青りんごの代表格、王林。その名の通り、「りんごの王様」と称されるほどの魅力を持つ品種です。黄緑色の果皮に浮かぶ茶色い点は、太陽を浴びて育った証。一口食べれば、爽やかな香りと、青りんごとは思えないほどの強い甘みが口いっぱいに広がります。酸味が苦手な方にもおすすめできる、王林ならではの特別な味わいを深掘りしていきましょう。
王林とは? さわやかな青リンゴの魅力
王林(おうりん、Orin)は、甘さと香りが際立つ、日本生まれの青リンゴです。ゴールデンデリシャスと印度という品種を掛け合わせ、1930年代に福島県で誕生しました。その美味しさから「りんごの王様」と名付けられ、1952年にその名が広く知られるようになりました。黄緑色の果皮に現れる独特の斑点が特徴で、一般的な青リンゴに比べて酸味が穏やかで、濃厚な甘さが際立っています。旬は10月下旬から11月上旬で、貯蔵性にも優れているため、長く美味しさを楽しめます。
王林の特徴:見た目、味わい、栄養価
王林の果実は、丸みを帯びた円錐形をしており、一つあたり約300gの重さがあります。果皮は鮮やかな黄緑色で、熟すにつれて黄色みを帯びてきます。太陽の光を浴びた部分は、ほんのりと赤みを帯びることもあります。表面には、褐色の斑点(コルク状の跡)が多く見られ、ひび割れたような模様が出やすいのが特徴です。この模様が多いほど甘いとも言われています。果肉は、シャキシャキとした食感で、果汁をたっぷりと含んでいます。また、切った後の変色が少ないのも魅力です。芳醇な香りを持ち、糖度は14〜15度、酸味は約0.2%と、甘みが際立つ味わいです。さらに、王林はリンゴに含まれるアミノ酸の一種であるアスパラギン酸を豊富に含んでいます(約40mg/100g)。
王林の生産:国内の栽培状況と海外での広がり
王林は、日本で親しまれている青リンゴの代表的な品種です。2023年の日本における王林の収穫量は、ふじ、つがるに次いで3位(44,600トン)で、日本のリンゴ生産量全体(603,800トン)の約7.4%を占めています。特に青森県での生産が盛んで(38,000トン)、その他、長野県、福島県、岩手県、山形県などでも栽培されています。着色管理の手間が少ないため、省力化できる品種として生産者からも支持されています。近年では、韓国や中国など海外でも栽培されるようになり、その美味しさが世界に広がりつつあります。2015年の世界のリンゴ生産量(中国を除く)において、王林は18位、0.49%を占めています。
王林の歴史:品種改良の道のりと普及の物語
王林は、1931年頃からリンゴの品種改良に取り組んでいた福島県の大槻只之助氏によって生み出されました。ゴールデンデリシャスを母親、印度を父親として交配を行い、その中から選抜されたものが、1943年に初めて実を結びました。当初は「そばかす美人」や「ナシリンゴ」などと呼ばれていましたが、1952年、当時の伊達農協の組合長であった大森常重氏が、「りんごの中の王様」という意味を込めて王林と命名し、市場に出荷されるようになりました。表面の斑点が目立つことが課題とされ、品種登録は見送られました。しかし、1961年に福島県桑折町の生産者たちが「王林会」を設立し、その普及に尽力しました。袋をかけずに栽培できるため、手間を省ける王林は、生産量を着実に増やしていきました。1987年からは、リンゴの作柄統計調査で独立した項目として扱われるようになり、当初はふじ、デリシャス、つがるに次ぐ4位でしたが、デリシャス系の減少に伴い、2022年時点では3位となっています。
王林の選び方と保存方法
おいしい王林を見分けるには、まず色をチェックしましょう。明るい黄緑色で、ムラなく色づいているものがおすすめです。表面に「さび」と呼ばれる茶色い斑点があるものは、甘みが凝縮されている証拠です。手に取ったときに、重みを感じるものを選ぶのもポイントです。保存する際は、乾燥しないように新聞紙などで包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。こうすることで、鮮度を長く保てます。
王林の食べ方:生食から加工まで
王林は、その豊かな甘さと芳醇な香りをダイレクトに味わえる生食が一番です。皮ごと食べれば、シャキシャキとした食感と独特の風味を存分に楽しめます。サラダに加えて食感のアクセントにしたり、ヨーグルトやシリアルにトッピングするのも良いでしょう。加熱するとデリケートな風味が損なわれやすいため、ジャムやアップルパイなど、長時間加熱する調理にはあまり適していません。ただし、コンポートのように短時間で煮る場合は、王林本来の風味を活かすことができます。
王林の派生品種:王林を親に持つリンゴたち
王林を交配親とする品種は数多く、種子親として秋しずく(花粉親:千秋、三倍体)、きおう(花粉親:はつあき)、晴明(花粉親:ふじ)などがあります。また、花粉親としては、あおり9(生果名:彩香; 種子親:あかね)、栄黄雅(種子親:千秋)、津軽ゴールド(種子親:千秋)、富香(種子親:ふじ)などが知られています。ジャンボ王林は、王林と同じくゴールデンデリシャスを種子親、印度を花粉親として青森県りんご試験場で育成され、1977年に発表されました。王林とは異なる品種ですが、硬めの果肉と豊富な果汁、強い甘みが特徴です。果実は非常に大きく、円錐形から長円錐形で、果皮は黄色をしています。クリスピンも同様にゴールデンデリシャスを種子親、印度を花粉親とする交配で生まれた品種として有名です。
王林の魅力再発見:さっぱりしたい朝やリフレッシュに
王林は、その爽やかな口当たりとすっきりとした後味で、気分転換したい時や、さっぱりとした朝に最適です。上品な甘さと豊かな香りは、何気ない日常に小さな幸せをもたらしてくれます。ぜひ、王林の新しい魅力を発見してみてください。
まとめ
この記事では、数ある青リンゴの中でも特に人気の高い王林について、その個性をはじめ、栽培状況、誕生秘話、美味しい王林の選び方、おすすめの食べ方、そして王林から生まれた品種まで、様々な側面から詳しく解説しました。王林は、その他に類を見ない甘さと芳醇な香りで、多くの人々を魅了するリンゴです。この記事を通して、王林への理解を深め、その格別な美味しさを存分にお楽しみいただければ幸いです。
質問:王林は青リンゴなのに、なぜ甘味が強いのでしょうか?
回答:王林の甘さの秘密は、両親であるリンゴの片方、ゴールデンデリシャスから受け継いだ性質にあります。酸味が控えめなため、甘さがより一層引き立ちます。さらに、アスパラギン酸をはじめとするアミノ酸が豊富に含まれていることも、甘みだけでなく、奥深い旨味を感じさせる理由の一つです。
質問:王林の表面に見られる茶色い斑点の正体は何ですか?
回答:王林の表面に見られる茶色い斑点は、「果点」と呼ばれるものです。これは、果実の組織がコルク状に変化した跡であり、王林ならではの特徴と言えます。品質に影響はなく、安心して食べられます。むしろ、「サビ」と呼ばれる網目状の模様がある方が、より甘い傾向にあるとも言われています。
質問:王林を長持ちさせるための保存方法を教えてください。
回答:王林は乾燥に弱い性質を持っています。そのため、新聞紙などで丁寧に包み、さらにポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存することをおすすめします。この方法で保存することで、比較的長い期間、新鮮さを保つことができます。