サクサクとした食感が魅力のビスケット。その種類は豊富で、製法や材料によって様々な味わいが楽しめます。ところで、クッキーとビスケットの違い、あなたは説明できますか?見た目も材料も似ている両者ですが、実は明確な定義があるのです。この記事では、ビスケットの定義から種類、製法、そして気になるクッキーとの違いまでを徹底解説。これを読めば、あなたもビスケット通になれること間違いなし!
ビスケットの基礎知識:定義と様々な呼び名
ビスケットとは、主に小麦粉を使い、小さく成形して焼き上げた、平たくて硬い焼き菓子のことです。水分が少なく、保存性に優れているのが特徴で、無発酵のパンの一種とも言えます。多くの場合、小麦粉に砂糖やバター、牛乳、卵などを加えて、サクサクとした食感のお菓子として楽しまれていますが、甘みを抑えて塩味を効かせた、軽食向けのビスケットも存在します。見た目も材料もよく似ているクッキーとビスケットは、どちらも小麦粉、砂糖、油脂、塩などを主な原料とする、サクサクとした甘い焼き菓子です。これら焼き菓子の起源は古く、保存食として作られたものがルーツと言われています。ビスケットを焼く際には、生地に小さな穴をたくさん開けることが大切です。これは、焼成中にビスケット内部から発生する蒸気を効率的に逃がすための工夫で、この穴がないと、表面が凸凹になってしまうことがあります。
ビスケットとクッキーの歴史と名前の由来
「ビスケット」という名前は、フランス語の「ビスキュイ(biscuit)」からきています。「ビスキュイ」は、「2回」という意味の「bis」と、「焼く」という動詞「cuire」の過去分詞「cuit」が組み合わさった言葉で、「二度焼き」という意味になります。さらに遡ると、古代ローマの軍隊や船乗りが携帯した保存食「パーニス・ビスコクトゥス(panis biscoctus)」、つまり「二度焼かれたパン」が語源だとされています。もともとビスケットは、長期保存ができるように工夫された食品だったのです。イギリスのジョンソン博士による英語辞典(初版)には、「遠洋航海のために、(保存性を高めるために)四度焼く」という説も記載されています。現代のフランスでも、「ビスキュイ」は焼き菓子と堅焼きパンの両方を指すことがあるほど、広い意味を持つ言葉です。一方、「クッキー」という言葉は、17世紀にオランダ人がアメリカのニューアムステルダム(現在のニューヨーク)に持ち込んだ、オランダ語の「koekje(小さなケーキ)」が由来です。これがアメリカで広まり、家庭ではクッキーを保存する「クッキージャー」が使われるほど、おやつの定番となりました。アメリカでは、チョコチップクッキーやカウボーイクッキーなど、様々な種類のクッキーが生まれ、世界中で愛されるお菓子となっています。
国や地域によるビスケットとクッキーの定義の違い
「クッキー」や「ビスケット」という言葉の使い方は、国や地域によって大きく異なります。英語圏では、日本でいうクッキーとビスケットの区別があまり明確ではありません。イギリスでは、両方を「ビスケット」と呼び、アメリカでは「クッキー」と呼ぶのが一般的です。ただし、イギリスでも最近では、チョコチップが入ったしっとりとしたタイプのものを「クッキー」として区別する傾向が見られます。また、フランスでは一般的に「ビスキュイ」、ドイツでは「ビスキュイート」と呼ばれます。
アメリカのビスケット:日本のスコーンとの共通点
アメリカで「ビスケット」と言うと、日本のビスケットとは全く異なるものを指します。それは、ベーキングパウダーや重曹を加えてオーブンで焼き上げた、ふっくらとしたパンのようなものです。外側はサクサク、内側はふんわりとした食感が特徴です。これは、イギリスのスコーンとほぼ同じものとされていますが、スコーンがバターを使うのに対し、アメリカのビスケットは植物油を使うことが多いという違いがあります。アメリカのビスケットは朝食として食べられるほか、料理の付け合わせやデザートとしても用いられます。例えば、グレービーソースをかけたり、焼いた肉や卵を挟んでサンドイッチのようにして食べることもあります。また、フライドチキンとの相性も抜群です。ストロベリーショートケーキの「ショート」は、「サクサクしている」「もろい」という意味で、本来はこのビスケットを土台に使ったものを指します。日本では、ケンタッキーフライドチキンがハニーメイプルシロップと一緒に、A&Wが蜂蜜と一緒に、アメリカ式のビスケットを販売しており、独特の風味を楽しむことができます(A&Wは横田基地内限定)。
