冬の味覚としておなじみのみかん。その皮を乾燥させた「陳皮(ちんぴ)」は、漢方薬としても用いられる生薬の一種です。みかんの香りはリラックス効果をもたらすだけでなく、陳皮には様々な健康に役立つ可能性が秘められています。この記事では、陳皮の歴史や効果効能、そして日々の生活に取り入れる方法まで、詳しく解説していきます。みかんの皮が持つ、知られざるパワーを再発見してみましょう。
陳皮とは?基本情報と歴史
陳皮(ちんぴ)は、温州みかんなどの果皮を乾燥させたもので、生薬として知られています。中国では、成熟した柑橘類の果皮を乾燥させたものが古くから漢方薬の原料として利用されてきました。日本では一般的に、熟した温州みかんの皮を乾燥させたものが用いられます。日本薬局方では、陳皮は温州みかんまたはマンダリンオレンジの成熟した果皮と定義されています。「陳」という字は「古い」という意味を持ち、一般的に古く長期保存されたものほど薬効が高いとされています。また、未成熟な青いみかんの皮を乾燥させたものは青皮(せいひ)、完熟したオレンジ色の皮を乾燥させたものは橘皮(きっぴ)と呼ばれます。陳皮は、風邪薬や胃腸薬、七味唐辛子、お屠蘇(お正月に飲まれる薬草酒)など、私たちの生活の中で幅広く活用されています。みかんの原産地は、およそ3000万年前のインド、タイ、ミャンマーなどの地域であると考えられています。中国では約4000年前から栽培の歴史があり、日本へは中国の浙江省温州府から伝わったとされています。鹿児島県長島町では温州みかんの古木が発見されており、日本におけるみかん栽培発祥の地は鹿児島県であると考えられています。日本へ伝来した当初、みかんは食用ではなく、主に薬用として利用されていました。つまり、その頃から陳皮としての利用が始まっていたと考えられます。みかんが食用として広まったのは江戸時代後期であり、「みかん」という名称で栽培されるようになったのは明治時代以降です。このように、薬用としての歴史は古いものの、食用としての歴史は比較的新しいと言えるでしょう。
陳皮に含まれる成分とその働き
陳皮には、リモネンやテルピネンなどの香りの成分を豊富に含む精油が含まれており、リラックス効果が期待できます。リモネンは、柑橘系の果皮に多く含まれる成分で、爽やかで甘酸っぱい香りが特徴です。体内での脂肪燃焼促進効果については、情報の確認が必要です。リモネンを含む精油は、アロマテラピーにも広く利用されています。テルピネンも精油に含まれる成分の一つで、副交感神経を活性化させる作用や、鎮痛作用、鎮静作用、抗炎症作用などがあります。樹脂のような香りを持ち、リモネンと同様にアロマテラピーにも用いられています。さらに、ポリフェノールの一種であるヘスペリジンも含まれており、毛細血管を強化し、血流を改善する効果があります。ヘスペリジンは、みかんの皮や筋に多く含まれており、血行促進や体を温める効果が期待できます。漢方医学において陳皮は、胃液の分泌を促進し、胃から腸への排出を促したり、腸の蠕動運動を活発にする効果がある「理気薬」として用いられてきました。そのため、多くの漢方薬の胃薬(例:補中益気湯、六君子湯など)に配合されています。また、陳皮には吐き気を鎮める作用や、体内の余分な水分を排出する作用などもあります。漢方薬としては、六君子湯(りっくんしとう)や平胃散(へいいさん)などに利用されるほか、正月に飲まれる屠蘇散(とそさん)にも配合され、厄除けの縁起物としても重宝されています。その他、日本の七味唐辛子の材料としても利用されています。
陳皮の効果・効能:健康と美容への多岐にわたる効果
陳皮には、血行をサポートする、肌の健康維持に役立つ、生活習慣病の予防に役立つとされる、肝機能の健康維持をサポートする、アレルギー症状の緩和に役立つとされる、リラックス効果が期待できる、胃腸機能の健康をサポートする、咳や痰を和らげるのに役立つとされる、むくみの軽減をサポートするなど、多岐にわたる効果・効能が期待されています。
陳皮の作り方:家庭でできる簡単レシピ
陳皮は、みかんの皮を乾燥させるだけで、ご家庭でも手軽に作ることができます。みかんにワックスや農薬が付着している場合は、熱湯で軽く湯通ししてから乾燥させると良いでしょう。作り方は簡単で、まずみかんの皮を粗く刻み、ザルなどに広げて、風通しの良い日陰で完全に乾燥させます。乾燥すると、元の量の2~3割程度まで小さくなります。保存する際は、湿気を吸収しやすいため、蓋付きの密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて保管してください。
陳皮の活用法:料理、入浴剤、陳皮茶、薬酒など
自家製陳皮は、煎じてお好みのショウガやハチミツを加えて陳皮茶として楽しんだり、料理の隠し味として使用したりと、多岐にわたる用途があります。陳皮茶の作り方は簡単で、急須に陳皮3g(小さじ1杯程度)を入れ、熱湯約300mlを注ぎ、4~5分ほど蒸らした後、お好みでハチミツなどを加えていただきます。体を温め、血行を促進する効果が期待できます。また、陳皮をフードプロセッサーなどで細かく粉砕し、味噌汁や煮物などに加えることで、風味豊かなアクセントになります。粉末状にした陳皮は、密閉容器に入れて保存することで、長期間風味を保つことができます。入浴剤としての利用も推奨されています。適当な大きさに砕いた陳皮をガーゼや布袋に入れ、湯船に浸すことで、血行促進効果により体が温まります。就寝前には、陳皮入りのスパイス薬酒もおすすめです。陳皮に含まれるリモネンには、リラックス効果やリフレッシュ効果が期待できます。さらに、カルダモンやシナモンには精神的な疲労を和らげる効果があるため、安眠を促す効果も期待できます。
まとめ
陳皮は、古くから漢方薬としても用いられてきたミカンの皮を乾燥させたものです。血行促進、美肌効果、リラックス効果など、様々な健康効果が期待されています。ご家庭でも手軽に作ることができ、料理、入浴剤、お茶など、様々な方法で活用できます。この記事を参考に、ぜひ陳皮を日々の生活に取り入れて、より健康的な毎日を送ってみてください。
陳皮はどのように保存すれば良いですか?
陳皮は湿気を吸収しやすいため、密閉できる容器に乾燥剤と一緒に入れて保存することが重要です。直射日光を避け、風通しの良い場所で保管することをおすすめします。
陳皮茶は毎日飲んでも大丈夫ですか?
陳皮茶は、一般的には毎日飲んでも差し支えありません。しかし、体質によっては合わない場合もあるため、最初は少量から試して、体調に変化がないかを確認するようにしてください。
陳皮の副作用について
陳皮は一般的に安全な食品とされていますが、いくつか注意すべき点があります。まず、柑橘類に対してアレルギーをお持ちの方は、アレルギー反応を引き起こす可能性があるため、摂取を控えるようにしてください。また、過剰に摂取した場合、胃腸に不快感を与えることも考えられます。摂取量には注意し、適量を守ることが大切です。