ブルーベリー農家が選ぶ品種図鑑へようこそ!用途に合わせ、最適な品種選びをサポートします。甘さ、酸味、育てやすさ等、特徴を徹底解説。生食、ジャム、お菓子作り…あなたにぴったりの品種がきっと見つかります。農家の息子である筆者が、国産ブルーベリーの魅力を伝授。収穫したての新鮮な味は格別です。自家製スイーツで食卓を彩りませんか?
Blueberry Picture Book:さまざまな品種の魅力と特徴
ブルーベリーは、ツツジ科スノキ属に分類される小さな果樹で、そのルーツは主に北アメリカにあります。昔から欧米では、栄養価が高いことで知られ、野生のブルーベリーが食用として親しまれてきました。20世紀に入ると、果樹としての品種改良が急速に進み、現在では非常に多様な個性と魅力を持つブルーベリーが世界中で栽培されています。日本でブルーベリー栽培が本格的に始まったのは、比較的最近の1970年代からです。日本では「目に良い」「美容に良い」といった健康食品としてのイメージが強いですが、ブルーベリーは健康効果だけでなく、果物としての美味しさ、生で食べる楽しみ、美しい見た目など、様々な面で私たちの生活を豊かにしてくれる果物です。近年、ブルーベリーが家庭で親しまれるようになった一番の理由は「人工培地養液栽培」が確立されたことだと思います。この栽培方法によって、美味しいブルーベリーが簡単に栽培できるようになったため生産者が増え、毎年6月頃になるとブルーベリー農園での摘み取り体験がテレビで紹介されるようになりました。私の実家(愛知県新城市)では20年ほど前に両親が庭にブルーベリーを植え始めたのですが、当時は珍しがられましたが、今では近所にたくさんの生産者がいて、旬の時期になると地元の道の駅に色々な種類のブルーベリーが並んでいます。ブルーベリーは日本だけでなく世界中で栽培されており、その品種は300~400種類にも及ぶと言われています。長年人気のある品種もありますが、新しい品種もどんどん登場しており、2020年には京都大学、公益財団法人かずさDNA研究所、米国農務省の国際共同研究によって137品種のゲノム解析が行われました。この研究で得られたデータをもとに、品種改良がさらに進むことが期待されています。この図鑑では、豊富な品種の魅力を詳しくご紹介します。
主なブルーベリーの種類と系統
現在栽培されているブルーベリーは、アメリカ北東部から南部フロリダにかけて自生している数種類の野生種をベースに、長い年月をかけて研究と改良を重ねて生み出されたものです。これらの野生種が持つ様々な特徴を掛け合わせることで、今日のような豊かな品種が生まれました。ここでは、栽培種として特に重要な「ノーザンハイブッシュ系」「サザンハイブッシュ系」「ラビットアイ系」「ハイブリッド系」という主な品種系統をご紹介します。それぞれの系統は、耐候性、果実の特徴(大きさ、風味、収穫時期)、栽培の難易度などが異なり、栽培地域や目的に合わせて品種を選ぶ際の重要な基準となります。今回の記事では、観光農園や地元の道の駅、スーパーなどで手に入る人気のブルーベリーを25種類ご紹介します。私個人の意見ですが、大きさ、甘さ、酸味、食感を数値化してみました。ただし、ブルーベリーは同じ木になっている実でも大きさが異なり、完熟具合によって甘味、酸味、風味、食感も変化します。また、甘さと酸味のバランスがとても重要で、ただ甘ければ美味しいというわけではないのがブルーベリーの面白いところです。食感に関しても、パリッとしたもの、柔らかいもの、ジューシーなものなど、人によって好みが大きく分かれるため、あくまで目安として参考にしてください。それでは、系統別に25種類を見ていきましょう!

