甘酒は、そのやさしい甘さと豊かな風味で古くから日本の文化に根付いてきた飲み物です。しかし、その魅力的な味わいの背後には、多くの人々が気にする糖分の存在が隠れています。本記事では、甘酒の糖分に焦点を当て、その健康面への影響と味わいのバランスをどのように考えるべきかを探ります。甘酒を日常に取り入れる際のポイントを理解し、健康的かつ美味しく楽しむためのヒントをご紹介します。
甘酒のタイプ
甘酒は原料の違いにより、2つのタイプに分けられます。
①米麹甘酒
米麹甘酒は、米や米麹にお湯を加え、60℃程度の温度を維持することで作られる甘酒です。これは麹菌が60℃で活発に働き、お米のでんぷんが分解されてブドウ糖やオリゴ糖になり、甘みを生み出すためです。また、「酒」という名前が含まれているものの、米麹甘酒にはアルコールは含まれておらず、子供やアルコールが苦手な人でも安心して楽しめます。
②酒粕甘酒
酒粕甘酒は、日本酒製造時の残り物である酒粕を使い、水と甘味料を組み合わせた飲み物です。
日本酒は、米を基に麹菌を用いた発酵とアルコール発酵によって出来上がります。
この飲み物には酒粕由来の風味と深い味わいがあり、香りを存分に楽しむことが可能です。しかし、少量ながらアルコール分を含むため、お酒が苦手な方や子供には注意が必要です。
甘酒のエネルギー量と糖質量
甘酒について、そのカロリーが高いと感じている方も多いのではないでしょうか。実際にはどれくらいのカロリーなのでしょう?甘酒は100mlあたりおよそ80kcalです。また、酒粕を使った甘酒の酒粕自体は100gあたり227kcalのカロリーを持っています。他の飲み物100mlあたりのカロリーとも比較してみましょう。
・調整豆乳 64kcal
・コーラ 46kcal
・りんごジュース 44kcal
こうして比べると、甘酒のカロリーがやや高めであることが分かりますね。次に注目したいのは糖質です。甘酒の糖質は100gあたり約18gあります。こちらも他の飲み物と比較してみましょう。
・調整豆乳 4.5g
・コーラ 11.3g
・りんごジュース 11.8g
お米を原材料とする甘酒は、他の飲み物よりも糖質が高めとなっています。
甘酒の栄養成分について
甘酒に含まれる栄養素を詳しく見ていきましょう。
グルコース
甘酒は糀を原料として作られ、豊富なブドウ糖を含んでいます。このブドウ糖は単糖類であり、分解されることなく体内に吸収されるため、素早くエネルギーを供給したい場面、例えばスポーツや集中力を必要とする勉強中に最適です。
オリゴ糖
オリゴ糖は糖類の一種で、腸内にいるビフィズス菌の栄養源となり、腸内環境を改善する効果があります。これは消化されにくく、大腸に留まる特徴があるため、便秘や下痢の解消にも貢献するとされています。
アミノ酸
必須アミノ酸は、体内で生成できないアミノ酸の一群を指します。糀タイプの甘酒には、「バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン」の9種が調和よく含まれています。これらの必須アミノ酸は、筋肉の生成に寄与したり、疲労を軽減し、心を落ち着かせる効果があるとされています。
ポリフェノール
ポリフェノールは抗酸化作用を持つ成分で、赤ワインやココアに豊富に含まれています。また、意外にも糀タイプの甘酒にも多く含まれています。ポリフェノールは悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に一役買っています。
食物繊維
甘酒は食物繊維を100gあたり0.4g含んでいます。この食物繊維は腸内の環境を整え、血糖値の急激な上昇を抑える作用があります。さらに、食物繊維と似た働きをするレジスタントプロテインも含まれており、腸内に残留する不要な脂質やコレステロールの排出を促進し、日々の健康管理をサポートします。
甘酒を飲むことによる利点
甘酒には具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
1. 脳に迅速にエネルギーを供給できる
ブドウ糖は瞬時にエネルギーへと変換される特性を持ち、脳の主要なエネルギー源となっています。
特に、起床直後はエネルギーが不足しており、そのままでは脳がきちんと機能せず、作業や勉学の効率が下がってしまうことがあります。こんな時に甘酒を摂ることで、素早くエネルギーが脳に供給され、スッキリとした状態になります。
2.腸内フローラのバランスを改善する効果がある
甘酒にはオリゴ糖や食物繊維が含まれており、健康的な腸内環境を整える助けになります。さらに、温めた甘酒を飲むことで体が温まり、腸の働きを活発にする効果も見込まれます。
3.肌のうるおいを高めるためのアプローチ
乾燥肌の人々が糀ベースの甘酒を継続的に摂取したところ、肌の保湿力が保たれたことが研究で明らかになりました。糀に含まれる成分であるグルコシルセラミドが肌細胞間の隙間をカバーし、水分の蒸発を防いでいるようです。
さらに、甘酒を飲むことによって毛穴の引き締まりが改善されたとの報告があります。これは、コラーゲンを分解する酵素の活動を抑制し、弾力のある引き締まった肌を促進する効果が期待されるからです。簡単に美肌を目指せる甘酒の効果は嬉しいものです。
4. 他の甘い飲料と比べて血糖値の上昇が穏やか
糀タイプの甘酒は、甘味がしっかりしているにもかかわらず、他の甘い飲み物に比べて血糖値が急上昇しにくいことが知られています。甘酒に含まれるオリゴ糖などが、糖の吸収をゆるやかにしていると考えられます。甘い飲み物を飲みたい時は、甘酒を選ぶのも良い選択かもしれません。
甘酒を飲む際の注意事項
甘酒は健康と美容に良い飲み物ですが、摂取する際には注意したい点が三つあります。
1. 適切な量を維持する
甘酒は健康促進や美容に良い影響をもたらすと言われていますが、それも飲む量を守った場合に限ります。適量を超えて摂取すれば、かえって体重が増える可能性があります。
1日あたりの甘酒の適量はコップ1杯(約200ml)です。甘酒100gで76kcalであることから、1杯でおよそ152kcalの摂取となります。間食のカロリー目安が200kcalであることを考えると、コップ1杯が適切な量と考えられます。
2.摂取のタイミング
酒かす由来の甘酒には、若干のアルコールが含まれています。運転前に摂取すると飲酒運転と見なされる恐れがあるため、摂取のタイミングには注意が必要です。また、アルコールが苦手な方や子ども、妊娠中の方も同様に気をつける必要があります。
3.小分けにして飲む
血糖値の上昇が気になる人も中にはいます。甘酒を用いた研究では、血糖値が上がりやすいケースでは、摂取量を3分の1に減らすと血糖値の上昇が抑えられることが分かっています。血糖値を管理したい方は、一度に飲むのではなく、1日の量を複数回に分けて摂取することが勧められます。