サンザシの効能と副作用:知っておくべき健康への影響
サンザシは、古くから生薬や食用として親しまれてきた植物です。原産地の中国では、不老長寿の薬としても珍重されてきました。近年、その健康効果が科学的に解明されつつあり、注目を集めています。この記事では、サンザシが持つ効能と、摂取する際に注意すべき副作用について詳しく解説します。健康への良い影響を知り、安全にサンザシを取り入れましょう。

サンザシの滋養と多彩な活用法

熟したサンザシの実は、鮮やかな赤色を帯び、山査子(さんざし)の名で親しまれています。古来より、薬用や食用として多岐にわたる用途で珍重されてきました。特に、実が黄色く熟すものはキミノサンザシ (Crataegus cuneata f. lutea) という種類として区別されています。サンザシの実は、「栄養豊富なスーパーフード」とも呼ばれ、オレアノール酸、クエルセチン、ビタミンC、カロテンといった多種多様な栄養成分がバランス良く含まれています。中でも、オレアノール酸やクエルセチンは、その優れた抗酸化作用で注目を集めており、健康に様々な良い影響を与えることが期待されています。サンザシは、活性酸素を除去するポリフェノールを豊富に含み、これらの成分は植物の皮に多く含まれる強力な抗酸化物質です。例えば、肉やバターをよく食べるフランスの人々が、赤ワインに含まれるポリフェノールの働きによって虚血性心疾患にかかる割合が低いという「フレンチパラドックス」は広く知られています。サンザシに含まれるポリフェノールは、抗酸化作用を持ち、細胞の老化を遅らせ、アンチエイジングに役立つ可能性が示唆されていますさらに、果実の赤色や黄色といった鮮やかな色彩はカロテノイドによるもので、これらは体内で消化されるとビタミンAに変わることが知られています。そのため、サンザシは栄養価が高い食品として、昔から人々の健康維持に貢献してきました。

生薬「山査子」の効能と漢方における利用

サンザシやその近縁種であるオオバサンザシ(Crataegus pinnatifida)の乾燥させた果実は、生薬として山査子または山楂子(さんざし)と呼ばれ、古くから消化を促進し、腸の調子を整え、消化吸収を助ける効果があると考えられています。生薬としての山査子は、秋の9月から10月頃に熟す前の果実を収穫し、種を取り除いた後、天日で乾燥させて作られます。漢方医学では、特に食積(食べ過ぎによる消化不良)の改善に効果があるとされ、加味平胃散(かみへいいさん)や啓脾湯(けいひとう)といった代表的な漢方薬に配合されています。山査子は、胃酸の分泌を促すことで消化不良を改善し、胃の負担を軽くする働きがあります。また、抗菌作用や血管を拡張する作用も認められており、総合的に胃の健康をサポートすると考えられています。民間療法でも、山査子は食べ過ぎや油っこいもの、肉類を摂取した際の消化を助ける薬草として古くから活用されてきました。例えば、下痢、消化不良、軽い腹痛には、山査子1日量5〜8グラムを200〜600ミリリットルの水で弱火で煮詰め、半量になるまで煎じたものを、1日に食間に3回、温めて服用する方法が知られています。さらに、乗り物酔いや二日酔いの改善にも同様の煎じ汁を飲むと良いと言われています。このように山査子は、消化器系の不調から日々の健康維持まで、幅広い用途で利用されてきた歴史があります。また、サンザシの近縁種であるセイヨウサンザシ(Crataegus oxyacantha)の果実や葉は、ヨーロッパではハーブとして使われており、動悸や心筋衰弱といった心臓病の治療に用いられることがあります。
ただし、サンザシは胃酸の分泌を促進する作用があるため、胃酸過多や胃潰瘍の症状がある方は摂取を控えるようにしましょう。また、セイヨウサンザシは、一部の心疾患薬を含む薬剤との間に、有害な相互作用をおこす可能性があります。薬を服用している人は、セイヨウサンザシを使用する前に、かかりつけの医療スタッフに相談してください。(出典: 厚生労働省eJIM『セイヨウサンザシ[ハーブ - 医療者]』, URL: https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/29.html, 2020-01-27)