サザンハイブッシュ系の特徴と代表品種
サザンハイブッシュ系は、ノーザンハイブッシュ系と野生のフロリダ系ブルーベリーなどを交配して作られた品種です。その名前の通り、アメリカ南部のような温暖な気候に適するように改良されており、「Southern Highbush」と呼ばれています。近年、この系統は急速に発展しており、ブルーベリーの原種が暑さに弱いという弱点を克服し、耐暑性を持つ品種が次々と生まれています。この系統の最大のメリットは、比較的温暖な地域でも栽培できること、そしてノーザンハイブッシュ系に匹敵する、あるいはそれ以上の高品質な果実を収穫できることです。また、ノーザンハイブッシュ系よりも休眠打破に必要な低温時間が短いため、暖かい地域での栽培に適しています。サザンハイブッシュ系の登場によって、ペルーの砂漠地帯がブルーベリー畑に変わり、わずか15年ほどで世界トップクラスの生産国になったという事例もあります。果実はノーザンハイブッシュ系と同様に大きく、甘みが強く、食味が良い品種が多いですが、ノーザンハイブッシュ系よりも早く収穫できる早生品種もあります。栽培にはノーザンハイブッシュ系と同様に酸性の土壌が必要ですが、耐暑性が高く、病害虫への抵抗力も強い品種が多いです。この章では、サザンハイブッシュ系の栽培に適した地域、主な品種の特徴、収穫時期、栽培管理の注意点について詳しく解説します。
ユーリカ
原産地はオーストラリアで、収穫時期は6月上旬頃からです。オーストラリアのMBO社によって2010年に発表されました。際立った大粒サイズと、心地よいパリッとした食感が魅力です。一般的なブルーベリーの旬は6月から8月ですが、主要産地である浜松では、ハウス栽培によって1月からユーリカの出荷が始まることもあります。
オニール
アメリカが原産国で、収穫は6月上旬頃から。1987年にノースカロライナ州立大学と米国農務省が共同で開発しました。薄い皮と、なめらかな舌触りが特徴で、豊かな甘みも楽しめます。病害虫への抵抗力が強く、栽培しやすいことから、初心者にもおすすめの品種として親しまれています。
スノーチェイサー
アメリカ生まれの品種で、収穫時期は6月上旬頃からです。2005年にフロリダ大学で開発、発表されました。薄い皮が生み出すパリッとした食感と、少ない酸味によって、濃厚な甘さが際立ちます。果実のサイズは中程度です。
トワイライト
オーストラリアで生まれた品種で、収穫は6月中旬頃から始まります。オーストラリアのMBO社が開発しました。特筆すべきはその大きさで、500円玉ほどの大きさになることもあります。硬めの果肉で、パリッとした食感を堪能できます。日本では、ブルーベリー苗の販売で知られる大関ナーセリーが取り扱っています。
シャープブルー
原産地:アメリカ収穫期:6月中旬頃1975年、フロリダ大学のシャープ博士によって開発された品種です。甘味が際立ち、酸味は穏やか。果肉は柔らかく、口に入れるとジューシーな果汁が広がります。生育が旺盛で栽培しやすく、収穫量も安定しているため、観光農園でも広く栽培されています。
サンシャインブルー
原産地:アメリカ収穫期:6月中旬頃1979年にフロリダ州のエリオット博士が発表した品種です。果実は比較的小ぶりですが、凝縮された甘さが特徴です。一本でも実をつけやすい性質を持ち、暑さや日陰にも強いため、ベランダなどの限られたスペースでの栽培にも適しています。
ミスティー
原産地:アメリカ収穫期:6月下旬頃フロリダ大学で育成され、1990年に発表されました。非常に豊産性で、温暖な気候を好むため、九州南部や沖縄などの地域での栽培に適しています。果肉はやや硬めで、裂果しにくいのが特徴。甘味と酸味のバランスが良く、ブルーベリー本来の風味を楽しめます。
ノーザンハイブッシュ系の特徴と代表品種
