春の訪れを告げる山菜、うど。独特の香りとシャキシャキとした食感が魅力ですが、『下処理が難しそう』と敬遠していませんか?この記事では、うどの種類や栄養、新鮮なものの選び方から、部位を余さず使い切る下処理のコツ、絶品レシピまでを網羅的にご紹介します。初心者でも安心して、春の味覚を存分に楽しみましょう。

うどとは?旬の時期や種類、知られざる魅力
うどは日本原産のウコギ科の多年草で、昔から親しまれてきた山菜です。特徴的な香りとシャキシャキとした食感は、炒め物、和え物、サラダ、煮物、味噌汁など様々な料理に活用されています。独特の食感は、他の食材では決して味わえない魅力です。うどは「独活」と書き、少し難しい漢字を使うことも特徴です。うどには大きく分けて2種類あります。一つは、光を遮断して栽培される「軟化うど」です。これは茎が白く柔らかいのが特徴で、一年を通して手に入りやすく、山うどに比べて苦味が少ないです。スーパーなどでよく見かけるのはこの軟化うどです。もう一つは、山に自生する「山うど」です。こちらは日光を浴びて育つため、葉が緑色をしています。山うどは香りが強く、揚げ物にするのがおすすめです。うどの旬は主に春から初夏。天然物は3~6月、栽培物は3~5月頃に多く出回ります。また、栽培物の中には11~2月頃に収穫される『寒うど』もあり、長い期間楽しむことができます。食用とするのは若芽や穂先、茎で、大きく成長する前の柔らかい部分が収穫されます。大きく成長すると2~3mにもなるうどですが、硬くなるため若いうちに収穫されます。うどの最大の魅力は、穂先から茎、そして普段捨ててしまいがちな皮まで、美味しく食べられることです。部位ごとに異なる風味や食感を生かすことで、様々な料理に活用できる万能な食材と言えるでしょう。うどは那須地方を中心に栽培され、一般的な収穫期間は1-4月であるが、一部では12月から5月まで収穫される場合もある。(出典: 第3節 野菜に関する試験研究(栃木県農業試験場年報), URL: https://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/nousi/Noshi120Nenshi/0203Yasai.pdf, 2020)
新鮮なうどの選び方:プロが教える見分け方
料理の出来栄えを左右する、新鮮で美味しいうどの選び方。ここでは、良質なうどを見分けるためのポイントをご紹介します。
鮮度を見極めるポイント
新鮮なうどを選ぶためには、いくつかのポイントがあります。まず、茎が太く、節がしっかりとしていて、根元から穂先まで太さが均一なものを選びましょう。これは、うどがしっかりと成長し、水分を豊富に含んでいる証拠です。次に、穂先がピンと張り、明るい緑色をしていることが大切です。穂先がしおれていたり、色が濃すぎるものは、鮮度が落ちている可能性があります。また、うど全体にうぶ毛が密生しているかを確認しましょう。うぶ毛がしっかりと生えているものは、若くみずみずしい状態であることが多いです。逆に、うぶ毛が少なくなっていたり、茎が変色しているものは、鮮度が落ちている可能性があるため避けるのが賢明です。うどは鮮度が非常に重要な食材であり、特に天然物は香りが強いものを選ぶと良いでしょう。これらのポイントを参考に、美味しいうどを選び、食卓を豊かに彩ってください。
うどのカロリーと糖質量
うどのカロリーと糖質について解説します。栽培方法による軟白うどと、天然の山うどでは栄養価が異なります。また、水にさらす処理の有無によっても数値に変動が見られます。生の軟白うど(茎部分)100gあたりのエネルギー量は19kcal、炭水化物は4.3g、食物繊維は1.4g、糖質は2.9gです。一方、水にさらした軟白うど(茎部分)100gあたりでは、エネルギー量は13kcal、炭水化物は3.4g、食物繊維は1.6g、糖質は1.8gとなります。水にさらすことで、カロリーやその他の栄養成分が若干減少する傾向にあります。さらに、生の山うど(茎部分)100gあたりのエネルギー量は19kcal、炭水化物は4.3g、食物繊維は1.8g、糖質は2.5gです。
【出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)】
うどの美味しい食べ方:下処理とアク抜き
