冬の寒さを温めるこたつと、その上に置かれたみかん。この光景は、多くの日本人にとって冬の風物詩でしょう。しかし、みかんの魅力は冬だけにとどまりません。品種改良や栽培技術の進化により、今や一年を通してさまざまな種類のみかんを楽しむことができるのです。この記事では、冬みかんを中心に、それぞれの品種が持つ個性的な味わいや、一年を通して美味しくみかんを味わうための秘訣を紐解きます。こたつのお供として親しまれてきたみかんが、どのようにして私たちの食生活を豊かにしてくれるのか、その秘密を探ってみましょう。
みかんとは?温州みかんと他のかんきつ類の違い
一般的に、みかんとは皮がむきやすく手で簡単に剥ける柑橘類の総称として使われています。しかし、単に「みかん」という場合は、ほとんどが「温州(うんしゅう)みかん」を指します。温州みかんは、日本の家庭で最も親しまれている品種であり、その甘さと手軽さから広く愛されています。温州みかん以外の柑橘類としては、特徴的なデコボコとした見た目と濃厚な甘みが人気の「不知火(しらぬい)」(「デコポン」というブランド名でも有名)、温州みかんとトロビタオレンジを掛け合わせた香りの良い「清見(きよみ)」、そして爽やかな酸味とほろ苦さが特徴の「八朔(はっさく)」などがよく知られています。これらは一般的に「中晩柑類(ちゅうばんかんるい)」と呼ばれ、温州みかんとは異なる時期に旬を迎え、さまざまな食感や風味を楽しむことができます。温州みかんが日本の気候に適応し、独自の進化を遂げてきたのに対し、中晩柑類は多様なルーツを持つ品種であり、それぞれが個性的な味わいを持っています。
温州みかんの旬:極早生、早生、晩生みかんの違い
温州みかんは、およそ500年前に現在の鹿児島県長島で偶然生まれたと考えられており、その後の自然な変化や品種改良によって、現在見られるように多種多様な系統へと進化しました。この進化は、収穫時期、つまり「旬」によって大きく3つのグループに分けられます。それが「極早生(ごくわせ)みかん」、「早生(わせ)みかん」、「晩生(おくて)みかん」です。これらの分類は、単に収穫時期が違うだけでなく、それぞれが持つ独自の味、食感、見た目などの特徴と深く関係しています。ここでは、これらの温州みかんの種類がいつ旬を迎え、どのような特徴を持っているのかを詳しく見ていきましょう。
極早生みかん(秋のみかん):さわやかな酸味が魅力
極早生みかんは、温州みかんの中で最も早く市場に出回る品種のグループです。まだ夏の暑さが残る9月から10月頃に旬を迎え、その名前の通り「非常に早く」収穫されるのが特徴です。この時期のみかんは、まだ完全に色づく前の緑色がかった皮が残っていることが多く、早生みかんに比べて甘さは控えめですが、代わりに爽やかな酸味が際立ちます。この酸味は、秋の食欲をそそり、夏の疲れを癒すのに最適で、「運動会の時期に食べられるみかん」として親しまれています。極早生みかんは、花が咲いてから収穫までの期間が比較的短いため、糖度が十分に上がりにくい傾向がありますが、そのフレッシュさが魅力です。中でも、和歌山県由良町で発見された「ゆら早生」は、極早生品種の中でも特に甘みが強いことで知られており、中の袋(じょうのう膜)が非常に薄く、とろけるようななめらかな食感が特徴で、近年人気を集めています。
早生みかん(冬に味わう、とろける甘さ)
本格的な冬の訪れとともに旬を迎える早生みかんは、11月から12月中旬頃に楽しまれる温州みかんの一種です。極早生みかんと比べ、果皮はより薄く、口の中でとろけるような柔らかい食感が特徴。糖度も高く、「最も美味しいみかん」として多くの人に愛されています。特に、和歌山県有田地方は、温暖な気候と熟練の栽培技術により、早生みかん栽培に適しており、その名を知られています。また、ハウス栽培で育てられる「ハウスみかん」もあり、加温によって開花や成熟時期を調整することで、4月から9月頃にも出荷されます。
晩生みかん:冬の終わりに味わう、濃厚な甘み
晩生みかんは、温州みかんの中で最も遅い時期、12月中旬頃から旬を迎える品種です。早生みかんに比べると、中の袋がやや厚めで、口に少し残る食感がありますが、糖度が非常に高いのが特徴です。成熟期間が長いため、果実にたっぷりと糖分が蓄えられ、濃厚でコクのある味わいを楽しめます。和歌山県海南市で栽培される「蔵出しみかん」は、収穫後に貯蔵されることで、糖度と酸味のバランスがさらに整い、深い味わいになります。冬の終わりに、みかんの味の変化を締めくくる晩生みかんは、多くのファンに親しまれています。その濃厚な甘さは、寒い季節に温かい気持ちをもたらしてくれるでしょう。