ノーザンハイブッシュ系は、ハイブッシュブルーベリーの中でも特に耐寒性に優れた品種群です。アメリカ北部が原産で、「Northern Highbush(北部産のハイブッシュ)」という名前の由来となっています。個人的にも特に好んでおり、甘みの中に程よい酸味が感じられ、ブルーベリーらしい爽やかな風味を満喫できます。ノーザンハイブッシュ系の最大の魅力は、大粒で肉厚、そして豊かな風味を持つ果実です。他の系統と比較して、果実のサイズが大きく、甘みと酸味のバランスが絶妙であるため、生食での評価が非常に高いです。特に大きさ・品質ともに優れた「ビッグセブン」と呼ばれる7品種は、全てこのノーザンハイブッシュ系に属しています。寒さに強い反面、暑さにはやや弱いため、日本の冷涼な気候の地域での栽培に適していますが、pH4.3~5.0程度の強酸性土壌を好みます。そのため、適切な土壌管理が栽培の成功には不可欠です。ノーザンハイブッシュ系には、収穫時期が早いものから遅いものまで様々な品種が存在し、果実の硬さ、香り、病害虫への抵抗性なども品種によって異なります。しかし、温暖化の影響により、栽培できる地域が限られてきており、将来的には東北地方や北海道など一部地域のみでの栽培となる可能性も懸念されています。(※ビッグセブン:コビル、バークレイ、アーリーブルー、ブルークロップ、ハーバート、ブルーレイ、コリンズ)ここでは、ノーザンハイブッシュ系の代表的な品種について、収穫時期、果実の特性、栽培のポイントなどを詳しく解説していきます。
バークレイ
原産地:アメリカ 収穫時期:6月中旬頃 1949年にアメリカで誕生したバークレイは、栽培の容易さと食味の良さから「ブルーベリービッグ7」の一つに数えられています。穏やかな酸味が特徴で、初心者でも育てやすいことから家庭菜園でも安定した人気を誇ります。病害虫への抵抗力も魅力です。
ブルークロップ
原産地:アメリカ 収穫時期:6月中旬頃 1952年に発表されたブルークロップもまた、「ブルーベリービッグ7」の一角を担う品種です。甘みと酸味の調和がとれており、世界中で広く栽培されています。その人気の理由は、寒さや病気への強さ、そして豊富な収穫量にあります。
ブルーレイ
原産地:アメリカ 収穫時期:6月下旬頃 1955年に登場したブルーレイは、ノーザンハイブッシュ系でありながら、暑さに比較的強い性質を持つため、日本各地で栽培されています。その風味は「まるでリンゴのよう」と表現され、独特の味わいが楽しめます。果実の割れが少ない点も評価されています。
デューク
原産地:アメリカ 収穫時期:6月上旬頃 アメリカ農務省とニュージャージー州立農業試験場が共同で開発し、1986年に発表されたデューク。果皮がしっかりしており、日持ちが良いのが特徴です。突出した個性はないものの、味、香り、食感のバランスが良く、総合的に見て非常に美味しいブルーベリーと言えます。
スパルタン
原産地:アメリカ収穫時期:6月上旬頃1977年にアメリカで誕生した、ブルーベリーを代表する品種の一つです。しっかりとした果肉で、パリッとした食感が特徴。甘みと酸味の調和がとれており、さっぱりとした味わいが楽しめます。しかし、栽培が難しく、枯れやすいデリケートな品種としても知られています。
チャンドラー
原産地:アメリカ収穫時期:6月下旬頃1994年に米国農務省によって育成された、非常に大きな果実が特徴のブルーベリーです。果肉は柔らかく、まるで桃のようなジューシーさを感じられます。その大きさは500円玉に匹敵することもあり、観光農園でも人気の品種となっています。
エリザベス
原産地:アメリカ収穫時期:6月下旬頃アメリカのニュージャージー州でブルーベリー園を経営していたW.エリザベス氏によって選抜され、1966年に発表されました。薄い皮と強い香りが特徴で、上品で極上の風味を持つと評されています。
リバティ