うど本来の風味と、あの独特の食感を最大限に楽しむためには、丁寧な下処理とアク抜きが欠かせません。山菜と聞くと、下処理が面倒なイメージがあるかもしれませんが、うどの下ごしらえは意外と簡単です。特にうどはアクが強いため、適切な処理が重要ですが、手順さえ覚えれば、ご家庭でも手軽に調理できます。

部位ごとの切り分け方
うどの下ごしらえの最初のステップは、部位ごとに切り分けることです。うどは穂先から茎まで、全て美味しく食べられる食材ですので、各部位の特性を活かした切り分けがポイントです。まず、太い茎の根元部分を厚めに切り落とします。この部分は硬く、アクも強いので、厚めに切ることで口当たりが良くなります。次に、太い茎から出ている柔らかい「脇の茎」と、先端の「穂先」を切り分けます。太い茎は、さらに節ごとに切り分けましょう。これらの部位は、それぞれ異なる食感と香りを持っているため、別々に調理することで、その魅力を最大限に引き出すことができます。例えば、穂先は香りが高く、脇の茎は独特の歯ごたえが楽しめます。
太い茎の皮むきと食感維持のコツ
太い茎は節ごとに切り分けたら、皮をむいていきます。うどの皮の近くにはアクが多いため、切り口の内側の円の部分まで、厚めにむくのがポイントです。皮むきにもコツがあります。縦方向に包丁を入れ、根元から先端に向かってむくと、均一な厚さでむきやすく、見た目も美しく仕上がります。この方法でむくことで、うど特有のシャキシャキとした食感を損なうことなく保てます。驚くことに、むいた皮も美味しく食べられますので、きんぴらなどに活用するのがおすすめです。さらに、繊維に沿って縦に包丁を入れることで、アクを抑えるだけでなく、うどの食感をより一層楽しむことができます。
効果的なアク抜きは酢水で
うどは切るとすぐに色が変わり始めるため、切ったそばから酢水につけるのが大切です。前もって酢水を用意しておけば、スムーズに作業できます。アク抜きは、えぐみや苦味の元となる成分を取り除き、変色を防ぐために欠かせません。酢水の濃さは、水400ccに小さじ1杯のお酢を目安に。切ったうどを5~10分ほど浸けておきましょう。短時間でも効果はありますが、浸けすぎると水っぽくなり、風味が落ちる可能性があるので注意してください。丁寧にアク抜きをすることで、うどのほろ苦さを活かしつつ、えぐみのない上品な味わいになります。アク抜きは、うど料理をより美味しくするための重要な工程です。
うどの保存方法
お店でよく見かける軟白うどの保存方法をご紹介します。うど全体を新聞紙やキッチンペーパーで包み、日の当たらない涼しい場所で保存します。軟白うどは日光を遮って育てられているため、保存時も光を避けることが大切です。長く保存すると硬くなり、苦味が増すことがあるので、なるべく早く使い切るようにしましょう。
うどの風味を味わう!部位別おすすめレシピ
うどは、部位によって風味や食感が異なります。下ごしらえを済ませておけば、それぞれの特徴を活かして、色々な料理を楽しめます。ここでは、うどの風味を存分に味わえる、おすすめのレシピをご紹介します。

穂先の天ぷら:香りと苦味を味わう絶品レシピ
うどの穂先は、特に香りと独特の苦味が際立つ部位です。この繊細な風味を活かすには、シンプルに天ぷらにするのがおすすめです。外はサクサク、中はふっくらとした食感で、うど本来の香りと春の苦味を堪能できます。
【材料】
うどの穂先:100g
卵:1個
小麦粉・片栗粉・水:各適量
揚げ油:適量、大根おろし、生姜おろし:各適量
[天つゆ]
醤油:1/4カップ
みりん:1/4カップ
だし汁:150cc
【作り方】
1. 穂先を切り、10~15分ほど水にさらした後、キッチンペーパーなどで水気をしっかり取ります。水気が残っていると油がはねるので、丁寧に拭き取ることが大切です。
2. ボウルに卵を割り入れ、水、小麦粉、片栗粉を加えて軽く混ぜます。混ぜすぎると粘りが出るので、粉っぽさが少し残る程度で止めるのが、カリッとした衣にするコツです。
3. 揚げ油を170~180℃に熱します。衣を薄くつけた穂先を油に入れ、カラッと揚げます。一度にたくさん入れず、油の温度が下がらないように注意しましょう。
4. 鍋に醤油、みりん、だし汁を入れ、沸騰させれば天つゆの完成です。温かい天つゆは天ぷらをより美味しくしてくれます。
5. 器に揚げたての天ぷらを盛り付け、お好みで大根おろしと生姜おろしを添えて、温かい天つゆでいただきましょう。