日本におけるビスケットの定義とクッキーとの違い
日本では、クッキーはビスケットの一種とみなされています。つまり、クッキーはビスケットという大きなカテゴリーの中に含まれる一つの種類です。この区分は、1971年に定められた「ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」によって明確化されました。日本ビスケット協会が策定したこの規約では、ビスケットを「小麦粉、砂糖、油脂などを混ぜて、成形して焼き上げたもの」と定義しています。その上で、ビスケットの中でも特に以下の2つの条件を満たすものが「クッキー」として販売できると定められています。1つ目は、原材料である小麦粉に対して、糖分と脂肪分の合計が40%以上含まれていること。2つ目は、手作り風の外観を持ち、手作り感のある形であること。当時、日本ではクッキーがビスケットよりも高級なものとして認識されていたため、消費者の誤解を防ぐために、このような明確な基準が設けられました。ただし、この規約は日本ビスケット協会に加盟している企業のみに適用される自主的なルールであり、法的な拘束力はありません。また、お菓子メーカーによっては、クッキーを「ソフトビスケット」として販売する一方で、一般的なビスケットを「ハードビスケット」として区別することもあります。
ビスケットとクッキーのカロリー比較と健康的な選び方
お菓子を選ぶ際に気になるのは、やはりカロリーです。クッキーとビスケットでは、材料の違いからカロリーにも差が出てきます。一般的に、日本の公正競争規約で定義されているクッキー(ソフトビスケットに分類されることが多い)は、定義基準に「糖分と脂肪分の合計が小麦粉の重量の40%以上」と定められているように、砂糖や脂肪分を多く含んでいる傾向があります。そのため、クッキーは一般的なビスケット(ハードビスケット)よりもカロリーが高くなることが多いです。カロリー摂取を控えたい場合は、比較的糖分や脂肪分が少ないハードビスケットを選ぶと良いでしょう。しかし、どちらも小麦粉を主な材料とした焼き菓子であるため、一般的にはカロリーが高い食品であることに変わりはありません。ですから、健康に気を遣う人は、クッキーやビスケットの摂取量を調整して、適切なカロリーコントロールを心がけることが大切です。
日本におけるビスケットの歴史と文化への浸透
日本にビスケットが伝わったのは、戦国時代の1543年、ポルトガル人によって「ビスカウト」という名前で伝えられたのが最初だと言われています。鉄砲が伝来した際に、日本人にも振る舞われ、好評を博したとされています。日本で本格的にビスケットの製造が始まったのは、江戸時代の終わりから明治時代にかけてです。日本で初めてビスケットに関する詳しい記述が登場するのは、1855年、水戸藩で開業していた柴田方庵という医師によるものです。彼は長崎のオランダ人からビスケットの製法を学び、その製法書を藩に送ったと記録されています。これが日本国内における製造技術確立の基礎となりました。明治時代に入ると、政府の政策に合わせて、「乾蒸餅(かんじょうもち)」という日本語訳語が作られました。しかし、第二回内国勧業博覧会で最高位の「進歩二等賞」を受賞した米津常次郎は、「舶来の大きな機械を使って苦労して作り上げたビスケットに乾蒸餅などという名前をつけた役人どもの非常識さに呆れ返った。せっかく最高の賞を得たが、これでは宣伝する気にもなれない」と不満を漏らしたという話が残っており、当時の製造業者には不評だったようです。日本で初めてビスケットが発売されたのは1875年です。文学作品にもビスケットは登場し、夏目漱石は『倫敦消息』の中で「向こうの連中は雑誌を読みながら『ビスケット』か何かをかじっている」と、当時のイギリスでビスケットが日常的に親しまれていた様子を記述しています。また、日本陸軍の保存食として知られる「乾パン」も、当初は「重焼麺麭(じゅうしょうめんぼう)」と呼ばれており、これは「二度焼いたパン」という意味で、ビスケットの語源である「二度焼かれたもの」に通じる歴史的な背景を持っています。
