アレルギーの食品

アレルギーの食品

誰もが経験する可能性のある食品アレルギー。原因となる食品から、症状、そして日々の対策まで、正しい知識を持つことが重要です。本記事では、食品アレルギーの基礎を網羅的に解説します。アレルギーの原因物質、症状の種類、そして症状が出た際の対処法、日頃からできる予防策まで、あなたの疑問を解消し、安心できる食生活を送るための一助となる情報を提供します。本記事に掲載されている情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や医学的アドバイスを推奨するものではありません。食物アレルギーに関する診断、治療、具体的な対応については、必ず専門の医師や医療機関にご相談ください。本記事の情報に基づいて行った行動により生じたいかなる損害に対しても、責任を負いかねますのでご了承ください。

食物アレルギーとは?免疫機構の誤作動とアレルゲン

食物アレルギーは、本来人体に害のない食品に対し、免疫システムが過剰に反応してしまう状態を意味します。これは、免疫システムが食品に含まれる特定のタンパク質(アレルゲン)を敵とみなし、排除しようとすることで発生します。この過剰な反応が、多様な症状を引き起こすのです。つまり、食物アレルギーは、食品を栄養として認識し吸収するはずの免疫システムが正常に機能しないことで起こります。

食物アレルギーの原因となる食品:年齢による変化と増加傾向

食物アレルギーを引き起こす食品は様々ですが、鶏卵、牛乳、小麦が三大アレルゲンとして広く知られています。その他にも、ナッツ類(クルミ、カシューナッツなど)、ピーナッツ、甲殻類(エビ、カニ)、魚卵、魚類、果物なども原因となりえます。ショック症状を引き起こした原因食物上位3位は、鶏卵23.6%(156名)、牛乳21.8%(144名)、木の実類17.4%(115名)と報告されています。(参照8:消費者庁 2022a)
年齢によってアレルギーの原因となる食品の割合は変動します。乳幼児期には鶏卵、牛乳、小麦が主な原因ですが、成長とともにこれらのアレルギーは自然に治る(耐性獲得)こともあります。しかしながら、ナッツ類などのアレルギーは、成人後も続くことが多いです。したがって、年齢に応じて注意すべきアレルゲンは異なります。

食物アレルギーの症状:皮膚、呼吸器、消化器など全身に現れる

食物アレルギーの症状は、皮膚、呼吸器、消化器など、全身の様々な部位に現れる可能性があります。主な症状としては、皮膚の赤み、蕁麻疹、かゆみ、湿疹、結膜の充血、まぶたの腫れ、鼻水、くしゃみ、喉の不快感、咳、吐き気、腹痛、下痢などが挙げられます。これらの症状は単独で現れることもあれば、複数の症状が同時に現れることもあります。重症の場合には、血圧の低下や意識の混濁などを伴うアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあり、注意が必要です。

アナフィラキシーとは?生命を脅かす重度のアレルギー反応

アナフィラキシーとは、アレルギー反応が全身に急速に広がり、複数の臓器に深刻な症状を引き起こす状態を指します。血圧低下や意識障害などを伴うアナフィラキシーショックは、生命に関わる危険な状態であり、緊急の治療が不可欠です。アナフィラキシーの症状としては、呼吸困難、喘鳴(ぜいぜい、ひゅうひゅう)、声がれ、喉の腫れ、嘔吐、下痢、意識消失などが挙げられます。アナフィラキシーが疑われる場合は、直ちに救急車を呼び、医師からアドレナリン自己注射薬(エピペン®)が処方され、使用方法について指示を受けている場合は、その指示に従い使用するなど、事前に医療機関と確認した適切な対応を行う必要があります。自己判断による対応は避け、必ず医師の指示に従ってください。