茎の酢味噌和え:軽快な食感を楽しむレシピ
うどの茎は、その小気味良い歯触りが身上です。特に、先端部分はアクが強く、苦味も強いため、ほのかな甘みと良好な食感が楽しめる中央から根元にかけての部分を使うのがおすすめです。酢味噌との相性は言わずもがなで、うどの清々しい香りと心地よい食感を満喫できます。
【材料】
うどの茎(中央から根元):1本分
[酢味噌]
酢:大さじ3
砂糖:大さじ2
みりん:大さじ2
昆布だし(※):大さじ1
味噌:大さじ3
【作り方】
1. うどを3cmほどの長さに切り、短冊状にします。切ったうどを10分ほど酢水に浸します。こうすることで、アクが抜け、色鮮やかに仕上がります。
2. 沸騰したお湯で、[1]のうどを表面が色鮮やかになるまで茹でます。茹ですぎると食感が悪くなるため、手早く済ませるのがコツです。茹で上がったら素早く冷水に取り、水気をしっかりと切ります。
3. 酢味噌の材料を小鍋に入れ、弱火で丁寧に混ぜ合わせます。味噌の粒が完全になくなるまで混ぜ、滑らかになったら火を止め、粗熱を取ります。冷ますことで味が馴染み、一層美味しくなります。
4. 器に[2]のうどを盛り付け、上から[3]の冷ました酢味噌をたっぷりと掛けたら完成です。
(※)昆布だしの作り方:昆布(10cm角)を水(1リットル)に浸し、冷蔵庫で一晩置くと、旨味が凝縮された出汁ができます。時間がない場合は、昆布を水に1時間浸した後、中火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出すと、手軽に出汁を取ることができます。
皮のきんぴら:芳醇な香りとほろ苦さが魅力の活用術
うどの皮は、捨ててしまうには惜しいほど、うど本来の風味が凝縮された部位です。この皮と細い茎を一緒にきんぴらにすることで、豊かな香りとほろ苦さが口の中に広がる、滋味深い逸品に生まれ変わります。うどとにんじんの異なる食感が楽しいきんぴらは、ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒の肴にもぴったりです。下処理をしたうどとにんじんを細切りにし、ごま油で炒め、酒、みりん、砂糖、醤油といった家庭にある調味料で味付けするので、うどを初めて調理する方にもおすすめです。
【材料】
うどの皮・細い茎:1本分
生姜スライス:3枚
ごま油:大さじ1
醤油:大さじ1
みりん:大さじ1
塩:ひとつまみ
水:大さじ1
【作り方】
1. うどの皮は細切りに、細い茎は斜めに切り、食べやすい大きさにします。切った皮と茎は、それぞれ酢水に浸し、アク抜きと変色防止をします。
2. フライパンにごま油と生姜スライスを入れ、弱火でじっくりと熱し、香りを引き出します。生姜の香りが油に移ることで、きんぴらの風味がより一層引き立ちます。
3. 生姜の香りが立ったら、水気を切ったうど(皮と細い茎)を加え、強火で手早く炒めます。全体に油が馴染み、うどに火が通ったら、水を加えて塩をひとつまみ加えます。
4. 醤油とみりんを加え、水分がなくなるまで炒め煮詰めます。お好みの食感になるまで炒め上げてください。シャキシャキ感を残したい場合は、炒めすぎないように注意しましょう。
うどの部位を余すことなく楽しむためのヒントと調理時の注意点
うどは、瑞々しい穂先、シャキシャキの茎、風味豊かな皮に加え、細い茎まで様々な料理に活用できます。例えば、穂先や細い茎は、その香りを活かして味噌汁の具材にするのもおすすめです。味噌汁に入れることで、うど独特の香りが広がり、奥深い味わいになります。どんな調理法を選ぶにしても、丁寧なアク抜きが何よりも重要です。アク抜きを怠ると、うど本来の繊細な風味や食感が損なわれるだけでなく、苦味やえぐみが際立ってしまうことがあります。また、カットしたうどは、空気に触れることで酸化が進み、アクが出やすくなるため、できるだけ購入したその日のうちに調理するのがおすすめです。春の息吹を感じさせる、ほろ苦さと爽やかな香りのうどを存分にお楽しみください。手間をかけた分だけ、うどは格別な風味と満足感を与えてくれるでしょう。
まとめ
この記事では、うどの選び方から部位ごとの下処理、アク抜きのコツ、そして天ぷらや酢味噌和えなどの絶品レシピまでご紹介しました。皮まで食べられる万能なうどを食卓に取り入れ、豊かな春の味覚をお楽しみください。
うどのあく抜きは必ず必要?