血流改善効果と心臓病予防

サンザシは、血中のコレステロールや中性脂肪を抑制し、高脂血症や動脈硬化に効果を発揮することが期待されています。血液がスムーズに流れなくなると、コレステロールや中性脂肪が血管の内側に蓄積したり、血管が脆くなる危険性があります。そこでサンザシは、円滑な血液循環をサポートし、心臓血管系の健康維持に貢献します。サンザシの葉から抽出した成分をラットに投与した実験では、L-NAME誘発高血圧の緩和が確認されており、高血圧予防や生活習慣病予防効果が期待されています。臨床研究では、高血圧患者において、サンザシ抽出物の摂取により安静時の拡張期血圧が改善し、不安が軽減したという報告があります。サンザシは、高血圧、高脂血症、うっ血性心不全の予防に役立つと考えられており、心血管疾患の治療においては、血管壁を強化し、冠状動脈の血流を改善する働きが知られています。心臓疾患予防のための摂取目安として、サンザシ抽出物160〜900mg(エピカテキンとして30〜169mg、フラボノイドとして3.5〜19.8mg)が挙げられています。心不全手術を行ったラットを対象とした実験では、サンザシ抽出物が心臓を保護する作用を持つ可能性が示唆されています。また、クラスⅡ心不全患者を対象とした研究では、サンザシ抽出物の摂取により運動時の収縮期血圧の上昇が緩和されたことから、サンザシの心臓保護効果が期待されています。

リラックス効果と睡眠改善

山査子には、中枢神経に作用し、不安を和らげ、睡眠の質を向上させる効果があることが知られています。この作用は、鎮痛鎮静作用にもつながると考えられています。高血圧患者を対象とした研究では、サンザシ抽出物の摂取によって安静時の拡張期血圧が改善するとともに不安が軽減されたという報告があり、心を落ち着かせ、リラックスさせる働きにより精神的な健康をサポートすることが示唆されています。また、マウスを対象とした研究では、サンザシの果肉や種子から抽出した成分の摂取により鎮痛効果が見られ、中枢神経を介した鎮痛作用、鎮静効果、さらに睡眠障害の改善効果を持つと考えられています。これらの研究は、サンザシがストレスや不眠に悩む人々の心の健康を支える可能性を示唆しています。

認知症予防への期待

近年、認知機能低下の一因として低血圧が注目されています。山査子は、交感神経に作用し、一時的に血圧を上昇させることで、認知症を予防する可能性が研究で示唆され、その機能性が注目されています【6】【7】。ある研究では、50歳から80歳の女性80名に山査子を投与した結果、短期的な血圧の上昇とともに認知機能の改善が見られました。同様に、慢性的な低血圧に悩む女性患者80名を対象とした研究でも、山査子抽出物の摂取によって短期的な血圧上昇と認知機能の向上が確認されています。これらの結果は、低血圧が認知機能に影響を与える可能性を示唆しており、山査子が血圧を調整することで認知症予防に役立つ可能性があることを示しています。これらの発見は、山査子が脳の健康維持に貢献する可能性を示唆しており、今後の研究が期待されています。

サンザシの飲用・調理用途

サンザシの果実は、生で食べることもできますが、完熟しても強い酸味があるため、そのままでは食べにくいと感じる方も多いでしょう。生の果実を美味しく活用する方法として一般的なのは、種を取り除いた後、約3倍量のホワイトリカーに漬け込み、冷暗所で保存して風味豊かな果実酒にする方法です。このサンザシ酒は、甘酸っぱい風味が特徴で、一部の中華料理店では食前酒や食後酒として提供されています。また、料理においては、獣肉や魚肉を煮込む際にサンザシの実をいくつか加えることで、肉を柔らかくする効果が期待できます。これは、サンザシに含まれる酸が肉の繊維を分解し、柔らかくするためと考えられています。さらに、手軽にサンザシの風味を楽しみたい場合は、果実を薄切りにして天日干しした山査子片を2〜3個ほどカップに入れ、お好みで砂糖や蜂蜜を加えて熱湯を注ぐことで、酸味と香りが広がる飲みやすいお茶として楽しむことができます。

サンザシのドライフルーツと加工品

サンザシは、その独特の酸味と風味を活かして、ドライフルーツとしても広く加工され、親しまれています。一般的な製法としては、果実を潰し、砂糖や麦芽糖などを加えて混ぜ合わせ、棒状に成形してから乾燥させる方法があります。中国では特に「山査子餅(サンザーズビン)」と呼ばれるものが一般的で、これは円柱状に成形された後、薄くスライスされ、まるで日本の硬貨のような平たい丸い形をしているのが特徴です。この山査子餅は、そのままおやつとして食べるだけでなく、酢豚などの中国料理に入れることで、独特の酸味と風味を加える隠し味としても利用されることがあります。その他にも、果実を丸ごと種を取り除き、乾燥させて麦芽糖などでコーティングしたドライフルーツもあります。これらの加工品の中には、含有成分の条件を満たすことで、厚生労働省の定める基準に基づいた「栄養機能食品」として表示できるものもあり、健康に関心の高い消費者からも注目されています。

