フダンソウ、またはスイスチャードと呼ばれる野菜は、その鮮やかな見た目と優れた栄養バランスで、近年特に注目されています。ほぼ一年を通して栽培できることから、「不断草」という別名も持ち、ホウレンソウと同じ仲間で、私たちの食生活に浸透しつつあります。この記事では、フダンソウに含まれる豊富な栄養成分と、それらがもたらす健康への良い影響、新鮮なフダンソウの見分け方、保存方法、そして日々の食卓に取り入れやすいレシピを、詳しく解説します。疲労回復、貧血対策、便秘解消など、様々な効果が期待できるフダンソウを積極的に活用し、より健康的な生活を目指しましょう。

名称の由来と植物としての特徴
フダンソウは、ホウレンソウと同じ種類の野菜で、一年を通して栽培できる点から「普段草」、絶え間なく新しい葉が生えてくることから「不断草」という名で親しまれています。この野菜の持つ強さと生命力は、様々な環境への適応を可能にしています。肉厚で柔らかい葉と葉柄が特徴であり、その栄養価の高さは他の野菜と比較しても非常に優れており、フダンソウの大きな魅力となっています。
スイスチャードとの関係と色のバリエーション
日本でフダンソウとして知られる野菜は、欧米ではスイスチャードとして広く食されています。フダンソウとスイスチャードは同じ野菜であり、最近ではスーパーマーケットなどでもスイスチャードの名前で見かけることが増えました。特定の地域で見られるフダンソウは全体が緑色であることが多いですが、スイスチャードとして販売されているものの中には、茎が黄色、赤、オレンジなど、様々な色を持つ品種があり、その美しい見た目が食卓を豊かに彩るとして人気を集めています。
原産地と日本での栽培状況
フダンソウの原産地は地中海地域とされています。温暖な気候を好む一方で、暑さや寒さにも比較的強いため、日本では広い範囲で栽培されています。長野県から沖縄県まで、各地でフダンソウが栽培されており、その適応力の高さがわかります。真冬を除けばほぼ一年中収穫できるため、安定して手に入れることが可能です。この栽培の容易さも、フダンソウが多くの人に利用される理由の一つです。
豊富なビタミンとミネラル
フダンソウは、その鮮やかな色合いが示す通り、多様な栄養素をたっぷりと含んでいます。肉厚でやわらかい葉と茎には、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、葉酸といった、健康維持に不可欠なビタミン類が豊富に含まれています。これらのビタミンは体内で重要な役割を果たし、私たちの健康を支えます。さらに、カリウム、鉄分、カルシウム、マグネシウムといったミネラルも豊富に含んでおり、特に鉄分は、不足しがちな栄養素として知られ、積極的に摂取したいものです。加えて、食物繊維も豊富であるため、お腹の調子を整える効果も期待できます。これらの栄養成分がバランス良く含まれているため、フダンソウは非常に栄養価の高い野菜と言えるでしょう。
特筆すべき抗酸化パワー
フダンソウに含まれる豊富な栄養の中でも、特に注目したいのが、その優れた抗酸化作用です。β-カロテンやビタミンEなどが持つ抗酸化力は、体内で発生する活性酸素を除去し、細胞を守る働きをします。この抗酸化作用は、健康維持に役立つと考えられています。また、塩分の排出を助けるカリウムが含まれており、血圧が気になる方にもおすすめです。毎日の食卓にフダンソウを取り入れることは、体の内側から健康をサポートし、若々しい毎日を送るための助けとなるでしょう。
主要な野菜との栄養価比較
フダンソウの優れた栄養価は、他の代表的な緑黄色野菜と比較することで、より明確に理解できます。たとえば、フダンソウに含まれるβ-カロテンの量は、生の状態で可食部100gあたり約3700μg。これは、栄養価が高いことで知られるほうれん草の約4200μgに匹敵する量です。また、カリウムやビタミンB2、鉄分などの含有量は、栄養満点な野菜として知られる小松菜を上回るほどです。このように、フダンソウは、豊富な種類の栄養素を含むだけでなく、その含有量においても他の野菜に劣らない、非常に価値の高い野菜であることがわかります。

詳細な栄養成分表(生・ゆで100gあたり)
フダンソウに含まれる具体的な栄養成分は、以下の表の通りです(可食部100gあたり)。茹でることで、一部の栄養素は減少するものの、全体として高い栄養価を維持していることがわかります。特に、鉄分や食物繊維は、茹でることで含有量が増加する傾向にあります。 ※出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
【フダンソウ/葉/生】
エネルギー 17kcal
水分 92.2g
たんぱく質 2g
脂質 0.1g
炭水化物 3.7g
灰分 1.9g
食塩相当量 0.2g
カリウム 1200mg
カルシウム 75mg
マンガン 3.6mg
βーカロテン 3700μg
ビタミンK 180μg
ビタミンB1 0.07mg
ビタミンB2 0.23mg
ビタミンB6 0.25mg
葉酸 120μg