うどには、ポリフェノールといった成分をはじめとするアクの元となるものが多く含まれています。そのため、生のまま食べたり、加熱調理をする前にきちんとあく抜きをしないと、独特のえぐみや苦みが際立ってしまったり、切った部分が変色することがあります。とりわけ、生のうどをサラダでいただいたり、天ぷらでうど本来の風味を味わいたい場合は、酢水につけるなどのあく抜きをすることで、より一層おいしさを引き出すことができます。
うどの皮は食べられる?
はい、うどの皮もおいしくいただくことができます。特に、皮の近くにはうどならではの香りと風味が詰まっています。きんぴらにしたり、炒め物などに活用することで、独特のほろ苦さと香ばしさを堪能できます。ただし、皮の付近はアクが強いため、厚めに皮をむいて、酢水に浸すなど、丁寧な下処理をすることが大切です。
新鮮なうど、どうやって見分ける?
新鮮なうどを見分けるには、いくつかのポイントがあります。まず、節が詰まっていて、根元から先端にかけて太さが均一なものを選びましょう。そして、穂先がシャキッとしていて、薄い緑色をしていることが大切です。さらに、全体的に細かな毛が密集しているうどは、新鮮でみずみずしい証拠と言えます。
うどって、生で食べても大丈夫?
はい、うどは生のままでも食べられます。特に、軟化うどはアクが少ないため、生のままサラダとして、または薄く切って刺身のようにして楽しむことができます。生のまま食べる際も、切った後に軽く酢水に浸すことで、変色を防ぎ、あのシャキシャキとした食感をキープできます。新鮮なうどならではの香りと、わずかな苦みをストレートに味わえるのが醍醐味です。
うどを調理する上での留意点はありますか?
うどは、カットすると断面から酸化が進みやすく、アクが発生して品質が低下しやすくなります。したがって、手に入れたらなるべく早く、当日中に調理することを推奨します。また、アク抜きが不十分だと強い苦みが残ってしまうため、酢水に浸す時間をきちんと守り、丁寧な下処理をすることが大切です。
うどのカロリーと糖質はどの程度ですか?
うどのカロリーと糖質の量は、栽培方法(軟白うどか山うどか)、水にさらすかどうかによって変わります。例えば、生の軟白うどの茎の部分100gあたりでは、カロリーは約19kcal、糖質は約2.9gです。水にさらした場合、カロリーは約13kcal、糖質は約1.8gに減少します。一方、生の山うどの茎の部分100gあたりでは、カロリーは約19kcal、糖質は約2.5gとなっています。
うどはどんな方法で保存するのが良いでしょうか?
うどを保存する際は、全体を新聞紙やキッチンペーパーでくるみ、日の当たらない涼しい場所で保管するのがおすすめです。特に軟白うどは、日光を避けて栽培されているため、保存する際も光を遮るように注意が必要です。ただし、長期間保存すると硬くなったり、苦みが増したりする可能性があるため、購入後はできるだけ早く使い切るようにしましょう。













