「璃の香(りのか)」というレモンをご存知でしょうか?静岡県生まれのこの品種は、一般的なレモンとは一線を画す、様々な魅力を持っています。この記事では、璃の香の特徴から、ご家庭での栽培方法、そしてその風味を最大限に活かす絶品レシピまで、徹底的に解説いたします。爽やかな香りとまろやかな酸味で、日々の食卓を彩ってみませんか?
璃の香(りのか)とは
璃の香(りのか)は、静岡県興津にあった果樹試験場(現在の農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点)で開発された、新しいレモンの品種です。よく見かけるレモン(リスボン種)と日向夏を掛け合わせて作られ、かいよう病への抵抗力があり、実が大きい、皮が薄い、そして酸味が穏やかな点が特徴です。「璃」という字には、このレモン特有の、透き通るような爽やかな香りを、宝石のように大切にしたいという意味が込められています。
璃の香(りのか)の来歴
璃の香は、1991年に「リスボン」レモンに日向夏の花粉を交配させることから始まりました。その種から育った苗を選抜し、育成を重ね、2008年には「カンキツ興津66号」という名前で、カンキツ第10回系統適応性・特性検定試験に提供されました。2013年8月には新品種候補となり、同年12月には種苗法に基づく品種登録が出願され、2015年に晴れて「璃の香」として品種登録が完了しました。
璃の香(りのか)の特徴
璃の香の果実は、普通のレモンと同じように細長い形をしていますが、重さは200g程度と、やや大きめです。育つ環境によっては500gを超えるものもあります。果皮の色は、若い時は緑がかった黄色で、熟すと鮮やかな黄色に変わります。果皮は薄くてなめらかで、手でむくことも可能です。中の果肉は黄白色で、果汁がたっぷり。果汁の糖度は9.2%で、酸含量は5.6%程度と、リスボンレモンと比べてまろやかな酸味が特徴です。香りも一般的なレモンとは少し異なり、交配に使われた日向夏のような、爽やかな香りも感じられます。種が少ない、あるいは種なしの果実ができやすいのも嬉しいポイントです。また、レモンや柚子の木には鋭いトゲが多いですが、璃の香の木にはあまりトゲがなく、収穫時の怪我のリスクが少ないのも魅力です。
何と言っても一番の特徴は、リスボンレモンなどのレモンの品種にとって大敵である、かいよう病に強いことです。かいよう病は、細菌によって葉や果実、枝に褐色の斑点ができてしまう病気で、雨風にさらされると発生しやすいため、レモンの栽培は温暖で雨の少ない地域に限られていました。しかし、璃の香はこの細菌に対する抵抗力があるため、栽培できる地域が広がるのではないかと期待されています。また、果肉歩合は79%、搾汁率は50%とともに高く、既存の品種より歩留まりが高く、加工適性に優れると考えられます。
実際に食べてみた璃の香(りのか)の食味
璃の香は、表面がツルツルしていて、しっとりとした柔らかい手触りで、一般的なレモンのようなゴツゴツした感じはありません。手で皮がむけるのも特徴で、上下の端をナイフで少し切り落とし、皮に切り込みを入れてむくと、きれいに皮がむけます。果実が大きい上に、果実の大きさに比べて皮が薄く、果汁がたっぷりと詰まった果肉が多いので、一つの果実から絞れる果汁の量も多いです。
味は、一般的なレモンに比べると、やや酸味が穏やかですが、時期によっては酸味がしっかりとあり、レモンらしい酸っぱさも十分に楽しめます。香りもレモンとは少し違い、交配親である日向夏のような、爽やかな香りがほんのりと感じられるのが特徴です。
主な産地と生産量
璃の香の栽培は、神奈川県、三重県、和歌山県、広島県、香川県、長崎県、宮崎県、鹿児島県などで普及が見込まれています。苗木の販売は2016年から開始されましたが、2023年現在、各地域における正確な栽培面積や収穫量のデータはまだ十分ではありません。各地の柑橘類の産地で徐々に栽培に取り組む農園が増えていますが、全体的な収穫量はまだ少なく、一般消費者への認知度は低いのが現状です。今後の生産量の増加に期待が寄せられています。
璃の香(りのか)の収穫時期と旬
璃の香は、リスボンレモンなどの一般的な品種と比較して、11月下旬頃から黄緑色の実を収穫することができます。果皮が完全に黄色く色づくのは12月以降となります。また、貯蔵性に優れており、春先まで品質を保つことが可能です。産地や出荷戦略によっては、より早期に収穫されることもあります。例えば、JA香川県では主にまだ果皮が緑色の状態で「グリーンレモン」として8月中旬頃から収穫を開始し、8月下旬から9月上旬に最盛期を迎えます。
璃の香(りのか)の食べ方・活用方法
璃の香は、果汁はもちろんのこと、果皮まで余すところなく活用できます。爽やかな酸味が特徴で、酸味が苦手な方でも比較的食べやすいでしょう。日々の料理に輪切りにして添えることで、香りを楽しむことができ、果汁を絞って加えることで素材本来の味をより一層引き立てます。
璃の香は、果皮の苦味が少ないため、皮ごと食べられるのが魅力です。特におすすめなのは塩レモンです。塩レモンは、レモンと塩を混ぜて作る発酵調味料で、璃の香の果汁を絞った後の薄皮と外皮を細かく刻み、塩と混ぜ合わせて保存容器に入れるだけで手軽に作ることができます。数か月寝かせることで全体が馴染み、使いやすいペースト状になります。普段のドレッシングに少量加えてサラダを楽しむのはもちろん、パスタやソテーなど様々な料理に使える万能調味料です。また、璃の香の果皮は苦味が少ないため、料理やお菓子作りに幅広く活用できます。
まとめ
璃の香は、かいよう病への耐性が強く、大玉で果皮が薄く、まろやかな酸味が特徴的な新しいレモンの品種です。現在のところ生産量はまだ少ないですが、栽培のしやすさと食味の良さから、今後の普及が期待されています。店頭で見かけた際には、ぜひ手に取って、その独特な香りと味わいを堪能してみてください。
璃の香はどこで手に入れられますか?
希少な柑橘である璃の香は、通常のスーパーマーケットでは見かける機会は少ないかもしれません。主な産地である香川県や、インターネット通販サイトでの購入が考えられます。生産農家が直接販売している場合もありますので、探してみる価値はあるでしょう。
璃の香の適切な保存方法は?
璃の香は、日持ちが良い柑橘として知られています。冷蔵庫で保管することで、より長く風味を保つことができます。乾燥を防ぐために、ポリ袋などに入れて保存すると良いでしょう。
璃の香と通常のレモンの違いは何でしょうか?
璃の香は、一般的なレモンと比較して、酸味が穏やかで、より豊かな香りが特徴です。また、皮が薄く、手で剥いて食べられる手軽さも魅力の一つです。栽培の面では、かいよう病への耐性が強く、栽培しやすいという利点があります。