カルシウムとは?:成長期から大人まで知っておきたい栄養素の役割
「丈夫な骨をつくる栄養素」として知られるカルシウム。成長期のお子さまにとっては、健やかな体づくりを支える大切な成分です。しかし、その重要性は子どもに限りません。大人にとっても、骨の健康を保ち、神経や筋肉の働きに関わるなど、体を支えるために欠かせない役割を担っています。この記事では、カルシウムが体の中でどのように働いているのか、年齢に応じた摂取の目安や食生活での工夫について、わかりやすく解説します。

子どもの健やかな成長を支えるカルシウムの役割


成長期のお子さまにとって、カルシウムは骨格の形成を支える大切な栄養素です。骨や歯の大部分はカルシウムから成り立っており、特に成長期は骨の発達が盛んなため、日常的に意識して摂りたい栄養素のひとつです。
ただし、カルシウムの役割は骨や歯だけにとどまりません。体内のごく一部のカルシウムは、血液の凝固、心臓や筋肉の収縮、神経伝達、ホルモン分泌などにも関わっています。こうした働きからも、カルシウムは成長期の子どもに限らず、幅広い年代にとって欠かせない存在といえるでしょう。

カルシウムと体内バランス

カルシウムは体内に蓄えられ、必要に応じて血液中に供給される仕組みがあります。日常的に不足すると、骨からの供給が増え、骨の健やかさに影響する可能性があります。
また、カルシウムの吸収は他の栄養素とのバランスによって左右されます。たとえば、リンを多く含む加工食品をとりすぎると、カルシウムの吸収が妨げられる場合があります。一方で、カルシウムを過剰にとりすぎると、鉄などほかのミネラルの吸収に影響することもあるといわれています。
そのため、特定の栄養素やサプリメントに偏るのではなく、日々の食事からバランスよくさまざまな食品を取り入れることが、カルシウムを含む栄養素を効率的に活用するための基本といえるでしょう。

日本人のカルシウム不足の現状と背景

カルシウムは日々の健康維持に欠かせない栄養素ですが、日本人は多くの年代で必要量を満たせていないといわれています。厚生労働省「令和4年国民健康・栄養調査」によると、20歳以上のカルシウム摂取量の平均は男性約507mg、女性約495mgであり、いずれも推奨量を下回っています。 (出典: 令和4年国民健康・栄養調査(厚生労働省), URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42694.html, 2024-08-28)
この背景には、環境と食生活の両面が関係しています。日本の土壌は火山灰地が多く、カルシウムを含むミネラルが少ない傾向があります。そのため、水や野菜に含まれるカルシウム量も比較的少ないとされています。また、牛乳やチーズなど乳製品の摂取量が欧米に比べ少ないことも一因です。
特に、骨の発達が盛んな思春期(男子13~16歳、女子11~14歳)に十分なカルシウムをとることが望ましいとされていますが、高校生以降は学校給食がなくなることもあり、摂取量が減少する傾向が見られます。家庭での食生活においてカルシウムを意識することが、将来に向けた骨の健康づくりにもつながります。

効率的なカルシウム摂取と食品の選び方

カルシウムは体内に吸収されにくい栄養素であり、食品によって吸収率は異なります。一般に、摂取したカルシウムの2~3割程度しか吸収されないとされており、食品ごとの特徴を意識することが大切です。
乳製品はカルシウムの含有量が多く、比較的吸収率も高い食品群です。例えば、牛乳200mlには約220mgのカルシウムが含まれ、日常的に取り入れやすい食品といえます。
乳製品以外では、骨ごと食べられる小魚(しらす干しや桜えび)、豆腐や納豆などの大豆製品、小松菜やモロヘイヤなどの野菜、ひじきやわかめといった海藻も良いカルシウム源です。乳製品が苦手な方や制限のある方は、これらを意識して組み合わせるとよいでしょう。
また、カルシウムはビタミンDと一緒に摂ることで効率よく利用されやすいとされています。多様な食品をバランスよく取り入れることで、無理なく継続的にカルシウムを確保することができます。

ビタミンDとビタミンKの働き、日光浴と運動の大切さ

カルシウムを食事からとるだけではなく、体内でしっかりと吸収・活用できるようにするためには、ビタミン類や生活習慣も大切です。

ビタミンD

カルシウムは腸からの吸収があまり効率的ではありませんが、その吸収を助けるのがビタミンDです。ビタミンDは、カルシウムを腸から血液中へ取り込みやすくする役割を持っています。さらに、血液に取り込まれたカルシウムが骨に使われる過程にも関与しています。 ビタミンDを多く含む食品には、イワシ・サンマ・サケといった魚類や、キクラゲ・シイタケなどのきのこ類があります。カルシウムを含む食品と組み合わせることで、より効率的に活用されやすくなります。