特別な食物アレルギー:運動誘発アナフィラキシーと口腔アレルギー症候群

通常の食物アレルギーとは異なり、ある特定の条件下でのみ症状が現れる特殊な食物アレルギーも存在します。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA):特定の食品を摂取した後、一定時間内に運動を行うことでアレルギー反応が引き起こされる状態を指します。食品の摂取だけ、あるいは運動だけでは症状は現れず、両方の条件が重なることで、重篤なアレルギー症状であるアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。原因となる食品としては、小麦や甲殻類がよく知られていますが、果物による事例も増加傾向にあります。
口腔アレルギー症候群(OAS):特定の果物や野菜を食べた際に、口の中や喉に、腫れ、かゆみ、不快感などの症状が現れる状態です。多くの場合、症状は比較的軽く、自然に治まることが多いですが、まれに全身症状を引き起こすこともあります。花粉症との関連が深く、花粉に含まれるアレルゲンと類似した構造を持つ食品を摂取することで症状が出ることがあります。加熱調理によってアレルゲン性が弱まるため、ジャムやアップルパイなどの加工食品では症状が出にくいという特徴があります。

食物アレルギーの重症度:症状の程度による分類

食物アレルギーの重症度は、現れる症状の程度によって、軽度、中等度、重度の3つに分類されます。
  • 軽度:皮膚に部分的な症状が見られる、消化器症状もわずかで、ぐったりする程度。
  • 中等度:皮膚症状が全身に広がり、強いかゆみを伴う、あるいは軽い息苦しさ、眠気などが見られる場合。
  • 重度:全身に症状が現れ、激しい腹痛や嘔吐を繰り返し、便失禁や意識障害などが起こる場合。
重度の場合には、生命に関わる危険性もあるため、医師からアドレナリン自己注射薬(エピペン®)が処方され、使用方法について指示を受けている場合は、その指示に従い速やかに使用し、直ちに救急車を呼ぶなど、事前に医療機関と確認した対応を行う必要があります。

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係

食物アレルギーを持つお子さんはアトピー性皮膚炎を併発することが少なくありませんが、アトピー性皮膚炎のすべての原因が食物アレルギーであるとは限りません。アトピー性皮膚炎の症状悪化に食品が関与していると感じる場合は、自己判断で食事制限を行うのではなく、必ず専門医に相談するようにしましょう。

食物アレルギーの診断:問診、検査、食物経口負荷試験

食物アレルギーの診断は、詳細な問診、アレルギー検査(血液検査、皮膚テスト)、食物経口負荷試験などを組み合わせて、総合的に判断されます。
  • 問診:医師は、症状が現れた時の状況(何を、どのくらいの量を食べて、何分後に、どのような症状が出たのか)を詳しく問診します。
  • アレルギー検査:血液検査や皮膚テストによって、特定の食品に対するIgE抗体の有無を調べます。ただし、IgE抗体が陽性であるからといって、必ずしも食物アレルギーであるとは限りません。
  • 食物経口負荷試験:実際に医療機関において食品を摂取し、症状が現れるかどうかを確認する検査です。食物アレルギーの診断において非常に重要な検査であり、診断を確定したり、食べられる量を確認するために行われます。
食物経口負荷試験は、アナフィラキシーなどの重い症状を引き起こす可能性があるため、医療機関で慎重に行う必要があります。ご自身の判断で自宅で行うことは絶対に避けてください。

食物アレルギーの治療:除去食、食品表示の確認、緊急時の備え

食物アレルギーの治療において重要なのは、症状を誘発しないための「除去食」の実践と、万が一、誤って摂取した場合に備えた適切な対応策の準備です。
  • 除去食:アレルギーの原因となる食物を日々の食事から排除します。ただし、過度な除去は栄養バランスの乱れや生活の質を下げる要因となるため、医師や管理栄養士の指導のもと、必要最低限の除去を心がけることが大切です。
  • 食品表示の確認:市販の加工食品を購入する際は、原材料表示を丁寧に確認し、アレルゲンが含まれていないかをチェックします。日本の食品表示法に基づき、特定原材料8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)は表示が義務付けられており、特定原材料に準ずる20品目は表示が推奨されています。外食や弁当などではアレルギー表示がない場合もあるため、お店に直接問い合わせる必要があります。
  • 緊急時の備え:アナフィラキシーのリスクがあり、医師からアドレナリン自己注射薬(エピペン®)が処方されている場合は、常に携帯し、医師や薬剤師から正しい使用方法について指導を受け、事前に習得しておくことが不可欠です。さらに、緊急連絡先や周囲への協力依頼の方法も事前に確認しておきましょう。