美味しいみかんを見分ける4つのポイント
美味しいみかんを選ぶには、どこに注目すれば良いのでしょうか?ここでは、品質の良いみかんを見分けるための4つのポイントをご紹介します。ぜひ参考にして、お好みのものを見つけてみてください。
① 果皮の質感:なめらかで油胞が細かいみかん
みかんの表面をよく見ると、小さなオレンジ色の点々があります。これは「油胞」と呼ばれ、みかん特有の香り成分「リモネン」を含んでいます。一般的に、油胞が細かく、果皮がなめらかでツルツルしているみかんは、高品質で美味しい傾向があります。油胞の細かさは、みかんが均一に成長し、香り成分が凝縮されている証拠です。みかんを選ぶ際は、果皮の表面をよく確認しましょう。見た目の美しさはもちろん、美味しさにも繋がる大切なポイントです。
② サイズの傾向:小ぶりなみかんは甘味が強い?
みかん選びで迷ったら、サイズに注目してみましょう。一般的に、同じ種類のみかんであれば、大きいものより小さいものの方が甘い傾向があると言われています。これは、小さな果実の方が水分量が少なく、甘さが凝縮されやすいためです。ただし、大きめのみかんには、見た目の良さや食べ応えがあるという利点もあります。そのため、甘さだけを重視するのではなく、バランスを考えて「ほどよい大きさ」のみかんを選ぶのがおすすめです。甘さを優先するなら小さめを、見た目や満足感を重視するなら中くらいのサイズを選ぶなど、用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
③ 色合いの濃さ:濃い色のミカンは太陽の証
みかんの美味しさを見極めるポイントとして、色の濃さも挙げられます。太陽の光をたっぷり浴びて育ったみかんは、光合成によって「カロテノイド」という色素を多く作り出します。このカロテノイドが、みかんの鮮やかなオレンジ色を作り出すとともに、果実が十分に熟し、甘くなっているサインでもあるのです。つまり、色が濃く、鮮やかなオレンジ色のみかんは、太陽の恵みをたっぷり受けて育った、甘くて美味しいみかんである可能性が高いと言えます。色の薄いものと比べてみると、その風味の違いを感じられるはずです。
④ 果皮と実の一体感:皮が浮いていないものを選ぼう
みかんの皮と中身がしっかりと密着しているかは、水分量と味が凝縮されているかを見極める上で重要です。画像のように、皮と実の間に隙間があり、皮がブカブカと浮いている状態を「浮皮」と言います。浮皮のみかんは、生育過程で水分を過剰に吸収してしまった結果、水っぽく、味が薄い傾向があります。美味しいみかんを選ぶには、皮と実がぴったりとくっついていて、全体的にハリがあるものを選ぶのがコツです。軽く握った時に、皮が実に吸い付くような感触があるみかんは、水分と糖分のバランスが良く、濃厚な味わいが期待できます。
ここでご紹介した選び方はあくまで一例です。みかんは種類や産地、収穫時期によって味が大きく変わります。ぜひ色々なみかんを試して、季節や産地ごとの味の違いを楽しみながら、自分にとって一番美味しいみかん、そして自分だけの選び方を見つけてみてください。みかんの奥深い世界を探求することは、食の楽しみをさらに深めることにつながるでしょう。
日本人と冬みかんの深いつながり
日本人と冬みかんの結びつきは、非常に長い歴史を持っています。その起源は、1000年以上前に遡ると言われています。日本最古の歴史書である『古事記』には、天皇の命を受けた使者が、不老長寿の果実として中国から「橘」(現在の冬みかんの原型)を紀州(現在の和歌山県)に持ち帰ったという記述があります。その後、日照時間が長く温暖な気候が適していたため、紀州をはじめ、肥後(熊本県)や駿河(静岡県)など温暖な地域で冬みかんの栽培が盛んになり、各地の特産品として全国に知られるようになりました。現在、私たちが主に食べている品種の多くは、中国の温州から伝わったとされる温州みかんが変化したものと言われており、約400年前の江戸時代から広まったとされています。江戸時代には、家系の存続が重要視されていたため、種のない温州みかんは敬遠される傾向があり、当時は現在の冬みかんよりも小ぶりな紀州みかん(中国原産)が主流でした。しかし、明治時代に入ると、温州みかんの食べやすさと果実の大きさが評価され、広く一般に親しまれるようになりました。
●鏡餅にはみかんではなく、橙を飾っていた!?