原産地:アメリカ収穫時期:7月上旬頃2003年にミシガン州立大学から発表された、比較的若い品種です。収穫後の日持ちが良いことから、世界中で栽培が広がっています。多くの観光農園で取り扱われているため、新鮮で芳醇な味わいをぜひお試しください。
ラビットアイ系の特徴と代表品種
ラビットアイ系ブルーベリーは、アメリカ南東部が原産の野生種を基に選抜と改良を重ねて生まれた系統です。その名前は、未成熟な果実がまるでウサギの目のように可愛らしいピンク色を帯びることに由来すると言われています。この系統の最大の強みは、傑出した耐暑性と乾燥への強さ、そして様々な土壌環境への適応能力です。特に注目すべきは、ラビットアイ系の生育の旺盛さです。力強く上へ上へと成長していく性質を持ちます。そのため、ノーザンハイブッシュ系やサザンハイブッシュ系での栽培が難しい日本の温暖な地域や、乾燥が気になる場所でも比較的容易に育てることが可能です。
ラビットアイ系の果実は、ハイブッシュ系と比較するとやや小ぶりで、果皮は少し厚めですが、際立つ甘さと独特の風味が特徴です。ハイブッシュ系に比べて酸味が穏やかで、色もより濃く、深みのある味わいが楽しめます。十分に熟すと濃い青紫色になり、そのまま食べるのはもちろん、ジャムやジュースなどの加工品としても広く利用されています。果実がまだ若い時期に赤く色づく様子からラビットアイと名付けられたと言われており、その生育の手軽さと、実の色が赤から紫へと変化していく過程を観察する楽しさも魅力です。自家受粉しにくい品種が多いため、安定した収穫を目指すには、異なる品種を2種類以上一緒に植えることが不可欠です。
また、開花時期や収穫時期も品種によって異なり、長い期間にわたって収穫を楽しめるのも特徴の一つです。この項目では、ラビットアイ系の栽培に最適な環境、代表的な品種の特性、相性の良い品種の組み合わせ例、そして剪定を含む栽培管理のポイントについて詳しく解説します。
ティフブルー
原産国:アメリカ収穫時期:8月上旬〜1955年に発表された歴史のある品種でありながら、その人気は今も衰えません。交配親が共に野生種から選抜されたもので、ラビットアイ系の多くの品種がティフブルーを交配親としています。完熟した果実は非常に美味ですが、雨が多いと実が割れやすいという弱点があります。
ホームベル
原産国:アメリカ収穫時期:8月上旬〜米国農務省とジョージア州沿岸平原試験場が共同で育成し、1960年に発表された由緒ある品種です。小ぶりながらも甘みの強い果実が豊富に実り、病害虫への耐性も高いため、家庭菜園にも最適です。
ブライトウェル
原産国:アメリカ収穫時期:7月上旬〜米国農務省とジョージア州沿岸平原試験場が共同で育成し、1981年に発表されました。ラビットアイ系の中でも特に生食に適した品種として知られています。完熟すると酸味がほとんどなく、すっきりとした上品な甘さが際立ちます。
フロリダローズ
原産地はアメリカ。収穫時期は7月中旬頃です。2002年にフロリダ大学から発表されたこの品種は、その名の通り、熟してもローズピンク色を呈する珍しいブルーベリーです。収穫量が多く、甘みと豊かな香りが特徴。見た目の美しさから、観光農園でも人気を集めています。
タイタン
アメリカが原産国で、収穫時期は7月下旬頃。2012年にジョージア大学のネスマイス博士によって発表された、ブルーベリーの中でも特に大きな品種です。文字通り、巨大な果実が豊富に実ります。ラビットアイ系統特有の舌触りの悪さが少ないのも、この品種の魅力です。
デライト
原産国:アメリカ。収穫時期は7月下旬頃です。ジョージア州沿岸平原試験場と米国農務省が共同で育成し、1969年に発表されました。暑さに非常に強く、フルーティーな味わいが特徴的な品種です。「青リンゴのよう」と表現される、さわやかな風味が楽しめます。
ラヒ
