街を歩けば、甘い香りに誘われるクレープ屋さん。かつてはクリームやフルーツで飾られた華やかなものが主流でしたが、近年、その流れに変化が。シンプルながらも奥深い味わいが楽しめる、バターと砂糖を主役にしたクレープ専門店が注目を集めています。一口食べれば、芳醇なバターの香りと優しい甘さが口いっぱいに広がり、至福のひとときを演出。今回は、そんなシンプルクレープ専門店の魅力に迫ります。
クレープのトレンド変遷と本格フランス流
少し前まで日本では、ホイップクリームや色とりどりのフルーツ、甘いソースをふんだんに使った、いわゆる「定番クレープ」が広く親しまれていました。しかし最近、クレープの人気動向は大きく変わってきています。静かなブームとなっているのは、生地の風味や厳選された素材本来の味をじっくり味わえる、シンプルながらも本格的なクレープです。中でも、生クリームを使わず、パリッとした食感の生地を味わうシュガーバター味のクレープは、その軽やかさと飽きのこない味が受け、幅広い世代から支持を集め、ブームの先駆けとも言えるでしょう。人気テレビ番組でも取り上げられるなど、クレープは手軽なスイーツとしてだけでなく、奥深い魅力を持つ本格的なデザートとして、その存在感を高めています。「クレープ」という名前は、焼いた生地の模様が「ちりめん」に似ていることから、フランス語で「ちりめんのような」という意味の言葉が語源です。この由来が示すように、本来クレープは、焼き目の香ばしさを楽しむお菓子としてフランスで愛されてきました。日本ではトッピングが重視される傾向にありましたが、現在では本場フランスのスタイルに倣い、香ばしい生地にバターと砂糖のみでシンプルに味付けしたクレープが人気を集めています。従来のクリームたっぷりのクレープを重く感じていた層からも、この原点回帰のスタイルは支持されており、気軽に楽しめるものから、ナイフとフォークでじっくり味わう高級クレープまで、様々なバリエーションが登場しています。この流れは、クレープ本来の美味しさを改めて知る良い機会となっています。
東京で味わう注目のクレープ店【厳選9選】
ここからは、話題のシュガーバター味をはじめ、様々なこだわりが詰まったクレープが楽しめる、東京のおすすめ店を9店ご紹介します。
1. 中目黒〈neel 中目黒〉:ブームを牽引する、原点回帰クレープ
神宮前〈neel〉の姉妹店である〈neel 中目黒〉は、現在のシンプルなクレープ人気を牽引してきた存在と言えるでしょう。店長の諸岡菜々子さんによれば、〈neel〉のクレープ生地は「原点回帰を目指した」もので、卵を贅沢に使うことで風味豊かな味わいを実現しています。さらに、隠し味としてリキュールを少量加えることで、奥深い香りが楽しめるように工夫されています。クレープの美味しさを大きく左右するのは「焼き方」だと諸岡店長は言います。〈neel 中目黒〉では、もちもちとした食感と、パリパリとした香ばしい食感の2種類の生地を提供しており、お客様の好みに合わせて焼き加減を調整する技術が求められます。この高い技術によって生まれる、焼き目の香ばしさが食欲をそそる熱々のクレープは、最高の味わいです。
2. 中野〈La Blanche Hermine〉:本場ブルターニュの味と日本の四季の融合
中野に佇む〈La Blanche Hermine〉は、フランス・ブルターニュ地方のクレープ店で長年腕を磨いた今野夫妻が営む、焼菓子とクレープの専門店です。本場仕込みの技術を活かし、フランス製の専用ガス台で一枚一枚丁寧に焼き上げるクレープは、ブルターニュ地方の伝統的な味わいを忠実に再現しています。さらに、日本の四季折々の旬な食材を取り入れることで、独創性あふれるメニューも展開しています。例えば、柑橘系のシャーベットなど、季節ごとに変わるフレッシュなトッピングが、クレープの新しい魅力を引き出しています。中でも人気の「クレープ・アグリュム」は1080円で、その繊細な味わいは多くのリピーターを魅了しています。神楽坂の名店〈ル・ブルターニュ〉で培われた今野夫妻の豊富な知識と確かな技術が、この店のクレープの品質を保証しています。
3. 豪徳寺〈EQUALLY〉:熟練パティシエが創り出す、至高のクレープ
豪徳寺に店を構える〈EQUALLY〉は、パティシエの卓越した技が光る、芸術的なクレープが自慢です。名高い洋菓子店〈パティスリィ アサコ イワヤナギ〉で経験を積んだ友納滉一シェフが腕を振るうクレープは、まさに極上の味わい。厳選された素材と緻密に計算された構成により、従来のクレープのイメージを覆すような逸品に仕上がっています。中でも、その美しさから「宝石のよう」と称される「季節のフルーツシャンティ」(2860円)は必食。旬のフルーツを惜しみなく使い、華やかな見た目はまるで高級デザートのようです。以前は表参道で行列の絶えない人気店でしたが、2024年5月に豪徳寺へ移転。移転後もその人気は健在で、多くのファンがその味を求めて訪れます。
