「幻の黒いちじく」と呼ばれる、ビオレソリエスをご存知ですか?フランス生まれのこの品種は、かつて栽培の難しさから市場に出回ることが少なく、その希少性から一部の愛好家だけが知る特別な存在でした。濃厚で上品な甘さは、まさに「黒いダイヤ」と呼ぶにふさわしい奥深い味わい。近年、少しずつその姿を見かける機会も増えましたが、その品質と風味は今もなお人々を魅了し続けています。今回は、知る人ぞ知る幻の黒いちじく、ビオレソリエスの魅力に迫ります。
ビオレソリエスとは?「幻の黒いちじく」の概要と歴史
ビオレソリエスは、フランスで古くから愛されるイチジクの高級品種で、フランス語では「ヴィオレット・ドゥ・ソリエ」と発音します。地域によって呼び名が異なり、フランスでは「ブルジャネット・ノワール」や「パリジェンヌ」、イタリアでは「ブロジット・ネッロ」として知られています。「ブルジャネット」の名前は、イチジク栽培が盛んなスペインの地中海沿岸の町に由来すると言われています。日本では、イチジク育種家の桝井治氏がフランスから導入しました。10年ほど前までは栽培が難しく、収穫量も限られていたため、「幻の黒いちじく」や「黒いダイヤ」と呼ばれ、希少価値の高い品種でした。近年では、直売所や専門店で見かける機会が増え、一般にも知られるようになってきましたが、その品質と濃厚な味わいは今も変わりません。
ビオレソリエスの際立つ特徴:形、色、味、食感、耐寒性
ビオレソリエスの果実は、一般的なイチジクよりもやや小ぶりで、50gから80g程度の大きさです。扁平な形が特徴的で、濃い黒紫色の表皮に白い果粉が覆われています。「黒イチジク」の名にふさわしい外観です。秋に収穫される品種で、完熟しても口が裂けにくいのが特徴です。ビオレソリエスの魅力は、その外観だけでなく、果肉の驚くべき糖度とねっとりとした食感にあります。果肉は鮮やかな赤色で、まるでイチゴジャムのように濃厚な甘さと舌触りです。南フランスのプロヴァンス地方では夏の味覚として親しまれており、一口食べればその豊かな風味に魅了されます。また、耐寒性にも優れており、-14.9℃から-12.2℃以南の地域、具体的には北海道南部や東北、関東の山間部などでも栽培が可能です。
ビオレソリエスの主な産地と旬:希少性から普及へ
ビオレソリエスは、フランス原産の品種で、特に南フランスのプロヴァンス地方、Provence-Alpes-Cote d’Azur(プロヴァンス・コート・ダジュール)のVar(ヴァール県)にあるSolliès-Pont(ソリエス・ポン)周辺で栽培されています。この地域で収穫されたものは、AOPの認定を受け、「Figue de Solliès AOP(ソリエス産イチジク)」として厳格に管理されています。ヴァール県は、温暖な気候と少ない降雨量に恵まれ、フランス全体のイチジク生産量の75%を占めるほど栽培が盛んです。
日本国内では、まだ栽培農家は限られています。佐賀県や石川県宝達志水町などで栽培されており、各地でブランド化の動きが見られます。石川県宝達志水町では、2020年からビオレソリエスを「黒蜜姫」というブランド名で販売しており、2023年時点で11軒の農家が生産に取り組んでいます。年間生産量はまだ少ないものの、地域ブランドとしての確立を目指し、ロールケーキなどの加工品開発も行われています。ビオレソリエスの収穫時期は、9月中旬頃から10月末頃までで、最も美味しい旬の時期は9月下旬から10月中旬です。
まとめ
ビオレソリエスは、フランス原産の「幻の黒いちじく」として知られる高級品種です。秋の旬の時期には、ぜひ一度この特別なイチジクを味わってみてください。
なぜビオレソリエスは「幻の黒いちじく」と呼ばれるのでしょうか?
ビオレソリエスが「幻の黒いちじく」と称されるのは、かつて国内での栽培者が極めて少なく、栽培の難易度が高く収穫量が限られていたため、市場に出回ることが稀だったからです。その希少性から、「黒いダイヤ」とも呼ばれ、珍重されてきました。
ビオレソリエスの味や食感にはどのような特徴がありますか?
ビオレソリエスの一番の特徴は、際立った糖度の高さとなめらかな食感です。果肉は深みのある赤色で、口に含むと吸い付くような独特の舌触りがあります。その濃厚な甘さは、まるで高級なイチゴジャムを凝縮したかのようで、ベリーやチェリーを思わせる香りが楽しめます。最高品質のイチジクと評されるにふさわしい味わいです。
ビオレソリエスの収穫時期と最も美味しい旬な時期はいつですか?
ビオレソリエスは秋果専用の品種であり、収穫は主に9月中旬頃から始まり、10月末頃まで行われます。特に、最も美味しく市場に出回る旬の時期は、9月下旬から10月中旬にかけてとされ、この時期に収穫されたものは、格別な風味と甘さを楽しむことができます。
ビオレソリエス栽培で気をつけるべきことは?
ビオレソリエスは結実が難しいことで知られています。そのため、ブドウ栽培で用いられる垣根仕立てや、交差仕立てなどの工夫が求められます。また、イチジクは乾燥に強いイメージがありますが、生育には十分な水分が必要です。特に発芽時期や乾燥しやすい夏季は、こまめな水やりを心がけましょう。加えて、水はけの良い土壌も、健康な育成には不可欠です。