ニュージーランド原産で、収穫時期は7月下旬頃。1992年にニュージーランド園芸食品研究所で発表されました。果実の表面を覆う白い粉(ブルーム)が多いのが特徴で、収穫後の保存性に優れています。マオリ語で「大きい」「たくさん」という意味を持つ名前が付けられています。
フクベリー
原産地:アメリカ収穫時期:8月中旬頃フクベリーは、日本ブルーベリー協会の福田俊氏によって育成され、2006年に品種登録申請が行われた品種です。甘みと酸味のバランスが絶妙で、果皮が薄いのが特徴。ハイブッシュ系ブルーベリーに似た風味を持ち、非常に美味しく味わえます。
ハイブリッド系ブルーベリー:多様な特性と代表品種
ハイブリッド系ブルーベリーとは、ノーザンハイブッシュ系、サザンハイブッシュ系、ラビットアイ系といった主要系統に分類されない品種、または複数の系統の特性を組み合わせることで生まれた品種群のことです。特にアメリカにおいて研究が進められており、異なる系統を交配させることで、様々な「ハイブリッド」品種が開発されています。これらの品種は、特定の栽培目的や、既存系統の弱点を補うために開発されることが多く、多様な気候への適応性、病害虫への耐性向上、独特な果実特性(風味、色、サイズなど)を持つことが期待されています。例えば、非常に耐寒性が高く、より北の地域でも栽培可能な品種や、極早生で早期収穫が可能な品種、または従来のブルーベリーとは異なる風味や食感を持つ品種などが存在します。ハイブッシュ系とラビットアイ系の交配、あるいはハイブッシュ系同士の交配によって、独自の特性を持つ品種が生まれており、ハイブリッド系の開発は、ブルーベリー栽培の可能性を広げ、より多くの地域や条件下で高品質なブルーベリーを味わえるようにしています。ここでは、ハイブリッド系ブルーベリーが持つ多様な特性、それぞれの品種が開発された背景、そして特定の栽培環境や消費者のニーズにどのように応えているのかを、代表的な品種を例に挙げながら詳しく見ていきましょう。
ピンクレモネード
原産国:アメリカ収穫時期:6月下旬頃ピンクレモネードは、ノーザンハイブッシュ系とラビットアイ系を交配して育成された品種で、2005年に米国農務省から発表されました。特徴的な美しいピンク色の果実と、レモネードを思わせる爽やかな風味が魅力で、観賞用としても人気を集めています。
レガシー
原産国:アメリカ収穫時期:6月下旬頃レガシーは、1993年に米国農務省とニュージャージー州立農業試験場が共同で発表した品種で、ノーザンハイブッシュ系とサザンハイブッシュ系のハイブリッドです。温暖な地域から寒冷な地域まで、幅広い地域での栽培に適応できるのが特徴です。
筆者おすすめのブルーベリー品種
ブルーベリー狩りに出かけるなら、ぜひ味わっていただきたい品種が3つあります。まず、その風味から「ブルーベリーの王様」とも呼ばれる「スパルタン」。栽培の難しさから、生産者にとっても腕の見せ所となる品種です。次に、「ユーリカ」は、近年急速に人気を集めている大粒で美味な極早生品種。いち早く、みずみずしい風味と心地よい食感を楽しめます。最後に「ホームベル」は、加工することでその魅力が最大限に引き出されます。小粒ながらも濃厚な甘みが凝縮されており、自家製ジャムにしてヨーグルトやパンと合わせると、至福のひとときを味わえます。

キング・オブ・ブルーベリー「スパルタン」
ブルーベリー農園で見かけたら、ぜひお試しいただきたいのが、その美味しさで「ブルーベリーの王様」と称される「スパルタン」です。栽培が難しいことで知られ、ブルーベリー生産者にとっては挑戦しがいのある品種です。1977年にアメリカで発表されて以来、ブルーベリーの代表的な品種として親しまれており、食べ応えのある大粒と、シャキッとした食感が特徴。甘みと酸味の絶妙なバランスが織りなす、さわやかな風味を堪能できますが、繊細で栽培が難しい希少なブルーベリーです。
超早生の大粒品種「ユーリカ」
