卵アレルギーの中でも特に多い卵白アレルギー。乳幼児期に発症することが多く、親御さんにとっては大きな心配事です。しかし、卵白アレルギーは適切な知識と対応で克服できる可能性を秘めています。この記事では、卵白アレルギーの原因、症状、そして克服への道筋を分かりやすく解説します。専門医との連携、日々の食事管理、そして最新の研究動向まで、お子様の健やかな成長をサポートするための情報をお届けします。
卵白アレルギーとは?知っておきたい基礎知識と赤ちゃんへの影響
食物アレルギーの中でも、特に多いのが卵アレルギーです。中でも、まだ体の機能が発達段階にある乳幼児によく見られ、日本では生後6ヶ月から1歳頃に診断されるケースが多いとされています。卵は卵白と卵黄に分けられますが、アレルギー反応を引き起こす主な原因となるのは、卵白です。卵白は「即時型アレルギー」というタイプの食物アレルギーを引き起こしやすく、摂取してから比較的すぐに症状が現れます。一方、卵黄がアレルギーの原因となることは少なく、もし症状が出たとしても、消化器系の症状を伴う「消化管アレルギー」として現れることが多いです。お子さんが卵白アレルギーと診断された時、保護者の方は大きなショックを受けるかもしれませんが、多くの場合、成長とともに自然に症状が軽くなる可能性があります。実際に、1歳までに発症した場合でも、3歳頃までには約半数のお子さんが卵アレルギーを克服すると言われています。これは、成長に伴い消化機能が発達し、アレルゲンに対する体の反応が変わるためです。このアレルギーの特性を理解し、専門的な知識と経験を持つ小児科のアレルギー専門医の指導のもと、適切な対応と治療を続けることで、克服を目指すことができます。心配なことがあれば、専門医に相談し、お子さんに合った最適な方法でアレルギーと向き合っていくことが大切です。
卵白アレルギーを引き起こす主な原因物質
卵白アレルギーの症状を引き起こす主な原因は、卵白に含まれる特定のタンパク質です。これらのタンパク質が、体の免疫システムによって誤って有害なものと認識され、過剰な免疫反応が起こることでアレルギー症状が現れます。主なアレルゲンとしては、以下のものが挙げられます。卵の調理方法によってアレルギーの起こりやすさは大きく異なり、アレルゲンとなるタンパク質の熱に対する安定性が関係しています。
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オボアルブミン:卵白に最も多く含まれるタンパク質で、卵白全体の約54%を占めます。熱に弱く、加熱調理によって構造が変わりやすいため、生卵よりも加熱した卵の方がアレルギー症状が出にくい、あるいは症状が軽いことが多いとされています。加熱によってオボアルブミンが固まることで、アレルギーを起こしにくくなるため、ゆで卵にするとアレルギーを起こさない場合もあります。
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オボムコイド:卵白の約11%を占めるタンパク質で、オボアルブミンとは異なり、加熱しても安定しているという特徴があります。そのため、加熱調理した卵でもアレルギー症状を引き起こすことがあり、オボムコイドに対するアレルギー反応が強い場合は、症状が重くなる傾向があります。アレルギーの重症度と深く関わっていると考えられています。
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オボトランスフェリン:卵白中に約12%含まれるタンパク質で、鉄と結合する性質を持っています。
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リゾチーム:卵白の約3.5%を占める酵素タンパク質で、抗菌作用があることで知られています。
これらのタンパク質の中でも、特にオボアルブミンとオボムコイドが卵白アレルギーの主な原因物質として重要視されており、それぞれの熱に対する安定性の違いが、生卵と加熱卵でアレルギー反応が異なる理由を説明しています。一般的に、生卵が最もアレルギーを起こしやすく、加熱するとアレルギーは起こりにくくなります。スクランブルエッグではアレルギーが出るのに、固ゆで卵なら食べられるというケースもあります。例えば、卵白に対する特異的IgE抗体がクラス2の場合、加熱した卵でアレルギーを起こすお子さんは約3割ですが、生卵だと約8割になります。アレルギーの診断や治療計画を立てる上で、どのタンパク質に反応しているかを把握することは非常に役立ちます。
さまざまな症状とアナフィラキシーの危険性
卵白アレルギーの症状は、その程度や現れ方が非常に多様で、軽いものから命に関わる重篤なものまで様々です。摂取後数分から数時間以内に現れる即時型アレルギー反応が一般的で、主に皮膚、消化器、呼吸器に症状が現れることが多いですが、全身に及ぶこともあります。主な症状は以下の通りです。
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皮膚症状:最もよく見られる症状の一つで、全身または部分的にじんましん、かゆみ、赤みが出ます。アトピー性皮膚炎のお子さんの場合、湿疹が悪化することもあります。
