウ果6)は、甘さと酸味のバランスが取れた味わいが特徴です。また、濃厚な風味が楽しめる「富士あかね」も山梨県独自の品種として生産されており、多様な品種を通じて、消費者に様々なさくらんぼの魅力を提供しています。産地ごとに異なる品種や栽培方法に着目することで、味や見た目の違いを楽しむことができ、さくらんぼをより深く味わうことができるでしょう。
国内さくらんぼ生産量の推移と課題

日本におけるさくらんぼの生産量は、全体として過去数年間、ほぼ横ばいで推移していますが、詳細なデータを見ると、わずかな減少傾向が見られます。この緩やかな減少の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。主な課題として、全国の農業で見られる栽培者の高齢化と後継者不足が挙げられます。さくらんぼ栽培には高度な技術と手間が必要なため、新規参入の障壁が高いのが現状です。加えて、近年顕著になっている気候変動も大きな影響を与えています。さくらんぼは、特に梅雨時期の長雨や夏の高温、突発的な降雹など、気象条件に非常に敏感な果物であり、収穫量や品質に直接的な影響を及ぼします。例えば、雨による果実の裂果や病害虫の発生リスク増加は、生産者にとって大きな負担となっています。このような厳しい環境の中、生産者の方々は短い収穫期間中に、できる限り長く消費者にさくらんぼを提供できるよう、絶え間ない努力を続けています。具体的には、病害虫への抵抗性や耐候性に優れた新品種の開発・導入、雨よけハウスや防鳥ネットなどの設備投資、そして最適な収穫時期を見極めるための栽培管理技術の向上が挙げられます。さらに、山形県の「やまがた紅王」に見られるような地域オリジナル品種のブランド化推進や、生産者登録制度の導入といった取り組みも、さくらんぼ産業の持続可能性を高め、消費者に高品質な果物を安定的に供給するための重要な戦略となっています。これらの努力を通じて、日本のさくらんぼ文化とその豊かな味わいを次世代に繋いでいくための挑戦が続けられています。
まとめ
今回は、日本のさくらんぼの主要な産地とその特徴、そして各産地で栽培されている多様な品種について詳しく解説しました。さくらんぼは、栽培に厳しい気象条件が求められる繊細な果物であり、特に山形県が国内生産の大部分を担っているため、生産地域が限定されていることがご理解いただけたかと思います。しかし、各産地の生産者の方々は、短い旬の期間の中で、佐藤錦に代表される伝統的な品種から、紅秀峰、月山錦、甲斐ルビー、やまがた紅王といった個性豊かなオリジナル品種まで、様々な品種を栽培し、消費者ができるだけ長い期間、高品質なさくらんぼを味わえるよう、日々努力を重ねています。産地ごとの気候や風土が育む味わいの違いや、品種ごとの色、形、甘み、酸味のバランスなどを意識して食べ比べてみることで、さくらんぼの楽しみ方はさらに広がります。この記事を参考に、今年の春から夏にかけて、様々な産地・品種のさくらんぼが持つ、みずみずしい果肉と豊かな風味を存分に堪能し、日本の農業が育む旬の恵みを深く味わってみてください。この記事が、さくらんぼ選びや産地への興味を深める一助となれば幸いです。
国産さくらんぼ、生産量トップはどの地域?
日本国内で収穫されるさくらんぼのなかで、最も多いのは山形県産です。なんと、全国の7割超、およそ74.7%もの割合を占めており、他県を大きく引き離しています。
さくらんぼの学術的な名称は何でしょう?
一般的に「さくらんぼ」と呼ばれている果物ですが、正式な名称は「桜桃(オウトウ)」といいます。公的な文書や統計データなどでは、この名称が使われることが一般的です。
山形県がさくらんぼ栽培に最適な理由とは?
山形県は、周囲を山々に囲まれた盆地という地形が特徴です。この地形のおかげで、梅雨時期でも降水量が少なく、加えて一日の気温差が大きくなりやすいという気候条件が生まれます。多湿に弱いさくらんぼにとって、これらの条件が非常に適しているのです。