「ユーリカ」は、ここ数年で市場に広く流通し始めた、大粒で風味豊かな極早生ブルーベリーです。他の品種に先駆けて、新鮮な美味しさと、ぱりっとした食感を満喫できます。オーストラリアのMBO社が2010年にリリースしたこの品種は、その粒の大きさと、心地よい食感が際立っています。ブルーベリーの旬は通常6月から8月ですが、主要産地の浜松では、ハウス栽培により、なんと1月から「ユーリカ」の出荷が開始されます。
加工に最適!小粒で甘い「ホームベル」
3つ目の「ホームベル」は、ジャムにすることでその価値を発揮します。小ぶりながらも、凝縮された甘みが特徴で、手作りジャムをヨーグルトやパンに添えれば、格別な味わいを楽しめます。米国農務省とジョージア州沿岸平原試験場が共同で育成し、1960年に発表された歴史ある品種であり、小さくとも甘い果実が豊かに実り、病害虫にも強いため、家庭菜園にも適しています。
注目を集めるユニークなブルーベリー品種
テレビ番組でブルーベリー農園が紹介される際、特に注目されやすいのが、これから紹介する3つの品種です。「ピンクレモネード」と「フロリダローズ」は、熟しても紫色にならず、可愛らしいピンク色を保つため、SNSでの注目度も抜群です。特にピンクレモネードは、アメリカの園芸コンテストで最高の新品種として表彰された実績も持っています。また、500円玉ほどの大きさに成長する「チャンドラー」は、その圧倒的なサイズ感で来園者を魅了し、特に子供たちに大人気です。
写真映えするピンク色の「ピンクレモネード」と「フロリダローズ」
テレビのブルーベリー農園特集でよく取り上げられるのが、ピンクレモネードとフロリダローズです。これらの品種は、完熟しても紫色にならず、鮮やかなピンク色を呈するため、写真共有サイトなどで非常に人気があります。ピンクレモネードは、ノーザンハイブッシュ系とラビットアイ系を掛け合わせて開発された品種で、2005年に米国農務省から発表されました。アメリカの園芸展示会では、その革新性が認められ、最高の新品種としての栄誉に輝いています。見た目の美しさはもちろん、レモネードを思わせる独特の風味も持ち合わせており、観賞用としても高く評価されています。フロリダローズもまた、2002年にフロリダ大学によって発表された品種であり、収穫量が多く、甘みと香りが強いため、観光農園で広く栽培されています。
驚きの超特大サイズ「チャンドラー」
500円玉に匹敵するほどの大きさを誇るチャンドラーは、その存在感で見る人を驚かせます。1994年に米国農務省によって開発されたこの超大粒品種は、果肉が柔らかく、まるで桃のようなジューシーな味わいが特徴です。その巨大さから、観光農園では子供たちの注目の的となっています。
ブルーベリー農園での体験と品種選びの楽しみ方
ここ10年で全国的に増えたブルーベリー観光農園では、様々な品種の味比べを楽しむことができます。同じ系統の品種でも、風味や食感に微妙な違いがあること、そして同じ木になっているブルーベリーでも、大きさや甘さが異なることに驚かれることでしょう。ブルーベリー観光農園は、一般的に6月中旬頃に開園し、8月下旬頃にシーズンを終えるところが多いですが、実は、それぞれの品種によって旬の時期が異なるため、体験できる品種は時期によって変わります。ぜひシーズン中に何度か訪れて、お好みの品種を見つけてみてください。特におすすめの時期は、ジューシーなノーザンハイブッシュ系が旬を迎える6月下旬から7月上旬頃と、ラビットアイ系が最盛期となる8月初旬頃です。ラビットアイ系は加工にも適しているので、ぜひご家庭でジャムやお菓子作りに活用してみてください。8月のお盆を過ぎるとスズメバチが活発になるため、小さなお子様連れのご家庭は、シーズン शुरुआतीに摘み取り体験を楽しまれることをおすすめします。この夏は、ぜひ新鮮なブルーベリーの美味しさを体験してみてください!