ビタミンK

ビタミンKは、カルシウムが骨の材料として利用される際に関わる栄養素です。納豆やほうれん草、ブロッコリーなどに含まれており、日々の食事に取り入れたい食品です。

日光浴と運動

ビタミンDは食品だけでなく、太陽光(紫外線)を浴びることで体内でもつくられます。そのため、適度な日光浴はビタミンDを補ううえで大切な要素です。
また、屋外での軽い運動は骨に刺激を与えると同時に、日光を浴びる機会にもなります。子どもから大人まで、日常的に体を動かすことは、カルシウムの活用をサポートする習慣として役立ちます。
このように、カルシウムを効率よく利用するためには、食事(カルシウム+ビタミンD+ビタミンK)と生活習慣(日光浴+運動)を組み合わせることが大切です。日常のちょっとした工夫で、骨や体の健やかさを支えることができます。

成長期に合わせたカルシウムの一日推奨摂取量

カルシウムの必要量は、年齢や成長の段階によって異なります。健康な成人では、日々の健康維持のために600〜800mg程度が推奨されています。
一方で、成長期のお子さまは骨の発達が盛んなため、大人よりも多くのカルシウムを必要とします。年齢に応じて差はありますが、目安として700〜1000mg程度が推奨されています。この時期にしっかりとカルシウムをとることは、骨量の蓄積に役立ち、将来に向けて大切な基盤となります。
カルシウムをとる方法としては、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、丸ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、小松菜やモロヘイヤといった野菜類、ひじきやわかめなどの海藻類があります。特定の食品に偏らず、いろいろな食品を組み合わせて取り入れることが、必要量を満たすためのポイントです。

まとめ

カルシウムは骨や歯だけでなく、筋肉や神経の働きなど体の機能に欠かせない栄養素です。特に成長期は骨量が増える大切な時期であり、日々の食事から意識的に摂ることが重要です。不足しやすい栄養素でもあるため、乳製品や小魚、大豆製品、野菜、海藻などをバランスよく取り入れましょう。さらに、ビタミンDやK、日光浴や運動もあわせて意識すると、より効率的に活用できます。年齢に応じた目安を参考にしながら、日常生活で無理なく続けられる工夫を取り入れ、健やかな体づくりにつなげていきましょう。

カルシウムは骨以外にどんな役割がありますか?

体内のカルシウムの約99%は骨や歯に存在しますが、残りの約1%は血液の凝固、心臓や筋肉の収縮、神経伝達、ホルモンの分泌など、生命を維持するための働きに関わっています。骨や歯をつくるだけでなく、全身のさまざまな機能を支える役割を持つことが特徴です。

なぜ日本人はカルシウムが不足しがちなのですか?

カルシウム不足の背景には、環境と食習慣の2つの要因があると考えられています。日本は火山灰地が多く、土壌に含まれるミネラルが少ないため、水や野菜のカルシウム量が欧米に比べて低い傾向があります。加えて、乳製品の摂取量が欧米ほど多くないことも、摂取不足の一因とされています。

摂取したカルシウムが十分に吸収されないのはなぜでしょう?

カルシウムは吸収されにくい性質を持つミネラルです。食事から摂取した量のうち、実際に吸収されるのは2~3割程度とされており、残りは体外に排出されます。そのため、カルシウムを多く含む食品に加え、吸収率の高い乳製品や、吸収を助ける栄養素(ビタミンDなど)を一緒にとる工夫が大切です。

カルシウムの吸収を良くするために気を付けることは?

カルシウムの利用を高めるには、ビタミンDやビタミンKの摂取、日光浴、適度な運動がポイントです。ビタミンDは腸での吸収を助け、ビタミンKは骨への利用をサポートします。ビタミンDは魚やきのこ類に多く含まれるほか、日光を浴びることで体内でもつくられます。屋外での活動や運動は、骨への刺激とビタミンDの生成の両面から役立ちます。

成長期の子どもが一日に必要なカルシウム摂取量は?

成長期の子どもは、年齢や性別によって差はありますが、1日あたり700〜1000mgが目安とされています。これは大人の目安量(600〜800mg)より多めです。骨の発達が盛んな時期であるため、牛乳や乳製品、小魚、大豆製品、野菜や海藻など、さまざまな食品を組み合わせてバランスよくとることが大切です。


カルシウム