食物繊維 3.3g
鉄 3.6mg
【フダンソウ/葉/ゆで】
エネルギー 26kcal
水分 90.4g
たんぱく質 2.8g
脂質 0.1g
炭水化物 5.4g
灰分 1.2g
食塩相当量 0.2g
カリウム 760mg
カルシウム 130mg
マンガン 4.85mg
βーカロテン 3800μg
ビタミンK 220μg
ビタミンB1 0.03mg
ビタミンB2 0.11mg
ビタミンB6 0.14mg
葉酸 92μg
食物繊維 3.8g
鉄 2.1mg
疲労回復とストレス軽減
フダンソウは、β-カロテン、ビタミンA、C、E、K、葉酸など、疲労回復に役立つ多様なビタミンを含んでいます。これらのビタミンは、体内の新陳代謝を促進し、疲労の原因となる物質の排出を助けることで、体力の回復をサポートします。また、精神的なストレスの緩和にも効果が期待でき、特に夏場の栄養補給に適しています。暑さで体力を消耗しやすい時期にフダンソウを摂取することで、心身のバランスを整え、健康維持に貢献します。
鉄分の補給
フダンソウは、貧血の予防と改善に必要な栄養素を豊富に含んでいます。特に鉄分は、生の状態で可食部100gあたり3.6mg、茹でた状態では4.85mgと、高い含有量を誇ります。さらに、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルもバランス良く含まれているため、血液の健康を多角的にサポートします。鉄分不足が気になる方や、貧血気味の方にとって、フダンソウは積極的に取り入れたい食材です。
便秘の改善をサポート
フダンソウは、便秘の解消にも効果的な野菜です。食物繊維が豊富で、生で3.3g、茹でた状態で3.8g(可食部100gあたり)含まれています。食物繊維は腸内で水分を吸収し、便の量を増やして腸のぜん動運動を活発にすることで、スムーズな排便を促します。便秘の改善は腸内環境を整え、デトックス効果や美肌効果にも繋がります。フダンソウは、美容と健康をサポートする頼もしい味方です。
健康維持への期待
フダンソウに含まれる豊富なβ-カロテンやビタミンEなどの抗酸化物質は、がん予防に役立つと期待されています。活性酸素による細胞のダメージを防ぐことで、がんのリスクを低減する可能性があります。また、カリウムは体内の余分なナトリウムを排出し、血圧を正常に保つ効果があるため、高血圧の予防にも有効です。これらの栄養素の相乗効果により、フダンソウは生活習慣病の予防に貢献する、健康的な野菜と言えるでしょう。
こんな方におすすめ
フダンソウは、豊富な栄養価と健康への良い影響から、特に次のようなお悩みや目標をお持ちの方に推奨できる野菜です。
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日々の疲れを取りたい方:多様なビタミンが、疲労の原因となる物質の排出と、体力回復をサポートします。
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貧血気味の方:鉄分をはじめとしたミネラル類が、貧血の予防に役立ちます。
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便秘がちな方:食物繊維が、腸内環境を整え、スムーズな排便を促します。
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がん予防や血圧が気になる方:優れた抗酸化作用と血圧を調整する効果が期待できます。
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栄養バランスを意識している方:豊富なビタミンとミネラルで、夏場の栄養補給にも最適です。
新鮮なフダンソウを見分けるポイント
美味しいフダンソウを選ぶには、いくつかの大切な点があります。まず、葉に元気があり、水分をたっぷり含んでいて、つややかな光沢があるものを選びましょう。葉の色は、いきいきとした鮮やかな緑色が理想的です。次に、茎の部分がしっかりとしていて、程よい弾力があるものが、新鮮であることの証です。茎が柔らかすぎたり、しなびているものは、鮮度が落ちている可能性があります。また、大きく育ちすぎたものより、やや小ぶりのものの方が葉が柔らかく、風味も良い傾向にあります。これらの点に注意して選ぶことで、より美味しく、栄養も豊富なフダンソウを選べます。

長持ちさせる保存方法
フダンソウは、鮮度が低下するスピードが速いため、購入後はできるだけ早く食べることが望ましいです。すぐに調理できない場合は、冷蔵庫の野菜室で保存することで、ある程度の期間、鮮度を保つことが可能です。保存する際には、乾燥を防ぐために、湿らせた新聞紙やキッチンペーパーで包み、ポリ袋に入れてから野菜室に入れると良いでしょう。また、奄美大島では、購入後2~3日ほど天日干しすることで、少ししんなりとして扱いやすくなるという工夫もされています。これは、葉が少し柔らかくなることで調理しやすくなるだけでなく、風味が増すという効果も期待できます。
