秋が訪れるとともに、その季節感を存分に楽しむことができるスイーツがあります。それは、フランスの名峰「モンブラン」にちなんで名づけられた、ケーキ モンブランです。栗を贅沢に使ったクリームが、口の中でとろけるように広がり、一口ごとに至福の時間が訪れます。濃厚な味わいと上品な甘さが絶妙なバランスを保ち、老若男女問わず愛されるこのスイーツ。今回は、そんなケーキ モンブランの魅力を深掘りし、その美味しさの秘密に迫ります。
秋のデザート「モンブラン」は栗以外の素材も楽しめるユニークな洋菓子
モンブランは、細いクリームを重ねて作ったケーキで、栗の風味が特徴です。年齢を問わず、多くの人々に愛されている洋菓子の一つです。現在では、和栗を用いたものや、さつまいもや抹茶を取り入れたバリエーションも登場しており、その種類は非常に豊富です。今回は秋の代表的なスイーツであるモンブランについてご紹介します。特に注目されている生絞りモンブランにも焦点を当てます。
フランスとイタリアの伝統的なスイーツ
モンブランケーキがどのようにして誕生したかにはいくつかの説がありますが、フランスのサヴォワ地方とイタリアのピエモンテ地方が起源とされる見方が有力です。
「モンブラン」という言葉はフランス語で「白い山」を意味し、フランスとイタリアの国境にそびえ立つ山で、標高約4810メートルを誇るヨーロッパアルプスの最高峰「モンブラン(Mont Blanc)」を指していることに由来します。その山は一年中雪に覆われているため「白い山」と呼ばれています。
フランスでは「モンブラン」と呼ばれるのに対し、イタリアでは「モンテビアンコ」として親しまれており、共通してその形を模した地方菓子とされています。元々はマロンペーストと豊富な生クリームで作られたシンプルなお菓子だったそうです。
日本におけるモンブラン誕生の物語
1933年にフランスのシャモニーを旅行した菓子職人である迫田千万億氏は、モンブラン山の美しい景観に心を奪われ、「モンブラン」と名付けた洋菓子店を東京自由が丘に開店しました。これが日本での始まりです。
その当時、フランスで提供されていたモンブランはメレンゲにマロンクリームを重ねた冷たいデザートでした。しかし、迫田氏は日本人に親しみやすいように栗の甘露煮を使用した黄色い栗のモンブランを開発し、日本で広く人気を集めるようになりました。
モンブランは栗を使ったケーキなのか?
日本ではマロングラッセなどのシロップで味付けした栗をトッピングした「モンブラン」を提供する店舗が多いことから、「モンブラン = 栗のケーキ」と認識している人も少なくないでしょう。
しかしアルプスにまつわる話が示すように、本来「モンブラン」とは「栗」ではなく「山の形」を指す言葉です。スポンジやメレンゲの土台の上に、クリームを山の形に絞ったものが「モンブラン」と呼ばれます。そのため、栗だけでなくチョコレートやかぼちゃを使った場合でも、この形であればすべて「モンブラン」となるのです。
多彩な個性を放つ様々なモンブラン
今では、一般的なモンブランだけでなく、ユニークな風味を持つモンブランもたくさん登場しています。
伝統的な栗のペーストを使ったモンブランでも、深いマロンの甘みを楽しめるものや、優しい和栗の風味を生かしたもの、ラム酒やブランデーで大人っぽい味わいを持たせたものなど、パティスリーによって風味は多様です。
栗以外にも、かぼちゃやさつまいも、紫芋といった野菜の持つ甘みを活用したモンブランがあります。抹茶や焙じ茶のクリームを用いた、少し苦味のある和風モンブランも日本らしい一品ですね。
オーソドックスなものからユニークなアプローチのモンブランまで、作り手によって様々な味わいや見た目が楽しめるのが、このケーキの魅力と言えるでしょう。