サンザシを使用した菓子類

中国では、「山査餅」以外にも様々なサンザシを使ったお菓子が作られています。「山楂糕(サンザガオ)」と呼ばれる平たい板状のお菓子もその一つで、ゼリーのような食感が特徴です。この山楂糕は、その酸味と独特の風味から、お粥の風味付けに使うという、非常にユニークな利用法もあります。さらに、中国では種が比較的大きく果肉の多いサンザシを生食用に栽培しており、これらを串に刺して、飴や麦芽糖、砂糖をかけた「氷糖葫芦(ビンタンフール)」という、まるで日本のりんご飴のような屋台菓子が街角でよく売られています。これは、サンザシの酸味と飴の甘さが絶妙に調和した、中国を代表する伝統的なおやつの一つとして、子供から大人まで幅広く親しまれています。

サンザシはこんな方におすすめ

○ 胃の調子を整えたい方
○ 食後の消化を助けたい方

サンザシに関する研究情報

サンザシの健康効果に関する科学的な研究は、その潜在能力を明らかにしています。消化器系への影響に関する研究では、ラットにサンザシ抽出物(50〜200mg/kg)を投与した結果、炎症を抑え、痛みを和らげる作用、むくみを防ぐ作用が確認されました。また、エタノールによって引き起こされる胃潰瘍の症状を軽減する効果も認められています。さらに、サンザシは強力な抗酸化作用に加え、黄色ブドウ球菌や枯草菌といった一般的な細菌に対して殺菌作用を持つことが示されており、健胃効果、消炎鎮痛効果、抗酸化効果、そして殺菌効果が期待されています。これらの研究結果は、サンザシが伝統的に消化促進や胃の健康維持に用いられてきた理由を科学的に裏付けています。
循環器系への影響については、サンザシの葉から抽出された成分を100mg/kgの量で4週間ラットに投与した研究で、L-NAMEによって誘発された高血圧が緩和されることが確認され、高血圧の予防や生活習慣病の予防に役立つ可能性が示唆されています。また、高血圧患者36名を対象とした臨床研究では、サンザシ抽出物を1日500mg、またはマグネシウムを1日600mg、10週間摂取させたところ、サンザシを摂取した患者群において安静時の拡張期血圧が改善し、不安感も軽減されたという報告があります。この結果から、サンザシが高血圧の予防効果と抗不安作用を持つ可能性が考えられます。サンザシは、高血圧、高脂血症、うっ血性心不全の予防に役立つと考えられており、現在、NYHAクラスⅡ〜Ⅲの心不全患者に対する治験が検討されているほど、その効果に期待が寄せられています。心血管系の疾患治療においては、サンザシが血管壁を強化し、冠状動脈の血流を改善する作用が知られており、NYHA(ニューヨーク心臓協会)によって、クラスⅡのうっ血性心不全の治療に有望であると評価されています。サンザシ抽出物として1日あたり160〜900mg(エピカテキンとして30〜169mg、フラボノイドとして3.5〜19.8mg)の摂取が、心臓疾患予防の目安とされています。さらに、心不全の手術を行ったラットを対象に、サンザシ抽出物を1.3〜130mg/kgの量で投与したところ、血圧依存性の心肥大による心機能不全が緩和されることが確認され、サンザシが心臓を保護する作用を持つ可能性が示唆されています。また、45〜73歳のクラスⅡ心不全患者78名を対象に、サンザシ抽出物を1日600mgの量で8週間摂取させたところ、運動時の収縮期血圧の上昇が緩和されたことから、サンザシの心臓保護効果が期待されています。
神経系および認知機能への影響についても、興味深い研究結果が出ています。50〜80歳の女性80名を対象とした研究では、サンザシを投与した結果、短期的な血圧の上昇とともに認知機能が改善されることが確認されました。この効果は交感神経を介したものであると考えられており、サンザシに認知症を予防する効果が期待されています。慢性的な低血圧に悩む女性患者80名を対象とした研究でも同様に、サンザシ抽出物の摂取によって短期的な血圧上昇と認知機能の改善が見られており、認知機能障害に低血圧が関与していることから、サンザシの血圧上昇作用による認知症予防効果が期待されています。さらに、マウスを使った実験では、サンザシの果肉(100-1000mg/kg)または種子抽出物(10-1000mg/kg)を摂取させることで鎮痛効果が確認され、サンザシが中枢神経系を介した鎮痛作用、鎮静効果、そして睡眠障害を改善する効果を持つ可能性が示唆されています。これらの研究は、サンザシが脳の健康維持や精神的な安定にも貢献する可能性を示唆しています。