調理前の「アク抜き」の必要性
フダンソウは、ほうれん草と同じヒユ科(旧アカザ科)に分類されるため、同様にアクが強いという特徴を持ちます。このアクの主な成分はシュウ酸であり、気になる場合は軽く茹でてアク抜きをすることをおすすめします。アク抜きをすることで、苦味が軽減され、より食べやすくなります。下ごしらえとして、沸騰したお湯にさっとくぐらせ、冷水に取って水気を絞ることで、簡単におこなうことができます。ただし、独特の苦味を好む方や、レシピによってはアク抜きをせずにそのまま調理する家庭もあります。例えば、奄美地方の家庭では、あえて苦味を残すためにアク抜きをしないこともあるようです。ご自身の好みや調理方法に合わせて調整してください。
フダンソウの調理における基本
フダンソウは、適切な下処理(アク抜き)を行えば、ホウレンソウと同様に、様々な調理方法に対応できる万能な食材です。和え物としてのおひたしや胡麻和えは勿論のこと、味噌汁などの汁物の具材や、炒め物など、幅広い料理でその存在感を発揮します。肉厚な葉と茎は食感に優れ、料理に彩りを添えます。また、調理の際に最初に油で炒めることで、独特の香ばしさが引き出され、風味が増すという特徴も持っています。時間がない時には、カットしたフダンソウを直接蒸し煮にするなど、簡略化した調理も可能ですが、少し手間を加えることで、料理の味わいがより一層深まります。
栄養吸収を向上させる食材の組み合わせ
フダンソウに含まれる豊富な栄養成分を効果的に摂取するためには、他の食材との組み合わせを考慮することが大切です。フダンソウには、ビタミンB1、B2、B6といった、三大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質)の代謝を助けるビタミン類が豊富に含まれています。そのため、豆腐や油揚げ、肉類、魚介類といったタンパク質を多く含む食品と一緒に、煮物や炒め物として調理することで、エネルギー代謝が効率的に促進され、疲労回復や体力向上に繋がります。さらに、フダンソウに含まれる鉄分の吸収率を高めるには、ビタミンCを同時に摂取することが有効です。少量のニンニクを加えて調理すれば、風味が増すだけでなく、ビタミンCも補給できるため、栄養学的にも優れた組み合わせと言えるでしょう。
おすすめ定番レシピ:フダンソウとツナのあっさり煮
フダンソウは、そのボリューム感と栄養価の高さに加え、比較的安価に入手できるため、日々の食卓に嬉しい、コストパフォーマンスに優れた野菜です。特に寒い時期には、身体を温める煮浸しが最適です。ここでは、家庭でよく作る、手軽に調理できる「フダンソウとツナの煮浸し」のレシピをご紹介します。簡単に作れる料理ですので、おおらかな気持ちで気軽に試してみてください。

■材料
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フダンソウ…1回に購入する量
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ツナ缶…1缶程度
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昆布だしの素…お好みで(約1/2本)
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塩…少々
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黒コショウ(お好みで)…適量
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油(サラダ油など)…少量
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水(またはお湯)…適量
■作り方
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不断草を食べやすい大きさにカットします。葉の部分もお好みのサイズに切ってください。
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フライパンに少量の油をひき、中火にかけます。温まったら、まずは不断草の茎の部分を炒め、その後に葉を加えます。
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茎に軽く焼き色がついたら、水またはお湯を少量加え、蓋をして蒸し焼きにします。こうすることで、不断草全体に火が通りやすくなります。
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不断草がしんなりとしてきたら、ツナ缶を投入し、昆布だしの素、塩、粗挽き黒コショウで味を調えます。
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全体が馴染み、味が整ったら完成です!