お正月の飾りである鏡餅の上に、小さなみかんが飾られているのを見たことがあるかもしれません。しかし、本来鏡餅の上に飾るのはみかんではなく、実が落ちずに冬を越すことから縁起が良いとされる橙(だいだい)という柑橘類でした。橙の持つ「代々」という響きから、「家が代々繁栄するように」との願いを込め、橙を飾る風習が広まりました。しかし、橙の出荷量が少ないため、地域によっては入手が困難な場合もあり、現在では同じ柑橘類である身近なみかんを使用することが増えています。実は、本来はみかんではなかったということは、意外と知られていないかもしれません。
●日本人はどのくらいみかんを食べているの?
総務省の「家計調査」のデータによると(注1)、令和2年において、日本人が最も多く食べている果物はバナナ、次いでりんご、そしてみかん(温州みかん)となっています。このデータからも、みかんが日本人にとって非常に身近な果物であることがわかります。しかし、平成10年頃までは、みかん、りんご、バナナの順で、みかんが最も人気のある果物でした。みかん農家の高齢化や後継者不足などの問題から、生産量自体が減少傾向にあること、また輸入量が多く、比較的年間を通して入手しやすいバナナなどと比較して、みかんは国産の割合が高く、旬の時期が限られていることなどが要因となり、みかんの1世帯(二人以上の世帯)当たりの年間購入量は、平成7年(1995年)の21.4kgから平成27年(2015年)には10.2kgに減少しています。(注1)総務省統計局『家計調査年報(家計収支編)』二人以上の世帯
冬みかん(温州みかん)の栄養と健康効果
冬みかんには、健康維持のために積極的に摂取したい様々な栄養素が豊富に含まれています。特に注目すべき栄養素とその効果についてご紹介します。
●ビタミンC
ビタミンCは、肌の健康を保つコラーゲンの生成に不可欠な水溶性ビタミンです。体内で生成できないため、食事から意識して摂取する必要があります。強力な抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を除去して細胞を守る働きがあるため、生活習慣病のリスク軽減にもつながる可能性があります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人のビタミンC推奨摂取量は1日あたり100mgとされています。冬みかん1個(100g)には約35mgのビタミンCが含まれており、1日に必要な量の約3分の1を摂取できます。
●食物繊維
食物繊維は、小腸で消化されずに大腸まで届く難消化性の成分です。腸内環境を改善する効果がよく知られていますが、食後の血糖値上昇を穏やかにしたり、血中コレステロール値に影響を与えるなど、生活習慣病のリスク軽減に繋がる可能性のある様々な効果が期待されています。現代の日本人は食物繊維が不足しがちであるため、積極的に摂取することが推奨されています。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病予防のため、18~64歳の1日の目標摂取量は男性21g以上、女性18g以上とされています。冬みかん1個(100g)には約1gの食物繊維が含まれているため、間食として取り入れるのもおすすめです。
●β-クリプトキサンチン
β-クリプトキサンチンは、冬みかんに多く含まれるカロテノイドの一種です。体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAとしての機能に加え、循環器系の疾患や糖尿病といった生活習慣病の予防効果など、様々な生理機能が明らかになりつつあります。冬みかん1個(100g)には約1mgのβ-クリプトキサンチンが含まれていますが、どの程度の量を摂取すれば効果が期待できるのかは、まだ明確にはなっていません。しかし、みかんをよく食べる日本人の血中β-クリプトキサンチン濃度は、欧米人に比べて高い傾向にあることから、研究が進められており、今後の報告が期待されています。
体が喜ぶ!冬みかんのおすすめの食べ方
手軽に食べられて栄養も豊富な冬みかん。これらの栄養をより効率的に摂取するための食べ方をご紹介します。
冬みかんは1日に何個までが適切?