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消化器症状:嘔吐、下痢、腹痛などが起こります。乳幼児では、不機嫌になったり、食欲がなくなったりすることがあります。
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呼吸器症状:鼻水、くしゃみ、鼻づまりといった軽いものから、咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音)、呼吸困難といった重い症状まで様々です。
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眼症状:目の充血、かゆみ、まぶたの腫れなどが起こることがあります。
これらの症状が一つだけ現れることもあれば、同時にいくつか現れることもあります。特に注意が必要なのは、症状が急速に悪化し、命に危険を及ぼす可能性のあるアナフィラキシーです。アナフィラキシーは、血圧の低下、意識障害、呼吸困難などの全身性の重篤な症状を伴い、すぐに医療機関での対応が必要となります。重症のアナフィラキシーを引き起こすリスクがあるため、卵白アレルギーを持つお子さんの保護者は、アレルギーの症状をしっかりと理解し、緊急時の対応について事前に医師から指導を受けておくことが非常に重要です。
まとめ
卵白アレルギーは、乳幼児によく見られる食物アレルギーの一つですが、多くの場合、成長とともに自然に症状が軽くなる可能性があります。主な原因は、卵白に含まれるオボアルブミンやオボムコイドなどのタンパク質で、これらのタンパク質の熱に対する安定性の違いから、調理方法によってアレルギーの起こりやすさが変わります。症状は皮膚、消化器、呼吸器に多様に現れ、重症化するとアナフィラキシーを引き起こすリスクもあります。診断は、実際に症状が出たかどうかを重視し、血液検査(特異的IgE抗体の測定)や、専門医の管理下で行われる経口負荷試験によって確定されます。血液検査で陽性反応が出た場合でも、加熱した卵では症状が出ないことも多いため、検査結果だけで自己判断で除去食を始めるのではなく、専門医の指示に従うことが大切です。卵白アレルギーの治療目標は、食事制限をできるだけ少なくし、最終的には安心して卵を食べられるようになることで、基本的には栄養バランスを考慮した上で、必要最低限の除去食療法を行います。重症の場合や、なかなか治らない場合には、専門医による慎重な経口免疫療法が選択肢となることもありますが、実施には厳密な管理とリスクの理解が不可欠です。離乳食期には、アレルギーを心配して卵を完全に避けることが、かえってアレルギーの発症リスクを高める可能性も指摘されており、医師の指導のもとで適切な時期に少量ずつ加熱した卵を試すことが推奨されます。卵白アレルギーを克服するためには、正しい知識を持ち、小児科のアレルギー専門医と連携し、長い目で見て対応していくことが重要です。専門家と協力しながら、お子さんが安全に成長し、アレルギーを乗り越えられるように、しっかりとサポートしていきましょう。
**【重要】**この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスを提供するものではありません。卵白アレルギーに関する診断や治療は、必ず医師にご相談ください。当サイトの情報に基づいて自己判断することは避け、専門医の指示に従ってください。当サイトは、情報利用の結果生じたいかなる損害についても責任を負いません。
卵白アレルギーと卵黄アレルギー、何が違う?
卵は、白身と黄身という二つの部分から構成されていますが、アレルギー反応を引き起こしやすいのは主に卵白の方です。卵白アレルギーの場合、摂取してから比較的短い時間で、蕁麻疹や呼吸のしづらさといった即時型アレルギーの症状が出ることが多いです。一方、卵黄が原因となるアレルギーはまれであり、症状が現れるとしても、吐き気や下痢などの消化器系アレルギーとして現れることが一般的です。
卵白アレルギーの主な原因となる物質は?
卵白アレルギーを引き起こす主な原因物質は、卵白に含まれる様々なタンパク質です。特に、「オボアルブミン」は生の卵白に最も多く含まれる成分であり、加熱によって構造が変化しやすい性質を持ちます。一方で、「オボムコイド」は加熱しても安定しており、重篤なアレルギー反応に関与しやすいアレルゲンとして知られています。その他にも、オボトランスフェリンやリゾチームといったタンパク質が関与するケースもあります。卵は調理方法によってアレルギーを引き起こすリスクが異なり、生の卵が最もアレルギー反応を起こしやすく、加熱調理することでアレルギー性は低下する傾向にあります。
卵白アレルギーには、どのような症状があるの?
症状の程度は、軽いものから重いものまで様々です。よく見られる症状としては、蕁麻疹、かゆみ、湿疹の悪化といった皮膚の症状や、吐き気、下痢、腹痛といった消化器系の症状が挙げられます。重症の場合には、血圧の低下や呼吸困難を伴うアナフィラキシーショックを引き起こす危険性もあります。