ビスケットの世界市場と日本の市場動向
ビスケットの世界市場は、着実に成長を続けています。2024年現在、その規模は約1086億ドルに達しており、今後も年率5.7%のペースで成長していくと予測されています。この成長により、市場規模は2025年には1138億ドル、そして2032年には1677億ドルにまで拡大すると見込まれており、世界中でビスケットに対する需要が高いことを示しています。日本国内の市場も活況を呈しており、2022年の国内小売金額は3980億円と前年比1.1%増を記録しました。さらに、2023年には4000億円を突破したと予測されており、日本市場においてもビスケットが安定した人気を誇っていることがわかります。市場には様々な種類のビスケットが流通しており、子供向けに文字や動物の形をしたものなど、ターゲット層に合わせた工夫が凝らされた製品も多く製造・販売されています。
ビスケットやクッキーに類似した多様な焼き菓子
クッキーやビスケットとよく似ていますが、それぞれ独自の特性や歴史を持つ魅力的な焼き菓子は少なくありません。ここでは、代表的なサブレ、クラッカー、ガレット、スコーンに焦点を当て、その特徴を詳しくご紹介します。
サブレ
サブレは、フランスを起源とする伝統的な焼き菓子です。豊かなバターの香りが際立ち、一般的にクッキーやビスケットよりもバターやショートニングの使用割合が高いため、軽やかで、口の中でほろほろと崩れるような独特の食感が楽しめます。その名前はフランス語の「sable(砂)」に由来するとされ、その理由は、サブレ特有のザラザラとした細かい食感が砂を連想させるためと言われています。しかし、名前の由来には様々な説が存在し、フランスの地名「サブレ=シュル=サルト」にちなんだという説や、17世紀に活躍したサブレ侯爵夫人が考案したという説もあり、その歴史に奥深さを加えています。
クラッカー
クラッカーは、ビスケットと同様に小麦粉、砂糖、食用油脂、食塩などの材料を使い、薄く焼き上げたビスケットの一種です。甘さは控えめで、あっさりとした味わいが特徴であり、軽い塩味がアクセントになっています。クラッカーという名前は、焼き上げる際に独特の音がすることから名付けられたと言われています。その軽い食感とサクサクとした口当たりは、世界中でスナックや軽食として広く愛されています。また、ワインやビールなどのお酒との相性も抜群で、チーズやディップ、パテなどと一緒に楽しむスタイルも人気があります。広い意味ではビスケットの一種として分類されることもあります。
ガレット
ガレットは、フランス語で「円くて平たいもの」を意味する言葉であり、その名の通り様々な「丸くて平たい」料理や菓子を指します。特に、日本で焼き菓子として知られている「ガレット」は、厚みのある「ガレット・ブルトンヌ」を指すことが多いです。ガレット・ブルトンヌは、フランスのブルターニュ地方の伝統的な焼き菓子として知られており、たっぷりのバターと塩を使用し、独特の香ばしい風味と、食べ応えのあるざっくりとした食感が特徴です。クッキーやサブレと似ていますが、その厚みと風味の強さが際立っています。また、甘い焼き菓子の他に、そば粉をクレープのように薄く焼いたものも「ガレット」と呼ばれ、ハムやチーズ、卵などの具材をトッピングして食べる食事としてのガレットも存在します。
スコーン