まとめ
本稿では、ブルーベリーの基本情報から、栽培方法の進化、数百種類にも及ぶ品種の多様性、そして主要な4系統であるノーザンハイブッシュ系、サザンハイブッシュ系、ラビットアイ系、ハイブリッド系について詳細に解説しました。これらの系統の起源、特性、栽培への適応性、代表的な25品種の果実の特徴をまとめました。北米原産の野生種がどのように品種改良され、世界中で栽培されるようになったのか、日本でのブルーベリー栽培の歴史、健康効果、生食や観賞用としての魅力にも触れています。各系統の耐候性、土壌への適応力、果実のサイズや風味の違いを把握することは、家庭菜園での栽培や品種選択に役立ちます。おすすめの品種や観光農園での楽しみ方も紹介しています。この情報が、ブルーベリーの世界をより深く理解し、最適な品種選びに貢献できれば幸いです。

ブルーベリーは日本でいつ頃から栽培されていますか?
日本におけるブルーベリーの本格的な栽培は、1970年代以降に始まりました。それ以前は一般にはあまり知られていませんでしたが、健康への関心の高まりとともに、栽培が拡大していきました。
ブルーベリーの主要な栽培系統にはどのようなものがありますか?
主要な栽培系統としては、寒冷地での栽培に適したノーザンハイブッシュ系、温暖な地域向けのサザンハイブッシュ系、暑さや乾燥に強く栽培が比較的容易なラビットアイ系、そしてこれらの系統の優れた特性を組み合わせたハイブリッド系があります。
ブルーベリーはなぜ「目にいい」と言われるのですか?
ブルーベリーにはアントシアニンという成分が豊富に含まれており、この成分が目の網膜にあるロドプシンの再合成を促進する効果があるため、「目に良い」とされています。アントシアニンは、視機能の向上や眼精疲労の緩和に効果があると考えられています。
ブルーベリー栽培で成功するための鍵とは?
ブルーベリーを育てる上で最も大切なことの一つが、土壌の酸度を適切に保つことです。ブルーベリーはpH4.3から5.0程度の酸性度の高い土壌を好むため、日本の多くの土壌では、ピートモスなどを加えて酸性度を調整する必要があります。
ラビットアイ系ブルーベリー栽培における留意点は?
ラビットアイ系ブルーベリーは、品種によっては自家受粉しにくい性質を持つため、確実に実を収穫するためには、異なる品種を2種類以上隣接して植え、互いに受粉を促す「混植」を行うことが不可欠です。
ブルーベリーの品種数はどのくらい?
ブルーベリーは、日本のみならず世界中で品種改良が積極的に行われており、その種類は300~400種類にも及ぶと言われています。現在もなお、新しい品種が次々と開発されています。
ノーザンハイブッシュ系の「ビッグセブン」とは?
「ビッグセブン」とは、ノーザンハイブッシュ系ブルーベリーの中でも、特に果実のサイズや品質が優れているとされる7つの品種をまとめた呼び名です。具体的には、コビル、バークレイ、アーリーブルー、ブルークロップ、ハーバート、ブルーレイ、コリンズなどが含まれます。
ラビットアイ系の品種名の由来
ラビットアイ系ブルーベリーの名前は、まだ熟していない若い実の色が、ウサギの目のようにかわいらしいピンク色であることにちなんで付けられました(異説も存在します)。
ピンク色のブルーベリー「ピンクレモネード」「フロリダローズ」が希少な理由
一般的に、ブルーベリーは成熟すると濃い青紫色に変化しますが、「ピンクレモネード」や「フロリダローズ」といった品種は、完全に熟しても美しいピンク色を保ちます。この珍しい色合いが、観賞用としての価値を高め、SNSなどでの注目を集める理由となっています。
ブルーベリーの「人工培地養液栽培」について
「人工培地養液栽培」とは、土の代わりにピートモスやココヤシなどの人工的な培地を用いて、水と肥料を混ぜた養液を供給して育てる栽培方法です。この方法により、土壌の酸性度管理が容易になり、病気や害虫の発生リスクを抑えられます。結果として、高品質なブルーベリーを効率的に生産することが可能になりました。この栽培技術の確立は、ブルーベリーが家庭菜園でも手軽に楽しめるようになった大きな要因の一つと考えられています。