■ポイント
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苦味が気になる場合は、下処理として軽く茹でてアク抜きをすると食べやすくなります。(苦味が好きな方はそのままでOKです。)
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購入後、2~3日ほど天日干しすると、水分が抜け、調理しやすくなります。
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最初に不断草を炒めることで、風味が豊かになります。時間がない場合は、切った後、手順(2)を省略して、すぐに手順(3)に進んでも構いません。
レシピを広げるアレンジアイデア
定番の「不断草とツナの煮浸し」に、様々な食材を加えてアレンジしてみましょう。例えば、小さく切ったこんにゃくを加えると、食感のアクセントになり、食べ応えもアップします。また、ツナ缶の代わりに豚肉を使うと、より満足感のある一品になります。豚肉を使用する場合は、手順(2)で不断草と一緒に炒め、軽く火を通してください。その際、厚揚げ豆腐を加えるのもおすすめです。これらのアレンジを参考に、「不断草×色々な食材」で、自分だけのオリジナルレシピを開発してみてください。
まとめ
不断草(スイスチャード)は、そのカラフルな見た目だけでなく、豊富な栄養と健康効果を秘めた注目の野菜です。一年を通して比較的入手しやすく、様々な料理に活用できるため、毎日の食卓に手軽に取り入れられます。疲労回復、貧血予防、便秘解消、さらには生活習慣病予防にも役立つ不断草。この記事でご紹介した基本情報、栄養、効果、選び方、保存方法、そして美味しいレシピを参考に、ぜひ食生活に取り入れて、健康的で彩り豊かな毎日を送りましょう。この素晴らしい野菜の魅力を最大限に活かし、ご自身の健康増進にお役立てください。
フダンソウとスイスチャードは同じもの?
はい、フダンソウとスイスチャードは同じ種類の野菜です。日本ではフダンソウという名前が一般的ですが、欧米ではスイスチャードとして広く知られています。最近では、日本の都市部のスーパーマーケットなどでもスイスチャードの名前で販売されることが増えてきました。中には茎の色が鮮やかな品種もあります。
フダンソウにはどんな栄養がたくさん入っていますか?
フダンソウは、栄養がとても豊富な野菜です。β-カロテン、ビタミンA、C、E、K、葉酸などのビタミン類をはじめ、カリウム、鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類、そして食物繊維が豊富に含まれています。特にβ-カロテンはほうれん草に匹敵するほどで、カリウムや鉄分は小松菜よりも多く含まれています。
フダンソウを食べるとどんな良いことがありますか?
フダンソウを食べることで、様々な健康効果が期待できます。豊富なビタミン類による疲労回復やストレス緩和、鉄分やミネラルによる貧血予防、食物繊維による便秘解消などが挙げられます。さらに、β-カロテンやビタミンEなどの強力な抗酸化作用によって、がんや老化の防止、高血圧の予防にも役立つと考えられています。
フダンソウを料理するとき、アク抜きは必要ですか?
フダンソウは、ほうれん草と同じようにアク(シュウ酸)が多いため、気になる方は軽く茹でてアク抜きをすることをおすすめします。アク抜きをすることで、えぐみが軽減され、より美味しく食べられます。ただし、苦味が好きな方や、調理方法によってはアク抜きをせずにそのまま使うこともあります。
フダンソウを長持ちさせる保存テクニックはありますか?
フダンソウは残念ながら、比較的鮮度が落ちやすい野菜です。そのため、手に入れたらできるだけ早く調理して食べるのが一番です。どうしても保存したい場合は、乾燥が大敵なので、軽く湿らせたキッチンペーパーや新聞紙などで丁寧に包み、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保管しましょう。また、少し変わった方法として、購入後に2~3日ほど天日干しすることで、水分が抜けて扱いやすくなるという裏技もあります。
フダンソウのおすすめ調理法は?
フダンソウは、その汎用性の高さが魅力の野菜です。和え物やおひたしはもちろん、汁物の具材や炒め物など、幅広い料理で活躍します。特に注目すべきは、三大栄養素の代謝をサポートするビタミンB群が豊富な点です。豆腐や肉、魚といったタンパク質を多く含む食材と一緒に調理することで、栄養の吸収率を効率的にアップできます。さらに、鉄分の吸収を助けるビタミンCを豊富に含む、少量のにんにくを加えてみるのも良いでしょう。記事内でご紹介した「フダンソウとツナの煮浸し」は、手軽に作れて美味しいので、ぜひ試してみてください。