4. 下北沢〈GH COOKIES.〉:国産小麦の風味を堪能できる、こだわりのクレープ
下北沢の落ち着いたエリアにある〈GH COOKIES.〉は、代官山の人気ベーカリー〈GARDEN HOUSE CRAFTS〉の姉妹店として、焼き菓子と共に上質なクレープを提供しています。最大の魅力は、国産小麦100%にこだわった、香り高いクレープ生地です。特に、全粒粉と三温糖を丁寧に配合したシンプルなプレーンクレープは、小麦本来の豊かな風味と優しい甘さが際立ちます。さらに、旬の果物をふんだんに使用した期間限定フレーバーも人気で、季節ごとに異なる味わいを楽しめます。過去には、6月までの期間限定で「チェリーパイ」(950円)を提供し、その独創的な味わいが好評を博しました。素材へのこだわりと、職人の技術が光る〈GH COOKIES.〉のクレープは、一度食べたら忘れられない美味しさです。
5. 笹塚〈ØC tokyo〉:至福のクレープ体験を約束する、究極の味わい
笹塚に佇む〈ØC tokyo〉は、厳選されたオーガニック素材を使用した、洗練された北欧風クレープカフェです。究極の味わいを追求したクレープは、まさに特別な一品。素材は徹底的に吟味され、〈木次牧場〉の放牧牛乳、喜界島産のざらめ、ニュージーランド産のバターなど、オーガニック認証を受けた高品質なものばかりを使用しています。目黒の人気レストラン〈kabi〉で腕を振るった田井將貴シェフが、北欧滞在中に得たインスピレーションを基に創り上げたクレープは、その唯一無二の味わいで、最高のクレープ体験をもたらすと評されています。メニューは1種類のみで、価格は1200円。厳選素材とシェフの技術が凝縮された、特別なクレープを堪能できます。店内では、コペンハーゲンで人気の〈プロローグコーヒー〉も楽しめ、クレープと共に贅沢な時間を過ごせます。
6. 代々木八幡「ホルン」:絞りたてレモンの爽やかさが際立つ、シンプルなクレープ
代々木八幡に位置する「ホルン」は、可愛らしいケーキとパンのお店ですが、地下には居心地の良いイートインスペースがあり、購入したスイーツと共に、ゆったりとカフェタイムを満喫できます。クレープは、砂糖とバターで作るシンプルな「ブールシュクレ」と、フレッシュなレモンを絞って仕上げる「シトロン」の2種類。特におすすめは「シトロン」で、熱々のクレープ生地に目の前で絞るレモンの香りが広がる、ちょっぴり大人向けの味わいです。ホイップクリームなどのトッピングは一切なく、バターとレモン、そしてもちもちとした生地そのものの美味しさを存分に楽しめます。バターはあっさりとした後味の「カルピスバター」を使用しているため、一般的なクレープよりも軽く、大人でも最後まで美味しくいただけます。クレープの販売時間は14時から18時までなので、訪れる際は注意が必要です。「クレープ(シトロン)」は550円(税込)で提供されています。
7. 渋谷「VIRON(ヴィロン)」:エシレバターが香る、大人のための贅沢クレープ
渋谷に店を構えて20年以上、「VIRON(ヴィロン)」は、フランス産小麦粉『レトロドール』を使用した本格的なパンで知られる人気店です。なかでも、テイクアウト限定の「クレープレトロドール」は、その上質な味わいが評判を呼んでいます。クレープ生地には、看板商品の「バゲット・レトロドール」と同じ『レトロドール』を使用。さらに、芳醇な香りが特徴の『エシレバター』を贅沢に使い、他では味わえない特別なクレープに仕上げています。メニューは、シンプルに素材の良さを味わえる「シュクルブール」の他、マロンペーストをたっぷり使った「マロン」、塩バターキャラメルのコクと甘みが絶妙な「塩バターキャラメル」など、魅力的なフレーバーが揃います。口に入れた瞬間、エシレバターの香りが広がり、もっちりとした生地との相性も抜群。一度食べたら忘れられない、リピート必至の逸品です。「シュクルブール」は734円(税込)で楽しめます。
8. 神泉「Galettoria (ガレットリア)」:ブルターニュの風を感じる、本格クレープ&ガレット
渋谷区松濤の閑静な住宅街にひっそりと佇む「Galettoria (ガレットリア)」は、南フランスの雰囲気が漂う、隠れ家のようなガレットとクレープのお店です。オーナーが厳選したアンティークの家具や雑貨が並ぶ店内は、温かく居心地の良い空間。まるでフランスの田舎を訪れたかのような、ゆったりとした時間を過ごせるのが魅力です。クレープは、「バターと砂糖のクレープ」や「シナモン」など、定番メニューに加え、オリジナルのフレーバーも楽しめます。また、ホイップクリーム(+150円)やバラの形のアイスクリーム(+300円)など、トッピングで自分だけのオリジナルクレープを作ることも可能です。生地は、ふっくらとしていながらも、もちもちとした食感が特徴。一口食べれば、そのクオリティの高さに驚くはずです。テイクアウトも可能なので、気軽に本格的なクレープを味わいたい方にもおすすめです。「バターと砂糖、レモンのクレープ」は550円(税込、テイクアウト価格)です。