健康的な食生活をサポートするために、農林水産省と厚生労働省が共同で作成した「食事バランスガイド」では、1日に摂取することが推奨される果物の目安として、冬みかんは約2個とされています。これはあくまで目安であり、厳守する必要はありません。しかし、どんなに美味しく、体に良い栄養素が豊富な食品でも、一度に過剰に摂取すると、かえって体に悪影響を及ぼす可能性があります。冬みかんを食べる際は、食べ過ぎに注意しましょう。
白い筋や薄皮も一緒に食べるのがおすすめ!
冬みかんの白い筋や薄皮(じょうのう)には、食物繊維が豊富に含まれています。果肉のみを食べる場合に比べて、約2倍の食物繊維を摂取できるため、健康を意識するならば、白い筋や薄皮も一緒に食べる方がより効果的です。
まとめ
私たち日本人に馴染み深い冬みかんについて改めて詳しく見てみると、新たな発見があるかもしれません。その魅力を深く知ることで、より一層愛着が湧いてくるはずです。美味しく、ビタミンCも豊富な冬みかん。普段、スナック菓子や甘いお菓子を間食にする習慣がある方は、ぜひ旬の冬の時期には、手軽に食べられる冬みかんをいつものおやつに取り入れて、より健康的な食生活を目指してみてはいかがでしょうか。
冬みかんはいつが一番美味しい時期?
冬みかんと呼ばれる柑橘は、種類によって最盛期が異なります。特に温州みかんであれば、ごく早生は9月から10月にかけて、早生は11月から12月中旬にかけて、晩生は12月中旬以降に旬を迎えます。また、ハウス栽培されたものは、4月から9月頃にも市場に出回るため、ほぼ一年を通して味わうことが可能です。
みかんと他の柑橘類の違いは何?
一般的に「みかん」とは、皮が薄くて手で簡単に剥ける柑橘類のことを指しますが、特に「みかん」という場合は「温州みかん」を意味することが多いです。温州みかん以外にも、「不知火(デコポン)」や「清見」、「八朔」など、様々な柑橘類が存在し、これらは一般的に「中晩柑」と呼ばれ、それぞれに異なる風味と旬があります。
「ごく早生みかん」と「早生みかん」の違いは何?
ごく早生みかんは、9月から10月頃に出回る最も早い時期に収穫される品種で、まだ緑色が残っており、さっぱりとした酸味が特徴です。早生みかんに比べると甘さは控えめですが、爽やかな味わいが楽しめます。一方、早生みかんは11月から12月中旬頃に旬を迎え、皮や薄皮が薄く、とろけるような口当たりと高い糖度が魅力です。本格的な冬の味覚として人気があります。
「冬みかん」とはどのようなものですか?
「冬みかん」は、一般に冬に旬を迎えるみかんを指しますが、特に収穫時期の遅い『晩生みかん』の別名として使われることもあります。晩生みかんは、一般的に12月から2月頃に収穫時期を迎え、冬の寒い時期に味わうことができるみかんです。貯蔵することで酸味がまろやかになり、甘みが増すのが特徴です。こたつで温まりながら食べるのに最適です。
みかんは一日にどれくらいの量が適切ですか?
厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」によると、一日に推奨される果物の摂取量として、みかんの場合、おおよそ2個程度が目安とされています。過剰な摂取は体に良くない影響を与える可能性があるため、目安量を守ってバランス良く食べることが大切です。
みかんの筋や薄皮は一緒に食べた方が良いのでしょうか?
みかんの果肉についている白い筋や薄皮には、食物繊維が豊富に含まれています。果肉のみを食べるよりも、筋や薄皮も一緒に食べることで、より多くの食物繊維を摂取することができます。健康を意識する方は、ぜひ一緒に食べることをおすすめします。