経口免疫療法:アレルギー体質改善の可能性を秘めた治療法

経口免疫療法は、ごく微量のアレルゲンを摂取することから開始し、徐々に摂取量を増やしていくことで、アレルギー反応を起こしにくい体質へと改善を目指す治療法です。鶏卵、牛乳、小麦アレルギーに対して有効性が示されていますが、アナフィラキシーなどの重篤な副作用のリスクも伴うため、専門医の厳密な管理下で実施する必要があります。経口免疫療法は、全ての食物アレルギーに適用できるわけではなく、実施可能な医療機関も限られています。治療を希望する場合は、まずかかりつけ医に相談し、専門医を紹介してもらうのが良いでしょう。

食物アレルギー表示:必須表示と推奨表示について

食品表示に関する法規では、アレルギー症状を引き起こす可能性のある特定の原材料について、表示を義務付ける制度が設けられています。この表示義務は、容器包装された加工食品に適用されます。
  • 義務表示:特定原材料として、以下の8品目の表示が義務付けられています。 卵 乳 小麦 えび かに くるみ 落花生(ピーナッツ) そば
  • 推奨表示:特定原材料に準ずるものとして、以下の20品目の表示が推奨されています。これらは義務表示ではありませんが、可能な範囲で表示することが推奨されています。 アーモンド あわび いか いくら オレンジ カシューナッツ キウイフルーツ 牛肉 ごま さけ さば 大豆 鶏肉 バナナ 豚肉 マカダミアナッツ もも やまいも りんご ゼラチン
外食や量り売りなど、容器包装されていない食品については、アレルギー表示の義務はありません。これらの食品については、お店の方に直接確認することが重要です。

まとめ

食物アレルギーは、原因、症状、重症度、治療法など、理解すべき点が多岐に渡ります。正しい知識を身につけ、適切な対策を講じることで、食物アレルギーを持つ方も安心して日常生活を送ることができます。この記事が、食物アレルギーへの理解を深め、より快適な生活を送るための一助となれば幸いです。食物アレルギーの症状にお悩みの場合や、心配な点がある場合は、必ず専門医にご相談ください。

よくある質問

質問1:大人になってから食物アレルギーになることはありますか?

はい、大人になってからも食物アレルギーを発症する可能性はあります。子供の頃は何の問題もなく食べられていた食品でも、年齢と共に体質が変わったり、免疫システムが変化したりすることで、アレルギー反応を起こすようになることがあります。特に、エビやカニなどの甲殻類、特定の果物、ナッツ類のアレルギーは、大人になってから発症するケースが比較的多いと考えられています。

質問2:食物アレルギー検査で陽性反応が出た場合、症状がなければ除去しなくても良いですか?

食物アレルギーの検査結果が陽性であっても、直ちにその食品を除去する必要があるとは限りません。検査結果はあくまで目安であり、実際にその食品を食べた際に症状が現れるかどうかを確認することが大切です。もし症状が出ないようであれば、医師の指導のもと、少しずつ摂取していくことで、体が慣れて耐性を獲得できることもあります。しかし、自己判断で試すことは非常に危険なため、必ず専門医に相談するようにしてください。

質問3:食物アレルギーを持つ子供が保育園や学校に通う際、どんなことに注意すべきですか?

食物アレルギーを持つお子さんが保育園や学校に通う際は、事前に保育園や学校と十分な情報交換を行い、アレルギーへの対応について協力体制を築くことが非常に重要です。具体的には、アレルギーを引き起こす食品、症状の種類、緊急時の対応方法などを詳しく書面で伝え、先生や職員の方々がしっかりと理解できるように説明する必要があります。また、誤ってアレルゲンとなる食品を口にすることを防ぐために、給食の内容や調理方法を確認したり、お弁当を持参するといった対策も有効です。さらに、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を携帯する場合は、その使用方法を先生や職員にきちんと伝え、緊急時に適切に使用できるよう、しっかりと準備しておくことが大切です。

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