9. 下北沢「ナチュラルクレープ」:無添加へのこだわり!体に優しいクレープを
経堂に本店を構える「ナチュラルクレープ」は、素材にとことんこだわった、自然派クレープ専門店です。「安心・安全でおいしいクレープ」をモットーに、厳選された素材のみを使用しています。小麦粉は、国産1等小麦の中でも最高品質とされる「つるぴかり」を使用。さらに、希少な国産小麦胚芽を加えることで、風味と栄養価を高めています。自家製の生チョコレートやキャラメルソースなどのトッピングも、全て無添加で手作りされています。おすすめは、牛乳の代わりに有機豆乳を使った生地と、さっぱりとしたヨーグルトムースの組み合わせ。大豆の優しい風味と、ヨーグルトムースの爽やかさが絶妙にマッチした、他では味わえないオリジナルクレープです。注文を受けてから一枚一枚丁寧に焼き上げるため、いつでも焼きたて、もちもちパリパリの食感を楽しめます。「自家製ヨーグルトムース&イチゴ(有機豆乳の生地)」は605円(税込)です。
まとめ
東京のクレープシーンは、近年、従来の「クリームたっぷり」のスタイルから、素材や生地本来の美味しさを追求する「シンプル」なスタイルへと変化しています。フランスの伝統的なシュガーバタークレープから、パティシエの技術が光る美しいクレープ、国産小麦やオーガニック素材を使った体に優しいクレープまで、その種類は多岐にわたります。今回ご紹介した9店舗は、それぞれが独自のこだわりを持ち、クレープの新たな魅力を発信しています。「ホルン」のレモンが香るシンプルなクレープ、「VIRON」のエシレバターを贅沢に使ったリッチなクレープ、「Galettoria」で味わう南フランスの雰囲気、「ナチュラルクレープ」の無添加素材へのこだわりなど、どの店も訪れる価値のある名店です。素材の選定から焼き方、提供方法まで、細部にまでこだわりが感じられ、クレープへの愛情と情熱が伝わってきます。手軽なテイクアウトから、店内でゆっくりと味わう高級クレープまで、様々なシーンで楽しめるのも魅力です。ぜひ、東京のクレープ店を巡り、あなたにとって最高の「クレープ体験」を見つけてください。
Q1. 都内で話題のクレープ、今のトレンドは?
A1. 最近の都内では、生クリームや色とりどりのフルーツをふんだんに使った定番クレープに加え、生地そのものの美味しさや素材の良さを追求したシンプルなクレープが注目を集めています。中でも、バターと砂糖だけでシンプルに仕上げたシュガーバタークレープは、その奥深い味わいから特に人気です。さらに、高級食材を贅沢に使用したり、熟練パティシエの技が光る、まるでアートのようなクレープも注目されています。
Q2. シュガーバタークレープ、人気の秘密は?
A2. シュガーバタークレープの最大の魅力は、その軽快な食感と、生地が持つ本来の香ばしさ、そしてバターと砂糖が絶妙に調和した、シンプルながらも豊かな風味です。生クリームをたっぷり使ったクレープが少し重く感じる時でも、シュガーバタークレープなら飽きずに、最後まで美味しくいただけます。生地の表面のサクサク感ともっちりとした食感の両方を味わえるのも人気の理由の一つです。
Q3. クレープに使われるバター、どんな種類があるの?
A3. クレープに使われるバターは多種多様ですが、特に素材にこだわっているお店では、フランス産の高級バターである「エシレバター」や、すっきりとした後味が特徴の「カルピスバター」、ニュージーランド産のオーガニックバターなどが使われています。バターの種類によってクレープの風味や口溶けが大きく変わるため、お店ごとのこだわりを探してみるのも面白いでしょう。
Q4. 紹介されたクレープのお店、テイクアウトはできる?
A4. ご紹介したお店の中には、テイクアウトサービスを提供している店舗が多くあります。例えば、「VIRON(ヴィロン)」、「Galettoria (ガレットリア)」、「neel(ニール)」、「GH COOKIES.」、「ナチュラルクレープ」などではテイクアウトが可能です。詳細は各店舗にてご確認ください。
Q5. テレビ番組『マツコの知らない世界』で話題になったクレープとは、どんなクレープですか?
A5. 『マツコの知らない世界』では、クレープの概念を覆すような、専門店のこだわりが詰まった奥深い世界が紹介されました。一般的なお菓子としてのクレープではなく、生地の素材選びから焼き加減、そしてバターと砂糖といったシンプルな素材の組み合わせを追求した、本格的なクレープにスポットライトが当てられました。これが、新たなクレープ人気を牽引する要因の一つになったと言えるでしょう。