麦茶歴史

麦茶の主な原料である大麦と人類のかかわりは非常に長く、約1万3千年前にはイランやイラク、さらにはチグリス・ユーフラテス川やインダス川流域といった古代文明の中心地で栽培されていたことが分かっています。日本へは縄文時代末期、約2500年前に伝わり、栽培植物として広く受け入れられました。その後、大麦は全国的に広がり、日本の食文化に深く根付いていきました。

麦茶の歴史を辿ると、古代からの人々の暮らしや文化が浮かび上がります。平安時代から現代に至るまでの長い時間の中で、日本人の生活の一部として根付いてきた麦茶。その背景には、大麦という原料が古代文明の中心地から伝わり、縄文時代末期には日本の地に到達したという壮大な歴史があります。麦茶の一杯に込められた歴史を味わうことで、飲み物を超えた豊かな文化を感じられるのではないでしょうか。

よくある質問

麦茶は日本発祥ですか？

麦茶は日本発祥ではありませんが、日本には古くから大麦が伝わり、その加工品として麦茶が独自の形で発達してきました。大麦自体は約1万3千年前に中東の古代文明地域で栽培されていたことが知られており、日本には縄文時代末期のおよそ2500年前に伝来し、広く栽培されました。日本で「麦茶」の原形とされるのは、大麦を炒ったものを湯や水に浸して飲む習慣で、平安時代の文献には「米麦を乾かし炒って粉にし、湯水に点じて飲む」との記述があります。この時代の貴族たちの間で「麦湯」として楽しまれていたことがわかっています。

その後、江戸時代になると麦茶は庶民の間で広まり、夏場には「麦湯」と称され、夜店で売られるなど日常的な飲み物として定着しました。この時代、煎茶はまだ高価であったため、安価で手軽な麦茶が広く支持され、若い女性が給仕した「麦湯店」も繁盛していたことが記録されています。冷たい麦茶として飲まれるようになったのは、冷蔵庫が普及した昭和時代以降のことで、日本の夏の飲み物として現在の形が定着しました。

世界的に見ると、麦茶は日本のみに起源を持つ飲み物ではなく、イタリアでは「カッフェ・ドルゾ」として、韓国でも麦茶を飲む習慣が存在していますが、これらは日本の影響や地元の独自文化によるものです。特に韓国では日本統治時代に麦茶が広まりました。

麦茶は大麦の歴史的な原産地は日本ではなく日本発祥ではありませんが、日本には2500年以上前から大麦が伝来し、麦茶（麦湯）として独特の飲み方と文化を育んできたというのが事実です。麦茶は平安時代の貴族から江戸時代の庶民まで日本の歴史とともに発展してきた、日本の生活文化に深く根ざした飲み物といえます。