スコーンは、英国発祥の伝統的な焼き菓子で、特にスコットランドがそのルーツとされています。主な材料は、小麦粉、砂糖、バター、そして膨張剤であるベーキングパウダーです。これらの材料を混ぜ合わせ、オーブンで焼き上げることで、外側はサクサク、内側はしっとりとした独特の食感が生まれます。日本でも、朝食やティータイムのお供として親しまれていますが、実はイギリスとアメリカでそのスタイルに違いが見られます。イギリス風のスコーンは、丸い形をしており、甘さは控えめなのが特徴です。一般的には、ジャムやクロテッドクリームを添えて味わいます。一方、アメリカ風のスコーンは、三角形の形状が多く、バターの代わりに植物油を使用することが一般的です。また、チョコレート、ベリー、ナッツなど、甘い材料を生地に混ぜ込むことが多いため、そのままでも十分に甘く、満足感があります。
広義のビスケット
ビスケットという言葉は、一般的なクラッカーだけでなく、ラスクや乾パンなども含む広い意味で使用されることがあります。ラスクは、パンを乾燥させて二度焼きしたもので、乾パンは長期保存を目的とした硬いパンです。これらは、ビスケットが持つ「二度焼きした保存食」という本来の特徴を受け継いでいると言えるでしょう。
ビスケットの記念日「ビスケットの日」
日本では、ビスケットの普及と文化を祝う日として、毎年2月28日が「ビスケットの日」と定められています。この日には、二つの重要な由来があります。一つは、江戸時代末期の1855年2月28日に、水戸藩の医師であった柴田方庵が、オランダ人から学んだビスケットの製法書を藩に提出したという歴史的な出来事に由来します。この出来事が、日本におけるビスケット製造技術の基礎を築いたと考えられています。もう一つは、ビスケットの語源であるフランス語の「ビスキュイ(二度焼いた)」を「2(に)度8(や)かれた」と解釈した語呂合わせです。ビスケットの歴史と名称の面白さを伝える記念日となっています。
まとめ
クッキーとビスケットは、小麦粉、砂糖、油脂を主な原料とする甘い焼き菓子であり、共通点が多くありますが、国や地域による違いや、日本の公正競争規約による自主的なルールによって、定義や呼び方が異なります。特に日本では、糖分と脂肪分の合計が小麦粉の重量の40%以上であるものが「クッキー」として区別され、カロリーにも差が見られることがあります。ビスケットは、古代の保存食である「二度焼いた」パンがルーツであり、クッキーは、17世紀のアメリカでオランダ語の「小さなケーキ」に由来しています。それぞれの菓子が日本に伝わってから独自の発展を遂げ、豊かな文化的な歴史を築いてきました。さらに、サブレ、クラッカー、ガレット、スコーンなど、見た目や材料が似ていても、風味、食感、歴史、食べ方においてそれぞれ異なる個性を持つ焼き菓子が存在することも、菓子の世界の魅力を深めています。世界中で愛され、子供から大人まで楽しめるビスケットやクッキー、そしてそれらに連なる焼き菓子を味わう際には、その背景にある歴史や文化に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
質問:ビスケットとクッキーの一番の違いは何でしょう?
回答:日本では、ビスケット協会が定めるルールがあり、クッキーはビスケットの仲間とされています。クッキーと呼べるのは、小麦粉の重さに対して、砂糖や油などの合計が40%以上であること、そして見た目が手作りっぽいことです。海外では、イギリスでは両方ともビスケット、アメリカでは両方ともクッキーと呼ぶことが多いです。
質問:ビスケットによくある穴は何のためにあるのですか?
回答:硬めのビスケットを焼くとき、小さな穴をたくさん開けるのは、焼いている間にビスケットの中から出てくる空気をスムーズに逃がすためです。こうすることで、ビスケットの表面が凸凹になったり、必要以上に膨らんだりするのを防ぎます。
質問:アメリカのビスケットは日本のものとどう違うのですか?
回答:アメリカで「ビスケット」と言えば、日本のものとは全く違い、ベーキングパウダーなどで膨らませた、外側がサクサク、中がふっくらとしたパンのようなものです。これはイギリスのスコーンに似ていて、グレイビーソースをかけたり、お肉や卵を挟んだり、イチゴショートケーキのベースに使われたりします。日本ではビスケットと言うと、甘いお菓子を指すのが一般的です。