参考文献

・厚生労働省eJIM『セイヨウサンザシ[ハーブ - 医療者]』(https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c04/29.html, 2020-01-27)

まとめ

サンザシは、中国原産のバラ科の落葉低木であり、その美しい花と鮮やかな赤い実が特徴です。古くから薬用植物として珍重され、特に消化を助け、胃腸の働きを整える生薬「山査子」として用いられてきました。近年の研究では、抗酸化作用、血流を良くする効果、心臓を保護する作用、リラックス効果、さらには認知症の予防効果まで期待されています。生のままでは酸味が強いため、果実酒やドライフルーツ、様々なお菓子に加工され、その甘酸っぱい風味と健康効果から世界中で愛されています。日本でも庭木や盆栽として親しまれ、人々の生活に深く根付いた植物となっています。多様な利用方法と科学的な根拠を持つサンザシは、今後も私たちの健康と食生活に貢献していくことでしょう。

サンザシの故郷と日本への道のり

サンザシは中国の中南部がルーツの落葉樹です。日本へは江戸時代、徳川吉宗が将軍だった頃に、薬木として中国からもたらされました。

英語名「ホーソーン」に込められた意味

サンザシの英語名である「ホーソーン(Hawthorn)」は、古い英語で生垣を意味する「haga」が変化した「ホー」と、棘を意味する「ソーン(thorn)」が組み合わさってできています。これは、サンザシの棘があることと、生垣として使われることがあるという特徴を表しています。

サンザシの実はそのまま食べられる?

サンザシの実は、生で食べることもできますが、熟しても強い酸味があるため、そのままでは食べづらいと感じる人が多いでしょう。そのため、果実酒やドライフルーツ、お菓子などの材料として加工されるのが一般的です。

サンザシを増やすには?

サンザシは挿し木での繁殖が難しいため、一般的にはマルメロやサンザシを台木として利用した接ぎ木苗が販売されています。家庭で増やす場合は、種から育てるのがおすすめです。種は乾燥すると発芽しなくなるため、採取したらすぐに土に植え、外で管理することが大切です。苗を植えてから実がなるまでには、およそ4年ほどかかると言われています。

生薬「山査子」の主な効能とは?

山査子(サンザシ)は、古くから生薬として用いられており、消化を助け、腸内環境を整える効果が期待されています。食べ過ぎによる消化不良や、それに伴う下痢、軽度の腹痛などの症状緩和に役立つとされ、漢方薬や民間療法に取り入れられています。さらに、胃酸の分泌を促したり、細菌の増殖を抑えたり、血管を広げる作用があることも報告されています。

サンザシにはどのような種類が存在しますか?

サンザシは、北半球に広く分布しており、その種類は非常に豊富で、約1000種類にも及ぶと言われています。代表的なものとしては、中国原産で、主に胃腸の調子を整える生薬として利用される大実山査子(オオミサンザシ)や、ヨーロッパで血液の健康維持に役立つハーブとして知られる西洋山査子(セイヨウサンザシ)などが挙げられます。

中国におけるサンザシの歴史的な認識は?

サンザシは、中国において約2000年も前から文献に記録されており、不老長寿の薬として珍重されてきました。副作用の心配が少ない上薬として扱われ、その甘酸っぱい風味から、日常的な栄養源としても広く親しまれてきました。

サンザシを摂取する際の注意点はありますか?

はい、サンザシは胃酸の分泌を促進する作用があるため、胃酸過多や胃潰瘍などの症状をお持ちの方は、摂取を控えるようにしてください。

サンザシは消化を助ける以外に、どのような健康への貢献が期待できますか?

サンザシは、古くから消化促進の用途で知られていますが、それ以外にも様々な健康効果が期待されています。体内の活性酸素を除去する抗酸化作用や、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を低下させることで血流を改善する効果、そして心臓病の予防効果などが挙げられます。さらに、中枢神経に働きかけ、精神的な不安を和らげて睡眠の質を高めるリラックス効果や、近年では認知症の予防にも役立つ可能性が示唆されています。

サンザシが心疾患や高血圧の改善に良い影響を与えるとされるのはなぜですか?

サンザシが心臓病や高血圧に良いとされる理由としては、その成分が血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪の値を抑制し、血管の壁を強くする作用があるためです。また、心臓に栄養を送る冠状動脈の血流をスムーズにする働きも期待できます。実際に、高血圧に悩む人々を対象とした研究では、サンザシの摂取によって血圧が改善されたり、精神的な不安が軽減されたという報告があります。これらのことから、サンザシは心臓を保護する作用や、生活習慣病を予防する効果があると考えられています。


山査子